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人魔:囮潜入でした!

多くのブックマークありがとうございます!


潜入捜査開始・・・!


次話投稿は一週間以内です!

 薄暗いジメジメとした狭い空間に、鈍色に光る鉄格子が俺とルリを取り囲む。

 爪で鉄格子を弾いてみれば、あまり手入れがされていないのだろう錆の欠ける音と共に、鈍い音が辺りに反響する。


 ルリもパッチりと目を開き、先程男に担がれていた部分をパッパと払い、それでも不快な顔をして溜め息を吐いている。


 良く我慢したなと、頭を撫でてやると擽ったそうに、それでも幸せそうな顔をするもんだからやめられない。


 まぁそれはさておき、敵の中枢へ侵入できたわけだが、案外呆気なかった・・・と言うか、あの人ノリノリだったな。


 何故俺とルリが鉄格子の中に捕らわれ、敵の最中へ侵入に成功?できたのかは、簡単なことだ。

 一言で言えば、囮捜査だ。


 ウェルシュバイン家の長女であるアンネさんの協力を得て、俺とルリは奴隷に扮し、奴隷商人に扮したブラックアンネさんが俺達を組織に売り捌く・・・そして、潜入成功ってことだ。

 そして、今頃はヨウキとコクヨウ、サテラとナーヴィも敵地に潜り込んでいる頃だろう。


 アンネさんのノリノリ具合と来たら、本当に一度奴隷商人をやったことがあるんじゃないかと思わせる程に、芝居が上手だった。

 商売の話をしている最中のアンネさんの顔は、いつもの快活な少女と違い、腐ったゾンビの如くギョロギョロとした目付きになる・・・本人曰く、今回の敵との取引はそうなる一歩手前の顔で行うと言うことだったが、想像以上に仕上がっていた。


 初めにこれを提案した時はカナード様に即座に却下された。


 カナード様は、「商人に扮するのは危険行為であり、下手を打てば即座にばれる。本物の商人を雇おうにも巨大な組織相手に堂々とできる者はそういない」と言っていた。


 例え商人に扮したとしても、多くの同業者が犇めく世界を渡り歩いた商人に扮するのは正直難しい。それに、闇取引を数々行ってきた商人ともなれば、扮したところで速攻暴かれるのが落ちだろう・・・つまり、商人としての風格や度量、駆け引き等の能力を上位レベルで持っていなければ不可能だ。


 ・・・てことはだ。


 産まれた時から数多の商人達との戦いを繰り広げ、相手を出し抜き、追い落とし・・・挙げ句の果てには商人貴族にまで成り上がり、敵を貴族と商人に増やしても尚、生き残っている存在・・・そんな、戦争の最中でも、嗤いながら胸を張れる人がうちにいるじゃないか。


 アンネさんだよなぁ。

 あの組織とのやり取りをみていたけど、完璧だったもんな。


 アンネさんを領主様の館に呼び出し、事情を話すと、瞳を金貨に変えて商談を始めたんだからこれはもう一種の病気だ。


 その依頼をこなす代わりに、ここで商売させろ!

 それどころか、できることなら魔族の領土での商売できるようにしろって、声高らかに叫んでたもんなぁ。

 さすがのカナード様もアンネさんの勢いに押されていたけど、冷静に商談を成立させていた。


 んで、奴隷商人に扮して、俺達を売り捌いた訳なんだけど・・・ちゃっかりお金も回収していたりする。

 白金貨三枚に大金貨八枚・・・この世界ではかなりの大金である。


 お金を手にした時のアンネさんの至福の顔が今でも忘れられそうにない。

 人は欲にまみれてしまえば、鬼も凍り付く様な笑みを讃えることができるのだろう。


 とまぁ、そんな事があって今現在敵のアジトに潜り込んでいるわけだ。


 だが、捕らえられているのにどうやって外部と連携を取るのか。中に潜入できたはいいが、外部との通信手段がなければ、もともこもない・・・その辺りもしっかりと考えてはいるけどね。


