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帝都:賊の討伐⑤でした!

何らかのエラーで最新話を投稿できていませんでした。

楽しみに待っていた皆様本当に申し訳ございません。


賊とのラストバトルです!


次話投稿は一週間以内です!

 side マーベル?


 轟々と燃え盛る炎がやがて終息し、洞窟の暗闇の中に溶け消える。

 炎の切れ端は洞窟のそこかしこに散り、頬を掠めたそれにピリッとした痛みを感じる。


 ゆっくりと炎を発生させた元凶が地に伏した。


 今も尚、洞窟内を漂う熱気と魔力の残滓が、奴が只者でなかった事を如実に語っている。

 凡庸な人間には到底辿り着けないであろう境地、あの英雄クラスが集まった帝国七爪にさえ匹敵する魔力の強さは間違いない・・・魔族だ。


 まるで俺が視界に入っていないかの様に、優雅に歩くその姿に自然と見蕩れてしまい、夢と現とが混ざり合った感覚に苛まれた。


 その女はゲルナ元貴族の下へと向かい、ゲルナの放った魔法の悉くを打ち消し、貴族の感情を逆撫でする様な発言を繰り返す。

 薄ら笑いを浮かべ侮蔑の含んだ表情で自分を見下す女に、とうとう腹に据えかねた貴族が暴走した。


 まだ利用価値のある、ニーディリアの娘とプライツァの長男へと魔法を放った。

 ・・・まぁいい。元は殺す予定であり、それが急遽予定変更され、生かす事になっただけ。もしもの時は殺してもいいと仰せつかっていた(・・・・・・・・)


 ゲルナが放った火球は、しかし、女によって防がれたのだ。

 その直後、女は酷く動揺し、怒り狂った。何故かはわからない・・・だが、俺の呪縛は解かれたのだ。見蕩れて呆けていた頭に理性が戻り、女に短剣を抜き放った。


 女の頭上で煌々と輝いていた魔法は潰え、女は地に伏した。


 恐らく何らかの状態異常に掛かっていたのだろう。正常な判断ができず、正確な対処ができないでいた。

 だが、ゲルナの魔法が女に直撃し、何らかの原因で解かれたのだろう。


 ともかく、女は始末した。

 あとは面倒な男を片付ければいいだけ・・・


 ドンッ!!


