7.女騎士その2
「ときに魔王よ、ひとつだけ聞いていいか?」
女騎士が真面目そうな顔をして質問してきた。
「なんだ?」
「なぜお主はそんな珍妙な格好をしているんだ?」
まずい。メルクさんの前でそれは禁句である。
恐る恐るメルクさんのほうを見る。
「ふふっ」
笑ってるぅぅううううううう!?! 笑っていらっしゃる! 怖い!
なんで笑顔なのにこんなにも怖いのだろう。
あまりににこやかな笑顔のせいで逆に不気味だ。
「魔王様、せっかくやってきていただいたのですからこのまま元勇者の妹君をを返してしまうのも魔王の名折れだと思います。
お相手して差し上げてみてはいかがでしょう?」
「えー、今そんな気分じゃ……」
「……何か言いました?」
「いえなんでもないです。やります、サー!」
俺はそれだけ言うと準備を始める。
「あ、魔王様、このお方は前勇者の妹君、きちんとお城の中で戦いましょう。相手に敬意を持ち戦うのも魔王の務めです」
「……え、そういうものなの?」
勇者の血族はVIP待遇なの?
「そういうものです」
「では、魔王様は先にお城の中にあります。魔王の間でお待ちください。
後ほど妹君をご案内いたします」
「わ、わかりました~」
俺は『魔王の間(魔王が勇者を迎え撃つ城内の一フロア)』に向かって歩き出す。
どうやって、あの厄介な人を追い返すかな~なんて考えながら廊下をトコトコ歩いていると目的地に着いた。
えーと、ここに座って待てばいいのかな?
なんか、偉そうな人が座る椅子っぽいんだけどどちらかというと魔王より、RPGで王様が座ってる感じのイスだった。
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こちらになります。
わたし、メルクが元勇者の妹君を『魔王の間』に案内しています。
もう次の通路を曲がってまっすぐ進めば『魔王の間』に着く。
私は一度止まって最終確認をする。
「さて、騎士様。この角を曲がってまっすぐ進みますと到着します。わたくしの案内はここまでですが、準備はよろしいですか?」
「ああ、できている」
「それでは行ってらっしゃいませ」
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送り出した後
私は外で移動魔法を使用し外にいるロキアナさんと合流しました。
「それでは、ロキアナさん。あの魔王城ごと破壊魔法で攻撃してください」
「……え?」
これは珍しい、あのロキアナさんがハトが豆鉄砲を受けたような顔をしています。
「いや、あの……本気?」
「はい? 本気ですよ?」
「でも魔王さま、中にいるのよ?」
「魔王様なら大丈夫です」
「根拠は?」
「ありません」
私がそう答えるとロキアナさんは、「はぁ~」とため息をついてそれから何も言わなくなりました。
このままでは困ります。
ちゃんと説得しないと。
「ロキアナさん、私は何もお願いしているわけではないんですよ。
やれと言ってるんです」
私の選んだ服をバカにしたあの小娘には痛い目を見てもらわないと困ります。
「あはは、もうだめね。何言っても聞かないわこの子」
何かを諦めたロキアナさんは詠唱を始めてくれました。
「ルキル・ロキル・クラッシュ」
城の上に巨大な魔法陣が現れる。
きました、ロキアナさんの必殺技、発動です。
そこから、すさまじいエネルギー光線が魔王城を包まれました。