 ギルドでは遠方に離れた他のギルドとの連携をとる為に、『転送印』と呼ばれる高位の魔方陣が書かれた紙が存在する。

 それに微量の魔力を通せば、(あらかじ)め設定していた場所に、瞬時に紙を転送できるというものだ。


 勿論、今までアジトに潜入した人達は全員それを持っていた・・・しかし、その紙を送ってくることなく、恐らく息絶えている。


 今自分は奴隷装束であり、所持品なんて無論ない。持っていたところで没収されるのが目に見えている・・・それどころか、転送印の施された紙なんて持っていようものなら、殺されてしまうだろう。


 まぁ、それも俺がスライムなお陰で万事解決しているんだけどね。


 片手をドロリと溶かして、その先から転送印が記された紙を取り出す。


「専有スキル:格納」


 これがあれば、自分の体内に物を隠しておくことができる。元々『アイテムボックス』っていうスキルだったんだけど、それの上位互換のスキルだと思ってもらえれば良い。


 この専有スキル格納は、『何でも収納する』事が可能だ。それがアイテムであれ、生物であれ、『そこに存在しているのなら何でも収納する』事ができる。


 と言うのも、帝都での一件で、あの没落貴族が最後の悪足掻きに使ったスクロールでの魔法『アースジオクエイク』の魔法。

 あれは簡単に言えば、火と土の混合魔法である・・・土をある程度柔らかくし、火の爆発で地面を割れ砕く。


 それを止める為に、俺はこの格納を使った・・・というよりかは『格納の中にいる子達』に頼ったわけだ。

 あの魔法を打ち消すには水属性のディーレさんでは不可能だ・・・あ、不可能っていっても、天井を水圧でぶち抜いて物理的に回避する方法もあったんだけどね。


『遅イ』

『・・・』

『眠イ』


 ヒラヒラと小さな光が空中へ舞い、小さな精霊が姿を現す。ディーレさんの様に、最上位精霊ではなく、制約も契約も行っていない。


「着いて来たいって言ったのは貴方達じゃない。文句言わないの」

『『『はーい』』』


 明るくハキハキした女の子の火の中位精霊『ファー』、無口な男の子の風の中位精霊『ムー』、眠そうな目でのほほんとしている男の子の土の中位精霊『ノー』の仲良し精霊トリオだ。


 里に戻った時に、三人に契約を交わしてもいいから外に連れてって欲しいと言われ、契約を交わそうとしたらディーレさんに無言の圧力をいただいたので、格納で中に入ってて貰ったのだ。


 帝都観光の時にもちょくちょく外に出してあげていて、チェルスレイクの水の精霊とも友達になっているらしい。


 それで、没落貴族の魔法を止めれるよって、出てきちゃったから頼んだわけだ。


 土の精霊のノーが崩落しそうになった土や岩をしっかりと固め、火の精霊のファーが爆発の魔力を霧散させ、風の精霊のムーは万が一の為に風の結界を作ってくれていた。

 ディーレさんは三人を見守る母おy・・・


『ユガ・・・わかってるわよね?』


 お、お姉さんとしてにこやかに魔力を仲介しながら見守っていた。


 んで、今回は彼等にも一仕事頼んでしまおう。


「俺の幻覚を作ってそこで寝転がっていて欲しい」

『えぇ、もッとバーンとかドーンはナイのォ』

『ビューン・・・ナイ?』

『ユラユラーって揺らセルよォ』


 なんだろう・・・俺の配下達は皆なんでこんなにも脳筋なんだろうか。


「貴方が無茶苦茶な力で色々としてるからじゃない?」

「全部俺のせいか」

「主君、見張りの者がやって参ります」


 ルリの言葉に周囲掌握を再度起動して、辺りの様子を確認する。すると、この牢屋に一直線に進んでくる二人の姿が伺える。

 外でヒラヒラと飛んでいる精霊達を念の為に仕舞って、またヒンヤリとした地面に突っ伏す。


 ルリも目を伏せ、見張りの者達にばれないように気を失っているふりをする。


「でよぉ、その時のあいつらの間抜け面が今でも忘れらんねぇんだよな。速攻首を跳ねてやったがな!」

「それで羽振りがよかったのか・・・あぁ、それに乗っかりゃよかったなぁ」


 見張りの者達が檻の前まで近づき、檻をガンと蹴り上げる。ガシャンと音を立てて軋む檻に、薄眼を開けて二人の男の姿を確認する・・・うん、いかにもガラの悪そうなチンピラだ。


