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帝都:湖畔の貴族でした!

貴族の方との面会です。しかし・・・


沢山のブックマーク有難うございます!!


次話投稿は一週間以内です。

 市で賑わう湖畔の街を横目に、早足で目的地へと急ぐ。できうる限り悪目立ちを避けたかったのだが、このメンバーで人目を引かないなんて出来るわけがない。

 先程から人の視線を一身に浴びて、俺達をジロジロ見るだけならまだしも、ヒソヒソと何か話されていると言うのは物凄く気になってしまう。


 そして、人目を引いている当の本人達に目を向けるが、気にした様子は一切ない。

 一人は眉目秀麗で爽やかイケメンのコトヒラ、一人はどこかのお姫様かと見紛う美貌のシロタエ、そしてもう一人は魔物でさえ恐れをなして逃げ出してしまうだろう圧倒的質量の持ち主エリーザさん。


 そんなメンバーで通りを歩けば、人目を引くのも当然と言えるだろう。

 唯一人目を引いていないのは俺とヴァンだろう。いや、良く見れば、ヴァンにも一定数の視線が注がれている様で、俺だけが人目を引いていないのだ。


 ・・・確かに悪目立ちはしたくないし、注目を浴びないって言うのは良いことなんだろうとは思う。

 しかし、ここまで興味を示されないって言うのもなんか複雑だ。


 カナンやカルウェイ、王都シルヴェルキア辺りでは黒髪黒目は珍しく少しは注目されたが、ここに至っては黒髪はあまり珍しいものではないらしく全く視線を感じない。


 ・・・やっぱり納得いかない!!


「見えたわよぉん。あれが依頼先の貴族、このチェルスレイクを領地とする貴族、『ニーディリア伯爵』の邸宅ね」


 指先を向けられた方に視線を向けると、そこは街や湖畔を一望できる小高い丘の上に建てられた邸宅だ。

 普通貴族の邸宅と言えば街の中にあるものであり、別邸や別荘などが街の外にあるものだ。


 しかし、ニーディリア伯爵の邸宅は街を抜けて、少し歩いた場所にあるのだ。


「ここの貴族様は昔からの言い伝えを守っているのよん。『湖に生を為す精霊全てに、感謝の念を伝えれば、繁栄と恵みが齎される』って言うね。嘘か本当か知らないけど、湖には数多の精霊が住んでいて、その精霊全てを見える様にってあの丘に邸宅を建てたらしいわん」


 ・・・たぶん精霊は何も考えていなくて、それを守っているのは人間だけなんだろう。

 だけど、精霊がいることで恵みが齎されているのも事実か・・・。


 そうこうしている内に街と外とを隔てる門に到着し、そこからは馬車に別れて乗車する。

 この街でも安心安全商売魂のウェルシュバイン馬車が通っているみたいだ。


「あぁ、帰ったら魚料理でも食べたいな」

「主人、この街の名物は『パナーク』と『ピッツァオ』という魚が美味しいようです」


 そう答えたのはヴァンではなくまさかのシロタエだった。どうやら宿から色々と情報を得ているらしく、ハンゾーと協力して情報収集を行ったらしい。

 二人が手に入れた情報を照合し真偽を図っているらしく、かなり信用もある。


「『パナーク』は油を多く含んでいるのにも関わらず身が引き締まっており、焼けば身が熱を吸収しその油が外へと溢れ出すのだとか。引き締まった身とその油を共に口に入れればそれはまさに絶品なのだそうです。『ピッツァオ』は少々値が張りますが、それに値する味が売りだそうです。身はプリプリで噛めばホロホロと身はほぐれ、身は水分を吸収しやすく味付けが馴染みやすく、腕の良い料理人の元にピッツァオが流れ着けばそれは至極の逸品に変貌するそうです」


 ジュルッ・・・シロタエの食レポを聞いていると、非常に腹が減ってしまった。朝は一応魚料理を食べていたが宿屋の料理であるからして、まぁ安物の料理なのだ。

 良く調べたねと頭を撫でてやると、真っ赤になるんだからこれがまた可愛くて仕方がないのだ。


 ヴァンはどうやら二匹とも食べたことがあるらしく、ウンウンと頷き店の名前を幾つか上げていく。


 店によって料理が杜撰な所もあるらしく、しっかりと腕をつけた料理人が在籍する料理屋に行かねば損をする・・・とヴァンは力説していた。どうやら、ヴァンも食い道楽に肩までどっぷり浸かっているらしい。


