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Wrong Gears  作者: 無駄に哀愁のある背中
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第八章:受け入れない現実と知らぬままの幸福

ドキってする言葉ってありますよね! 順当に「好き」「愛してる!」逆に「嫌い!」「死ね!」 そんな言葉を上手に活かせる人って素晴らしいですね! どんな弁論術を持っている人でも、こういう単純で迫力のある言葉にひっくり返されることもあります!

そんなことより伏線って難しいですね……(笑)

     〇

 ピンポーン。

 刑事さんは躊躇なく、チャイムを鳴らした。久々の三鷹だ、等々力勝の家もここにある。ぶっちゃけ、等々力がいるかはわからない。でも、ふいにドアがガチャリと開いた。それは俺と同い年くらいの男だった。俺は声を出そうと思ったが、出なかった。代わりに刑事さんが口を開いた。

「初めまして、等々力勝さんですか?」

「はい」

「三鷹署のもので、鳥居涼子といいます。二年前の女子大生強姦事件について調査をしていまして、聞きたいことが」

 等々力は不思議な顔をした。まるですべてをわかっていたかのような顔を。

「やっぱりですか……じゃあ、中にどうぞ。全部話します」

 すべてを悟ったように彼は俺たちを誘うと、部屋まで案内した。部屋はデスクトップ型のパソコンが目立つ部屋だった。

「単刀直入に聞きます。等々力さん、あなたが犯人ですか?」

 俺は固唾を飲み込んだ。

「いいえ、違います」

「そうですか、では事件の」

 彼は刑事さんが話しているのに口を開いた。

「俺はやってません。でも、すべてを知っています。これ以上を話すとなると、刑事さんには約束をしてもらわなくちゃなりませんけど、どうします?」

 刑事さんは俺の方を向き、様子を確認してきた。俺が頷くと、質問をした。

「約束ってなんですか? ものによります」

「簡単です。僕を逮捕しないでください」

「……あなたの話を聞けば、あなたが犯人でないことがわかるんですね? もしもそうだったのなら、逮捕はしません」

「一応、約束成立ってことでいいかな。刑事さん、それに、楠雄君」

 名乗ってもいないのに彼は俺の名前を口にした。

「なんで、俺の名前を?」

「まあ全部話すよ、ただし質問はすべて終わった後な」

 一度、深呼吸をした彼は話しだした。

「じゃあ、結論からいうと俺は完全なる彼女のストーカーだ。高校三年から大学二年のあの日までね。あの日、俺が見たのはまさに悪夢だった。彼女が二人組の目出し帽の男に襲われるところを見た。すごい感情になったさ。助けたい気持ちがあったが、俺はストーカー、そんなものに助けてもらって嬉しいのか? ってね。でも、悩んでるうちに、ことは終わり彼女はズタボロになって、橋の下に捨てられた。俺は怖くなったけど、彼女のためになにかできないかって思って、俺は犯人をつけたんだ。で、二人共橋から離れた交差点で、帽子を取ったんだよ。そしたら……」

 彼は言葉を詰まらせた。俺と刑事さんは前かがみに聞いてると彼は決心したかのように言った。

「それは古田洋と新島学だったんだ」

 俺の体は勝手に動いた。俺は等々力の首を掴み言った。

「ふざけたことをいうな、二人共俺や椋乃の幼馴染だぞ! そんなことをするはずがないだろ!」

 刑事さんが止めに入った。

「待って、楠雄君。ここでこの人を殴ったって、ダメだわ。話を聞きましょう! あと、等々力さん、まだ証拠がないです。証拠を教えてください」

 俺が手を離すと、首をさすってから話を続けた。

「刑事さんはわかると思うけど、ストーカーにだって種類がある。俺は常にカメラを持ってる撮影型ストーカーだった、らしい。で、そのときの映像も全部、このパソコンの中に……」

「見せてください。それがホントなら、私はあなたは逮捕しません」

「わかりました、じゃあ好きなだけどうぞ」

 彼から手持ち型のビデオカメラを渡された。俺はそのビデオカメラについている小さなスクリーンを開いた。刑事さんも横からそのスクリーンを覗いていた。

 再生ボタンを押すと、その映像にひどいものが写っていた。椋乃が襲われる瞬間から、終わるまで、そして目出し帽を取る幼馴染の姿が鮮明に記録されていた。それとともに、撮影者である等々力の動揺も封じ込まれてあった。

 俺は絶望した。なぜなら、すべてが線でつながって恐ろしいものが見えたからである。確かにあんな場所にあの時間、女の子が通ることを知っていたのは俺が電話したあの二人だけ。強姦の罪の意識から、学は心に病気になって学校に通わなくなった。そして、「椋乃」というワードが鍵となって気絶した。どんなに頑張ったって目の前の証拠が……これまでの情報が……疑うことを許してくれなかったのだ。もっと恐ろしいのは今の三人の状況だった。椋乃はこれを知らず、自分を襲った。男と知らずに付き合っている。噂によると婚約もしたらしい。というか、学のように体調崩すことなく、自分が犯した相手と付き合っている洋に怒りを覚えた。だが、幼馴染という過去がそれを徹底否定する。そして、もしもこれが明るみに出ていたらと思うともっと恐ろしかった。学は過去を捨て、自分にぴったりな彼女を作り文学で成功。このまま行けば、幸せ一直線。それをぶち壊す。椋乃に関しては被害を受けた時の何十倍のショックをうけるだろうか……俺には皆目検討つかないし、考えもしたくなかった。

