現状:転生しました
じっくりじわじわやっていくので更新ペース遅いです。
俺は、特にこれといって何ともない大学生活を歩んでいる。
小学校の頃は外に出て遊ぶ事が好きだったのだが中学に入ってから少々オタクとなり、高校に入って適当に勉学。情報系の大学に入って今に至る。
年齢は20歳。頭は良くないとは言え普通。容姿は身長175cm、キモいと呼ばれたこともなく普通(だがモテない)。友達はそこそこいて男女比は男が8、女が2といったところだ。
彼女いない歴=年齢なのはご愛嬌・・・。
そんな俺は現在、友達の和彦とラーメンを共に啜っている。
「お前はいつになったら彼女を作るんだ?」
そんなくだらない事をニヤニヤしながら俺に聞いてくる姿は非常に腹にすえかねるものがあるが、コイツはこう言う奴だと長い付き合いから慣れてしまってもいる。
俺よりも背が高く結構なイケメンで爽やかフェイス。成績は優秀だがスポーツは苦手な友達だ。
「余計なお世話だ。クソヤロウ」
横でケラケラと笑う和彦を尻目にラーメンを啜る。今日ここに来ることになった原因は和彦に誘われたからだ。
実は和彦は高校からのオタク友達。さわやかフェイスの裏には結構どす黒いオタクの顔がある。
「あぁ、空から女の子が降ってきて俺が受け止めて飼い主になりたい・・・」
和彦はアニメで見たのであろうシーンを自分に当てはめてニヤニヤしている。
「馬鹿言ってんじゃねぇよ。まぁ、早速本題なんだが・・・」
そう、ここに来る前に和彦に相談したいことがあった。それは俺が見る夢の話だ。
和彦は少し真剣な顔になって俺の言葉に耳を傾けた。
高校に入ってからだったと思うが俺は少々変な夢を見るようになってしまった。
最初は真っ黒な世界が広がり、音も感触も自分でさえも認識できない世界を自分が俯瞰している。少したって真っ黒な世界に反射的に目をかばうような閃光が襲う。 ・・
すると、広がっているのは焼けた大地に様々な死体。怒号と狂気に苛まれた世界が眼下に広がっている。人とモンスターのようなものが入り混じり互いに殺し合っても尚とどまる事を知らない両者。痛みに、苦しみに泣き叫ぶ者、長く続く戦いに絶望する者、怒り狂い剣を振るうもの。
そしてそんな光景をまざまざと見せ付けられ吐き気がする自分。
だけどなんとも思っていない自分がそこにいる。矛盾しているとは思う。吐き気がするのになんとも思わないなんてそんな変な状況なのだ。
そして決まっていつも夢が終わる時は決まっている。ノイズのようなものが目の前を走って聞き取れない声のようなものが耳に響く。
終わるその直前にノイズのせいか何人かは分からないが人とモンスターの様な影がこちらを見ている。
それでいつも夢が終わり起床する。
ほかの友人曰く、トラウマやストレス、不安や疲れがたまっているんだろうと笑いながら気遣ってくれる。
「ふむ。成る程な」
和彦は思案顔となり顎の方をさすって下を向く。こいつの何かを考えるときの癖が出ている。
「俺が聞いた話では、子供の頃に何度も同じ夢を見る人がいるというのは聞いた事がある。全然知らない場所で大きい屋敷に住んでいるってなものがあってな。んで、偶々行った先の海外で全く土地勘なんてないのに場所を知っていてその屋敷に行くための道を覚えている。てな事があったらしい。つまり自分の前世を見ているってところかな」
と和彦は真剣な眼差しを俺に向けて言ってくる。
和彦に相談したのはこういった話に親身になって耳を傾けてくれるからだ。
そして自分の考察から意見を述べて相談しあうといった事が唯一出来る親友でもある。
「俺の前世・・・・・・」
正直言ってそんなハードモードな前世は嫌だなと自嘲の笑みがこぼれる。
今までの人生は平穏で親もいて、友達もいて、喧嘩なんてものはほとんどしたことがなくスポーツもやってこなかった。俺の前世が戦場の誰かなんて想像できるわけがない。
「あまり気負わないほうがいいんだけど、相談するくらいだし結構悩んでんだろ?」
和彦が心配そうに俺の顔を伺ってくる。
「まぁ、もう慣れたし大丈夫だ」
まだ少し気になる部分はあるが高校時代から続いてるわけで慣れても来るというもの。あまり気にしないようにする。
「お前がそれでいいんだったらいいけどな」
しんみりした話は途中で切り上げ、アニメと漫画の話へと移行する。途中和彦が暴走して鼻息荒く今季イチオシの作品を長々と語って行ったり、二人でアニメの伏線を探しあったりと楽しい時間を過ごした。
