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帝都:親バカ貴族と不穏でした!

不穏が訪れる予感・・・。


沢山のブックマーク、そして初レビュー有難うございます!!

今後とも精進致しますので宜しくお願い致します!


次話投稿は一週間以内です。!

「・・・であるからして、娘はそれはそれは愛しい存在であるのだ。ご理解頂けたかな? かなり省いて喋ってしまったあまり、詳しく話せないのが遺憾ではあるが仕方ないな」


 ここに到着したのは昼だというのに、窓の方へ視線を向けると既に日が沈もうとしているのが伺える。

 どうしてこうなってしまったのかは言うに及ばず、俺の不用意な発言とこの貴族様の異常なまでの娘愛によるものである。


 椅子に腰掛けた俺含め、全員がげんなりとした顔でニーディリア伯爵を凝視している。

 傍に控えていた侍女は申し訳なさそうな顔で、主人であるニーディリア伯爵に気付かれぬよう小さく頭を下げている。


 にしても、あれで省いたっていうのか!?

 日が傾くほど・・・って言うか沈みかける程、娘についての生い立ちやら何やらを語っておいて、省いたっていうのはさすがにおかしいだろう。

 しかも、娘についてもっと語れない事を、本当に心の底から至極残念そうにしているのだから、この貴族は相当に親バカが極まっている。


 別に、女なんて所詮政略為の道具にすぎないっていうよりかは良いかもしれないが、それでも限度っていうものがあるのだろう。


 しかし、このニーディリア伯爵・・・実はこの国有数の大貴族様であるそうだ。

 娘が生まれる前・・・今の奥さんと結ばれる前は、完全完璧、完全無欠の領主であったらしい。


 ニーディリア伯爵による政策は全て順調に行き、街は富み、人々の生活は非常に豊かになった。昔から勉学を欠かさず、商売に関しては特に関心を惹かれていたようで、ニーディリア伯爵が行った改革は殆どが商売に関係するものだったそうだ。


 その商売においても、この街の特産品である魚だけにとどまらない。

 旅人を多く呼び込む為に交通の便を整え、宿屋を多く設置した。商人を呼び寄せる為に税制の見直しを計り、他の国々からの貿易を発展させた。


 しかし、希代の領主として名高かったニーディリア伯爵は当時貴族の間では非常に恐れられていた。

 ニーディリア伯爵は気難しく、機械の様な人間であったそうなのだ・・・。


 課されたモノを難なくこなし、仕事一辺倒、眉間にシワを寄せて歩くその様は武人もかくやというものであったらしい・・・今ではその欠片もないのだけど。


 そしてある日、結婚を言い渡され、それを政略の為と素直に応じ、淡々と事を終わらせいつもとかわりない日々が始まる・・・かと思っていたのだが、子供が生まれてからはそれが一変したのだ。


 当時の奥さんや侍女達はあまりの豹変ぶりに、開いた口が塞がらなかったそうだ。


 見たことのない蕩けた様な笑みで鼻の下を伸ばし赤ちゃん言葉を発し出した領主に、一時は悪魔にとり憑かれたのではと館の者全てが騒然とする事態まで発生してしまったのだ。


 で、それを止めるストッパー役が誰一人いなかった結果がこれだよ。

 史上最強クラスの親バカ貴族様のご誕生というわけだ。


「では、本題に入ろうか」


 や、やっと本題に移れるのかと全員が安堵の息を漏らす・・・内心まだ続くのではないかとヒヤヒヤしたものだ。

 ここに来たのは、顔見せだけではなく、キモノの確認とパーティーの詳細についてを訪ねに来たのだ。


 パーティーはこの街で一番大きな式場を借りて街を上げて盛大に祝おうとしているそうだ。領民から多くの支持を受けているニーディリア伯爵のパーティーには多くの領民が集うだろう。


 ・・・因みに、貴族の結婚パーティーに領民を招くなどと言うものは普通であれば前代未聞である。一介の貴族がそんなことをすれば無礼であり、礼儀が鳴っていないと叱責され、最悪の場合は地位がはく奪されてもおかしくない。

