表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/271

人魔:人と魔の共存でした!

多くのブックマークありがとうございます!!


いざ、人と魔族の共存地帯マルタイルへ!!


次話投稿は一週間以内です!

 いつも通りガラガラという音を響かせながら、馬車は道を進んで行く。

 いつもと違うといえば、少々馬車の音が多い事があげられるだろう。というのも、今から俺達が向かおうとしているのは人と魔族が共存する都市であり、俺の目標である人と魔族の共存を成立させた夢の都である。だから、いつもより多くの配下を連れ、人と魔族がどの様にして共存しているのかを知って欲しいのだ。


「すぅ〜すぅ〜」

「ヨウキちゃん・・・うぅ卑怯だ」

「あはは・・・もうちょっとで見えてくると思うから我慢してね」


 馬車の中には俺を含めて四人。俺とヨウキ、ルリが座っていて、ヨウキは寝息をたてながら俺の膝の上で眠っている。それを前の席でうらやましそうにルリが見ている。御者にはデュアルホーンの手綱を握っているアンネさんの姿がある。

 どうやら、この里に来るようになってから妙に魔物に懐かれやすくなったアンネさんは魔物使いの称号を得たらしく、晴れてデュアルホーンを操れるようになったらしい・・・さすが馬車便を作り上げた創始者だ。


 後続には、サテラとミリエラを乗せた馬車、そしてコクヨウとフゲン、ソウカイ、ナーヴィを乗せた三つの馬車に分かれている。


 サテラとミリエラはお互いに談笑しながら和気藹々としている。しかし、相も変わらずコクヨウとフゲンを乗せた馬車からは殺気にも似た何かが漏れ出し、その度にナーヴィの気迫に押されて静まるといったことを何度も繰り返している。


「まさか、『マルタイル』に行けるとは思いもしなかったわ!! あぁ商売魂に火がつくわね・・・とりあえずは魔族の傾向と、そこに住む人の趣向から調査しなくちゃね」


 黒い笑顔を讃えながら商魂逞しいアンネさんは商売の算段を立て始める。

 アンネさんは魔族と人とが共存する都市『マルタイル』一度行ってみたかったそうで、今回の遠征先がマルタイルだとわかった直後、一等級の馬車を三台貸す代わりに自分も連れて行けと高らかに言い放ったのだ。


 様々な国を巡り巡る馬車便を所有するウェルシュバイン家でも、マルタイルに入都する事は許されず、マルタイルでは独自の交通便が確立されているらしく、売られている品物も魔族と人とが作り上げたそこいらの国では取り扱っていない物が多くあるらしい。


 様々な場所へと商売範囲を拡大させたいアンネさんにとっては垂涎の街であるのだろう。


 どうやらアンネさんは今回のマルタイル遠征で成果があれば、魔族の街にも商売の範囲を広げようと考えているらしい。

 人のいない魔族しか住んでいない街に商売拡大・・・さすがウェルシュバイン家だ。


「マルタイルの街は・・・多分もう知ってるだろうけど人と魔族が共存する街。正直魔族と共存なんて想像もつかないんだけれど、上手くやっている街だそうね。人間離れした魔族の魔力と力、人間の知恵が混ざった都市は見た事のない品物が並べられ、魔族と人間の文化が混ざった独自の生活圏が見られる筈よ」


 マルタイルは元々人と魔族が争っていた時代、魔族に対抗する為作られた城塞都市だ。人と魔族の領域の狭間に建てられた都市は激戦区となり、噂では王都からは当時の騎士団長が常駐し、帝都からも多くの兵士が出兵したのだとか・・・。


 昼夜問わず繰り返された戦闘は人間、魔族の両方に甚大な被害を及ぼし・・・最終は人間と魔族が停戦し、漸く平穏が訪れた。

 そして、停戦の証として標的に上げられたのが城塞都市マルタイルである。マルタイルを攻めていた魔族、常駐していた人間を一切の戦闘を禁止し、強制的に同じ都に住まわせたのが発端だ。