「これがすべてだよ、楠雄君。俺はこれを知った時に、個人的に全員を調べたんだ。でも、所詮ストーカーの俺にはなんにもできなかった。だから、お前が彼女を守る方向に動いたから、俺はお前を信じてなにもしなかった。それ以上になにもできなかったけど」

 呆然とする俺の横で刑事さんも俺の言っていたことがすべて繋がり、絶望していたのだろう……刑事さんは質問をした。

「なんで、警察に来なかったの?」

「警察は目先の犯罪を捕まえて満足してる。俺が行ったら、ストーカーで捕まえて全責任を押し付けられる気がしたんです」

 刑事さんは黙ることしかできなくなっていた。

「とりあえず、この映像を焼いたDVDがある。これを二枚とも楠雄、お前にやる。好きに使え。俺はなんにもできないからこれをお前に託す。もう彼女を苦しませないであげてくれ……」

 等々力もその場に崩れ落ちた。その時、等々力の服の袖がめくれて、腕にあったリストカット痕が見えた。俺はその時、こいつにはこいつなりの愛の形があって、毎日のように葛藤していたことに気付いた。俺は頭が破裂しそうになりながら家路に刑事さんと一緒についた。帰り道、刑事さんはなにも言わなかった。そして、別れ際、一言だけ……

「あなたに任せるわ、結論が出たら教えて頂戴」

 そういった。刑事さんの背中は悲しかった。


     〇

「じゃあ、さき行ってくるね!」

「ちゃんと、教科書とか持った?」

「うん、大丈夫。そうだ! ちょっとこっち来てよ」

「うーん?」

 洋はダイニングからやってきた。私は洋の口にキスをした。すると、恥ずかしそうに言ってきた。

「ちょっと、びっくりしたわ」

「結婚することが決まった後の同棲だよ! こういうこともしたいもん」

「椋乃ってすごい行動的だよね」

 洋は頭をポリポリ掻きながら、そう言った。

「あなたがそうさせてるんだよ! 私はあなたと一緒になることを幸せに思ってるんだから!」

「そっか」

 洋は恥ずかしそうに言った。私は朝からテンションが上々だった。部屋を出て、階の端の階段をリズムよく降りる。足取りは最近、こんな感じで軽い。階段を降りきり、駅に向かって歩きだした。すると、すごく珍しい顔が話しかけてきた。

「椋乃さん」

「え? 刑事さん! お久しぶりです」

 私の事件の担当の刑事さんの鳥居涼子刑事だった。はじめのころはよく会って、メンタル的にも生活的にもサポートしてもらった恩人である。でも、会うのが久々すぎて

「わざわざ来たってことは、なにかあったんですか?」

「まあ、ちょっとね、報告があるというか……それよりも同棲してるっていう話を聞いたんだけど!」

 刑事さんと話しながら、大学に向かって歩き始めた。

「はい、そうなんですよー! それに単なる同棲じゃないですよ! もう婚約もしてるんです」

「すごいね! ええと、椋乃ちゃんが今年で……」

「二十二歳です!」

「え、じゃあ、私より七つも若いのに結婚か……すごいね! 私も、うだうだしてると婚期逃しちゃいそう」

 刑事さんは笑いながらそう言っていた。刑事さんは普通に美人さんなのに、やっぱり仕事が忙しいのか? と考えたが、私は深くつっこむのは失礼だと思ったので、ゆるく流した。そのまま、二人で話しながら駅まで歩いた。駅で別れる直前、刑事さんは話を事件のことに変えてきた。

「ねえ、椋乃ちゃん。もしもあなたの事件の真相がわかったとしたら、聞きたい?」

 私は突然のシリアスな質問に驚いた。少し悩んだが、私は決めていた

「私は真相を知りたいです! 刑事さんが知っているのなら絶対知りたいです。どうなんですか?」

 刑事さんは困った顔を浮かべていた。

「その絶対って言葉を忘れちゃダメよ」

「刑事さん……その感じは真相を知ったんですね! 教えてください! 絶対に大丈夫ですから!」

「うん、そうね。でもね、私は楠雄君にすべてを任せることにしたの。だから、私の口から絶対言えないの」

「え、なんで?」

「私が決めたから……今、彼ね、悩みすぎて体調崩しているらしいの。だから、ちょっと待ってあげてね。あ、電車出ちゃうよ! 急がないと!」

 そう言うと刑事さんは私をホームまで送り、逆方向のホームに行った。なぜ刑事さんはこの事件の真相を楠雄に一任したのだろうか? どちらにせよ、刑事さんがそこまで隠す真相とはなんなのだろうか? 私はとっても知りたくなった。それと同時にパンドラの箱に触れたような気がした……。

いかがでしたか? これを合わせた二話から三話分が私がプロットの前に思いついた設定です。ここを書き始めにした作家さんはどれだけ暗い心をしてるんだ……とかは思わないでください。どんどんと解明されていく事件の真相と主人公たちの心情を感じてください!

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