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人魔:ダンジョンからの脱出・・・でした!

多くのブックマーク、評価ありがとうございます!


ダンジョン脱出?

そして・・・


次話投稿は一週間以内です!

 キョロキョロと辺りを見回し、変わり映えの無い岩壁に辟易する。今の楽しみと言えば、ユラユラと揺れるナーヴィの尻尾をジィッと見ておくことくらいなもんだ。


 せっかく皆で来たのに離ればなれになってしまい、ミリエラもサテラも、ルリもヨウキもいない・・・花がないのが非常に辛いが、我慢するしかない。


「私がいる」

「私もいる」


 そんな思いを気取られたのか、イアとメアはヨジヨジと俺の身体をよじ登り、両側からほっぺたを引っ張られた・・・いふぁい。


 サテラとミリエラ、ルリとヨウキ、ソウカイとコクヨウとフゲン、俺とナーヴィ&イア・メアのチームに分かれて行動している。


 本来であれば分かれて行動するのは非常に危険だ。戦力が分散することで魔物との戦いが苦しくなり、俺とナーヴィ、イアとメアが脱出できたとしてもサテラやルリ、ソウカイ達がダンジョンで迷うかもしれないからだ。


 しかし、油断は禁物とはいえ、俺達の力量であれば充分に切り抜けることもできるし、万が一の事があれば逃げることもできる。


 そして、ソウカイ曰く、どこの通路であって微かな風の流れがあるらしく、最終的には全部繋がっている筈・・・との事だった。


 で、俺とナーヴィは何事もなく順調に進み・・・あぁ、そう言えば、途中に大きな扉があってそこを進んだら、八岐大蛇(やまたのおろち)の劣化版の様な魔物が出てきたな。

 三つの頭を持った蛇の魔物で、俺が一瞬で倒してしまったから、全く問題はなかったけど。


 それからも階層ボス?が数回出てきたが、全部ナーヴィに任せて何れも瞬殺だったな。


 と言うのも、イアとメアが怖がってしまうので、容赦なく速やかにやっつけなさいとナーヴィに命令を出したからなんだろうけど。


 で、階層を何事もなく進んで行き、また大きな扉が目の前に現れる。階層ボスの時は例外なく大きな扉が現れる様になっていて、この扉も例外なくそれだろう。


 かなり下へと進んできた筈だけど、一向にテレポーターが見つかる気配はないし、もうそろそろだと思うんだけどなぁ。


「さて、この扉でいったい何回目なんだ?」

『たぶん、10回目ね』


 肩に乗って妖精化しているディーレは正確に数えていたようだ。それにしても長いな・・・あぁ、でも帝都にあるダンジョンは三百階以上あるって言われてるから、まだましな方なんだろう。


 それにしても五十階層までの道のりは長い。


「恐いの来る?」

「メア逃げる」


 すたこらさっさと扉の反対方向へ駆け始めたメアを襟を掴んで捕まえ、ギュッとナーヴィの右足を掴んだまま離さないイアは怯えている。

 あ、勿論相も変わらず無表情です。


 重厚な扉に手を掛け、ゆっくりと開けていく。ゴウンッという音と共に扉を開け切ると・・・中には何もいない。


 大広間にはただの殺風景な岩壁が広がり、そこに設えられているのは、俺達が入って来た入り口と、ボスを倒したときに開く出口のみだ。


 周囲掌握を起動し、辺りをくまなくチェックするが、一切の反応がない。

 念を入れてキョロキョロと辺りを見回してもみるがやはり何もいない。


 まぁ、待て待て。

 こう言うのは急に魔方陣が起動して、巨大な魔物が咆哮と共に現れるのが鉄板な筈だ。

 それも十回目の扉ってことは、ベヒーモスと地龍を合わせたような化け物が出てくるだろう。




 と思って、五分待ってみたが、全く変化がない。


 魔方陣が出現しなけりゃ、魔物も一切出てこない・・・もしかして、ここの魔物をサテラやコクヨウ達が先に倒してしまって、その直後に俺が入ったのかもしれない。


 それなら、ボスが出ないのも納得できる気がする。


 おかしいな。周囲掌握を起動してるぶん、俺の方が早いと思ったんだけどなぁ。

 あぁ、でもサテラはダンジョンとかに詳しいし、コクヨウ達はあの森の中でずっと暮らしてきたんだ・・・野生の勘か何かで道がわかったとかそんなんじゃないかな?


