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帝都:怒りと戦禍でした!

仕事が少々忙しくて、駆け足で書いてしまったので改稿するかもです・・・。


沢山のブックマーク、そして評価有難うございます!!


次話投稿は一週間以内です!

 街はいつも以上に活気に満ち溢れている。通りを行き交う人々は忙しそうにせっせと何かの準備に勤しんでいる。

 彼らの顔に浮かぶのは疲れ・・・ではなく、喜びや楽しみといった感情が見えている。


 通りには多くの人が露店の準備を開始し、街の飾りつけを住人総出で行っている。

 昼時は普通であれば、自分の仕事を優先しなければならないだろう・・・しかし、領主直々に街の飾りつけをした者には、かなりの給料が出ることになっている。


 元々結婚パーティーが開かれるとあって領民達が沸いていた時に、そんな申し出があれば更に街は活気づく事は間違いない。

 現に、街はかつてないほどに盛り上がりを見せているそうだ。


 で、実はというとだ。


「シロタエここの補強を頼んでいい?」

「承知しました」

「コトヒラはさっき頼んだあれをお願い」

「かしこまりました!」


 俺達もそれに参加しているわけだ。

 街の飾りつけ・・・と言うよりかは、俺達が宿泊しているこの宿の店主から依頼されて、宿の飾りつけを手伝っているのだ。


 この宿はチェルスレイクでもかなり有名な店であり、宿泊客もかなり多い。

 で、結婚パーティー聞き付けた旅の者や商人は、ここに殺到したのだ。部屋は全て満室であり、なんと裏の納屋ですらもう入らないくらいに人が来ているのだ。


 そうなると、色々と準備がいるわけで、今いる従業員だけでは足りなかったのだ。通常の宿の営業でさえ追いつかない状況なのに、パーティー・・・まぁ、街の人から言わせてみれば『お祭り』の飾り付けなんて出来る筈がない。


 そこで冒険者に声を掛け臨時従業員として、お祭りの準備、飾りつけを手伝って貰おうとしていたのだ。

 丁度パーティーまで暇を持て余していた所であったし、給料とお酒やら食事の代金を割り引いて貰う事を条件に手伝っているわけだ。


 そして、俺達は店の飾りつけをしているわけだ。

 ヴァンは表で木材を大まかに切り分け、アドルフはヴァンの斬った木を細かく加工している。


 飾りつけは俺達に任せるという事で、色々と準備をしてもらったのだが、どうせなら前世の知識を活かして何かやってやろうと思ったのだ。

 そして、出来上がったのが・・・。


「うん。こんなもんでいいかな?」


 店先にはかぼちゃ・・・によく似た果物やら野菜やらのジャックオランタンが飾り付けられている。うん、言うまでもないけどハロウィンを意識して作ってみた。


 コトヒラには刀でジャックオランタン製作、シロタエには細かな紙細工や木彫りをお願いしていたのだ。


 このジャックオランタンに使った食材は、カボチャ?の他にも、ジャガイモ?が巨大化したものや、小さなリンゴ?の様な果物なんかで作っている。


 意外と雰囲気は完璧だと思うな。

 しかし、あくまで結婚パーティのお祭りなのだ。ハロウィンの様なダークっぽさをなくし、色々とアレンジを加えている。


 ジャックオランタンの顔は前世のような不気味な顔でなく、ユルキャラの様な可愛さを残したり、妖精の形に掘ってみたりと工夫を凝らしている。

 店内にはそこかしこに小さな装飾や黒い紙で作ったコウモリ・・・のかわりに水色や青を基調とした紙で作った妖精をぶら下げている。


「だいたい終わったぞ」

「久々に力仕事なんかしたよ」


 どうやら外観の方も終わったらしい。

 外に出て宿を見てみると。わざと歪にした木を壁に沿うように張り付け、魚やら船やらを模した紙細工を壁に張り付けたりしている。


 ここまで来ると、ハロウィンじゃなくてもとは思うが、まぁそこは気にしない方向でいこう。


 当初は何をしているんだという目で回りから見られていたが、装飾が出来上がっていくに連れてそれは関心へと変わっていった。

 店主さんもかなり喜んでくれたようで、夜にこの店で一番旨い酒と料理をご馳走してくれることになった。




 準備が終わった頃には日は既に沈みかけ辺りは薄暗くなりつつある。準備をしていた人達も今はちらほらと見かける程度になり、街は夜の酒場の争乱に向けて嵐の前の静けさを醸し出している。