 しかし、そこは『伯爵』の地位で押し切り、娘愛で知られているニーディリア伯爵の噂は貴族であれば周知の事実、政略的に考えてぎゃーぎゃーと騒いで流れでもしたらそれでこそ叱責ものだ・・・よって、仕方ないと口を噤んでいるのだ。

 そして、この国は決して豊かな国ではない・・・帝都と国交が閉ざされてから、街には以前の活気がない。この結婚パーティーを祭の様にする事で、領民の良い息抜きにもなるだろうと、ニーディリア伯爵はそこまで考えている。


 無論、貴族と領民とで会場自体は分けるそうだ。結婚パーティーは三日間行われ、領民達の会場では飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎとなるのは間違いない。


「ここまでで何か質問はあるかね」

「パーティーはここで開かれるのよねん?」

「あぁそうだ。しかし、これは帝都との国交修繕もあるでな・・・娘を一度帝都の相手方の方へ行かせ、そして相手方の親族と従者、帝都の神父を連れてくる手筈となっている。エリーザには娘の色直しも任せたいのだがよいな?」

「任されたわ~ん」


 その後もエリーザさんとニーディリア伯爵はお互いにパーティーについての話し合いを詰めていく・・・エリーザさんは職業柄こういった行事に参加する事が多く、その知識はかなりのものだ。次々とパーティーに関する案を多く挙げていく。


 そして、一段落ついたのか二人とも机の上に出された紅茶を手に取り一息に飲み干す。


 するとニーディリア伯爵は此方へと視線を向け、口を開く。


「長々とすまないな。冒険者の者には退屈な話であったろうに、此度の件は本当に感謝している。どうしても、娘には良い門出を行って欲しいのだよ。一頻り段取りは終わったのだが、何か貴殿からも案はないかね?」

「あ、え、えっと、そうですね・・・」


 唐突に飛んできたニーディリア伯爵の言葉に狼狽する。貴族様のパーティーなんて何にもわからない・・・先程からエリーザさんとニーディリア拍車の話を聞いていたのだが、前世の物とは形式的には殆ど一緒なのだが、その内容というか・・・『行事における目的』が全く違うのだ。


 例えば、新郎新婦の入場、食事の配膳、飾り付けその他諸々、貴族における上下関係やしきたり・・・果ては『家』における決まりや宗教的な物まで様々な物が関わっていたのだ。

 それに自分の様な『結婚式凄いなぁ・・・綺麗だなぁ』なんて安易な発想を持っている自分が意見できそうもない・・・。


「うっふん。難しいことは何も考える必要はないわよん。『貴族』を抜きにして貴方なりに何かないかしら?」

「うむ。そうだな」


 エリーザさんから助け舟が来た。恐らく、難しい事はエリーザさんやらニーディリア伯爵が手配してくれるそうだ・・・なら、一つだけ本当に安易ではあるのだがあることにはある。

 前世では当たり前のようにあったが、今のエリーザさんとニーディリア伯爵の間での話し合いでは出なかった物がある。


「『ケーキ入刀』っていうのはどうでしょうか?」

「ほう・・・それはどんなものなのだ?」


 今の話し合いの中になかったのはケーキ入刀。意味は詳しく知らないが、色々な意味があるらしく一番有名な文句としては「新郎新婦初めての共同作業」というものだろう。

 指輪を交わし苦楽を共にしていくと誓い合うのと似たような感じで、ケーキに入刀し分け合う事で二人は常に一緒で苦楽を分け合って歩んでいくもの・・・という事を聞いたことがある。


 そいった結婚式における重要な意味合いのほかにも、巨大なケーキがあれば演出としても飾りとしても華やかになるに違いない。

 指輪交換で感動のシーンを演出した後に、ケーキ入刀によって仲睦まじい光景を出す演出として効果的だろう。


 ・・・あ、これなら異世界風にアレンジすれば貴族社会でも通用するかもしれない。

『貴族は見栄を張るもの』ならばケーキに『個性』を出せばいいのだ。どのように個性を出すかはさすがにアドバイスできないが、デコレーションや大きさなどで財力や権力を示せればいいのではないだろうか?