「いつになったら目を覚ましやがるんだ。あの奴隷商病気持ちを売りつけやがったんじゃねぇだろうな」

「あの商人は信用できるっておやっさんが言ってんだ。大丈夫だろう・・・まぁいつまで寝てやがんだってのには賛成だ」

「女はいいが、こんなひょろっひょろのガキはさっさと好き者の娼館にでも売っぱらえばいいもんをよ」


 ギリッと背後から歯軋りの音が響く、どうやらルリは俺がヒョロヒョロと言われたことが気に入らないらしい。口の端から尖った牙を出し、今にも唸り声を上げそうな顔をしているが・・・お願いだから今は落ち着いてくれ。


 男達は悪態をつきながら俺たちを捕らえている牢屋の前で立ち話を始める・・・さて、何か重要な話でもしてるかな?


「にしても最近俺たちの扱いがひどいぜ・・・前は全く仕事なんてなかったのによ」

「まったくだ。よくわからんが、魔族の連中を攫う依頼が増えている気がするが・・・まぁ、俺達は言われたことをしていればいいのさ」


 うーん、とりあえずこいつらは下っ端ってところかな。このままこいつらの話を聞いていても埒が開かない・・・もっと情報を集めないといけないし、ここは一つ。


「ファー、ムー、俺の幻覚を作り出せる?」

『できる!』

『・・・ん』


 ファーとムーが魔力を練り始める。

 一瞬胸元が光った瞬間に、俺の体は水のようにパシャンと溶け、そこには先ほどと変わらない姿で俺が床に突っ伏す姿が映し出されている。


 ファーとムーが作り出した複合幻覚魔法だ。

 俺は地面に溶け、牢屋をすり抜けて男達の足下をするりと抜けていく。あの幻覚は俺の魔力が続く限り東映可能だ。


 ルリの方へと目をやり、コクリと頷いたのを確認した後は、牢屋を後にして建物の中をすり抜けていく。


「・・・さて、どうしようか」


 周囲掌握を起動しアジトの中を調べ上げる・・・俺とルリをここまで運んできた男の姿はこの建物中にはいない。

 一度牢屋に戻って出直そうか・・・そう思った時に周囲掌握でわかったこの建物ん部屋の中に一人気になる男の姿を発見する。


「ステータス・・・職業クラス:『聖戦士』ってこれ、聖都にいる『聖騎士』っていうのと似てないか?」


 その部屋にはその男以外誰もいないが、部屋の作りはこことは変わらないが、その部屋に並ある物品などはおおよそここと釣り合っているようには思えない。

『聖水』『護符』・・・ビンゴだな。恐らく聖都と繋がっている組織はここで間違いないはずだ。


 その部屋へと歩みを進めると、その部屋へと続く道に薄い結界が貼られていることに気付く。『モーションバリア』・・・この結界に脚を踏み入れると、発動している本人に何者かが侵入したっていう報告が入るのか。


「ディーレさんどうにかできる?」

「余裕ね」


 ディーレさんの魔法で俺に対する魔法の認識を阻害する。


 そして・・・部屋に入ると、そこには一人の男が座っていた。



 -------------------------------------------------・・・



 side ???