 城塞都市というだけあって、その外観はまさに戦闘の為に作られた物であり、難攻不落の城塞は魔族が繰り出す数々の魔法やスキルから人間を守ってきたのだ。

 現帝都の防衛力よりも上だというのを聞いたときは驚いたものだ・・・なんでも当時最強と呼ばれた魔法使いである『バルクホルト』が全力をかけて作り上げたそうだ。


 どのような魔法も弾き返し、スキル攻撃による一撃からも傷一つつかない城塞はまさに不落の要塞であったらしい。


「あ、見えてきた見えてきた!あれがマルタイルだよ」


 ヨウキを起こさないように膝から降ろし、馬車から身を乗り出してみれば、大きな街・・・とは名ばかりの要塞が姿を現した。

 見上げるほどに大きく分厚い壁に囲まれた都市・・・目を凝らして壁を見てみれば薄い魔力の幕が貼られており、それがただの魔力でないことがよくわかる。


 要塞の入り口となる門の前には人と魔族が揃って警備しており、中に入ろうとするものの身元を確認している。

 他国からの入都には厳しい審査があるが、元々この街に暮らしていた者達には特別な入都許可証が発布されているらしい。

 おそらく今入っている人や魔族はこの要塞の住人なんだろう。


 あ・・・誰か言い争ってる。

 紙を片手に持ち、それを指差しながら門番の人に何かを言い散らしている・・・おそらくは招待状か何かなのだろうけど、それに認可が降りずに入れないと突き返されそうになっているのだろう。


 そうしていると、怒鳴りつけている人物の背後から、ヌッと大きな『魔族』が姿を現す。

『人と一緒』に警備を行っていた魔族は、商人の頭をグッと持つと何事かを耳元で呟くと、商人はみるみる内に青くなり小さくなっていった。


 商人は追い返されたようで渋々といった様子で、城塞都市を後にする・・・時折恨みがましく後ろに振り返っていたが、魔族に睨まれると怯えた様子で逃げ帰って行った。


 ・・・成る程、これが入都が難しいって言われているわけだ。

 いくら人が騒いだとしても、あんな魔族に『気』を当てられでもすればそりゃ、逃げ帰るのも無理はないだろう。


 そして俺達の馬車が城門へとたどり着いた。

 運が良いのか悪いのか、俺たちの馬車をチェックするのは、先程商人に『気』をぶつけていた魔族になった。


 蜥蜴の顔をした二足歩行の魔族・・・俺の前世知識を活かせば、おそらく『リザードマン』だろう。

 凡庸な鎧を身につけ、人間には持てそうにない太い剣を携えたリザードマンは俺の顔を一瞥した後、顔を顰める。

 ・・・まぁ仕方ないだろう。ここの警備を長い間しているのなら、出入りする人物は限られているはずで、当然人の顔も覚えているだろう。

 しかし、俺は初めてきたわけで見覚えがない。つまりは他所者だということだ。


「あぁ、ここに来んのは初めてか?」

「そうですね。招待状があるのですが・・・」


 懐から招待状を出し、リザードマンに手渡す。

 その招待状を確認し、封蝋を見つめると険しい顔をしてこちらに目をやり、封筒を開ける。

 中身を取り出すと、リザードマンは人間の元まで向かい、招待状を渡した。


 するとリザードマンはこちらへ戻り、口を開く。


「外の封蝋と中身の封蝋が違ったんでな。あっちのもんに見てもらっている。すまねぇがちょっと待てや」


 ・・・そう言われて待つこと数分。

 なんだか警備がざわざわしている・・・というよりも、門の奥、街の方から何人もの『人間』の警備が出入りしている。

 何かあったのだろうか?


「えっと、何かあったんですか?」


 アンネさんが行き交う警備に声をかける。


「あ、あぁ。ちょっと招待状の確認し手間取ってしまってね。もうちょっと待って頂けると幸いです」


 明らかになんだか様子がおかしいが、まぁ入れれば問題はないし・・・やっぱりギルド長の紹介でも入都は難しいのかな?


「すまねぇな。だいぶ待たせちまった・・・お待たせしてしまったな。招待状に問題はない・・・ありませんでした。あとはこの国について規則的なことを話させてもらうz・・・貰います」


 どうやら問題はなかったようだけれど、なんだかさっきよりも様子がおかしい。

 魔族は総体して横柄だと聞いて、さっきまでは結構普通に喋っていたが、戻ってくるなりなんだかぎこちない敬語とも丁寧語ともつかないしゃべり方をししてるんだけど。


 まぁ、問題ないようだしよかったのかな?