 パーティーは二日後の夜に開かれる。

 街の人達はそれまでに準備を整えるだろう。


「そう言えばユガは貴族のパーティーに参加しないのかい?」

「うーん、本当は是非出席してくれって言われたんだけど、俺じゃ荷が重くて・・・エリーザさんがそれを汲んでくれてなんとか出席せずに済みそうだよ」

「災難だったね」


 どうやら、ニーディリア伯爵は娘の花嫁衣装を自慢し、俺の事も紹介しようと思っていたそうだ。

 普通の冒険者であれば願ってもない話であるのだろう。貴族に気に入られれば、護衛として高給で雇って貰えるのだから・・・まぁ、俺は召し抱えられるつもりはない。


「そう言えば、兵士の手続きはちゃんと終わったの?」

「え・・・あ、あぁ終わったよ。僕もはれて兵士になれるさ」


 ・・・なんだか歯切れが悪いが、恐らく緊張しているのだろう。


「長い間頑張ってきたんだもんね。応援するよ」

「あはは・・・お願いするよ」


 そんな会話を交わしている時だった。


 ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ

 ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ

 ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ


 通りに馬車が走る音が響く・・・しかし、こんな時間にずいぶん急いで馬車を飛ばしているな。

 ・・・あれ?にしてもおかしい。ここは街中である筈で、あんな早さで馬車を駆けるなんておかしい。


「なんだ?」


 馬車の音が丁度宿の前で制止する。そして一階の食堂がにわかに騒がしくなっている。


 そして一階から二回に向かう足音が耳に届く・・・しかし、その音も妙なのだ。


「鎧の音だな。チェルスレイクの自警団・・・ではないな。恐らくは私兵か?」


 その音は俺達の部屋の前でピタリと止む。

 すると、三度のノックの後、若い男の声が響く。


「夜分に申し訳ない。チェルスレイク領主、ニーディリア伯爵の兵の者だ。ここにおられるのはユガ様達であるか?」

「・・・間違いない。貴殿らがニーディリア伯爵の兵と信ずる証拠は?」

「書状を頂いている。しかと、封蝋もある」


 ヴァンが扉を開けると、そこには鎧に身を包んだ兵士の姿が三人あった。手には書状が握られており、それは蝋によって封がされ、その蝋には紋様が刻まれている。

 間違いなくニーディリア伯爵の物であるそうだ。


「貴殿らは至急、ニーディリア伯爵様の邸宅に参られよ。用件は邸宅で話すとの事だ。表に早馬を待たせてある」


 どうやら、拒否権はないらしい。


 コトヒラはむっとした顔で兵士を睨み付け、シロタエは目を細めて注意深く兵士の顔を見ている。


「主人様、どうやら何かあったようです。あの人間の様子が酷く強張っています」

「・・・勘弁して欲しいんだけど」


 シロタエによれば兵士はかなり焦っているのだそうだ。理由はわからないが、何か重大なことが起こったのは間違いない。

 それと、シレッと俺の部屋に上がり込んでいるシロタエは、例によって無言の圧力で俺、ヴァン、アドルフに何も言わせなかった。


「行くしかないようだね」


 そうして、俺達は兵士に連れられてニーディリア伯爵の邸宅へと向かった。






 ニーディリア伯爵邸宅へ到着すると、前に来た時よりもそこは物々しい気配で包まれている。

 武装を整えた私兵の数々が中庭に集結し、誰もが眉を顰め、緊張した面持ちでその場に静かに佇んでいる。


