第1話.扉の先は異世界
お待たせしました。
本編第一話ございます。
……あれ? どこだここ?
店を出たはずなのになんで真っ暗で何も見えないんだ?
黒い光に包まれていて何も見えない。
だが、何やら話し声が聞こえてきた。
「きました! 成功ですよ! ロキアナさん!」
「それはそうよ。私が魔法をを使ったのだから。
先代の魔王様の血族が生きていたらどんなところにいても無理やり呼び出すわよ」
「無理やりってところに貴女らしさを感じますね」
「それ、褒めてるのかしら」
なんかよくわからないけど女の人が二人で話しているっぽいな。
黒い光でしばらく目が見えなかったけど、視界がはっきりしてきた。
まず目に入ってきたのは、レンガっぽい壁や床。そして俺の足元には魔法陣。
それから魔法陣から少し離れたところに綺麗な服を着てる美少女と、魔女っぽい服……全身黒づくめ、とんがり帽子にマントを着た大人っぽい美女がいた。
その二人が綺麗すぎて俺はまじまじと見てしまった。
俺の視線に気が付いたのか、きれいな服を着た美少女が俺に話しかけてきた。
「はじめまして、私の言葉が分かりますか?」
「は、初めまして。はい、わかります」
「いきなりお呼び出ししてしまい、申し訳ございません」
「いえ、ところで貴女たちはいったい……。それにここはどこですか? 俺は店を出ただけなのになんで道路じゃなくこんなところにいるんですか?」
「ここは魔界です。私は魔王様の補佐を務める者でメルクと申します。
私たちはあなたに魔王様になってほしく召喚させていただきました」
「そして私が実際に貴方を召喚した魔女のロキアナよ」
「あ、これはどうもご丁寧に。北岡魔琴と申します……ん? 召喚?」
二人の美少女が自己紹介を終えたが俺はその自己紹介よりも気になる単語に反応してしまった。
「はい、召喚です。単刀直入に申し上げますね。北岡魔琴さま」
きれいな服を着た美少女、がにぱっとした笑顔で答える。
「魔王になってくださいませ」
「んっ……?」
言葉は通じるけどいきなり高度なお話すぎて、言っていることが分からない。
思わず返事にならない声を出してしまった。
「いきなり魔王城に飛ばされて驚いていると思います」
うん、確かに驚いているんだけどそうじゃないんです。
ここがこの人たちがいうように魔王城だとしても、俺は魔王城に来たから驚いてるわけじゃないんですよ。
いきなりこんな変な所に来て綺麗なお姉さんたちに変なこと言われているから驚いているのだす。
「あの~、ここは東京……日本じゃないんですか?」
「トウキョ……ニホン……? 聞いたことがない都市ですね。どういうところなんですか?」
きょとんとしながら俺の話に耳を傾けるメルクさん。
日本を知らないのか。
「世界に自慢できるアニメ制作国&社畜育成国です!」
嘘は言ってない。
「あにめ? しゃちく?」
メルクさんはピンと来ていないようだ。アニメ見たことないのか。珍しいな。
「あの、ちょっといいかしら」
今まで黙って事の流れを見ていた魔女っぽい服を着たお姉さん―――ロキアナさんが切り出してくる。
「もしかしてあなた、この世界の住人じゃないのかしら? ここの地域、ヴァナノキアというのだけど、聞き覚えはない?」
「ヴァナノキア? いや、聞いたことないですね」
俺が即答するとロキアナさんは顎に手をやり考え込む。
「おそらくなのだけどあなたは異世界の住人ではないのかしら」
「異世界? ここが?」
「悪いのだけど、もしあなたが異世界から来てしまったのなら今の私たちじゃあなたを元の世界に戻すことはできないわ」
「日本に帰れないんですか!?」
「そうね……まさか私も異世界から人を召喚してしまうとは思ってもみなかったから。
まあ、そこはさすが私ってことなんでしょうけど。
そんな偶然起きてしまったことを元に戻すなんてさすがに天才の私でも難しいわ」
なぜか自分にうっとりしながら俺に終了宣告してくるロキアナさん。
「つまり、俺は元の世界には戻れないと?」
「ええ」
ロキアナさんが他人事のように答える。
「そうかぁ、俺はもうあの街には帰れないのか~」
「あ、お、お気持ちはお察ししま――」
「よぉっっっしゃぁぁあああああああああああああああああ!」
「ひゃい?」
俺はその場で飛び跳ねてはしゃぎ始めた。
テンションが上がりすぎてその場でガッツポーズした後小躍りし始める。
メルクさんが悲鳴を上げたが全然気にしない。
「っきゃっっっふぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお!! ザマぁ! 店長ザマぁ~!
散々コキ使ってくれやがって! 文句を聞いてあげたいけどぉ~、聞けな~い! なんせぇ俺は~異世界に来ちゃったからぁ~!
アディオス店長ファック! あー最後に殴っといてよかった!」
「な、なんでこの方は喜んでいるのでしょうか」
「もしかしたら、変な子を呼び出してしまったかも知れないわね……」
2人の視線も気にせずそれから1時間近く俺の変なテンションは続いた。
次回は明日の22時までにはあげたいと思っています。