人魔:魔王様とベルンでした!
沢山のブックマークありがとうございます!!
統率者というのはやはり子煩悩が多いようです。
そして魔族領に来てからの怒涛の騒動はまだまだ終わりません!
次話投稿は一週間以内です!
「いや、すまなんだ。軟弱者が娘を娶りに来るのかと勘違いしてしまったのだ」
「だから言いましたでしょうに・・・絶対にないと申し上げたのに聞く耳持たなかったではありませんか!!」
「木剣で語り合わなければわからんこともある」
「初っぱなから木剣でしたよね!? 木剣でしか語り合えないの間違いでしょう・・・木剣でなくとも、語れることは山ほどあります! 昔っから直情的で、カナードの言葉をどう曲解したら娘を娶りに来るになるのですか」
応接室・・・というには狭く、畳が引かれ掛け軸がかけられた和風の部屋に俺、メリナ様、魔王様、秘書の四人が畳の上で正座している。
そして・・・目の前で、繰り広げられる老兵魔族と秘書魔族のやり取りを包帯でぐるぐる巻きにされた状態でまじまじと見ているわけだ。
色々起こり過ぎて何がなにやらわけがわからない現状をどうにか打開しようと、考え始めるがどこをどうまかり間違ってこうなってしまったのか当の被害者である俺でも皆目見当がつかない。
取り敢えず、現状はあの戦闘の後自分がぶっ倒れた間際までは記憶がある。
うん。纏めて考えないで一つ一つ消化すれば、纏まりそうだ。
えっとだ。
現状包帯でぐるぐる巻きにされているのは、老兵魔族との戦闘で気付かない内に身体中を斬られていた傷を直す為で、その傷と極度の疲労が原因でぶっ倒れわけだ。
そして、目が覚めたのはついさっきで、妙に顔を赤くしたメリナ様としかめっ面のルキナさんが俺に謝り倒してたんだよな・・・。
二人曰くまず俺達が襲われた原因は、魔王・・・老兵魔族『メフィルトネ・ガドイン様』の勘違いが主な原因らしかった。
カナード様が言った『お宅の娘さんが拐われてね。それを救った冒険者魔族が娘さんを送っているから心配しなくていいね』を曲解に次ぐ曲解を重ね『娘を娶りに魔族が来る』と思い込んだらしい。
そして、一報を受けて怒り狂った魔王様の覇気に脅えて、街の住民は全て自宅へ避難。
秘書の必死の制止も聞く耳持たず、あまつさえ周りの弟子達も賛同して事が大きくなったらしい・・・その時点で、秘書さんは現実逃避を始め治療斑の大量配備を急いだらしい。
んで、その件について魔王と秘書から直接謝罪がしたいとここに連れてこられたわけだ。
・・・魔王と秘書が口論している最中、なにやらこわーい気配が背後からヒシヒシ・・・いや、ミシミシと伝わってくるんだけどなぁ。
「魔王様、キュエル・・・いい加減にしてね?」
「「はい」」
メリナ様の地獄の奥底から響いてきた様な重低音の声に、魔王と秘書が震え上がる。
俺は努めて背後を振り返らないようにしていたけど、もし振り返っていたなら心臓が止まっていたかもしれない。
背後から漂っていた気配が落ち着くと、秘書が一つ咳払いしてその場で正座しながら深々と頭を下げた。
「此の度は私共の不手際、どうか許していただきたく存じます。遠路はるばる来て下さったお客人であり、メリナ様の命の恩人であらせられる冒険者様に本当に申し訳ないことをしました」
「すまぬ」
秘書が丁寧な口上と共に、本当に申し訳なさそうな表情で深々と謝罪する。
魔王様は綺麗な正座の姿勢のまま微塵も動くこともなく、一言で謝罪を済ませてしまった。
なんというか・・・この異世界の領主なり魔王なりは、度が過ぎた子煩悩しかいないのか!!