 パーティーでは、恐らくそれ以上の魚料理が出るだろうとヴァンは告げた。

 憂鬱だった貴族とのパーティーがなんだか少しばかり楽しみになったのは言うまでもない。


 しかし、パーティーはまだなのだ。

 では、何故貴族の邸宅へ向かっているのかと言えば、彼方の要望で会わざるを得なくなってしまったのだ。

 本当ならエリーザさんが服を持っていき、領主の娘さんに試着させるだけだったんだけど、それなら一度全員と顔合わせしたいと領主様が仰ったようなのだ。


 そんな事を考えている内にかなり時間は経っていたようで、もう目の前にまで邸宅は迫っていた。

 馬車から降りて、キョロキョロと辺りを見回し、邸宅に視線を向ける。


 その邸宅はは王都で見た邸宅とはまた別の雰囲気であり、豪奢というよりかは気品のある?邸宅になっていた。


「王都では豪華さや派手さこそが貴族としての力となるのよん。勿論此方でもあるにはあるけれど、ここの邸宅は『水の精霊』を崇める為に作られたものだから、派手にできないのヨーン」


 まぁ、確かに派手な外見を精霊達が喜ぶとが思えない。里では自然を最低限傷付けず、自然そのものな家ばかりであるし、ここの精霊もそういった類の家の方がいいのだろう。

 とは言っても、そこは貴族。質素すぎるのも問題なんだろうね。


 邸宅の門前で待っていると、初老の執事がやって来て身分証の提示を求める。


 エリーザさん達は慣れた手付きで身分証を提示し、それに続いて俺達も身分証を提示する。

 ・・・因みに、ハンゾーは肩に乗ってジーッとする置物と化しているので身分証は提示していない。


「では此方へどうぞ」


 中に入ると傍には大きな花壇がある。色とりどりの綺麗な花が咲き誇り、良く目を凝らしてみればそこに撒かれている水には少量の魔力が込められている。


『湖から水を引いてるようね。精霊達の魔力を感じるわ』

「契約してるってこと?」

『いいえ、違うわ。恐らく祝福ね。その者が没するまで、ほぼ永久的に続く魔法のようなもの・・・それが血筋に掛けられているみたい』


 どうやらここの領主様は『祝福』を受けているらしい。祝福は精霊に関する事柄であれば、何らかの良い効果を得れるモノであるらしい。

 祝福を与えられたものが、精霊に関するものを使ったりさわったりすると自動的に効果が出るらしい。

 誓約>契約>祝福の順番で重要度が違うのだそうだ。


 この話をしているときに、俺たちはもう誓約も越えてるんじゃないかなって冗談で言ってみたらディーレは黙り込んでしまった・・・どうやら怒らせてしまったみたいだ。


 邸宅の中に入ると、調度品や装飾品等が出迎えるのかと思ったがやはりそうでもない。

 ウェルシュバイン家では玄関に荘厳な壺が置かれていたり、廊下には豪華な花が幾つも飾られていたりしたもんだ。


 そうして、進んでいくと大きな部屋に通される。

 恐らく応接室であろう部屋、真ん中に大きなテーブルがあり、その上には少量のお菓子が入った皿が置かれている。


「もう直ぐ、領主様がいらっしゃいます。少々お待ちくださいませ」

「承知したわん」


 今回は礼式だの身分だのは無しにする・・・と言われ、いつも通りの服装で来ているのだが、本当にいいのだろうか?相手は『伯爵』の地位についており、確かかなり上の位だ。


 礼節なんかわかるわけもない。敬語と丁寧語の区別もついていない俺に貴族と喋る事が出来るのだろうか?