 何かあったのは間違いない。

 漂う気配は『戦闘』を控えた兵士のそれ。ピリピリと肌を走る痛みから、尋常でない事態が起こっている事が感じ取れる。


 中庭を横目に、邸宅と外とを隔てる扉の前へと歩を進めると、そこにはエリーザさんの奥さんが此方を見つめて立っていた。

 その顔にはいつもの優しげな表情はない・・・あるの は、不安と焦燥のそれだ。


 俺達をここまで連れてきた兵士は、顔を伏せてエリーザさんの奥さんを見ない様にしている。


 エリーザさんの奥さんは何も言わないまま、別の兵士の人に連れられて俺達と同じ部屋へと入って行く。


 そこは前にキモノを披露した応接室であった・・・が、中には目にくまを作り、机の上に乗せられた手が傷だらけになった親バカ貴族・・・ニーディリア伯爵であった。


 椅子に座るように促され、椅子に腰かける。


 座って数十秒・・・俺はスイッチを切り替え、目の前に対峙する貴族へと声を掛ける。


「何かあったのでしょう。事情をお聞かせください」


 そう告げると、ニーディリア伯爵の瞳に昏い光が灯る。

 震える唇から吐き出された吐息と共に、それは静かに、されどしっかりと俺達の耳元に届いた。


「娘が拐われた」


 ・・・なんともまぁ、俺の周りでは災難が起きなければ気が済まないらしい。

 あの物腰の柔らかそうな貴族さんがこれ程までに剣呑な気配を漂わせているのだ・・・まぁ、この貴族様がこうなるのも無理はない。

 溺愛に次ぐ溺愛を持って育てた娘が拐われたのだ。怒りを通り越し、もはや自制すら効かなくなっているのだろう・・・手の傷と目の血走り具合から見て、なんとなしにわかる。



「結婚パーティーの送迎中だ。護衛は皆殺られ、娘と新郎は拐われた・・・命からがら一人だけ此方へ駆け戻って来たのだ」


 そして、次にニーディリア伯爵の口から告げられた言葉が俺達を・・・ひいては、ヴァンとアドルフを驚愕させた。


「襲った賊は帝国兵士の鎧を身に纏っていたそうだ」

「・・・ッ!?」

「・・・」


 ・・・つまりは、帝都の兵士に襲われ、そして誘拐されたと言うことか。


 ヴァンは眉を顰め何かを考え込み、アドルフも動揺こそしているものの必死に何かを告げようとする。


「その報告は誰からもたらされたのだろうか?」

「我が私兵だ。私直々に其奴を見た・・・間違いない」

「帝国兵を騙る賊の可能性は?」

「帝都の剣技を修めていたそうだ」


 十中八九間違いなく相手は帝国兵士ってことか・・・。

 報告が自称帝国兵士であったのならば虚偽の申告もありえたが、情報を伝えたのはニーディリア伯爵の私兵であり、伯爵直々に確認もしていて、私兵を騙った者でもない。

 帝国兵を装っての犯行ではないかと問えば、その賊が使った剣術は帝国の兵士が用いるもので間違いなかたっという。


 まぁ、つまり


「帝国が我々『フェグズム国』に戦争を仕掛けた可能性がある」


 ってなるよねぇ。

 二人は信じられないと言った様子で驚愕している。


 深呼吸してなんとか落ち着きを取り戻したアドルフは、続いてニーディリア伯爵に問い掛ける。


「一緒にいた兵士も襲い掛かった・・・と?」

「いや、我が私兵諸共殺された。夜闇の中奇襲され、一瞬にしてやられたそうだ」

「一瞬? 腕のたつ護衛もいたのでは?」

「・・・魔法使いの存在があったらしい。隊長格は初撃の魔法で殺され、他の護衛達は続く魔法と・・・賊に殺されたのだ。そして、すまぬがその後の情報はない。そこで私兵は事切れた」

