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第4話.出かけます

やっとお外に出ます。

着る服でもめた日の午後。


俺の外を見たいというリクエストに対して、まずは城の外に出て近くを散歩してみようということになった。


俺たちは城から少し離れた川沿いを歩いている。


それにしても今日は天気がいいな。


ポカポカ陽気に包まれて道を歩くなんて何年振りだろう。


俺は歩いてきた方向を振り返る。


そこにはとても大きな城があった。


「なんというか、本当に城だったんだな。俺たちがいたところ」


「確かに住んでるだけじゃお城って感じはしないわね」


「ですね、どちらかというと迷路みたいに感じてました」


というか実際に何度かさまよってたし。


何でトイレに行った帰りに毎回迷子になるんだよ俺。


まあそれはさておき。


俺は歩きながら身を包む自然に酔いしれる。


暖かい太陽、眩い光に充てられ川が光り輝いている。


スライムも光り輝いている。


川のせせらぎ、心地よい風。


うごめく触手。


この世界も案外穏やかなようだ。


「触手やスライムを景色の一部としてみているかもしれませんが、魔王様あれはモンスターですよ」


「ん? モンスター?」


俺はもう一度周りを見渡す。


いつのまにやらスライムや触手で視界がいっぱいになっていた。


うねうねとネチャネチャの完全包囲網だった。


「うじゃうじゃと気持ち悪いわね」


ロキアナさんが汚物を見る目で触手を見ている。


「こういう状況大人のゲームでしか見たことあるなー」


まさか自分がこんな状況に陥るとは思わなかったけど。


「大人の……げーむ? なんですかそれは?」


俺のつぶやきにメルクさんが反応する。


「いや、気にしなくていいよ!」


これを説明するには18禁用語を使用しなくてはいけない。


流石に女の子に対し隠語を使用して何かを説明する度胸はなかった。


「じゅるるるるぅぅぅう!」


「シャァァアアアアアアアアアアアアアアア!」


俺たちが無視している間にスライムと触手が何やら盛り上がっている。


獲物が来たと喜んでいるのだろうか。


いかがわしいモンスターたちが近づいてくる。


力関係では負けないのだろうが生理的に近づきたくないのだろう。


二人は及び腰になっている。


ここは男である俺が戦わないとな!


「おっし、行くか!」


そのまま触手に向かって走り出す俺。


異世界での俺の初バトルが今始まる!


   ****


「もごごっ!? むぎぎぎぎぎ!」


数分後、俺は触手に締め上げられていた。


スライムのヌメヌメで足止めされ、そっちに気が向いている間にあれよあれよと触手に自由を奪われていた。


そんな哀れな男がそこにいた。


まあ、俺なんだが。


「魔王さま! 何で戦わないのですか!? 魔王様には瞬殺できるくらいの力があるはずですよ!?」


「ぷはっ! 確かに本気でやれば、引きちぎるなんて容易だよ。だが俺にはできない!」


口をふさいでいる触手を何とか外し俺は思いのたけを2人にぶつける。


「なぜですか!?」


「だって触手とスライムだよ!?

こんなにも素敵な存在を俺には攻撃できない!」


「アホね。帰るわよ、メルク」


辛辣な態度でロキアナさんが俺を見捨てて帰ろうとしだす。


待ってくれと叫びたかったがまた触手に口をふさがれしゃべることができない。


かわりにメルクさんが慌てて引き留めてくれる。


「ロキアナさん! 待ってください! あんな頭のおかしい人でも仕えると決めた私の魔王様なんです! 放って帰るなんてできません!」


ちょっと待ってメルクさん。フォローと見せかけてトドメさすのやめてください。


「メルク……まったく。しかたないわね。はぁ」


そう言ってため息をついた後、詠唱を始めるロキアナさん。


「ルキル・ロキル・ボルト!」


前に伸ばした手のひらから雷がほとばしる。


その雷でモンスターたちを俺ごと攻撃してきたぁぁああああああ!!!!


「あばばばっばばばば!?」


「じゅるるるるる!」


「しゃあぁぁあああああああああああ!?」


俺と触手、スライムの悲鳴が重なる。


俺も触手もスライムも瀕死である。ビクンビクンしている。


一応、俺ごと消し飛ばしてしまわないように手加減してくれたらしい。


ふぅ、助かったと息をついていたら、右手の紋様が光りだした。


「ん? なんだ……汝の力を我に、われの血を汝に、今ここに主従関係をつなぐことを盟約する!」


俺は気がつけば触手とスライムに対してそう言葉を発していた。


途端にあたり一面赤い光に包まれる。


光が晴れるとモンスターたちは大人しくなっていた。


「どうなったんだ? なんだったんだ今の……」


俺のつぶやきにメルクさんが近付きながら答えてくれる。


「おそらくですが、あのモンスターたちは魔王様の配下になりました。

遺憾ながらこれであのモンスターたちも魔王様のしもべです」


そう言われて初めて状況を理解する。


半分無意識の状態であのモンスターたちを配下にしたけど、なんだろうな……あまり呼び出せそうにないな。


敵じゃなくてメルクさんとかロキアナさんに先に倒されそうだし。


せっかく配下を手に入れたのに呼び出せる気が全くしなかった。


次回の更新は土曜の夜の予定です。

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