 ウェルシュバイン・・・デュルフ様に関しては商人から成り上がった貴族であり、腹の黒さが見事に俺とマッチしたお陰で気兼ねなく話せたが今回は相手が違う。

 生まれたときから正真正銘の貴族であり、それも伯爵という貴族位を持った人なのだ。


 ガチャリと扉が開かれる。


「すまないね。業務が思うように片付かなくて遅れてしまった」

「いいえ、おきになさらずニーディリア伯爵本日は・・・」

「あぁ、よいよい。堅苦しいのは無しにしよう。私と貴殿の仲ではないか」

「それもそうかしらねーん」


 エリーザさんの形式に則った礼を伯爵様は片手をピッと上げて制止させる。エリーザさんの容姿に全く動じていなくて驚愕したが、どうやら二人は何度か取引を行ったことがあるらしい。

 伯爵様は前の椅子に腰掛け、ふぅと息を吐くとエリーザさんの方へと顔を向け、次いで俺と俺の背後に立つ二人に視線を向ける。


「隣に座っているのがユガちゃんで、今回作った服の原案者ね。その後ろに立っているのは、専属護衛の者・・・と思ってくれると嬉しいかしらん」

「ふむ。承知した」


 食事の時や里の者しかいない時は、普通に座ったりしゃべったりするのだが、事こういう面会やら他人がいる場合においては皆俺の後ろに立つのだ。

 失礼じゃないかと思ったが、サテラ曰く、執事や護衛等を後ろに立たせている場合は大丈夫らしい。


「では、どの様な仕上がりか見せて頂こうか」

「それじゃあ御披露目するわよーん!!」


 エリーザさんの奥さんが、型に入れて立たせた着物を運び込む。当初は十二単の様に重々しく、派手になる物だと思っていたが、薄い羽衣の様な物を何枚も重ねサリーと着物とを合わせたデザインが出来上がったのだ。


 伯爵様は大きく目を見開き、その着物に食い入るようにして見ている。

 ほぅと感嘆の溜め息を漏らし、扉の傍に控えていた侍女もその着物に視線を奪われている。


「こ、これは素晴らしい」

「そうでしょぉん。私も最初に見た時は、驚いた物よん。この着物という服は黒髪に良く映える服で、ニーディリア伯爵のご息女様にはお似合いになるわん。ドレスに負けず劣らずの華美なデザイン、主張を抑えたレースに薄い羽衣を何枚も重ねて作った『キモノ』よーん。私史上最高の逸品と言っても過言じゃないわね」

「この長い人生で一度も見た事の無いデザイン・・・美しく映える妖艶さを醸し出す衣服。この様に素晴らしい服を我が娘が式場で纏う事になるのか」


 どうやらかなり気に入ってもらえたらしい。

 にしても、貴族のイメージが少しだけ変わりつつある。俺のイメージでは男尊女卑の社会であり、女は政略結婚のための道具であり、他所の貴族と繋がりを持つ為に用いられる・・・って思ってたんだけどなぁ。


 ニーディリア伯爵は、娘の花嫁衣装を気に掛け、本当に可愛がっている事がわかる。


 で、


「ご息女さんは愛されてますね」


 そう告げた途端、ピタリと場の空気が止まった。

 えっ?と周りを見てみれば、アチャーッという顔をエリーザさんは浮かべ、次いでしまったという顔を浮かべている。


 え?え?何かやったのか?


 俺の隣に座るヴァンも突如として凍りついた空気に戸惑いを隠せていない。


 侍女は額を抑え、エリーザさんの奥さんはエリーザさんに怒った視線を向けている。


 そして、それは起こった。


「そうなのだ!!!!! 私はアイーシャを心の底から愛していると言っても良い。妻に似た黒く切れ長の瞳は見る者全てを魅了せんばかりの魔力が込められているのだよ。アイーシャが生まれたばかりのあの日もそうだったのだ。その開ききっていないあの黒い瞳に私は吸い寄せられそしてそれの虜になってしまったのだ!! そして、今では立派に延びた睫毛もそれはそれは美しく一日中いや一生を捧げて私はそれを見ることに費やしても構わないと思っているくらいだ。プックリと膨らんだ唇なんかは世の男全てを手玉に取れてしまえるだろうくらいに美しいのだよ。スラッと延びた手足もこのゴツゴツとした私に似なくて本当によかったと今では思えるのだ・・・妻に似てしなやかに育ってくれて父は本当に嬉しいのだ!! あれが生まれてからというもの私は心血注いで仕事に励んでいた人生をやめ、娘の為に全てを擲つ人生を選択したのだ。あぁ、パパ、パパと言って私に抱きついてきた娘のぷにぷにの頬が今の事のように思い出すこともできてしまう。あの娘の笑顔は本当に可愛くて仕事の疲れなど全てが吹き飛んでしまうほどに素晴らしいのだ。無論容姿だけではない。娘は性格もそこいらの子供などとは比較にもならんほどに良いのだ。昔は私にベッタリで本当に可愛く、それは年を経ても変わることはなかった。しかし、今では様々な言葉を覚え、私の仕事の労を労ってくれるのだ。昔もそうだった。昔から良く気が利く娘で、私が疲れているときは肩をよく叩いてくれたのだ。あぁ、更に昔にはわ、私と結婚するなんて事も言っていたな。今でもそれが効いているのではないかと、信じているほどなのだが、まだまだ話はつきぬあれは、そうそう12年前だ・・・」


