第5話.覚醒
あれから、俺たちはお城に戻ってきた。
だんだん城にに近づいてくると城の方から物音が聞こえてきた。
城の門には男たちがたむろしているようだ。
徳利に入った酒を飲みながら城の門を蹴っている。
「おら~、魔王でてこいや~」
「俺たちが退治しに来てやったぞ~」
王城に戻ってきたら誰か知らない男達がいる。
なんかこうチンピラ冒険者みたいなやつらが複数人いるんだけど、皆ずいぶんと酔っぱらっているようだ。
「この世界の人たちって俺が魔王として誕生したことを知ってるんですか?
あと冒険者って大体あんな感じなんですか?」
俺は少し不安になりメルクさん達に気になった事を質問した。
なんかこう、魔王になったのにあんな酔っ払いどもしか魔王に挑んでこなかったらどうしようと思うとテンションが下がる。
「いえ、たぶんあれは酔っぱらってここまで来てしまっただけのただのチンピラですね。
全然強そうな気配感じませんし。
それに魔王様が誕生したことはまだ私たち魔族以外は知らないはずです」
ほうよかった、なんて思う前にそんな酔っぱらった奴らが魔王城の前まで来てるんじゃないよって思ってしまった。
魔王城の立地を少し考えなければならないかもしれないなー。
そんなことを考えながらそのチンピラ達に近づいて行く。
どちらにせよそこを通らないと城には入れないからな。
「あーん? てめえ、誰だ~?」
男の一人が酒臭い息を吐きながら俺に質問してきた。
どうやら酔っぱらっているらしい。
「え、魔王ですがなにか?」
俺がそう答えると酔っ払い達の目の色が変わる。
「あぁ? てめえみたいなひヒョロいのが魔王だと?」
「ふざけてんのかぁ?」
「随分と弱そうな魔王様だな~!」
「……げっぷ」
「しかもこんな変な格好したやつが魔王だってよ~」
「なんだそのちんけな格好は」
「あひゃひゃひゃひゃ!」
男たちは好き放題言ってくる。
バカにするやつ、メンチを切ってくる奴、げっぷしている奴。
そんな奴らに対し俺は静かに口を開く。
「てめぇら……笑いやがったな」
俺の怒りが伝わったのか男たちにも緊張が走る。
「魔王様……」
メルクさんが俺に熱い視線を送ってくる。
「おおぅ、だったらどうするよ魔王? 」
「謝れ」
俺は怒りを抑えながらそれだけ口にする。
「……魔王様」
メルクさんが熱い視線を俺に送ってくる。
「何を謝るんだ?」
下卑た笑いでそういってくるチンピラ。
三下臭がぷんぷんする。
「メルクさんの作った服のセンスを笑うのは百歩譲って許そう。事実だからな!
だが、俺を笑ったことに関しては絶対に許さん!」
「魔王様っ!?」
「だからまず俺に謝れ! そしてついでにメルクさんのセンスに謝れ!」
「ついでに!?」
こいつらがひどいことを言ったせいだろう。
メルクさんはショックを受けたのか顔が引きつっている。
「なにごちゃごちゃ言ってんだよっ!」
一人が斧を振りかざし叫びながら俺に斬りかかってきた。
「しねぇぇええええええええええ!!!」
斧を避け思いっきり頬を殴り飛ばす。
「おらぁ!」
ピューン
ゴミのように飛んでいくチンピラ冒険者A。そのままピカーっとどこかへ消えていった。
「おお、綺麗に飛んでいったな」
しかし本気で殴ったとはいえ、なんか飛んで行きすぎな気がするな……。
心なしか体が熱い。
久々にキレたからか? いや、二日前にキレたばかりだな俺。
「魔王様、紋様が……」
ロキアナさんの声に俺は自分の体を見直す。
「うん? なんだこれ?」
体に刻まれている魔王の証、紋様が赤い光を発していた。
「覚醒ですね」
「覚醒? でも俺は魔王になったんでしょう?」
「能力の覚醒です。魔王様の怒りで力が解放されたのでしょう」
確かに体が思ってる以上によく動いたりさっきのチンピラを殴り飛ばした時の威力が桁外れだったのはそういうことか。
「なるほど、つまり俺はさっきよりパワーアップしたってことですね?」
「せっかく強くなったのに一言で済ませてしまいましたね。別にいいですが……」
なんかプイッとそっぽを向かれた。
さっきの服のセンスを笑われたことをまだ引きずっているようだ。
奴らめ、本当に酷いことを言いやがって。メルクさんが落ち込んでいるじゃないか。
まあそれも今はいいか。俺がバカにされたほうが問題だ。
連中をさっさと星屑にしてやろう。
俺はギロリとチンピラ冒険者もどきどものほうを向く。
「「「「ひっ」」」」
「待たせたな、続きをやろうぜ」
俺はそういいながらチンピラどものほうへ歩いて行く。
「ぎゃぁぁああああああ!」
「にげろぉぉおおおおお!」
「……げっぷ」
「うぉぉおおおおおおお!!!」
各々悲鳴を上げながら逃げていく。
だが遅い。
奴らの背中めがけて走りだす。
「俺をバカにしたことを後悔しやがれぇぇぇえええええええ!!!」
そう叫びながら俺は一人残らず蹴り飛ばした。
連中はチンピラAと同じように飛んでいき、だんだん見えなくなっていく。
「地獄で詫びるんだな。俺をバカにしたことを……あっ、あとメルクさんのセンスに」
「……グスッ」
メルクさんは俺の優しさに感動して泣いているようだった。