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人魔:魔王の息女様でした!

沢山のブックマーク、評価ありがとうございます!!


聖戦士との交戦は終わった・・・けれど、まだまだ騒動の予感。


次話投稿は一週間以内です!

 さて・・・何と言うか、いつも何か起こる度に思っていることなんだけど、どうしてこうなってしまったんだろうか?


 どんよりとした陽射しが窓から顔を覗かせ、よくよく見てみれば、窓の下では魔族やら人間やらが入り乱れるようにして走り回っている。そのどれもが、服の胸元にギルドの印章を付けており、全員疲労困憊といった様子だ。


 ・・・うん。

 理由は大体見当が付くし、その全ての元凶がこの広い部屋に集結していると言って過言ではない。

 物々しい雰囲気を漂わせる一室に、メイドもどうしていいかわからないようで、椅子に腰かける領主の側で立ち尽くしている。


「えっとだね。結果的に言えば被害もなく、スラムの厄介者を排斥できたからよかったんだけどね。長い間計画を練って苦労したのに、なんだか・・・その、複雑だね」


 そう。事は俺達が捕らわれていたアジトから脱出した後の数十分で起きたのだ。




 ルキナさんが探していた少女を成り行きで救った後、俺とルキナさん・・・そして、魔王の息女様でアジトを早々と脱出し、ギルドに駆け込んだわけだ。

 俺達はギルド長の下まで事情を説明しに行き、計画を早めざるを得なかった事を伝えた。


 ・・・まぁ、先に帰ってる筈のルリ達が伝えているだろうと思ったんだけど。

 どうやら、初耳であったらしく対処の準備ができていなかった。


 それじゃあ、ルリ達はいったい何処にいったんだ?

 そとに出て見渡してみても、帰ってきている筈のルリの姿がない・・・それどころか、人質の姿さえもなかった。


 と、不意にスラムの方角を見てみると、なにやら煙やら炎やらが立ち昇っているではございませんか。


 いやぁな予感がしてみれば、ギルドの扉を突き破らん勢いで街の自警団街の自警団が飛び込んできた。

 曰く、魔族達がスラム街で暴れ散らしている・・・曰く、薙刀を振るう女が魔族を先導して、拠点を潰しに掛かっている。


 ・・・うん。

 嫌な予感はやがて確信に変わったわけだ。

 だが、その程度で終わるわけがないのがユルバーレクオリティーだ。


 次にもたらされた情報は更に、俺を追い込んだのだ。


 スラム街のあちこちで爆発が起こり、その爆発の中心部から出てきた魔族達が規則だった動きで要所要所を潰しに回っている。その通った後にはボコボコにされて気絶した人間やら魔族やらが点々と転がっているという。


 そのどれもに先導している者達がいるとのことで・・・その情報が『身長2mを優に超えた女魔族が、人と魔族、建物を次々に破壊して回っている』、『面妖な剣を持って、大量の屍を築き上げている男』、『大きな狼の背中に乗った赤い髪の女が大量の魔族を引き連れている』だ。


 ・・・恐ろしいまでに、何かに酷似しているんだけど。

 いや、そんな、まさか、と現実逃避をしてみたけど現実は無情なものだ。


 程なくして、暴れまわっているのが俺の配下であるということが判明した。それも、なんというか収拾がつかないくらいのしっちゃかめっちゃか具合で、その一報はもたらされてしまった。


 うん。

 ルリ率いる捕らわれ魔族部隊は各地のアジトを強襲し、捕らわれた魔族を吸収しながら全面交戦に発展している。そして、ルリの強襲をきっかけに、コクヨウ・ヨウキペアがアジト内部での暴走を開始した。

 ナーヴィ・ソウカイ・サテラは救出した魔族達をギルドへと搬送する最中・・・コクヨウ・ヨウキペアの暴走によって暴徒化したスラム街の住人達を鎮静化、そしてケガ人の救出を行い、暴走したコクヨウ・ヨウキを追っているとのこと。


 ルリは残った二つの内の一つを完全に制圧・・・もう一つはコクヨウ・ヨウキペアによって強襲され、逃げ出した者達がナーヴィ・ソウカイ・サテラペアによって鎮圧されている。


