帝都[終章]:里の惨状?でした!
本当に多くのブックマークありがとうございます!!
里に不穏が走る。
次話投稿は一週間以内です!
・・・さて、色々な出来事が起こった帝都旅行ではあったが、比較的に平穏に終わった気がする。アドルフとヴァンと別れてしまったのは寂しい気もするが、里に帰れば俺を待っていてくれる皆が居る筈だ。それに、アドルフとヴァンにはこの里のことを話してある・二人とも仕事の合間に余裕があれば訪れると言っていたし、いつか会えるだろう。
久々に見る配下達の姿を想像しつつ、3台の馬車がゆっくりと森の中を進む。
しかし・・・
「おかしいですね」
「気配が少なすぎる気がします」
『・・・蜘蛛ちゃん達もいないし、森の動物達も、精霊達もいないみたいよ』
いつもなら真っ先に出迎えてくれる・・・もとい、警備に当たっている筈の蜘蛛達の気配がない。
それどころか、木やらそこいらの茂みに隠れている動物、魔物・・・そしてあの自由気ままな精霊達でさえ姿がないとなれば異常だ。
ディーレは何かを感じ取っているみたいで、俺も狭い範囲に周囲掌握を起動し、周りの様子を探ってみる。
すると、やはり動物や精霊、配下の蜘蛛達の姿も一切ない。
石や岩の下、茂みに隠れているのはどれも虫ばかりであり・・・それでも全てが隠れているというのはおかしいだろう。
すると・・・見慣れた森の地形が一部変わっていることに気付く。それは巨大な何かが通った様な、一本の巨大な道ができているのだ。
馬車が十台程横に広がって通行できるくらいに大きな一本の道が、長く長く里へ一直線に続いているのだ。
その道には魔力の残滓が色濃く刻まれており、その道に沿う様にして幾つもの戦闘痕が残されている。直径五十メートルに渡って抉り取られた大地・・・薙ぎ倒された木々や、森が焼けた痕等が点々と存在している。
無言で馬車のドアを蹴破るようにして開け、外へと出る。
突然の事態にシロタエやコトヒラ、御者は驚いた様な顔を浮かべ、次いで慌てて俺に着いて来ようと馬車を出る・・・が。
「来るな!!」
殺気を込めて馬車を降りた二人に言葉を投げかける。
ハンゾーにチラリと目配せすると、ハンゾーは馬車の元へと戻り馬車の避難の誘導を行う。
シロタエとコトヒラは俺に着いて来ようと駆けるが、俺の全速力に着いて来れる筈もなく、みるみる内に二人の姿は小さくなっていった。
風をきる音さえも後に残し、森の木々をすれすれで避けながら里へと一直線に駆ける。
木々の根を踏みつけ、水の上もお構い無しに駆けてゆく。
爆発音にも似た音を後方へ置き去りにし、戦闘痕が残る一本道へと出る。
未だに所々から白煙が立ち上っており、配下ではない何かの巨大な毛があちこちに散乱している。
間違いない・・・何者かが南部の森に、エルフの里に向かって侵攻したのだ。
道には木の杭で作られたバリケードも設置されており、それを何者かが突撃でぶち破った後が残されている。
折れた剣や槍が点々と捨て置かれており、中にはヴォルドス騎士団の紋章が刻み込まれたものも存在する。
・・・・・・・・・見ない様に、見ない様にと心掛けてはいたが、ついにそれが俺の視界に入ってしまう。
俺の思考回路がグチャグチャになり、自分でも信じられない程の殺気が発される。目の前が真っ赤に染まり、身体がビキビキと音を立てる。
道には夥しい血痕が残されており、木々にも多くの血痕が付着している。血痕は黒く変色し、時間が警戒していることがわかる。
ここで戦闘が起こったのはかなり前だろう。
すると、道の真ん中に干からびた球体の様な何かが落ちている・・・それは、巨大な目玉だった。こんな大きな目を持った巨大な魔物が里を襲ったのだ。
あの時のゴーレムなんて比較にならない程に大きく、マーダーボアなど取るに足らない大きさであるだろう。
そして、ここまで・・・南部の森にまで侵入を許してしまう程に強大な力を持った魔物。コトヒラ、ショウゲツ、ハルウ、大蜘蛛、エルフ、人間、ハーピー達の総力を持ってしてもここまでの侵入を許してしまう程の大型の魔物。
・・・もしかすると、配下は全滅した?