 そう考えた直後、目の前の男の姿が掻き消える。

 ほんの一瞬目を離した隙だ。男の姿はゲルナの前へと移動していた・・・そして、ゲルナの頭は地面に沈み、不定形に揺れる何かが宙へ幾つも浮かんでいた。


 俺の勘が一気に警鐘を鳴り響かせた。


 その場から転がるようにして飛び退ると、そこに幾つもの触手が突き立った。

 男の姿は闇色に染まり、瞳が縦に割れ、洞窟の闇の中を不気味に揺らめく。


 臀部から尾の様な触手を幾つも生やし、男は此方へと高速で近づいてくる。

 両手で剣を持ち、迫り来る触手の一撃へと剣を振るう・・・が、剣は弾き返され、触手はそのまま俺の身体へ直撃する。


 ミシリ


 そんな音が聞こえ、俺の身体は宙に投げ飛ばされる。先程の男と打って変わり、速度も重さも比べ物にならない。

 地に身体を打ち付け、全身を駆け巡る痛みをどうにか堪えながらも、直ぐに立ち上がる。


 闇の中に金色の瞳が浮かび上がり、じっと此方を見据える。

 とてつもない殺気が迸り、俺の身体にこれまでにない重圧が乗し掛かる。


「先程とは大違いだな」


 痺れて震える手を見て、目の前に立つ化け物へと目を向ける。

 魔族の脅威は身に染みて分かっている。これまでに何度も魔族と交戦し、人間との違いを頭と身体に叩き込んだ筈だ。


 だが、目の前の魔族は俺が交戦してきたどの魔族よりも厄介だ。

 不意討ちでこの魔族を刈り取り切れなかった事が悔やまれる。人間だと油断した事が最大の間違いであった。


 唯の人間であればあの不意討ちで沈んでいただろう。それがもし防がれたとしても、続く『魔剣:反啼剣』の斬撃に対処できる筈がない。


 しかし、この魔族は全てを防ぎ、或いは躱してみせた。それどころか徐々に魔剣の特質を見抜かれ、最終的には返し技を行使された。

 あの巨漢の襲撃もそうだが、反啼剣は種さえ割れてしまえば対処ができる。とは言っても、相当な戦闘技術を要するのだが、巨漢とこの魔族は直ぐ様対応してみせた。


 巨漢は純粋な技量はあの帝国七爪をも凌駕し、小細工なしで戦えば敗北は必須であっただろう。

 それに比べ、この魔族は純粋な技量では素人の域、それをステータスと特異な触手でカバーしていた。


 加えて繰り出される魔法の威力は凄まじく、様々な意図を考慮しての戦闘特化型の魔法は俺の攻撃手段を限りなく減らした。


 ステータスの差は反啼剣でいなそうと試み、途中までは奴の攻撃を難なく防げていたが、突如奴の攻撃の威力が吊り上がった。

 反啼剣が吸い込みきれない一撃を繰り出し、それを機に奴は反啼剣へと対処した。

 突如として吊り上がった打撃に、どうにか対処しようと試みるも更に奴の攻撃が吊り上がり、俺は成す術なく打ち倒された。


 しかし・・・不思議だった。吊り上がった威力は何らかのスキルの行使かとも思ったが、そんな様子は見当たらない。


 魔法の行使も、どこか違和感が残るものだ・・・。

 打ち出された魔法を剣で弾き飛ばしたのだが、やはり、徐々に威力が吊り上がっていった。


 意図的に威力を落としている・・・そんな気がしていたのだ。


 そして、それは間違いではなかった。


 今俺の目の前に立っている魔族は、もう容赦という言葉を失っている。

 俺の全力をもってしても、奴の攻撃を受け止めきれなかった。

 たったの一撃で、反啼剣のパッシブマジック『リレクトストック』は尋常でない威力を蓄えている。


 リフレクトストックによって蓄えられる威力は、その攻撃の4割を吸収する。もしこのスキルを発動していなかったなら死んでいたであろう。


「シロタエを・・・俺の配下に手を出した事を後悔しろ」


 魔族の手から棒状の何かが伸びる。それはやがて、一本の槍となり、その槍からは白い霧状の冷気が漏れ出し、滴り落ちる水の雫は地面に落ちる前に蒸発するかの様に霧散する。


 奴が槍を振るうと水の軌跡が宙を走り、その軌跡はやがて魔法となり・・・此方へと襲い掛かった。


 槍の軌跡から産み出された水刃が飛来し、それを間一髪ギリギリで避ける。水刃は洞窟の壁に直撃し、直後破砕音が響き、洞窟の壁に水刃の軌跡が描かれる。

 あれをまともに食らえば、身体が泣き別れになるのは必然だ。


 ・・・俺はどうやら、とんでもない化け物を敵に回してしまったらしい。

 奴の手にあるあの槍は魔法で形成された即席の魔槍・・・それも振るうだけで低位魔法『水刃』を連発することのできる代物だ。

 あんな物が世に出回れば国さえも動き兼ねない騒動になるだろう。


