第3話.着替えます
お義父さんと呼ばせてを見てたら更新時間になっていることに気付きませんでした。
とりあえず第三話です。
どうぞ~。
「さて魔王様。何かしたいことはありませんか?」
突然異世界に来てしまって魔王になった翌日の朝。
三人で朝食を食べた後、メルクさんが俺にお茶のような飲み物を差し出しながら質問してきた。
どうやら昨日俺が呼び出された時間は夜遅かったらしく、あの後寝室に案内されて夜を明かした。
「したいことか~。そうだな~」
せっかく異世界に来たのだし、したいこと自体はいろいろあるんだけど……。
ありすぎて逆に浮かんでこないな。
そんなことを思いながら窓から空を眺める。
元いた東京と違ってこっちの世界の空は青く、雲も白い。
都会の空はもっと黒ずんで見えていた気がする。
空がきれいだなんて思う日が来るなんて思ってもみなかった。
「外が……見たいかな」
気が付けば俺はそう口にしていた。
「外ですか、では今日は近場を見て回りましょう」
****
「あ、そうでした魔王様。こちらの服をお召しになられてください」
メルクさんはどこから出したのか、服を俺に手渡してきた。
「メルクさん、これは?」
「はい、魔王様のお洋服です。もともと着ていらした一着だけでは心もとないでしょうから」
「おお、ありがとうございま……す?」
手渡された服を見てみる。
……おかしい。
赤一色だ。
ズボンも服も下着も上着も赤一色である。
正直服なんて着れればいいって思っていた俺でさえ躊躇する服だった。
「なんか、赤くないですか?」
「はい、紋様に合わせて赤の服に赤のズボン、帽子はロキアナさんとお揃いのとんがり帽子にしてみました」
「……いや、でもちょっとこれは」
さすがにこの服を着るのはな……。
あと年がら年中勝負下着を穿きたくない。
俺がこの服を着るのを渋っているとメルクさんが察してくれたのか、
「ははぁ、魔王様この服着るの渋っていますよね?」
「う、うん、まあ……」
普通の神経している人間は着ようとはしないよね。平日には。
「わかってしまいましたよ。魔王様が思っていること」
「いや~。わかってもらえて助かりましたよ。
準備してもらった手前言いにくくて」
「いえいえ、気になさらないでください」
こんな頭のおかしい格好で外を出歩くところだった。
いや、本当に助か―――
「マントがほしかったんですよね」
らなかった。
「もちろん準備していますよ。マントは純白にしてみました」
まさかの状況悪化だった。
「どうしてそういう結論に至ったの!?」
「魔王様といったらマントはやっぱり外せないと思いまして!」
赤い服に赤いとんがり帽子、白いマント。もし風が吹いてマントがいい感じに揺れたら……
「いやどこのサンタクロースだよ!?」
「さんたくろうす?」
サンタクロースという言葉を初めて聞いたのかメルクさんは首をかしげている。
ああ、この世界にはいないのか。サンタクロース。
「あの、申し訳ないんだけど、服もう少しほかのものないかな? もう少し色があるとうれしいんだけど」
クリスマスでもないのにサンタコスはちょっと、ね。
「ではこれはどうでしょうか。ボーダー柄なのですが」
そういってまたもやどこからか出したのか他の服を渡してくる。
「……あの、これはどうしたの?」
手渡されてまた固まる。
シャツだけならまだ何とかなりそうなんだけどな。
この人はなぜ上も下も下着も同じガラでそろえようとするのだろうか。
「はい、地下牢の近くで見つけました!」
「やっぱり囚人服じゃねえか!」
「あぁ! だからシャツもズボンも縞々だったのですね!」
「なんで気が付かなかったんだよ!?」
「似合そうだなと思ったので持ってきました!」
「うん、きみ天然だからって何でも言っていいって思ってない?」
俺らがそんなアホなやり取りをしていると
「いいから早く着替えなさいよ魔王様。全身真っ赤でもシマシマでもいいじゃない」
いいかげんしびれを切らしたのかロキアナさんが催促してきた。
「いやだよ!? なんでこんな究極な二択なんだよ!」
「魔王様っどちらを着られるのですか!? ちなみにあなたの服はもう洗濯してしまいましたよ」
「あっ、なんてことしやがる!」
「さあさあ、どちらを着られるのですか~?」
結局この後、俺たちは揉めに揉め、俺が赤い服を選んだのは陽が高く昇ってしまった後だった。
鏡を見て確認したが、やはりどう見てもサンタクロースにしか見えなかった。
スタート編としてはここまでです。
次はようやくお外に出ます。
本当はここの話でお外に出る話になるはずだったのに、着替えでまるまる一話使ってしまいました。
キャラの暴走は読めないですね。