何はともあれ、目の前に正座しているのがこの魔族の街を束ねる魔族の長・・・『魔王:メフィルトネ・ガドイン』だ。
竜人の魔族でありながら、竜の先祖返りとまで言われるほどに竜の血を色濃く引き継ぎ、その身体能力は通常の魔族の数十倍とまでされるほどだ。それだけでも大したものなのに、魔王の力量は単純なステータスで測れる枠を優に超えている。俺と戦っていた際に引き抜いていたあの太刀捌き、ソウカイの扱う木剣技と同レベル・・・それに単純な力も相まって仕舞えばソウカイでさえ太刀打ちできない最強の木剣士の出来上がりだ。
そして、駄目押しとばかりにここの領土の魔族は全てルキナさんが使った様な『魔化』という全てのステータスを大幅にあげるブーストスキルを使用できる。
魔王様は『魔化』の上位互換でもある『竜化』というものを使えるそうなのだけど・・・『魔化』を使った魔王様はまさに『竜』と呼ばれるに相応しい程の力を発揮し、一太刀で襲い掛かった万の軍勢を斬ったとかなんとか・・・そして『竜化』を使った姿を見た者は一人もいないが、五柱の魔王はそれを畏れて領土に踏み込めないと言われてるらしく、曰く咆哮をあげれば大地が脈動し、天が割れ砕けるそうだ・・・無茶苦茶だ。
間合いに踏み込めば一太刀の元に命が絶たれ、その一太刀を避けたとしても、続く絶対の鎧となる剣戟の嵐から逃れる事ができない事から『剣鎧』という二つ名を持つ魔王様だ・・・因みに親しい者からは『親方様』と呼ばれているらしい。
接近戦においてガドイン様の右に出る者はおらず、日々ガドイン様に師事を乞う者が後を絶たず、あの日道場に座っていた人達は全員それだそうだ。
まぁ、ここまで紹介して・・・ガドイン様を正式に綺麗に紹介するならば
『魔族領ベルン領統括、剣鎧の竜人魔王:メフィルトネ・ガドイン』になるのだろう。
俺としては『道場師範、子煩悩の兇行魔王:メフィルトネ・ガドイン』にしたいところだ。
「それにしてもお主、なかなかやるではないか。魔化を使っていなかったとはいえ、我の一太刀を防ぐとはなやりおる。どれ、ここは一つもう一度打ち合わないか?」
「けっこうです」
好戦的な瞳を向けられて即答で断りを入れる・・・いつの間にか魔王様の背後に回った娘に無理やり頭を掴まれて下げられている。
そういえば・・・
「なんでメリナ様はお父さんの事を『魔王様』っていうの?」
「公私は分けなければなりません」
「昔は、門下生が居ようが、魔王が居ようがパパァと来たのだg」
「よ、余計なことを言わない!!」
娘に口を塞がれてどやされている魔王は心なしか嬉しそうだ・・・やっぱり、子煩悩なのは間違い無いだろう。
「あぁ、お主の部下達は少しの間預からして貰うが良いか?」
「別にいいですけどどうしてですか?」
「うむ。お主が気絶している間に門下生とお主の配下との間で一悶着あってな。門下生側が負けてしまったのだ。それで負けたままではメンツがないと皆猛っておるのだ。特にソウカイと呼ばれる者は我が門下生の大半を伸してしまってな・・・我も一度手合わせ願いたいのだ」
「う、内の配下が本当に申し訳ございませんでしたぁ!!!!!」
・・・全力で頭をこすりつけながら、最上級の詫びである土下座をして全力で謝ると・・・メリナ様の拘束から解かれた魔王様はクハハと笑い、こちらの肩をポンポンと叩く。
「逆に感謝しているのだ。最近は門下生同士だけの馴れ合いの組手しか取れてなかったのでな。今回の一件は奴らの良い薬になったであろう。お主にも是非参加して欲しいが・・・観光が目的だとあの魔人の娘に聞いている。ルキナを連れて行くといい、奴ならここいら一帯の情報は持っている筈だ」