最悪の結果が俺の脳裏をよぎる。
里が見えてくる。
入り口に作られていた簡易の門が壊され、丸くぽっかりと大口を開けている。
速度を保ったまま里へと入り、魔力を全力で練り上げる。
自分の中で猛り狂う魔力を体の中心へと一点に集中させる。ビシビシと体がヒビ割れる様な音を立て、形状を保てなくなった腕がニュルリとした真っ黒に赤の線が入った触手へと姿を帰る。
強大な魔力をディーレさんが再び練り直し、俺の全身へと魔力のパスを接続する。
『いつでもいけるわよ』
「蒼き水面の聖堂」
里に入り・・・前方に黒煙をあげる巨大な何かの姿を視認する。
周りに多くの配下が傷だらけで突っ伏し、血溜まりを築き上げている。
魔法を放つ準備を整え、そのまま片手を突き出し、突貫する。
そして・・・巨大な何かに触手が突き刺さろうとしたその刹那。
「ピッ!?!?!?」
「はっ?」
高速で巨大何かに迫っていた速度を一瞬にして静止させ、とんでもない衝撃波が里を襲い、俺の殺気が解かれ辺り一面におぞましい寒気が広がる。
死んだと思っていた配下たちが一斉に起き上がり、そこらじゅうの部屋から驚いて飛び出してきたエルフやら人やら亀背家やらが一斉に俺へと視線を投げかける。
・・・で、等の俺は、目前で救急箱を持った両手が翼になり、足に鋭い爪を携えた・・・ハーピーに向けて触手を突き出し、膨大な魔力を発しているわけなのだ。
周りにいた配下達全員は咄嗟の事に呆気に取られ、俺も俺でその状態で固まってしまった。
「・・・・・・・・・」
「あ・・・あ・・・あぁ・・・」
後々聞いた話によると、俺の姿は瞳は真っ黒になり、瞳は真っ赤になり魔族のそれへと変貌していたそうだ。そして身体中から身も竦む様な殺気を迸らせており、悍ましい程濃密な魔力の本流を触手の一本からハーピーに向かって突き出していたのだとか。
全身を包む黒い靄な様なオーラに包まれ、顔からは表情が消え失せ、全てを憎むかのごとくまるで魔王の様な姿であったそうだ。
至近距離にいたハーピーは勿論、配下や人間、エルフ達全員は当然の如く失神。
俺から離れていた者も腰を抜かしてその場にへたり込んでいた。
こうして、俺の盛大な勘違いは幕を閉ざした。
「えっと・・・つまりもう討伐し終えていたと」
「はぁ・・・何事かと思って飛び起きたらこれよ。仕事を増やさないでもらえない?」
「面目無い」
「そ、それくらいにしてあげようよ」
部屋の一室で正座して謝っているのは無論俺であり、目の前で怒っているのは久しぶりに会ったサテラだ。燃えるような赤い髪、鳶色の瞳は俺を見据えて呆れ返って溜め息を吐いている。ミリエラが何とか宥めているが、サテラの怒りは収まらない。
周りにいた配下達もどうにか止めようとしたが・・・サテラから睨まれると即座に視線を外している。間違いなく、サテラに飼い慣らされたな。
事の顛末はサテラから聞き及んだ。
シロタエとソウカイが主導して行ってきた大森林の全支配。それは現状東西南部は全て掌握済みだそうだが、魔族領に面した北部の森は強大な魔物が数々潜んでおり、主クラスになればコトヒラやショウゲツ達が出張って漸く倒せるというレベルであり、掌握できていなかった。
で、苦労の甲斐あってもうすぐに掌握が完了するか否かという所でかなり大型の主が現れたそうだ。
それも難なく倒せるだろうとハルウ達も向かったが・・・まさかの主が直前で進化してしまったのだ。そしてハルウ達でさえなんとか押しとどめる事が精一杯で一時撤退。
そして、ハルウ達との戦闘によって主が暴走。