「何もいないみたいだ」

『そうみたいね』


 ナーヴィは待ち疲れたのかクアッと大きな欠伸まで出す始末・・・このまま進むとするか。


 大広間の先へ進み、これまた重厚な扉を押し開く・・・と。


「「あれ、何?」」


 イアとメアが不思議そうに首を傾げる。

 ナーヴィは鼻をスンスンとひくつかせ匂いを嗅いでいる様だが・・・何も感じなかったらしい。


 しかし、そこは小さな部屋であり、扉から出てすぐ横には小さな魔方陣が描かれ、その中央には金色の小さな球体が浮かんでいる。


 小さな部屋に魔物が流れ込んでくるとかもなく、周囲掌握には罠の類いは一切無いようだ。


 そして、周囲掌握には・・・


「これがテレポーターか・・・何かちっちゃいな」


 周囲掌握には小さな字でテレポーターと書いてあり、そこへ行くと、掌サイズの魔方陣が置かれ、微かな魔力を感じ取る事ができた。恐らくこれに魔力を流し込めば、テレポーターの魔法が発動されるのだろう。


 さて、ここで一つ問題がある。


 小部屋の中央に浮かぶこの球体を周囲掌握で調べてみたが・・・。


『#@"'っm…・/)』


 訳のわからない文字の羅列で、文字化けしている。

 金色の球体は空中で微かに振動しており、微量の魔力を放っている・・・そしてその球体自身は魔力の濃縮体であり、膨大な魔力が込められているのがわかる。


 球体に触れようと手を伸ばすとピリピリとした魔力の波動を感じる。


 つまり・・・これは


「レアアイテムか!?」

「「キレー」」


 ダンジョンといえば、深くに進めば進む程レアなアイテムが出るのはダンジョンの醍醐味であるだろう。

 これ程の魔力が秘められているという事は、「ここまでよく辿り着きましたね。褒美としてこれを授けましょう」的なものだろう。


 金色の球体へと手を伸ばし触れる・・・フルフルと振動していた球体は掌の上でコロコロと転がる。魔力の波動は身体を這いずり、擽ったい感触を残して消えていった。


 金色に光る球体をポケットの中に入れ、テレポーターへと急ぐ。


 でも、皆ここまで来ていたんなら、何でこれを取らなかったんだろう?

 まぁ、いいか。


 テレポーターへと手を翳し、魔力を流し込む。魔法陣は淡い光を放ち始め、やがて輝きを増し、光が自分の身体を包み込みやがて、粒子となり皆の姿が消えていく。


 そして、光が自分の体を包み込む最中・・・何者かの瞳が俺を見定めていた事は、知る由もなかった。






 目を開けるとそこにあったのは、見覚えのあるポッカリと大口を開けたダンジョンの姿。初見殺しのいやらしいダンジョンが俺を出迎えており、背後からは大勢の気配が漂っている。


「やっと帰ってきたのね・・・待たせ過ぎよ」

「あぁ、ごめんごめん。たぶん俺が行っていた道が一番遠回りだったんじゃないかな?」

「それにしても1日待たされたんだけど・・・まぁ、無事でよかったわ」


 サテラが呆れた様にため息を吐き、俺の横でチョコンと立っている双子を確認して胸をなでおろす・・・サテラさんできれば俺も心配してもらってもいいかな?

 ちゃんとイアとメアが怪我しないように細心の注意を払って今まで頑張ったんだよ。


 イアは俺の背後に隠れ、メアはヨウキの元に走り寄ってダイブしていた・・・・何にとは言わんよ。


「そういえば、Bランクの冒険者は見つかった?」

「一応、ルリとヨウキが見つけて、救出したわ・・・けれど、到着した時には一人を残して、全員死んでいたそうよ。遺品はヨウキが持ってきてくれたわ」

「そっか・・・」


 全滅は免れたけど、冒険者パーティーはひとりを残して壊滅。俺達と同じ様に初見殺しの階層落下トラップに引っ掛かり、落ちていったそうだ・・・。

 そして、リーダーの判断で49階層を目指すも40階層のボスに挑み、無残にもやられてしまったそうだ。


 助かったのはパーティの中でも最年少である治癒術師の少女であり、パーティーに参加して一年・・・40階層では少女が最優先に守られ、奇跡的にヨウキとルリが駆けつけ、一命をとりとめたそうだ。