「魔法・・・貴族絡みとして間違いなさそうだな」


 アドルフの問い掛けにニーディリア伯爵は沈痛な面持ちで答え続けた。

 どうやら此処に辿り着いた私兵も力尽きてしまったようだ。


 そういえば人間にとって魔法は貴重なものだ。

 俺達やエルフは魔法を操れるが、人間は殆ど貴族等の金持ちしか扱えない。


 的確に隊長格を狙い、夜闇に紛れ込んで迅速に事を為していることから計画的な襲撃であるのも疑いようがない。


「・・・没落貴族の可能性がありますね」

「うむ」


 没落貴族。

 帝国にとって不利益な行いをした者や不正を働いた者は、死罪か身分剥奪のどちらかだそうだ。


 帝国では今の王が着任したと同時に、大きな変革が齎されたそうだ。

 当時は己の権力に肥え太った貴族が横行していたそうだが、それら全てを排斥し有能な者だけを貴族として残したのだ。


 通常であれば内乱が起きてもおかしくないそれは、王の采配によって恐ろしい早さで進められたそうで、反旗を翻す暇なく粛清されたのだとか。


 ほとんどの貴族はその現実に耐えられず、怒りに任せて騒動を起こし死罪にされるか、自害するかのどちらかであったそうだ。


 で、今回の一件はその没落貴族の可能性があると言うことか。


「没落貴族であっても」


 静かに、されど心の奥底から震え上がらせる声音で、ニーディリア伯爵から言葉が紡がれる。


「それは帝国の過ち。このまま娘が傷物にされた場合・・・よもや帰ってこぬ場合は・・・」


 そして、伯爵は告げた。


「戦争だ」


 この国は反戦派と戦争派、そして中立派がほぼ五分五分の割合で存在している。どの派閥にもにも有力貴族がいて、その均衡は絶妙なバランスで成り立っている。


 そして、このニーディリア伯爵は・・・『中立派』に属しており、その中でも高い地位を有している。

 今回の結婚の件で反戦派に回る予定であったそうで、そうなればこの国は帝国と和平を結び平和になっていた。

 だがしかし、ここでニーディリア伯爵が戦争派に回りでもしたら・・・帝都とフェグズム国の戦争に発展するのは間違いない。


「・・・と頭に血が上っていた当初は思っていたのだが、エリーザがおかしいと呟いてな。単身で行ってしまったのだ」

「・・・確かに、没落貴族風情に、その様な技量が積まれた『賊』が懐く筈がない」


 うーん・・・確かに変だな。没落した貴族に忠義を尽くす私兵がいるとは思えない。

 没落した貴族というのは、地位も権力も剥奪され平民に落とされた者だ。それでも忠義を尽くそうとする私兵もいないことはないが、王様から身分を剥奪された者は殆どが私腹を肥やす貴族に足らない者だった筈だ。

 そんな奴等に身分を剥奪された後も付いていく私兵なんていないだろう。


 なのに、帝国の兵士の剣を覚えた者が多く付き従っている・・・確かにおかしい。


 普通の盗賊であれば貴族を敵に回そうとは思わないし、大きな盗賊団では没落貴族なんて身ぐるみ剥いで終わりだろう。

 それに盗賊なんて粗野な連中が兵士の剣を扱えるとは思えない。


「しかし、このままでは何れ戦争になるのは間違いない。今中立派に立っているのはどちらかと言えば戦争派の者達が多い。今私が相手は帝国ではないと言っても、戦争派の者はこれ幸いと相手が帝国兵士の鎧を着用し剣技を振るっていた事を主張するだろう・・・」


 どっちみち戦争は回避できない・・・と。

 今回の一件は既に街に噂として広まっているらしい。なんでも血だらけで馬に跨がっている私兵を何人も目撃しているそうで、戦争派の貴族がそれを聞き付ければ、これ幸いと情報収集に乗り出すだろう。そしてそれが事実だと発覚すれば・・・戦争一直線ってわけだ。


 もし・・・もしも、戦争を回避しようとするのであれば、ニーディリア伯爵の娘さんを無事に救出する以外方法はない。


「・・・エリーザ様から連絡は」


 アドルフはそう告げる。藁をも掴む思いで告げられたその言葉に、しかしニーディリア伯爵は顔を顰める。

 そして、俺の隣に静かに座っていたエリーザさんの奥さんが悲痛な顔で、左手をギュッと握り占める。


「安否は不明だ。しかし・・・妻の指輪の反応が消えた」

「指輪?」

「あぁ、特別な指輪でな、装着した者のお互いの安否がわかるのだ。通常であれば少し魔力を注げば淡く光る。しかし、相手に異常があれば光は更に淡くなり、最終的には消える」


 通常は相手の体調を伺えるという物で、光がくすんでいたら何かしら病気を患っているという事がわかるらしい。

 つまり、その光がくすみでもなく、消えたとなれば死んでるかもしれないってことだ。


「外れた場合でも光は消えるが・・・」


 ・・・恐らく望みは薄いのだろう。


 大きな部屋を重々しい空気が支配する。俺達に告げられたヴォーゼニス帝国とフェグズム国の戦争の可能性・・・そして、エリーザさんの安否不明。


 一介の冒険者には重過ぎる話だ。


 ・・・ん?ちょっと待てよ。

 今ニーディリア伯爵が話したモノはかなり機密情報に近い。もし、そんな情報が少しでも漏れたのなら、大惨事になる可能性がある。

 一般市民に漏れても問題なそれを俺達の様な一介の冒険者に話すっておかしいよね。


 ってことはつまり。


「お前達冒険者は非常に優秀な冒険者だと聞いた。そんなお前達に頼みたい。私の娘の救出、及びエリーザの安否確認と可能であればの救出・・・そして」


 そこで一度ニーディリア伯爵は目を閉じる。

 数秒経った後、ニーディリア伯爵はゆっくりと目を開く・・・そこには、ドス黒い色が浮かび上がり、憎悪に怒り狂った者の瞳が写し出された。


「賊の筆頭以外は皆殺しだ。報酬は言い値で構わん」


 俺達に指名依頼が下された。

 依頼内容は単純に言えば救出と殺し(・・)。賊の筆頭は捕らえて連行って事だ。


 指名依頼の内容に、アドルフとヴァンは押し黙り必死に何かを考えている。


 まぁ、無理もない。相手は疑わしいとは言え帝国の兵士である可能性があり、それを抜きにしてもこの少数で救出と討伐をこなすのは難しいと考えているんだろう。


 相手は魔法を操り、奇襲であったとはいえ多くの護衛をいとも簡単に制圧する技量を持っている。いくら指名依頼といえ、自分の命を天秤に掛けると今回の依頼は非常にリスクの大きいモノだ。