楽しい時間はあっという間に過ぎて帰路に立つ。季節は春の一歩手前というところ。まだ少し寒く、風は冷たい。街灯が夜道をぼんやりと照らして影と光のアートを生み出している。
やはり気のしれた友達と遊ぶというのはいいもので日々のストレスや疲れを解消するいい機会だ。
「あの夢は一体何なんだろうな・・・」
和彦が話していた前世の話が頭の中を反芻する。俺の前世があんな血なまぐさいものだったのか、そうだったとしてそこで何をしていたのか。
「考えててもしょうがないか・・・」
自分で自分の悩んでいることを考えても意味がないなどと、内心でボヤく。
初めてその夢を見たのは高校に入ってまもなく、その頃はまだ視界はぼやけていて何を見ているかは理解できなかった。最初は気にしていなかったが同じ夢を何回もみるとさすがに不安になってくる。
両親に迷惑はかけたくないし、友達に言うのもなんだか恥ずかしかった自分はその夢のことを気にしないでいた。
しかし、年々夢が鮮明になってきたのだ。ぼやけた視界がクリアになって、声が聞こえて、音が聞こえて、そこに渦巻く感情を理解できるようになって、影が見えて。そうなってくると恥ずかしいなどとは言っておられず友達と両親に相談した。
結果は両親、和彦以外の友達が疲れやストレスだろうといった。
そして今年、先日20歳になった。20歳になってから夢は見ていない、次にあの夢の何が感じ取れるのだろう。次は殺される人々の内の一人になって、次の年には痛みや恐怖を感じるようになってしまうのではないかと怖くなって和彦に相談したのだ。
そんな鬱々とした事を考えつつその時はその時考えようと思考を無理やり切り替える。
家に着いていつもどおり暖かいご飯を食べ、風呂に入り、ゲームをしてアニメ鑑賞、そして寝る。そして朝が来る。
はずだった・・・
聞こえてくるのは怒号、目に映るのは焼けた大地とひしめき合う人とモンスター。死体の山に剣や鎧などの残骸。
流れ込んでくる多くの感情。狂気、悲嘆、怒気・・・
「・・・ツ!!」
頭が痛い・・・。
とうとう痛覚さえ感じるようになったのかと頭があるであろう場所に意識を飛ばす。
・・・しばらく戦場を眺めて不可解なことに気づく。
(ノイズが走らない?)
いつもならそろそろ視界にノイズが走り見えにくくなる頃だというのに一向にその気配がない。
(また、夢が変わったのか・・・え?)
突然頭に「ポーン」という音が響く
“転生まで後5分”
頭の中に声が響く。コンピューターから出力されたような音声に驚き目を見開く。
(な、なんだ?)
“新たな人生に何を求めますか?”
問われた意味が理解できない。
(え、えと?なに?)
“新たな人生に何を求めますか?”
思考が追いつかずそんな音声が頭に響く、そしてノイズが走り意識が朦朧とする。
(新しい人生か・・・)
思考がまとまらない頭の中に数々のアニメや漫画が頭に浮かぶ。
(できるなら無双、ハーレム、最高ライフ満喫したいな。漫画やゲームみたいに戦いがあるなら強くなっていきたいな。うん、それがいい)
頭にポーンポーン連続して音が響く
“無双をキャプチャしました”
“ハーレムをキャプチャしました”
“最高らいふをキャプチャしました”
“強くなるをキャプチャしました”
連続して鳴り響く音と音声に気持ち悪くなる。ノイズがまた強くなる・・・
(一体何なんだよ・・・)
“ハーレム・最高ライフに最適解を検索・・・エクストラスキル「直感」、「運命の選択」を手に入れました”
“無双・強くなるに最適解を検索・・・専有スキル「存在発展」、「発展ボーナス」、「進化」、「進化ボーナス」を手に入れました”
(お、おぉう?)
急に長々と音声が流れ目の前が明滅する。
“適正ボーナス発生。ユニークスキル「進化の系譜」、「スキル発現」を手に入れました”
“エラー発生、・・・ムとしt・・・転・・・します”
“・・・世・・・運・・・”
ノイズが強くなる、そして影が見える。頭の音声も最後は途切れ途切れになる。理解が及ばない思考が回らない頭の中で必死に何かを考えようとする。
(俺・・・どうなるんだ・・・)
このまま一生眠ったままになるのではないかと一瞬恐怖を覚えたのも束の間、最後に鮮明な音声が響く
“転生”
目の前が光で覆われた。
そこで、榊 武人の意識は完全に途切れたのだった。
文章書くのが下手なので何か変なところ、見にくい!などがあればどしどし教えてください。