 そんな代物を己の魔力で作り出してしまうなど・・・それはもはや


 それはもはや、『魔王』の領域ではないか。


 帝国の子飼いにこんな化け物がいたなんて聞いていない。帝国七爪にもここまで非常識な人間はいない。

 この魔族は・・・恐らく帝国七爪でも、王国騎士長であっても奴を倒せないのではないか。


 そんな予感が脳裏をよぎる。


 この状況を脱する手段は・・・通常の手段ではない。

 だが、一つだけ、たった一つだけ奴に勝てる見込みのある手段が残されている。


 魔剣:『反啼剣』には常時発されるパッシブマジック『リレクトストック』がある。

 その効果は先の通り、受けた攻撃の威力の四割を吸収し、蓄えるもの。そして蓄えた威力をそのまま相手に返す『スキル:反撃(リレクション)』の二つ。


 しかし、もう一つこの反啼剣にはスキルがある。


 それは、この魔剣に秘められたエクストラスキル斬鏡・全反啼嘶斬ミラレ・オブ・オールリフレクション

 このスキルさえ奴に決めることができれば勝てる。幾ら化け物級の魔族と言えど、このスキルさえ決まってしまえば勝ちは必至だ。


 だが、このスキルは一度しか使えない。その一度を外してしまえば後はもうない。


 だが、相手が強ければ強い程にこのスキルの真価は発揮される。


 奴が誘いに乗り、全力の攻撃を出せば・・・勝機はある。


「なんだ。それ程にあの女が殺された事が気に食わんか。くだらないな・・・」

「黙れよ」


 心の奥底に響く重低音の声が漏れる。

 そして再び奴の姿は虚空に消え、次いで俺の眼前へと姿を現した。


 触手と槍、魔法の多重攻撃・・・まだだ。まだ待て。


「スキル:『加速、筋力倍増、要塞化』!!」


 身体中にスキルによって力が漲る。

 加速で奴の攻撃の軌道を読み、筋力倍増によって攻撃をなんとか受けきれるまでに強化、衝撃と撃ち合いで吹き飛ばされないように要塞化を施す。


 奴の触手の一撃を剣で弾き返し、槍の一撃を剣を薙ぎ払って軌道を逸らす。それでも生まれでる魔法を回避し、次いで襲い来る奴の猛攻をスキルの力で捩じ伏せる。


 その間も魔剣に力は蓄積されていく。

 この魔剣は威力を食らい続ける。過去にこれ程までに威力を溜め込んだ試しがない。


 後は決定打さえ奴に出させてしまえばいい。


「無駄死にさ。でしゃばった結果がこれだ。お前も、他のお仲間も同じ場所に送ってやる」


 ピタリと奴の動きが止まる。


 そして、完全に瞳から光が失われる。

 怒りが頂点に達した・・・奴の身体中から魔力が溢れだし、その背後に人を模した何かの姿を幻視する。


 槍に全ての魔力が吸い込まれて行き、奴がゆったりとした足取りで此方へと歩みでる。


「甘過ぎ・・・か。前々から配下に言われていた事が今更になってわかるなんてな。もう、容赦はしない」


 洞窟の闇を打ち払うかの様に、深海の如く蒼く揺らめく炎が宙を舞い散り彩っていく。

 槍が白煙を上げ、洞窟の中に響き渡る硬質な鳴き声を上げる。


 まともにあの攻撃を受けてしまえば、剣諸とも俺の身体はバラバラにくだけ散るだろう。

 一点突破型の上位魔法と同等の威圧感、そして身体の奥底を這いずり回る殺気が剣を構える手に力を入れさせない。


 深く深呼吸をする度に奴の存在が鮮明に見え、足がすくんでしまう。

 奴にはこのエクストラスキルさえ通用しないのではないか。


 いや、溜め込んだ威力は間違いなく目の前の存在を消し去る程の力を有している。


「いくぞ」


 フッと今までの戦闘がなんだったのか、そう想わせる微風が頬を掠める。同時に、身体へ打ち付ける強大な魔力の旋風が反応を鈍らせる。


 落ち着け、奴は

 奴は目の前にいる。


 洞窟内は静けさで包まれる・・・いや、音が掻き消されている。遅れて聞こえても来ない。

 唯々、空虚な空間に魔力の嵐が渦巻いているだけ。


 目の前に金色に光る瞳が姿を現し、闇に染まった身体から夥しい殺気が漏れでている。


 いまだ!!


「エクストラスキル:『斬鏡・全反啼嘶斬ミラレ・オブ・オールリフレクション』!!!!!」


 もはや、剣が打ち合った音さえ消失し、意識を失いそうになる程の強大な力の奔流が剣を襲う。

 バキンと剣の破片が飛び、エクストラスキルでさえ吸収しきれなかった力の奔流が自分を襲う。


 恐らく衝撃の殆どは魔剣が吸収している筈だ・・・それだというのに、俺の身体は悲鳴を上げ、血管は破れ血を吹き出し、鎧は砕け散り全身を走る衝撃に骨の何本かは折れている。