 ケーキに施すデコレーションを凝らせば凝らすほど家の力があるという結果にもなる、大きければ大きいほど財力を示せる結果になる・・・我ながら素晴らしい後付設定だ。


 それを全てニーディリア伯爵に告げると、伯爵は眼を血走らせるようにして俺の言葉に集中する。一言一句聞き漏らすまいと、鬼気迫る勢いで俺の言葉に聞き入っている・・・怖い。


 一応大体を話し終わると、エリーザさんもニーディリア伯爵も驚いたような顔で俺を見つめていた。


「本当に感心するわねん・・・」

「ふむ。検討し・・・いや、それを執り行う準備を進める。エリーザ追加の金はいくらでも払おう、付き合ってくれぬか?」

「わかったわ」


 どうやら予想以上にお気に召したようだ。






 その後は、エリーザさんはニーディリア伯爵の離れで一泊することになり、俺達は貴族御用達・・・ウェルシュバイン製の豪華な馬車に乗ってチェルスレイクへと戻って来た。


 日は既に沈み、辺りは暗闇が支配する静かな街になっている・・・しかし、それは門の近くの話、中心に向かえば向かう程昼間とは違った喧騒に包まれる。

 昼間は清涼な空気が辺りを占めているが、夜に限ってはそこは酒精が飛び交い酒の匂いに包まれる。


 いつもであれば、料理の匂いにあっちにフラフラ、こっちにフラフラしているところであるのだが、今日に限ってはシロタエに腕を取られているので満喫する事はできそうにない。


 そのまま宿屋へ戻る・・・と


「あ、いたいた。おーい!!」


 人影が一人、宿屋の前で腕を高く挙げてぶんぶんと振っている。暗闇の中をよく目を凝らして、近づいて行ってみれば、宿屋が漏らす光に照らし出されて、見知った顔が浮かび上がる。


 さらさらの髪は金色に光り、イラッと来るほどに爽やかイケメンの顔立ち、腰に一本の剣を帯びた軽装の出で立ち・・・それは間違いなく


「あ、アドルフ!」


 そこにいたのはアドルフだ。恐らく帝都でやっていた用事が一段落ついたのだろう。


 前回のクエストが終わってから、アドルフは兵士になる為の手続きを行う為に一時パーティーを離れることになったのだ。

 で、ヴァンに関してはすんなりと手続きは終わったそうなのだが、どうやらアドルフだけかなり時間が掛かる事になってしまった。


 クエストでの戦果に関しては完璧であり、技量や実績ともに申し分はないと思ったんだけど・・・どうやら長年研鑽を積んだヴァンとは違い、年の若さから実績の調査が行われたのだとか。


 まぁ、確かにヴァンのあの強さで漸く兵士になれるのだ。技術は勿論の事、長年の経験が何より重要であり、アドルフの見た目から疑われても仕方ないのだろう。

 しかし、無事兵士になれたそうなので、いいだろう。


 ・・・よく考えてみれば、アドルフもヴァンの様に強いのだろうか?

 兵士になれたという事は、ヴァンと同じくらい強いのは間違いない。


 あぁ俺はなんて失礼な事をしていたのだろう。二人が素人だと思い込んで、簡単なクエストを受けて・・・それもスライムの討伐やら採集なんか。

 二人にとっては(ぬる)い依頼であったのは間違いない。


「やっと追い付いたよ」

「でも意外と早かったね」

「偶々『駿馬』の便に欠員が出て格安で乗る事ができたんだよ。それがなかったらあと一日や二日は遅れてたよ」


 アドルフと他愛のない話を交わしながら、チラリとシロタエの方へ視線を向ける。

 折角アドルフがこちらに到着したっていうのに、何もしないっていうのは・・・ねぇ?