「本当に間違いねぇんだよな?」

「あ、あぁ間違いなく皇帝の封蝋だ。見間違えるはずもないさ」

「偽装って可能性はないのか?」

「まず間違いない。皇帝の封蝋を偽装する奴なんてまずいないさ・・・ばれたら一族郎等全て処刑だぞ。しかも、封蝋にしっかり高度な魔力蝋もされていたし間違いないさ。名前も身元もバッチリだし奪ったや拾ったていう可能性もない」


 先ほどの門番達が此方を見て何か喋っているが・・・一体何なんだろう?

 周囲の門番達からもなんだか見られているみたいだけどなぁ。そんなにギルド長の封蝋っていうのは効果があるのかな・・・うーん、でもはじめ招待状見たときはそんな風に反応してなかったんだけどな。




 門をくぐる。


 城塞の奥に進むと、いつも通りの整った街の風景が見えてくるのかと思えば全く違った。

 整合性なんて者はなく、家の作り方は建築方法や様式が全て定められておらず大きさもまばら素材もバラバラだ。

 ほとんどがレンガの様な物でできているが、中には木で作られたものや藁で作られたものまであったりと無茶苦茶だ。


 行き交うのは勿論人と魔族・・・割合は半々であり、中には魔族と人とが一緒に歩いている姿も見受けられる・・・俺の理想がここにあるんだ。


 きれいに舗装された道を行き交う人と魔族・・・露天に並べられた品の数々は見たことのない物もあり、飽きることがない。

 漸く、俺達はマルタイルへと到着したのだ。


 まずは宿探しから始める必要がある。

 その為にはギルドを探すのが一番だ。ギルドは街の中心より少し東に寄った場所にあると聞いたけれど・・・。


 馬車から降りて、ギルドを探そうと向かう。


「主人、我々は主人様についていけばよろしいのですね?」

「あ、あれたべたぁい!!」

「ヨ、ヨウキちゃん! 勝手に行動しないで!!」


 さすがヨウキだ・・・俺が初っ端に目をつけた物から食べたがるとは、仕方ない連れて行ってやるしかないだろう。

 ちょっとくらい寄り道しても別に問題はない筈だ。


『精霊の気配は薄いわね』

「あぁ、やっぱり少ないんだ」

『元々人と魔族が争っていた場所だからね。いないことはないけれど全て契約されている下級精霊だと思うわ』


 精霊の気配はあることにはあるが、元々ここに居着いているものはいないらしく、全て契約している下級精霊なのだそうだ。


「俺はあいつらを見張っていればいいの?」

「うん。ナーヴィくれぐれもあの二人から目を離しちゃダメだよ」

「わかった」


 人型になったナーヴィがコクヨウとフゲンの二人の元まで歩み寄る。コクヨウとフゲンでさえナーヴィには頭が上がらない・・・俺がいない間に喧嘩の仲裁を行っていたのがナーヴィらしく、仲裁とは名ばかりの制裁だったらしいが、二人ともナーヴィには敵わなかったらしい。


 さて・・・と。


『朗報よ。貴方の事を見ている人はいないわ』

「うぐ・・・もうやめて欲しいなディーレさん・・・」


 ディーレさんはもう癖になっているのか、隠そうともせずにフフフと笑っている。


「はぁ・・・んじゃ俺はヨウキと一緒に、皆の分も含めて食べ物買ってくるよ。ルリはサテラ達の所へ行っててよ」

「やったぁ!」

「はぁ・・・わかりました。ではサテラ様の元へ向かいます。また後程」


 俺とヨウキは先程見ていた露店へと足を運ぶ、香りに釣られる様にしてフラフラと辿り着くと芳醇な香りが鼻いっぱいに広がる。

 露店で売られていたのは、色とりどりの揚げ団子?の様な物で、鍋の中に浮いている。


 どうやら練り物の中に具を挟み込み、それを丸めて、油で浸した鍋の中に入れて何分か待てばできる揚げ物料理らしい。


 それを全員分頼んで早速一つできたわけだが・・・勿論俺が我慢できるはずがなく、串に刺して口に運び、放り込む。勿論揚げたてであり熱い・・・口の中でホフホフとして冷ましながら、噛むと油とともに練り物の甘み中の具材の甘みがジュワッと滲み出てくる。

 これはたまらないともう一つ口の中に放り込む。学習しないせいで口の中を火傷しそうになるが、そんなもの知ったこっちゃないと咀嚼する・・・美味い!!