 剣を取り落としそうになる手に力を込める。

 ここさえ乗り切れば、エクストラスキルの発動条件は満たされる。


 蒼い槍は激しく波打ち、剣を折ろうと尚も猛威を奮っている。轟々と吹き荒れる力の波に、歯を食い縛りながら耐える。

 そして、その時は訪れた。


 今まで魔力の奔流を纏い猛威を奮っていた槍が、バキンと音を立てて半ばから折れた。

 奴は突然の事態に戸惑い、反動で身体をよろけさせた。


「返すぞ!!」


 刀身が閃光を放ち、今まで蓄えた威力をも全て相手に返す。そしてエクストラスキルのもうひとつの効果が発揮される。

 自らの剣を犠牲にし、蓄えた威力を倍にして相手に返すカウンター技。


 受けた威力が大きければ大きいほど、蓄えれば蓄える程このエクストラスキルの威力は想像を絶するものとなる。

 奴の今の攻撃、そしてそれまでに蓄えた威力を倍にして奴に叩き込む。


 閃光が視界いっぱいにひろがり、やがて収束を始め剣の刀身を包む。限界まで圧縮された威力が可視化され、膨大な光を放つ剣へと変わる。


 そして、剣を振るう。

 閃光は剣を離れ、奴へと吸い込まれるように放たれていく。体制を崩している今、奴に避けることなど叶わない。

 剣は刀身から砕け散ってゆき、柄さえもがバラバラと崩壊し灰へと変わり果てる。


 閃光は奴を丸ごと飲み込み、消失する。


「精霊魔法:水霞斷迅の絶対領域アリュティーレ・ディーラ


 パンっ


 そんな間の抜けた音と同時、目の前の閃光が消え失せる。

 何ごとも無かった様に、男はその場に立ち尽くし、右手に持った槍を俺の身体に突き入れた。


 胸から暖かく真っ赤な血が溢れ出し、ゴフッと口から吐血する。何が起こったんだ・・・そう考える暇さえ与えず、奴は俺の胸から槍を引き抜いた。


「一応周囲掌握で剣の情報を入念に調べておいてよかった。エクストラスキルがあるとは思わなかったけど・・・」

「な・・・zぇ」

「『アリュティーレ・ディーラ』は水であればどんな攻撃でも消失させることができる。わざと大技を放ったふりをしてエクストラスキルを発動させて、隙をついた」


 全て見通されていたってことか。

 俺は奴の掌の上で踊らされていたのか。


「・・・不思議と罪悪感は感じない。シロタエも咄嗟に防御魔法を発動して防いでたみたいだ。で、急な魔法の行使で気を失っているってところかな?」


 意識が遠のいていく・・・この化け物には最初から到底及ばなかったのだ。奴は人間の範疇など容易に凌駕している。エクストラスキルを完全に封じ、あの威力のスキルを完全に消失させる常人にできる筈がない。


 魔族は傍に倒れている女魔族を担ぎ、貴族達を触手で担ぎあげる。


「ま、ままま待て!この我輩を忘れるでないぞ!!」


 ゲルナが喚きたてる・・・あやつ如きがこの魔族に敵うはずがない。


「あぁ、そういや捕縛しなきゃならないんだった」


 魔族は一本の触手をゲルナに掲げる。ゲルナは慌てふためきその場に尻餅を付き、怯えた顔で後ろへ這いずる・・・俺と魔族の攻防を見ていたのなら、当然の反応だ。


 しかし、ゲルナはニヤリと不気味な笑みを顔に浮かべ、懐から一本のスクロールを取り出した。

 スクロール・・・魔法を封じる為の書物であり、紙は特別な物が使われており、最上級の物になれば龍の皮や牙を使うとされている。


 ゲルナの手に握られているのは金の刺繍が施され、どう見ても高級品だとわかるスクロールだ。それを此方に見せびらかす様に掲げ、その中に書かれているものをしっかりと見取れる様に広げる。


「中位 8等級 魔法『アースジオクエイク』だ!! これを発動させればお前達など岩に押しつぶされ死ぬぞ!! さぁさぁさぁどうする!!!」


 ・・・ゲルナが取り出したのはは、中位の中でも上位に君臨する範囲殲滅魔法が封じ込められたスクロール。

 アースジオクエイク・・・指定した範囲に『地割れ』『地震』を引き起こす魔法だ。


 つまり・・・


「心中する気?」

「帝国に戦火を齎す為ならなんだってしてやる!!」


 魔族はうーんと悩み、持ち上げていた貴族と女魔族を降ろす。


「ハハハッ! それでいいゆっくりと殺してやるぞ!!」

「うん・・・え? いいの? 大丈夫なの結構きついと思うけど・・・そう。それじゃお願いしようかな」


 ゲルナが耳障りな笑い声をあげる中、魔族はうわごとの様に何事かぶつぶつと呟いている。その眼は空中を漂う様に動かされていたが、あるポイントポイントで何回か静止している・・・いったいなんだというのだ。


 魔族はもう一度貴族と女魔族を持ち上げ、貴族に告げた。


「やってみれば。豚・・・あ、じゃなかった。元貴族さん?」


 ハハハッと高笑いを続けていたゲルナの額に青筋が浮かぶ。ゲルナは眼を血走らせ、魔族の方へと視線を向ける。

 フゥフゥと息を荒げ、口の端から唾を吐き散らしながら怒声を上げる。


「きさ、貴様ぁぁぁぁぁあああぁあぁぁ!!! 死ぬのだぞ!この魔法を発動させれば全員」

「結局俺を殺すんなら一緒じゃない? 交渉するなら譲歩するかと思ったら『ゆっくりと殺してやるぞ!』って馬鹿だなぁ。そんなだから貴族やめさせられたんじゃない? 豚さん」