「ダメです」

「そんなぁ」

「今日は私と一緒に、里に持っていくお土産を選ぶ約束があった筈です」


 がっくりと肩を落としていると、ヴァンがシロタエに声をかける。


「きょうばかりはなんとか・・・うっ!?」


 シロタエはにっこりと・・・いや、にったりとした笑みで此方を見つめる。

 あ、ダメだ。こりゃ、相当怒ってしまっているどうしようもない。


 ヴァンとアドルフに助けて貰おうと視線を向ける。ヴァンとアドルフも同じ気持ちであったのか、口を開き何かをシロタエに告げようとしたが・・・突如として硬直する。


 二人の顔色がみるみる内に蒼白へ変わり、俺とシロタエから視線を外す。

 アドルフはいやぁ今日はゆっくりしたいかなぁと言い、幾らこの身を鍛えようが女の気には勝てんものがあるな、なんてよくわからないことを呟いている。


 すると、心の底を蛇が這いずる様な悪寒に襲われる。


 その発生源は隣・・・ギクシャクとロボットの様にそちらへ視線向けてみれば、いつもと変わらないはず(・・)のシロタエの笑みがあった。


 しかし・・・その裏には有無を言わさぬ般若の念が込められている。

 シロタエに取られた右半身が全く言うことを聞かず、ブルブルと震え始める。


 結局、酒場での食事は断念して、今日の夜は里の皆へのお土産選びになった。

 だけど、帰り道にシロタエと一緒に食べたイカ?焼きだけは最高に美味しかった。



 ------------------------------------------・・・



 side ???


 ギシギシと軋みを上げる粗雑な手製の階段を昇る。腐った木が悲鳴をあげているが、しかし誰もそれを指摘しようとはしない。

 上からはもはや煙となるまでに粉々に砕け散った石の破片が降り注いでいる。

 それを鬱陶しげに払いながら、彼は薄暗い道を進んで行く。


 目の下には大きなくまを作り、いつから風呂に入っていないのか饐えた臭いが彼に纏わりつき、その身形は浮浪者のそれである。


 だがしかし、彼の服装を見る者が見れば、眉を顰める事は間違いないだろう。

 ボロボロになり、砂塵やら埃やらを洗わずに放置したそれは・・・装飾が施され、所々にくすんだ小さな宝石があしらわれているのが伺える。


「奴を・・・」


 誰もいないその薄闇の中、ポツリと彼から言葉が紡がれる。しかし、その一言には奈落の如き深い怨嗟の念が含まれ、彼の口の端からどす黒い血の滝が流れ落ちている。


 固く握られた拳から一滴一滴怨みがましく血が滴り落ちる。


「壊してやる・・・奴の全てを壊してやる。この国を壊してやる!!」


 彼は止まった足を先程よりも早く動かし、目的の場所へと急ぐ。

 そして彼はそとに出る・・・そこには篝火がたかれ、辺りを少しだけ照らし出す。


 そこには多くの人の影がたむろしている。一人一人が粗野な鎧を身に纏い、そのどれもに特徴的な紋章が刻み込まれている・・・だが、その紋章には斜め一直線に傷が引かれ、赤いインクで塗り潰されている。


「仕事の時間だ。お前達、準備をしろ!!」


 そう彼が叫ぶ。

 すると、人影はぞろぞろと移動し始め、綺麗に整頓されて置かれていた剣を手に取る。

 その数は優に百を越え、大半は下卑た笑みを浮かべた者が占めている・・・しかし、その中には彼と同じく昏い瞳を宿し、怨嗟の念が籠った者も存在している。


 全員が外で鎖に繋がれていた馬に跨がる。


「帝都に戦禍あれ!!」


 馬蹄が土を蹴り砕く音が、周囲に轟いた。

ハーピー観察日記

1:半悪魔の魔力量を計測、ミリエラ様と同等と発覚。

2:子供の世話を爪無しに委譲・・・心配。

3:北部ヌシ『マンモグラドン』に動きあり。


宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!

遠慮なくこの物語を評価して下さい!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!!


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