魔王様はそう告げ終わると、部屋の外へと出て行った。
それに続いて大きくため息を吐いた秘書は、もう一度こちらへ謝罪の言葉を述べて魔王様に続くようにして部屋を後にした。
「本当は私も同行したかったんだけれど、私も稽古があるので・・・。ルキナは不器用で目つき顔つきは悪いけど悪い人じゃありませんから。それでは、私も行ってきます」
メリナ様もそのままパタパタと部屋を出て行った・・・包帯はもう外してもいいと言われていたので、後で部屋で外そうと思うんだけど・・・。
『どうしたの?』
「いやぁ、久しぶりだなぁこの感覚。足が痺れて動けない・・・」
足が治るまで少しの間部屋に居る事にした。
さて、準備も整って道場を出て、いざ魔族の街へ出発、初めての魔族領はワックワク・・・と言いたい所なのだが、すごく不機嫌そうな魔族が隣にいるせいでどうも落ち着かない。
言うまでもないと思うが、その不機嫌な魔族の正体はルキナさんである。
何故不機嫌かと言えば、いつもメリナ様と鍛練に励んでいると言うのに、魔王様直々の命令のせいで、どうでもいい魔族の案内役を押し付けられたからだ。
折角のメリナ様との時間を邪魔されたルキナさんは・・・そりゃもう、大層ご立腹であることは言うまでもない。
一応あれは何、これは何という質問には面倒臭そうに答えてはくれている。
あぁ、勿論俺が質問しているんじゃなくて、俺の両方の手を取って歩くイアとメアの双子がである。
イアとメアは目をキラキラさせながら、存分に観光を楽しんでいるんだけど・・・時折、右手を持つイアが右方向へ、左手を持つメアが左方向へ行こうとするもんだから千切れそうになるのだけはやめて欲しい。
「お家が白い」
「繋がってる」
「泥に魔力を注いだもので作っているからね。繋がっているのは防壁代わりよ」
ふむふむ。
つまり、この街に城壁はないけど、泥で繋がった家屋事態が堅牢な壁になってるって訳か。周囲掌握で把握した情報ではちょっとやそっとの攻撃では崩れないほどに耐久力がある。
そして・・・『魔王の加護』と言うものもついているが、詳細を開こうとしてもどうしても開示することができない。
さすがに魔王クラスになってくると周囲掌握も正常に作動しないな。
魔王様がご乱心になったあの事件は直ぐに解決し、街も漸く賑わいを取り戻したようで、周囲には多くの魔族が闊歩している。
道場に続く大きな一本道には多くの店が開かれていて、人間の様に統率性はないが雑多で様々な店がある。
うん。無論食べ物屋もあるわけで、非常に興味を惹かれるのは言うまでもない。
そして、通りを行き交う魔族を見ていたが・・・やはり人間の姿をしたものは誰一人としていない。
竜人7、その他魔族3、という感じで割れており、俺達も例にならって魔族の姿になっているが・・・・妙に注目を浴びているようだ。
好奇の視線を注がれている理由は・・・うん。まぁ、そりゃそうだよな・・・グレー色のスライムが二本の触手を出して養女を引き連れている様はあながちホラーだもんな。
「やっぱり、この街に来る竜人以外の魔族っていうのは珍しいんですかね?」
「・・・そうでもないわ。竜人が大半ではあるけぉ、アンデッド、オウルベア、アントニヒス等はいる・・・が、スライムはお前だけだ。だから注目を浴びてるんだろう」
