初めての都会デート(百合ではない)-1
「…暑い、ですね」
そんな独り言を呟いてしまう程度には今日の気候は気だるげなものだった。
無事に体育祭も終了し、既に6月へと突入しているためこの気候も仕方ないものでもあるのだが。
そろそろ梅雨であるので今日は雨が降らなかっただけマシだと考えるべきかもしれない。
そんな6月のある休日。私は珍しく外出をしていた。普段は家で本を読んでいるのが主な私にとってはこの季節の外出は少し身体に堪える。
今いる場所は高校生であるならばお馴染みの場所であろう、原宿。
因みに今まで一度も来たことがない。
何故私がこんな場所にいるのかというと…
「はーるーなーちゃん!!! お待たせ!!! あなたの最愛の小雪さんが到着だよっ!!」
「ははは。暑苦しいのは気候だけにしてほしいですね」
当然のことながら小雪さんに誘われたからです。私が好き好んでこんな場所に来るわけがありません。
家が近いのだから一緒に行けばいいのに、どうやら小雪さんは「お待たせ!!!」をやりたかったらしい。待たせるなよ。
「私の陽菜ちゃんへのLOVEは毎日熱さを増していくッ!!」
「…こんなに悲しいなら愛などいりません…」
相変わらず、相変わらずである小雪さんを見て、一気に疲れがやってくる。まだ集合の段階なのに。
「…で、今日はどこに行くつもりなんですか?」
取り敢えず原宿に集合をしてみたものの、今日何するかは全く聞いていない。
「んー、今日はね、デートだよデート!! デェトだよ!!」
「イントネーション変えても分からないです、小雪さん」
「今日は陽菜ちゃんと一緒に都会を満喫しようツアァァァ!!、だよ!! 因み私は初めて来たからよく知らないけど!!」
うん、知ってた。北海道生まれですもんね。かといって東京住みの私が詳しいって訳でもないんですが。
「…と、取り敢えず適当に歩いてましょうか…」
歩くのは嫌だが、この場にいるのはもっと嫌だった。
…小雪さんが注目集め過ぎなんですよ、良い意味でも悪い意味でも…。