 ヨダレを垂らしながら見ているヨウキにも一つ口の中に放り込んでやり、その横でその様子を見守りながらヨウキと同じく滝の様にヨダレを流していた二人組の女の子の口の中にも放り込む。

 俺も含め四人が美味しそうな表情を浮かべ、露店の前で食べていれば・・・自然と通りを通っていた人や魔族が見ているわけで、列ができるわけ。

 それもヨウキという大きな広告塔がいれば、より多くの人が見ているわけなのだ。


 そうこうしている内にみんなの分も出来上がったわけで、ヨウキと俺と二人の女の子に持たせて、いざサテラの所へ・・・・・・・・・


 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 え、この子達誰?



 -------------------------------------------------・・・



 side ???


 カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ

 カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ

 カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ


「ご主人様、お食事をお持ち致しました」

「ご主人様、お飲物をお持ち致しました」


 メイド服を着た若い二人組は、銀色に光るワゴンから食事とワインを取り出し、机の上に綺麗に並べていく。カチャカチャと食器を鳴らすこともなく、手慣れた様子で『ご主人』と呼んだ人物の前に一人では食べ切れないであろう食事を陳列していく。


 食事をテキパキと並べるメイドは、肌の色は青白く口元から二本の牙が生えている。目は黒く赤い瞳がぎょろりと動いている。

 極め付けは下半身であろう。蛇の下半身を持った人間・・・『ラミア』と呼ばれる魔族が給仕をしている姿は人間(・・)から見てみれば面妖なものであるのは間違いない。

 しかし、彼女らの『主人』はそれを当然としながら、並べられた食事を楽しそうに眺めている。


「何か変わったことはないかね?」

「はい。特にご主人様の耳に入れなければならない事は私からは特にありません」

「同様です」

「それはよかったね。面倒事は嫌いだからね」


 そう言って主人はテーブルに置かれたナイフとフォークを器用に使い、肉を切り裂いて口の中へと運び入れる。予想以上に美味しかったのか、目を見開きそれ明けをパクパクと口の中に放り込んでいく。


「ご主人様、皿の横にあるものも食べてください」

「こ、この緑色の物体はどうしても好きになれないんだよね」

「ご主人様好き嫌いはいけません」

「仕方ないね・・・」


 緑色の物体と呼んだものを口に含むとオエッと小さな嗚咽を漏らし、また肉をパクパクと食べ始める。

 そして薄く輝くワイングラスに手を伸ばし、クイッと酒を煽る。


 そうして食事を楽しんでいると・・・扉がゆっくりと開かれる。

 人影はサササッと主人の元まで歩み寄り何事かを告げる。


「どうしたのかね?」

「・・・・・・・・・」

「ふーんなのね。行って確かめなさいね」

「・・・・・・・・・」

「ご褒美はちゃんとあげるね」

「・・・・・・・・・」

「わかったね。わかったね。それじゃよろしく頼むね」


 扉は乱雑にバタンと閉められ、また主人は食事を再開する。

 薄眼を開け、肉を堪能する主人に再びメイドたちが口を開きかけるが、次いで主人の顔を見た瞬間にメイドたちは口を閉ざす。


「面倒事が舞い込んでしまったようだね。私が出る幕ではないとは思うんだけれどね。いや、困ったね」


 二人のメイドの顔が強張り、主人を見据える。

 主人の言う面倒事・・・が一体何を示しているのかはわからないが、長年メイドとして主人の側に使えているのであれば、主人が一体何を指し、何を考えているかなどすぐにでもわかる。


 二人のメイドは一瞬視線を合わせ、口を揃えて主人に言った。


「ご主人様、そういいながらお野菜を隠そうとしないでください」

「ご主人様、細かなお野菜をわざと下に落とさないでください」

「・・・・・・・・・厳しいね」


 主人はがっくりと項垂れながら、我慢して野菜を食べる。

 しかし、主人の奥深く、黒い物が蠢いている事にメイド達は気づいていた。


「あ・・・あの子達に任せた大丈夫だったかね・・・まぁ大丈夫ね。あの子達ならうまくやるでしょうね」

ハーピー観察日記

1:シロタエ様が里のリーダーに就任。

2:観察日記提出先をシロタエ様に委任。

3:森全域の支配完了。


人魔共存編開始です。


宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!

遠慮なくこの物語を評価して下さい!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