成る程・・・よっぱりスライムの魔族っていうのは魔族領でも特殊なようだ。スライムというモノはもとより最弱種族で、『魔族』となり得る程の知能もなければステータスもない。
よってスライムが魔族として普通に街の中をニュルニュルと這いずっている様は一種異様な光景だろう。
イアとメアはそんな視線など気にしていないのか、好き勝手にあちこちへ行こうとする。
と・・・突然、目の前に竜人の大男が三人現れる。俺の前に立つ一人竜人の男は背中に無骨な剣を携えており、顔には横一文字に一本の傷跡が走っている。
その男は静かな殺気を身に宿しており、イアとメア、俺を一瞥するとニヤリと口角を上げ、口を開く
「お前はメフィルトネ様の弟子で相違無いか?」
「・・・へ?」
「いざ尋常に勝負せよ。貴様に決闘を申し込む!」
俺がキョトンとしていると、後方から様子を見守っていたルキナさんが、目を細め俺の前へと歩み出る。
「この人は客人だ。決闘を申し込むのは筋違いだ」
「ハハハ、メフィルトネ様のお客人であれば、腕も立つ筈・・・無論、制度に問題は無い筈だ」
「・・・えっと? 一体何がなんだか」
頭の上に?を浮かべながら、睨み合いをする竜人の大男とルキナさんを交互に見ながら、二人の行く末を見ていることしかできないでいる。
大男の側に立つ二人もルキナさんと言い合いを始め、制度がどうのこうの決闘がどうのこうのと舌戦の応酬を繰り広げている。
一頻り言い終えた様で、どうやら相手は言い負かされた様で、顔を顰め此方を殺気を放ちながら睨んでいる。
「・・・謝るのは癪だがすまない。あの三人は勘違いで決闘を申し込んだんだ」
「えっと、『決闘』?」
「この領には様々な自称猛者がいる。その中でも別格に強い者だけがメフィルトネ様の道場に門下生として入門することが許される。選定方法は至って簡単、メフィルトネ様の道場の者と戦い、見事打ち倒した者にはその栄誉が与えられる・・・生半可な者を弾く為の決まりだったんだけどね」
ルキナさんから詳しく聞けば・・・メフィルトネ様に師事して貰いたいって言う人が増え過ぎたらしい。門下生となった者には私兵としての給料も出るそうで、金目当てだったり生半可な気持ちで臨んだ結果、逃げ出したりサボったりと散々な様相であったらしい。
それらを改善する為に作られたのが、メフィルトネ道場の決まりだ。
道場に入るには道場の者を倒さなければならない。
道場の者は原則として決闘を断ることはできない。
「なんで俺が決闘対象なんだ?」
「たぶん道場を出てきた所を見られて、殺気を出して近づいたのにそれに気づいてもいなかったから、侮られたんでしょうね。仕方ないから私が受ける事にしたわ」
ルキナさんは大きな溜め息を吐き、面倒臭そうに相手を一瞥する。
成る程・・・つまりは、道場を出て来て一番弱そうな奴を倒しちゃえって魂胆だったわけか。
ルキナさんもそれがわかったらしく、舐めた根性が気に入らなかったらしく、鬼の様な形相を浮かべているが当の相手はニヤニヤと薄ら笑いを浮かべている。
周囲掌握で相手のステータスを見てみるが・・・うん、大したことはないし、よっぽどの事がなければ負けることもないだろう。
なのに、何故相手が余裕をかましているのかと言えば、女であり尚且つ筋肉やら所持している武器がないからだろう。
つまりはルキナさんも侮られているってことだ。
ルキナさんは暗殺者として、あまり表だった動きを取る事はできない。だから今ルキナさんは変装して俺と同行しているわけで・・・誰一人としてルキナさんだと気付いている者がいないのだ。