 ・・・・・・・・・うっわぁ。

 突如として机に身を乗り出し、まるで激流の如くニーディリア伯爵から自分の娘ののろけ話を聞かされる。

 まるで止まることのないそれを、言葉のガトリングを一身に浴び続けるや、その気迫はまるで太鼓の様に心臓に響く。


 間違いない。このニーディリア伯爵は


 重度の親バカだ!!


 そして、「娘さんは愛されていますね」で親バカ魂に発火させてしまったらしい。

 そして、周りの様子を見るに、侍女やエリーザさん達は知っていたらしい。それで、エリーザさんはそれを俺に教えるのを忘れていた・・・と。


 未だに言葉の弾丸は止まることを知らず降り注いでいる。しかし、話の内容がどんどんと変わっていく。

 そして・・・


「そ、そんな娘が好きな人ができたというのだ!! おかしいではないか、私の事が大好きで仕方ない筈の娘が他の男に恋をしたというのだよ。パパが大好きではなかったのかと叱責したい気持ちでいっぱいだったが、娘の不安そうな顔を見てどうしてその純粋な宝石の様な気持ちを踏みにじる事ができようか!!半端な男であれば私の評判が落ちようとも圧力をかけてでも潰そうと思った。呪いをかけてでもその男を陥れようとしたものだが、そいつは聡明な男だ。兵士として力量を積み、学も帝都の貴族学を受けていて非の打ち所かひとつもないではないか。それならば、それならば娘を幸せにできるだろうと、七晩自分に言い聞かせたものだよ。あぁ憎らしい。何故娘はこの私のもとで一生を過ごしてくれないのか、私の事が嫌いになってしまったのだろうか。こんなにも娘を思っているというのに、私は私は!?」


 呪詛めいた言葉を吐いたと思ったら、次は悲しみに暮れる言葉が紡がれる。

 殆どは聞き流していたが一つだけ気になったことがあった?


「エリーザさん、ニーディリア伯爵の娘さんのお相手は・・・」

「気付いたのねん。貴族の兵士様なのよん。貴族学っていうのを学ぶ為に娘さんが帝都に訪れていたそうなの。そこで出会ったらしいわ」


 おぉ・・・それならもう八方塞がりだろう。


 この親バカ貴族様はどうしても止めることができないのだ。もし相手が平民なら直ぐにでも止めれた、家格に問題があっても止めれた。


 しかし、相手は他国の有力貴族様であり家格に問題はなく、兵士として自分を律することも長けた者で性格的にも全く問題ない。

 政略的に考えてもこの上ない最高の逸材であるだろう。帝都と未だにギスギスしているこの国にとって帝都の有力貴族と政略的につながれるというのは降って沸いた幸運であることに間違いない。


 何よりも、二人とも相思相愛というのが、親バカ貴族様にとっては最大の壁だ。

 無理に妨害して娘に嫌われれば終わり。娘の目を欺けたところで国の迷惑になり得る・・・どうしようもないな。


 その後も、ニーディリア伯爵・・・親バカ貴族様の愚痴とのろけは3時間くらい続いたのだった。

ハーピー観察日記

1:半悪魔、ソウカイ様が引き取る。

2:鬼、浪武犬の進化を確認。鬼→魔小鬼、豪小鬼 浪武犬→死刃犬

3:北部ヌシ『マンモグラドン』を確認、一時撤退。




宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!

遠慮なくこの物語を評価して下さい!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!!

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