 その少女はダンジョンの表で待機していたギルド職員に連れられ、一足先に街まで戻っていったそうだ。


「皆様ご無事で何よりです。やはりこのダンジョンの凶悪性は他のダンジョンよりも一層強そうですね」


 皆の背後からヌッと現れたのは羊頭の魔族・・・城塞都市のギルドマスターオズモンドさんだ。

 オズモンドさんはダンジョンを見据え、ダンジョンの危険性を見定め、対策を考えなければと一人でブツブツを何事かを呟いている。


 オズモンドさんは俺の視線に気付いたようで、ハッと我を取り戻し失敬と頭を下げ、再度口を開く。


「今回の一件、私の不徳の致すところ・・・貴方達に危険が及んでしまった事、誠に申し訳なく存じております。貴方達だけでなく、将来有望な種までも散らしてしまった」


 オズモンドさんは大きな溜息を吐き、俺達をジッと見つめる。そして・・・


「今回の一件について、城塞都市の領主様が貴方達に礼を言いたいと申し付かっております。直ぐにとは申しませんが、出来うる限り早くお会いしていただけると」


 なんと・・・城塞都市の領主様といえば、魔族と人間の諍いを沈め、現在の平和な城塞都市を築き上げた人・・・魔族?だった筈だ。

 聖都との揉め事も最小限に抑え、人間と魔族の友好の為にこの国を平定し、長年に渡りこの国の領主をしているお方。


 里の魔物や魔族達に、人間の価値を見出して貰う為に頑張ってはいるが、やはり魔族と人間との隔たりは高い。

 現に里に来たばかりの人達は皆に怯えていたし、もしこれに差別として対象を向ける者が出て来れば、きっと里の配下達は人間は敵だと認識してしまう・・・それはできるだけ避けたいのだ。


 そして、俺の思い描く理想を実現した領主様と会えるとなれば、これはもう是非もなし!!

 と思い、口を開きかけた瞬間、口をガッと塞がれてしまった。


「承知致しました。ですが、私達の様な冒険者がそのような方にお会いする事は身に余ります。その御心だけ受け取らせていただきます」

「・・・」


 サテラが高速で俺に近づき、口を塞いだのだ。


「例え指名依頼であっても、領主に会えるなんて普通はない筈・・・それに、なんだか嫌な予感がするのよ」

「ほふでふふぁ(そうですか)・・・」


 オズモンドさんは眉間に皺を寄せ、またも大きな溜息を一つ吐く。

 さてらを一度見据えた後、また深々と頭をさげる。


「承知致しました・・・と告げたいところなのですが、そうもいかず」

「それは何故でしょうか? 私達はつい先日ここに辿り着いたばかり・・・たとえ、指名依頼と言えど、まだまだ若輩者にしか過ぎない筈です」

「・・・異論の言葉もありません。普通であれば、あなたの言葉をしかと受け止め、領主様にご報告するのが一番です・・・しかし」


 オズモンドさんがスッと道を開くと、そこには


 銀色の長い髪を揺らし、端正な顔立ちをした男がそこに立っていた。

 切れ長の瞳には綺麗なエメラルドグリーンの瞳が輝き、身長は180cm程だろうかかなり大柄だが、筋肉質ではなくシュッとしていてスタイルがいい。肩から伸びる腕はしなやかであり、爪は男にしては長い・・・これが美男子というやつだろう。