大きな広場につれてこられ、そこの中央に竜人大男とルキナさんが向かい合う。
ルールは簡単だ・・・どちらかが致命傷と思われる箇所に攻撃を加えれば勝ちだ。
「では、尋常に勝負!!」
「・・・」
二人が携えているのは木で作られた木剣だ。あれで一撃をいれなければならないたしいが、どうやら暗器の類いは使用できないらしく、正々堂々真っ向勝負がルールであるらしい。
魔法やスキルでのステータス上昇は、決闘においては認められないらしい。
だが、周囲掌握で示されたステータスには
バーガル:『悪木剣』(LV11)
称号
卑劣者
大嘘吐き
大木剣使い
HP:421 + 100
MP:41
STR:658 + 70
VIT:459 + 70
AGL:572 + 70
MGI:99
LUC:2
LV上限:25
スキル:加速、弩腕、体鉄
エクストラスキル:なし
魔法:なし
うん。思いっきり身体能力向上スキルを使用している。
スキルを使用してのステータスの底上げで、ルキナさんとの差は埋められている。恐らく竜人大男はあとは体格なり力なりで押せば良いと思っているんだろうけど、甘いな。
いつの間にかできていた野次馬達が歓声をあげ、それを合図に決闘は始まる。
竜人大男はその場で木剣を構えてルキナさんへと向ける。木剣事態にブレはないが、体の軸や呼吸が若干安定していない。重心がぶれていると、攻撃を気取られやすくなり打ち合いの際には体制を崩しかねない。
視線はルキナさんを見ているつもりなのだろうが、鈍色に光る木剣へと時たま視線を落としている・・・警戒しているのがバレバレだな。
その点ルキナさんは、片手一本で木剣を支えながらも軸はぶれず呼吸も静寂のそれを湛えている。軸の中心をわざと左右にブレさせているが、それは間違いなく誘っているのだろう。
視線はしっかりと相手の一挙一道を見逃さず、全体を見ている点からも負ける要素はほとんどないな。
「ヌゥン!!」
「・・・」
大きな掛け声と共に振りきられた一撃はルキナさんに軽々と避けられ・・・ンッ!?
唐突に木剣の振る速度が加速する。眼前へと迫った木剣にけれどもルキナさんは冷静に対処する。
木木剣を振り上げ眼前に迫った木剣を打ち払うと、重心の崩れた竜人大男へと足払いを仕掛ける・・・が、重心の崩れているはずの大男はその一撃に耐えきり、打ち払われた木剣を振り下ろす。
「おかしいよね?」
「ユガユガ、女の人が戦っている人の後ろ」
「変、手元キラキラしてる」
「んぇ?」
周囲掌握で竜人大男の方ばかりに気を取られていたが、どうやらイアとメアは何か不審な点を見つけたみたいだ。イアとメアは竜人大男の背後・・・野次馬に紛れるようにして立っている二人の男の方を指差している。
何を伝えたいかはよくわからないが、必死にジェスチャーで伝えようとしてくれている・・・なんだかよくわからないが、イアが指をワチャワチャ動かしていて、メアが手をキラキラ?させながらその周りを渦を巻くように動かしている。
後ろの二人に視線を注いでも何にもな・・・
その直後、ルキナさんが相手の懐に飛び込み一頭を叩きこもうとした直後、竜人大男はありえない超反応を見せて後ろに引き下がった。
その瞬間・・・背後に立っていた一人の男の手が輝き、何かを操っているように指を動かしている。
直ぐ様周囲掌握を起動し、指を動かしている男・・・背後に立っている二人の男のステータスを確認する。
デジン:『傀儡士』(LV6)
称号
卑劣者
魔力糸線
糸使い
傀儡
HP:231
MP:219 + ??