 ギルドはそれを聞いた瞬間に、ギルド職員全てに緊急出動を要請してスラム街へと冒険者を引き連れて派遣・・・死屍累々となっているスラム街の事態の収拾に向かった。

 ナーヴィ・ソウカイ・サテラペアと共同作戦を取り、救助を行ったわけだ・・・。


 そして、俺は顔面蒼白になりながら、外へと飛び出してコクヨウ・ヨウキペアを即座に発見して、ディーレさんの魔力練りスペシャル拳骨をお見舞いして、連れ帰ったわけだ。

 ルリは俺がコクヨウとヨウキを回収したのを発見すると、残った一つのアジトを殆ど壊滅に追いやった後、見事な指揮を取って転進を開始・・・ギルドへと退却していった。




 そして今に至るわけだ。

 事態の収拾はまだつかず・・・ギルドの職員・冒険者総出で事に当たっている。主要人物の取り押さえは順調に終了し、ボロボロになったスラム街の掃除や、ケガ人の搬送、捕らわれていた魔族のケア等、様々な事が並行して進められている。


 大きなたんこぶを作って、未だに意識を取り戻さないコクヨウとヨウキは床にほっぽり出して、俺は配下と仲間全員でカナード様に頭を下げているわけだ。

 サテラが非常に申し訳なさそうに眉間にシワを寄せながら、必死に頭を下げている・・・こりゃ帰ったら大目玉くらうな。


「カナード様今回の件は、彼らは素晴らしい働きをしたと思います。方法はどうであれ、彼らは『魔王』のご息女『メフィルトネ・メリナ』様を救ってくださった。結果だけを見てみれば、我々にとっては最良であったのも間違いはありません」

「まぁ、そうだね。ギルド長が言った通り、君達のおかげで目的が達成できたんだね。それを考えればこれも些細なことだね」


 あぁ、それとやっぱりカナード様に感じていた胡散臭さは、当たっていた。

 カナード様が緊急依頼として出したこの案件・・・実はこの魔王の息女『メフィルトネ・メリナ』様が大きく絡んでいた。


 簡単に言ってしまえば、カナード様は魔王の息女様が捕らわれた事を知っていたのだ。だけど、何処の馬の骨ともしれず、信頼できない冒険者・・・それも魔族の俺達に『魔王の息女が捕らわれたから助けろ』なんて言えるはずもない。

 どこからかその情報が漏れてしまえば、唯殺されるだけでも大問題であるのに、いいように利用されてしまえば、再び魔族と人間との戦争を起こしてしまいかねない事態だったのだ。


 だから、何も知らずに同じ魔族の人質として救出し、秘密裏に匿おうとしていたのだけど・・・見事に失敗して今に至るってわけだ。


「・・・不服ではあるが、私の力だけではどうもできなかった。この魔族のお陰で、メリナ様と私も助かることができたんだ」


 ルキナ様は魔王の息女・・・メリナ様の護衛であり、この街に到着しカナード様と対談する予定であったらしい・・・しかし、所用を済ませる為に少し目を離した隙に、他の護衛は殺されメリナ様は連れ去られたとの事だ。

 ・・・護衛を殺し、メリナ様を連れ去ったのは運の悪い事に聖戦士だったらしい。


「ああは言ったけど、今回の事は感謝こそすれ謝られることはないね。結果は全て良好・・・魔王の息女様もこの通り無事に救出できたね。城塞都市の領主として礼を言うね」

「ギルドからも礼を言わせて貰いましょう」


 そしてカナード様はゆっくりと頭を下げ、感謝の意を示す。計画を滅茶苦茶にして謝りたいのはこっちなんだけど・・・まぁ、全て作戦通りに行ったからいいか。

 あの後聖戦士の行方は分からず、今も街の中をギルド職員と冒険者・自警団の全てが巡回しているが、見つかっていない。


 カナード様はゆっくりと顔を上げる・・・と、なんだか困ったような顔をして此方を見ている。


「あぁ、それともう一つ君達に頼みたいことがあるんだね。実はね、彼女と私が話し合った内容なんだけどね。この街から彼女の・・・魔王領への移民を募っていたんだよね。それに、君たちを推薦しようと思っているのだけど・・・どうだね?」


 えっと、つまり魔族の国に行けるってことか。


 この城塞都市では、人族の住まう国からやってきた魔族を魔族領へ体験移住させているらしい・・・人間の考えを良く知った者を魔族領へ招き入れる事で、人間に関しての知識を理解して貰おうと言う意図があるらしい。

 ゆくゆくは人間も魔族領へ移住させる計画もあるらしいが、さすがに魔族領ではまだ人間に対する理解が及んでおらず、未だに敵視している者も多く難しいそうだ。


 その体験移住にはかなり厳しい審査と人間に対しての不信感を極力持っていない魔族が選出されるらしいが、今回に当たっては特別に俺たちが選出された。


 理由は言わずもがな、体験移住先の魔王の娘・・・『メフィルトネ・メリナ』様を助けたからである。本来であればそれだけでは移住できないが、今回の一件で『人の命を奪っていない』という観点からも評価されたらしい。