「クソ、クソクソクソクソクソクスオォォォガアアアアアアアァァlどいつもこいつも我輩を、ワグァハァイヲオオオオォォォオオ!!!!」


 ゲルナの額の青筋がとうとう切れた。

 ゲルナは叫ぶ様にスクロールの呪文を読み上げていき、構築を始める。


 次第に洞窟が振動を始め、天井や壁、地面は罅割れスクロールから魔力と魔法文字が出現する。


「『地に降りし災厄の種子よ!! 大地に芽吹き、災厄の事象を齎し、有象無象に裁きを与えよ!! 地の奥深くまで後悔の念と闇の狭間に落ち消失せよ!! 災厄の狭間へ溶け落ち二度と這い上がれぬ地の奥深くで息絶えるがいい!!』」


 ゲルナの足元に巨大な魔方陣が浮かび上がり、洞窟内の振動は一層強まり罅割れから魔力の波動が漏れ始める。

 ゲルナは後先を考えず呪文の詠唱を行う・・・恐らく本当に自分諸共死ぬ気らしい。しかし、目的は達成できる。


 魔族は水に関する攻撃であれば対処が可能だが。大地の魔法であり範囲殲滅型の魔法を止める手段はない。

 魔法の詠唱を止めるなら同等の魔力を止めるしかないが、スクロールから発される魔法は詠唱させ完成してしまえば止めることは不可能。

 ならばスクロールを詠唱しているものの口を封じてしまえばいいだけなのだが・・・


 先程から魔族は詠唱が終わるのをじっと見つめたまま動かない。

 ・・・まさかこの魔法で魔法でさえ打ち消せるのか? スクロールから発生した魔法を止める事など不可能だ。


「死ぬがよい!! 『アースジオクエイク』!!」


 その瞬間大地が脈動し、魔力の流れが周囲一帯を包み、振動が立っていられないくらいに強くなる。

 だが、その中でも魔族は立ち続け・・・そして耳を疑う詠唱を開始する。


「精霊よ。我が手に集え」

「土よ、風よ、水よ、火よ・・・我が命に答えその姿を大地に顕現せしめん」


 その瞬間傍を小さな何かが通り過ぎる・・・幾度も幾度も通り過ぎていくそれは、しかし、俺の瞳には何も映らない。

 拾い洞窟内のどこからともなく何かがこの部屋に集まりつつある。それはとんでもない質量になり、魔族を取り巻く様にその存在の気配が現実のものへとなる。


 すると、魔族の傍に四つの人影が現れる。

 光に包まれたその姿は一体・・・そう考えたが、その存在は異常な存在感と威圧を放っている。人間を優に超え、そこの魔族でさえ霞んで見えるようなそんな存在がこの世にいるとは思えない。


 これはまさか


「精霊・・・?」


「大地は恵みを齎し、我々は死して大地に恵みを齎す。風は恵みの春を運ぶそよ風となり、裁きを与える暴風とならん。火は全てを焼き尽くし、そして新たな進化を遂げる。水の恩恵に縋り、我は彼女に口づけを交わし、誓約を交わす。踊れ、歌え、我が元で楽しめ・・・そして、ともに生涯の友であろう」


 魔族の手が高く掲げられ、その次の瞬間には手は大地へと振り下ろされ腕の半ばまで大地に突き刺さる。


 大地の脈動が・・・徐々に小さくなり、罅割れが終息し、大地の鳴き声が止まった。


「ふぅ・・・もうあんまり出てこないでね。アイテムボックスに入っていてよ・・・」

『・・・』


 そこにいた何かはフイッと此方を見た後は興味を失い、魔族と一体化するかのように消えていった。


 この魔族は精霊を操っているとでもいうのか・・・いや、精霊との契約者だとでもいうのか?


 ポカンとするゲルナに魔族は触手の一撃を加え意識を刈り取る。

 そしてゲルナを触手で抱え上げ、此方を一度チラリと確認した後は足早に去って行った。



 ・・・ハハハッいったいなんだっていうんだ。

 初めからかなり無茶な計画ではあったが・・・こうも簡単に破られるものなのか?


 魔族、精霊使い、騎士・・・いったい何が起こっているんだ。


「あ・・・まだ生きてたかよかったよ」


 意識を失う直後、金色の髪を揺らした男が気配もなく俺の眼前に立ち塞がっていた。


ハーピー観察日記

・・・=休載=・・・


次回からは事態が収束した後の話、そして・・・。


宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!

遠慮なくこの物語を評価して下さい!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!

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