STR:123
VIT:167
AGL:129
MGI:99
LUC:3
LV上限:25
スキル:傀儡
エクストラスキル:なし
魔法:魔力糸線、ファイア
-------------------------------------------------・・・
バンドー:『拳闘士』(LV15)
称号
卑劣者
剛腕一倒
チャクリスト
HP:511
MP:109
STR:369 + 70
VIT:354
AGL:531 + 70
MGI:101
LUC:5
LV上限:25
スキル:強撃、速闊歩
エクストラスキル:なし
魔法:魔力通し
うわぁ、成る程ね。
つまりはさっきから見てる超反応だったり、異常な耐久はこいつらが原因だったってことか。恐らくスキル名から見てみれば、細身のデジンというものが竜人大男を操っていてルキナさんの攻撃を有効だから防いでいるわけだ。で、もう一方の方は、恐らく『魔力通し』で魔力の受け渡しを行っているに違いない。
あいつらやっぱり組んでやがったわけか・・・ルキナさんも薄々感づいている様だけど、黙々と戦闘を行っている。
まぁ、そんな卑怯な手を使われても尚余裕があるんだからそれもそうか。
「ファー、ムー、ノー・・・やっておしまい」
『あいあいさー!』
『・・・ん』
『やろうかぁ』
いたずら大好き三精霊が傀儡士と拳闘士の魔族の元へとすっ飛んでいく。
ファーは顎に手をやり何かを考え、やがて何かを思いついたのか三人にニヤニヤしながらいたずら内容を述べている・・・一体何をしようというのかはわからないが、すっごくおもしろそうな顔をしている。
ファーは男の指から出た魔力糸線をを辿り、その糸をぐるぐると回りながら己の魔力を振り撒いて行く。ムーは風の魔力を身に宿し、薄く糸に這わす様にして徐々に徐々にその魔力を注いでいく。ノーは魔力を溜めながら、男の足に触れている・・・。
「フン!!!」
「・・・ッ!?」
頬を木剣が掠め、赤い血が空中へ舞う・・・無論ルキナさんがそれで終わるはずもなく、カウンターとして一撃を繰り出すがやはり、それは当たる事はなく、後方へ飛ぶようにして引き下がった・・・その刹那。
『いまだ!!』
悪戯三精霊の魔力が一気に爆発した。
「う、うわ!?!?」
「な、なんだなんだ!!」
「お、お前何やって!?」
指から伸びた魔力糸線が一気に燃え上がり、竜人大男の手足に接続された魔力糸線が露わになる。糸を操っていた男は焦って魔力をかき消そうとするが・・・
『そうはさせなーい』
ノーが練りに練った魔力を一気に傀儡士の男へと譲渡する・・・突如として流れ込んだ魔力の奔流に男が制御する事などできる筈もなく、指と竜人大男に繋がった魔力糸線は消えることなく、メラメラと燃え上がったままのそれは大縄跳びの様に空中を踊る。
『・・・燃えて』
すると、糸を風が覆い尽くすと風と火とが混ざり合い、火炎嵐となって大空に舞い上がる。
で、そんなことをすれば糸がめちゃくちゃになるわけで、竜人大男の体は大空に舞い上がった。
「な、な!?」
「卑怯な手を使っていたのは知っていたけど・・・本当に救いようがないわね」
大空でもがくだけの隙だらけな敵にルキナさんが見逃す筈もなくルキナさんはすかさず地面を蹴り、空中へ身を躍らせ、そのまま空中を浮遊する竜人大男の胸ぐらを掴む。顔面から表情が消え去り、片手が輝き・・・あれ?
「貴方達も使っていたのなら、私が使っても構わないわよね? 『魔化』・・・」
胸ぐらを掴んだ手を下に振り下ろし、竜人大男を地面へと振り落とす。
ドゴン!!!!!
という炸裂音と共に竜人大男は地面へとめり込んだ・・・うん、こんなに綺麗な犬神家大地verを観れるとは思わなかったよ。
そしてクルクルと回りながら着地したルキナさんは木剣を携え、犬神家になる男に歩み寄り・・・あ、待って、まさか。
木刀を振り上げ、思いっきり振り下ろした。
どこに? それを男である俺の口から言うにはあまりに残酷であり凄惨であり、致命的だからここでは伏せておこう。
致命傷、クリティカルヒット。
こうして、決闘は呆気なく終わりを迎えた。
無論・・・野次馬として来ていた観衆達は全員一部を抑えていたことは言うまでもない。
ハーピーの観察日記
1:アドルフと名乗る冒険者、里を見学。
2:アドルフに警戒を抱いていた者が、次々懐柔されている模様。
3:ヴァンという者が来訪・・・最近多いとシロタエ様が嘆いておられる。
宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!
遠慮なくこの物語を評価して下さい!!
何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。
(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)
感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!