 今回の一件でケガ人は多数出たが、奇跡的に死者は一人も出ていない。コクヨウ・ヨウキペアも暴走はしていたが、しっかり俺の言いつけは守っていたようだ。ルリも捕らわれた魔族を見事に指揮し、死傷者を一人も出していなかった・・・まぁ、士気を高める為の口上が『死ぬよりも地獄の苦しみを、我々を閉じ込めた冷たい牢の中で味あわせてやれ!!』だったんだけどな。


 それはさておき、『魔族』の住む土地に行けるのだ。


 今までは『人』が統べる国を回っていたがとうとう魔族・・・『魔王』の統べる国に行けるのだ。

 しかし、一つだけ問題がある。俺やルリ達は魔族で、ミリエラはエルフだからセーフかもしれないけど、サテラとアンネは人間だ・・・大丈夫なんだろうか?


「えっと、サテラとアンネは大丈夫なんですか?」

「・・・問題ないとは言い難いね。しかし、アンネさんは君達と接している様子から見て、試してみる余地があると思ったね。そして、サテラさんは・・・『魔人』ではないかね?」

「なぜそれを!」


 サテラが伏せていた顔を上げて、カナード様へ叫んだ。

 しかし、いきなり大きな声を上げて、礼節を欠いてしまったと謝罪を述べ、カナード様へと向き直り、言葉を待つ。


「・・・それに関しては、ルキナさんに聞いたほうがいいかもしれないね。彼女らの国には『魔人』が多くいるんだよ。ルキナさん自信も魔人だしね。無論、人よりも魔族に傾いてるけれどね。君のような例は見た事がないし・・・その様子だと自分がなぜ魔人になったのかもわかっていないんじゃないかね? 一度体験移住して見るのもいいかもしれないと思うんだがね」


 うわぁ、やっぱり胡散臭いなカナード様。今回の一件から警戒心を高めて、カナード様の申し出を全て断ろうとしていたサテラを簡単に丸め込んでしまった。

 カナード様も今回一番の障害になるのはサテラだろうと狙いをつけていたようだ・・・先の一件から、俺は問題なくいなせるだろうと考え、一番冷静であり知識のあるサテラから抑えて仕舞えばちょろいと考えたのだr・・・つまり、俺は単純って思われたわけか。


 と言っても、事実であるから仕方ない。

 初めて魔族領へ行けるチャンスがあると知って、何も考えずにウキウキしてしまったしなぁ。

 まぁ、でもカナード様の笑顔の裏にはまだ何か隠されていると、俺の直感が告げている。


「そこからは私が説明させてもらいます」


 カナード様の隣に座っていたメリナ様が、俺達へ微笑みかけ告げる。


「皆様改めまして挨拶を。五柱の魔王が一人『メフィルトネ』が長女、『メフィルトネ・メリナ』と申します。この度は私の命をお救いいただき感謝致します。つきましては、あなた方をメフィルトネ領へと招待したく思います」


 まだ小さいと言うのに、礼節に沿った動きで優雅に告げる。小さな体躯、相応の顔立ちからは思いもしないほどに高い意思を感じる瞳を俺達に向ける。


 ・・・年端もいかない少女にそんな顔をされてしまえば、さすがのサテラも断れない。

 それに、魔人については俺もさっぱりわからないし、一番知りたがっているのはサテラだ。


 それに、魔族の国と人の国・・・共存を目指すに当たって、両者の国をより良く知っておく必要がある。


 俺達は魔族の国・・、メフィルトネ領へ行くことに決めた。



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 side ???


 荒れ果てた大地・・・砂埃さえ舞うことはなく、岩肌とボロボロになった大地とが支配する世界。

 恐らくそこは緑で生い茂っていたのだろう・・・巨大な炭と化し、ボロボロになった一本の樹が寂しく立ちすくんでいる。


「懐かしいなぁ」


 樹に触れた瞬間、その部分だけが崩れ落ち、バラバラになって空へ霧散する。

 荒れ果てた大地に一陣の風が吹く度に、巨大な樹であったものが小さくなっていく。


 巨大な炭の欠片が大地に落ち、空虚な破砕音が嫌に耳に心地よく聴こえる。


 カラカラと嗤い声が響き渡り、赤い紅い緋い空に、一滴の水が垂れ落ちる。


 泣き嗤いはその後、永遠に続いたのだ。

ハーピーの観察日記


1:ハルウ様方、人間の街へ来訪。

2:エルフ族が人間の街への観光を検討。

3:第一回『ケイバ』開始。


宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!

遠慮なくこの物語を評価して下さい!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!

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[気になる点] 132話人魔共存編 人魔:魔王の息女様でした! で ヨウキ達は組織のところで暴れ回っているのですが、 ソウカイはどうしたのでしょうか? アンネ、イア、メア達と一緒に居たのでしょうか?…
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