 それに、やっと目指していた帝国の兵士になれたというのに、ここで帝国に牙を剥いてしまえばもう兵士にはなれない・・・それどころか犯罪者になってしまう可能性もあり得る。


「剣技、魔法・・・奴か。では賊というのは・・・で間違いないな。しかし・・・して良いものか」

「ふぅむ。ここで・・・の俺が・・・国に・・・してもいいのだろうか・・・」


 二人は考え込み過ぎて、何やらボソボソと口から声が漏れでている。

 ・・・二人では答えを出し辛い。であれば


「お引き受けしましょう。しかし、一つ条件があります」

「・・・申してみよ」

「二人は帝国の兵士を目指しているんです。もう既に兵士としての試験は終えて、パーティーが終わり次第、帝国の兵士になる予定なのです。ですから、二人が今回の一件に関わったと言う事を内密にして頂きたいのです」

「・・・ふむ。それはこちらも検討していたところだ。エリーザの妻から話は伺っておったからな。了承しよう」


 二人は驚いた様に俺の顔を見ている。これならば二人の憂いは絶てるだろう。


 今回の依頼でこの一件を知るのは俺達とニーディリア伯爵だ。そこに付け加えるのなら賊だけであり、今回は『討伐』も含まれている・・・つまり、賊は全員殺してしまえば口封じできる。

 問題はニーディリア伯爵だ。なので、口外しないと言う条件を受けて貰えれば、もう大丈夫な筈だ。


「・・・恩に着るよ」

「すまんな」


 二人は俺にだけ聞こえる小さな声で礼を告げる。


 しかし、ここからが問題なんだけど。

 賊がどこにいるか、正確な人数は何人か、今の戦力で行けるのか・・・様々な情報収集が必要だ。


 まぁ、けど


「賊の情報はいま手の者で進めている。暫し」

「あぁ、それも俺達に任せてください。大まかな位置さえ教えて頂ければどうにかなります」

「む? 事は急を要する。人数は多い方がいいのではないか? それに情報は武器だ。アジトの他にも規模や戦力等を知った方がいいのでは?」

「それも俺達に任せて頂ければどうにかなります」


 アドルフとヴァンも驚いた様な顔で此方を覗き込む。ヴァンは俺が魔族だって知っているから少しは納得できているが、アドルフは・・・あれ、意外と直ぐに落ち着いた。


 まさかと思って、チラリとヴァンに視線を向ければコクリと頷かれる・・・もう俺やシロタエ、コトヒラの素性はバレバレってことね。


 しかし、俺が魔族と知らないニーディリア伯爵は半信半疑で俺をじっと見つめてくる。

 うーん、この際仕方ないか。


「えっと・・・それじゃ、理由をお見せしますので、それについても口外は一切しないで頂きたいのですが・・・」

「うむ。了承した」


 それにしても・・・はぁ、毎度毎度どうしてこうなるのだろう。

 俺は平穏に皆と暮らしたいだけなのに、行く所行く所でこんな事になるんだ。


 そんな事を心の中で呟きながら、俺はその場に溶け落ちた。

ハーピー観察日記

1:ソウカイ様の訓練により半悪魔再び暴走。しかし数秒で制圧。

2:サテラ様の『魔人化』コントロール練習開始

3:北部ヌシ『マンモグラドン』にユキ様、モミジ様、ナーヴィ様、ハルウ様が対峙。


宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!

遠慮なくこの物語を評価して下さい!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!!

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[気になる点] 帝都冒険編 帝都:怒りと戦禍でした! で ハーピー観察日記 1:ソウカイ様の訓練により半悪魔再び暴走。しかし数秒で制圧。 2:"ミリエラ"様の『魔人化』コントロール練習開始 3:北部ヌ…
[一言] 盗賊、山賊、海賊以外の可能性があるなら襲撃された相手に対して誰が得をするかを考えると自ずとわかる気がする
2019/11/29 09:09 退会済み
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