里に向かって一直線に大型の魔物が猪突猛進・・・その魔物は聞く限りマンモスにそっくりな外見であったらしく、その毛皮を鋼の様に硬く、魔法の効果を散らしてしまう厄介な魔物であったそうだ。
ヴォルドス騎士団の人達が進路上に防柵を築くも難なく破壊、配下達がマンモスに追従して数々の攻撃を加えるも暖簾に腕押し、魔法の集中砲火、ギルド&ウェルシュバインからの特製爆薬積み樽による爆撃も少々傷を与えただけ、コクヨウ、ショウゲツ、ハルウ達も出動しての総力戦になるもかすり傷を負わせる程度にしか終わらず南部への侵入を許してしまう。
で・・・。
「どうしてあんた達もいるんだ?」
「・・・貴方を尾けた」
「蜘蛛にグルグル巻きにされるとは思いもしなかったわ」
そこにいたのは王都にいたころよーーーく見た顔があった。
『カテナ』そして『ルティ』の凸凹コンビだった。
「追跡の魔法をかけてここに着いたまではよかった・・・唐突に魔法が弾かれて、森で彷徨っていたら捕まった」
「そしたら急に戦闘に巻き込まれて、加勢することになりまして・・・」
どうやら俺を尾けたまではよかったけど、それからは災難な事に、こっちの戦闘に巻き込まれ相当酷使されたようだ。
森で迷って蜘蛛に捕縛され、運良く?サテラに保護されてそこからはいいように使い潰されたらしいな。
「穴を掘って落とし穴を作ったり、土で防柵を補強したり」
「私は肉弾戦で手傷を負わせましたが、あの方達には到底及びませんでした」
うちの配下がご迷惑を・・・と謝ろうかも思ったが、俺も王都では散々振り回されたのだ。おあいこにしておこう。
俺のささやかなやり返しだ。
まぁそれはさておき、そんな化け物を最後に倒したのは精霊を一点に結集させたエルフの儀式魔法、そして配下達の一斉攻撃による飽和攻撃だ。
森の精霊達の大半を巻き込んで、ミリエラを中心に儀式魔法を展開して大規模魔法を放ち、魔法を扱える者は力を結集させて混合魔法を発動、遠距離攻撃を放てるものは兎にも角にも滅茶苦茶に攻撃を仕掛けたらしい。
それを食らっても尚突進していたマンモスだが・・・既に息絶えていたようで、最後はヴォルドス騎士団の気合いの突撃でマンモスの死後突進を受け止め切って無事里の真ん中で押しとどめることに成功したらしい。
そして勝利の余韻に浸る事もなく、全員がぶっ倒れて爆睡。ほぼほぼ一週間もの間寝ずの作戦会議やロクな睡眠も取れずに攻撃や研究を繰り返していたらしい。
幸い今回の戦いで死者は出なかったが、やはり重傷者は何十名か出てしまい、エルフ達が必死に看病して、今はコトヒラが回復させに回っている。
んで、爆睡している最中、徐々に起き始めた者達は未だ爆睡している者達を仮説の救護施設へ運び込み、怪我の手当てをしていたそうだ。
そして、その救護活動中にマンモスから流れ出た血が周りで寝ていた者達に流れ着き、俺の目に着いたと、そしてマンモスが死んでないと思った俺は突貫して、救護活動中だったハーピーに殺気と魔力を叩きつけ、触手の切っ先を突きつけるという暴挙に出てしまったと。
で、今に至るわけだ。
幸い俺の殺気によって眠っていたもの全員が飛び起き(一部は未だ失神しているが)たので、祝勝会を開くそうだ。
「わかっているでしょうけど。ハーピー達が怖がっているから、ユガはお預けです」
「・・・そんなぁ」
俺だけはお預けらしい。
先の一件から、俺に恐怖心を抱いていたハーピー達がより一層俺に恐怖しているらしい。
・・・さっきも俺の顔を見られただけで、青い顔をして逃げて行くだけならまだしも、子供に泣きじゃくられたのは悲しかった。
「・・・あぁ、そうそう次はどこに行くのよ」