 狭く薄暗い室内、湿気とカビの臭いが充満する最悪極まる環境の中に、この私が立たされているというのはなんとも許し難い。

 何故私の様な高貴な者がこんな地蟲共が蠢く闇夜に身を投じなければならないのかはなはだ疑問だ。


『神の名の下に魔族共を断罪せよ、我ら人族に神の陽が照らさん事を』・・・そんな教義に固められたくだらない国家に名を連ねなければならないとは、本当に不服としか言いようがない。

 目に見えない神を信仰し、願いを乞うなど人間として恥ずかしい真似をどうしてする事ができようか・・・。


 こんなことを言葉に出そうものなら不敬・・・異教徒として直ぐ様処刑されるであろうが、思うだけならばどうにもならない。

 本心は心の中にしまい、心で嘲笑っていればいいのだ。


 そして、上っ面の信仰を続け、このまま敷かれたレールを渡って行けば、私も晴れて聖騎士となり出世ができるというものだ。


 こんな下らない事に首を突っ込み、己自らが手を下すなんてことをしなくて良くなるのだ。

 後は、面倒臭いミサに参加し、聖都の中枢で背筋を伸ばすだけで悠々自適な生活を過ごせるというものだ・・・目に見えず、何も施さない神を敬うだけでこれなのだから、聖戦士というのは楽でいい。


「・・・ん?」


 一つ頭の中でチリンッという音がなる・・・誰かが私の元までくる。モーションバリアに引っ掛かった者が誰かはわからない。

 しかし、胸元に忍ばせたナイフに手を伸ばし、ドアの先をジッと見据える。


 ドアが小さく開く。その先に現れたのは・・・


「・・・お前か」

「ヒヒッ手筈通り準備は整えておきましたよ。後は・・・そして、護衛の方も此方で用意させていただきました」

「神はお前のような敬虔な信徒を決して見放さないだろう。そんな貴殿らには、我ら聖都の庇護と布施が送られるだろう」


 ふん。この地蟲は俺のことを頭の空っぽな信者だと思っているのだろうが、私はそこいらのバカな信者達とは違う。

 神の傀儡人形なんかとは違うのだ。こいつらを利用するだけ利用し、後は壊れた玩具と同様にゴミ箱に捨て去ればいい話だ。


 聖都がたとえ人間であれ、こんな薄汚い者共を庇護下におくわけがない。しかし、商売の贔屓と後ろ盾をやる・・・そして地蟲らにはリスクが少ないなどと話してやれば極上の餌が目の前に吊るされているのと一緒だ。


 さて・・・では食いついてきたこいつ等をどう利用するかなんてことは簡単だ。

 魔族と人間の間に諍いの種をばら撒き続ければいいだけだ。この都市は魔族と人間が住まう場所としてとても不安定な状況にある・・・表向きは人間と魔族との和平の証としてあるこの都市だが、その地盤は未だに緩い。

 ここが何らかの理由で諍いという油に火種が注がれればもう止まらない・・・和平の証であるこの都市が新たな戦争の火種となるのだ。


 しかし、戦争なんかになって仕舞えば面倒臭いのは俺たちの方だ。

 だからこそ、私は諍いをばら撒く・・・長い時間をかけて漸く十分な下地が出来上がりつつある。そして後は、少数の魔族が人を襲う様にしむければいい。

 そうすれば戦争にはならず、人間と魔族の間には深い溝が生まれる筈だ・・・そうすれば、私はこんな街から離れることができる。


 魔族は私欲の為に動き、感情的な動きをすることが多い。そして、この街には同族意識の様な物が湧き始めている・・・魔族が群れたところで気持ち悪いだけだが、それを利用する。

 どこぞの人間の住まう場所の近くで同族の惨殺死体でも放り投げておけば、感情に任せて動く連中が出てくるはずだ。


 そして、それに人間がやり返せばお膳立ては終了だ。

 聖都は『人間が魔族に脅かされている。魔族に不当な暴力を振るわれた人間を護らなければならない』と言い掛かりを付ければ、聖都がこの都市に介入する事も可能になるはずだ。


 ・・・いよいよ最終段階だ。

 捕らえたガキの魔族達を惨殺して、どこぞにでも吊るせば終了だ。


「では、神の名の下に汚されし魂を浄化しなさい」

「ヒヒッ、では直ぐにでも殺してしまいましょう」

ハーピー観察日記

1:赤ちゃんの泣き声に全員が臨戦態勢に移行。

2:赤ちゃんを守り隊を結成。

3:シロタエ様が移住者を連れてこられました。


宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!

遠慮なくこの物語を評価して下さい!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!

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