 少女漫画なんかでよく見かけるような、所為俺様系の王子様を彷彿させる人物がそこにいた。


 クスリと微笑みをたたえ、片手を口元まで持って行き、こちらへ僅かに一礼する。


「もう、来てしまっているのですよ。城塞都市領主『カナドラル・ツェペキュリオ・シュルドゥラ』様は・・・」

「初めましてだね。私がこの都市の領主カラドラル・ツェペキュリオ・シュルドゥラなんだね。気軽に『カナード』と読んでくれると嬉しいね」


 おぉう・・・まさかのご本人様登場だよ。

 しなやかな足取りでサテラの前へと歩み出て、優雅に一礼する。


「急な来訪すまないと思っているね。でも、少々君達に興味が湧いてきたというのも事実なんだよね」

「何故一冒険者の私達に?」

「一冒険者が普通、王印が施された招待状を持ってくる筈ないね。それに、君達からは妙な波動も感じた気がしてならなかったのね」

「ッ!?!?」


 サテラがカナード様の発した言葉に口をパクパクさせて絶句する。

 何かびっくりするようなことでもあったんだろうか・・・ん? そういえば今オウイン?って言ってた様な・・・。


「私達の招待状は帝都のギルドマスターから・・・」

「それだけじゃ通れなくはないけど、厳しい監査はあるはずね。それがないのは帝都の王の印があったからさ・・・あそことはちょっと深い関係があるからね」


 そう領主・・・カナード様が告げた。あまりにも驚きすぎたのかさてらが上の空になってしまっている。


 すると、後ろで見守っていたソウカイが、サテラの横へと並び出る。その動きは自然でありながらも、戦闘中に見せるソウカイの警戒を露わにするそれが出ている。


「お初にお目に掛かります。私はソウカイと申します・・・妙な波動を感じるとの事でしたが、あなたは魔族でいらっしゃるのですか?」


 その言葉にカナード様の後ろに控えていたオズモンドさんがピクリと身を震わす。


「間違いないね。私は魔族だよね」

「何故、人の形を取っておられるのです?」

「人と魔族との境界をとりもつのはなかなか難しくてね・・・魔族であっても人の姿を取っておく事で不必要なヤジを飛ばす輩もいなくなるのね」

「ふむ。領主殿がこの依頼を出したのですかな?」

「ギルドの運営は全てオズモンドに一任しているね・・・まぁ今回は特例として私も関わっているね」

「・・・・・・・・・ふむ。ありがとう、失礼した」


 ソウカイは俺をチラリと見た後、ふるふると首を横に振った・・・なるほど、ソウカイであってもこの男性の真意を見出せなかったってことか。


 であるならば、放心しているサテラに変わって俺が代等しなければならないってわけだ。


「で・・・俺達に何の用があるんでしょうか」

「用ってわけでもないんだけどね。少し話し相手になって貰いたいのね・・・あ、勿論みんな付いて来て貰っても構わないのね」


 俺としては願っても無い話なんだけど、どこか胡散臭さの様な物は感じるな。

 こんな時に俺の大事な直感が働かないんだから、もう・・・って待てよ。このパターンならそろそろあれが来てもおかしくはないはずだ。


 “付いて行きますか? YES/NO”


 あぁ、やっぱり。

 完全に忘れていた俺のユニークスキルである運命の選択ちゃんだ。重要な選択肢の時に直感ではなく、こっちが働くらしく、おそらくだけどどちらを選んでも、劇的に未来が変わる選択肢の時にだけ出る。


 ・・・まぁ、一つ言いたい事はこれが出てきて、今まで散々な目にあったのは確かなんだ・・・。


 それにどーにもこの領主様に胡散臭さを感じて仕方がない・・・。

 サテラやソウカイもどこか警戒しているようだし、ここはNOで言っておくか。


 ってことでNOで


 ”本当ですか?”


 ・・・え?

 なにこの質問・・・前までこんなの出たことなかったんだけど。いや、まぁ本当に重要な選択肢の時は、たまにこういうのが出るゲームもあるよね。


 ここを進みますか? はい

 進むと戻ってこられません。本当に進むのですか?


 みたいなのがあった気がする・・・これはそういう系統のあれなのか。


 ・・・・・・・・・いや、待て、もしかしたら俺が間違った選択肢を選んでいる可能性があるんじゃないか?

 だから二回目の選択肢が出てきたってのもあり得る。


 んじゃ、試しにあの領主様についていく・・・つまりYESでどうだ。


 "・・・"


 うっわぁ・・・本当に俺の考えが当たってたんじゃねぇか。

 もし俺がNOを選択していたら、間違った選択肢だったってことだよね。うっわぁ・・・”本当ですか?”の重要性を再認識したよ。


 でも、胡散臭いんだよなぁ。

 本当にこの領主様・・・カナード様に着いて行っていいんだろうか?


 でもまぁ・・・もしもの時は皆いるし、どうにかできるかだろう。


「それじゃぁ・・・お言葉に甘えさせていただきます」

「それはよかったね。じゃあ、明日の日が一番高く昇る頃にでも迎えの馬車を出そうかね。それじゃあまたあしたなのね」


 男性はニコニコと笑いながら、背中を見せて去って行く。

 オズモンドさんは最後にこちらへ一礼して、カナード様に着いて行った・・・。


「ユガ・・・一体どういうことか説明してくれるかしら?」


 そして、背後から怒りの炎に焼き尽くされたサテラの声音が轟いた。






 そして、イアとメアが、カナードの背中をじっと見つめていた事に誰も気づかなかった。

ハーピー観察日記


1:ハルウ様方、ウルフを用いて、大規模警戒網を構成。

2:爪なしと人間が、キ・・・キ、キスをしていた。

3:シロタエ様、人族の街で就労?開始。

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