「えっと『マルタイル』って街に行こうと思ってるんだけどどうかな」
「あぁ・・・あそこね。いつかはそこに行きたいって言うんじゃないかとは思っていたけれど・・・無理ね。あそこは普通じゃ入れないのよ」
「それについては招待状をもらっているから大丈夫じゃないかな・・・ほらこれ」
懐から招待状ん入っているであろう封筒を取り出しサテラに渡す。
サテラはそれを見て目を丸くして驚いた様子を見せる。
「これ・・・ギルドマスターの封蝋じゃないの。一介の貴族の紹介如きじゃあの国に入れないからって言おうとしたのに、ギルドマスターなら入場は可能だと思うわ・・・それにしてもよくギルドマスターから貰えたものね」
帝国の兵士のお願いだし、ギルドマスターからの封蝋を貰えたのかな?
それともどうにかして伝手を頼ってくれたのかな?
「えっと、昔内戦があったから入り辛いんだよね?」
「えぇ。無論それもあったのだけど、それ以外にも一番の難点があるのよ・・・近くに聖都があるのよ」
・・・成る程ね。
聖都はこの異世界の中でも一番魔族に対して差別が激しい街・・・いや、国だ。魔族の一切の入都を認めず、国力に関しては帝都よりも上であり、武力だけでも王都の騎士団レベルがわんさかと存在する。
とりわけ神に対する執着が強く、神に仇なしたと言われる魔族に対しては非常に圧力的であり、差別を止めることはない。
それどころか、神に仕える国だというのに魔族を奴隷の様に扱っているのだからもう無茶苦茶だ。
魔族に対する敵対心も非常に根強く、魔族と国境を隔てる境には常に兵で見張らせ、武力を集結させているんだという。
・・・そんな国が近くにあるとしたら、そりゃそうなるな。
「過去にも魔族が人に危害を加えたと言いがかりをつけて、戦争に発展しかけたわ・・・それから領主の代替わりになってなんとか静まったようだけれど」
そりゃ警戒するわな。
邪魔な魔族を排除したい聖都からすれば、格好の的が近くにあるわけだ。自国の者を忍び込ませて、問題を引き起こし言いがかりをつけて戦争に持ち込む・・・なんてこともできるだろう。
「そういえば、次は誰を連れて行くの?」
そうサテラが告げた瞬間・・・場の空気が一瞬にして凍りついた。
ピリピリと糸が張り詰めたような空気が場を支配する・・・そりゃ全員期待するわな。
まぁ、既に決めているわけだが。
今回は少し多めに連れて行く。魔族が気軽に入れる場所、そして人間と触れ合える環境が整っているのなら充分良い経験になるだろう。
ウンウン考えていると、横に立っていた凸凹コンビが口を開く。
「私達は帰っていいの?」
「私達は王都に」
「貴方達は里までの道の修繕をお願いしますね・・・ネッ?」
「「ヒッ!?」」
里の実権はサテラさんが握っていた事が発覚した。
ハーピー観察日記
1:爪なしとゔぉるどす?の騎士がデートしているのを目撃。
2:熾烈な主人様同行戦が勃発
3:二度と主人様には逆らわないことをハーピー全てに誓わせます・・・だから命だけは。
不穏が走りましたね。
前書き回収です。
宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!
遠慮なくこの物語を評価して下さい!!
何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。
(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)
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