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Wrong Gears  作者: 無駄に哀愁のある背中
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第二章:小さく弱々しい希望

友人「小説暗いわ!」俺「心に闇を抱えてるから」友人「お? お? 漆黒堕天使気取りですか?」俺「そう、俺の名はしっこ(ry」

というわけで、続きあります。ちょっと明るいかな?

     〇

 あの晩の後の日曜日、私は警察に行くことになった。しかし、お父さんと行くことはおろか、お母さんとも行けなかった。私だって分かっているはずだった。だって、自分の両親だもん。そんなことをするはずがないって、でも体が動かなかった。それで、結局は楠雄に来てもらって、両親と楠雄と四人で行くことになった。外を歩いている時に見られて恥ずかしかったけど、楠雄の手を放す事が出来なかった。でも、楠雄は嫌な顔を一つも見せず、「昔もこんなことあったよね」と笑ってくれていた。そんなふうに私に気を掛けてくれる楠雄の様子が私にとっての救いだった。警察に着くと、楠雄のお願いと向こうの配慮で鳥居涼子という女性の刑事さんが担当してくれることになった。基本的には楠雄が喋って、私が聞かれたことについては楠雄を介して刑事さんに話す、みたいになっていた。とりあえずは私のストーカー相談に警察にのっても貰っていた時の資料を中心にそのストーカーを洗い出すことになった。でも、犯人が二人なのでストーカーの線は薄いって言われたけど……。その後は刑事さんから病院に行くように言われて、次の日に行くことになった。

 産婦人科の先生曰く、最悪の場合の妊娠の可能性も考えて、また二週間後来るようにとのことでした。次に精神科医のところに行き、検査。色んな病名を言われたけど、ようは事件の精神的ショックによる心の病気ってことらしいです。先生の判断もあり、親とのコミュニケーションの回復まで自宅療養と二週間に一回の通院になり、大学は休学。私だって通いたかったが、親ともまともに話せなく信用もできない女が学校に通うことなんてできない。まさに絶望だった。もっと絶望だったのは……生理が来ないことだった。生理予定日は一月二十八日であったのに、全く来ない。

そして、既に日付は二月三日、事件の夜一月十八日から二週間と一日、私は妊娠を宣告された。


     〇

 俺は椋乃があの事件にあってから、毎日椋乃の家に行った。事件直後はご飯も喉を通らず、食べても何かをフラッシュバックしたかのように吐いていた。だから、最初は点滴をしてもらっていた。椋乃の両親の話を聞くと、椋乃はもう二人とはほとんど口を聞けなくなってしまって、俺が来ている時以外はなにも話さなく、部屋からも出てこないらしい。俺が来ても、俺が椋乃の部屋に行って話すため二人とはまともな会話をしていないようだった。あの日が来てからは、椋乃はもっと荒れた……。

「なあ、椋乃?」

「うーん?」

「今日みたいに一日いられる日が無くて悪いな」

「仕方ないじゃない。あなたには大学があるんだしね!」

「やっぱり、俺明日は大学を休むよ。一緒に病院行く!」

「バッカじゃないの? 明日は普通に大学あるでしょ? それに二月三日ってテスト前だし、そんなことしたら単位落とすよ」

 椋乃はまだしまわれずにいる部屋の振袖を見ながら言った。そう事件が発生したのは成人式のすぐ後だった……。

「でも……でも……」

「私なら大丈夫だって、最近両親とも話すようになったし、もしもそうだったとしても大丈夫だよ!」

 椋乃は俺に嘘をついた。椋乃が両親とほとんど話していないことなんて分かってる。でも、俺は「ふーん、よかった」としか言えなかった。バカは椋乃だよ……。俺に強がったって意味がないのに。

 次の日、学校からすぐに帰り、椋乃の家に向かった。出迎えてくれた椋乃のお母さんの様子でどのような結果だったか、すぐにわかった。恐る恐る椋乃の部屋に入った。すると、昨日見た部屋とは大違いに荒れていて、別人の部屋のようだった。本棚からは全ての本が落ち、机はグチャグチャ、綺麗に掛けられていた振袖もラックから無造作に落ちてしまっている。俺はその振袖を元の位置にかけ直して、ベッドの上から窓の外をぼーっと見つめる椋乃の横に背中合わせで座った。まるであの夜のようだった。なにも出来ず、なにも言葉が出ず、ただただ椋乃の心の痛みが伝わって来るだけ。俺はまた抱きしめてあげることしかできなかった。抱きしめると、椋乃もあの夜のようにただただ泣いた。ウァンウァン泣いた。そんな椋乃の涙は異常に冷たく、あの日の雨を思い出させた。この日から椋乃が人工中絶手術を終える二月の下旬まで、椋乃とまともに話せたのは俺だけだった。


     〇

 限界を感じて根を上げたのは私でもなくお父さんでもなくお母さんだった。

 私はあの日、妊娠が発覚してから、手術を決断する日までお母さんやお父さんとは一言も話す事が出来なかった。お母さんも並行して荒れていった。私が中絶を終えても、私と一緒にいることがストレスだったみたいで……。三月になってから、お父さんの長期海外出張が決まり、お母さんも一緒に行くことになった。お母さんはお父さんが心配だって言っていたけど、絶対お母さん自身が耐え切れないからだとわかった。私はついに肉親に見捨てられたのだ。でも、意外と悲しみはなかった、多分楠雄がいてくれたからだと思う。だから、楠雄に全部を打ち明けた。

「ねぇ、楠雄」

「何?」

「実はさあ、私来年度から一人ぼっちなっちゃうんだ……」

「ん? なにそれ?」

「お父さんとお母さん、海外に行っちゃうんだ」

「え、椋乃を置いて?」

「うん、まあ私は日本で治療受けないとダメだしね。でも、お母さんも行っちゃうなんて。というか、そもそも娘が病気なのに出張を受理する親って」

 全部を悟ったはずだった、でも涙が出てきた。楠雄は申し訳なさそうな顔になった。

「きっと、ちゃんと向こうで切り替えて、戻ってくるさ」

「ううん、私は見捨てられたの……お母さんにもお父さんにも……」

 というと、楠雄は顔を真っ赤にして怒鳴った。

「何、弱音を吐いてんの! 俺にいつも馴れ馴れしく怒る椋乃とは大違いじゃないか」

「……そうだよ、もう違うの。あの時の私は死んじゃったの」

 楠雄は私の肩を持って、目を合わせるように言った。

「死んでなんかいない、もしも死んでいたとしても本当の君は俺が蘇らせる。それに親のことを諦めるな! 確かに今は見捨てたかもしれない。でもな、絶対戻って来るって信じなきゃ!」

 私も感情的になった。声を荒らげて言った。

「ごめんなさい、もう私は無理なの! 何を根拠に信じればいいのよ!」

「君が二人の子供だからだよ! 子供が親を信じなくて、誰を信じるんだよ!」

 私はハッとした。楠雄のおかげで、すべてに気付いた。楠雄は更に続けて言った。

「今すぐは無理かもしれない。でも、信じることは止めるな。君を一番に大切にしてるのは親だよ! わかった?」

 私は楠雄の言葉に強く説得されて、頷いた。

「うん」

 楠雄はニンマリと笑った。

「よかった。椋乃がわかってくれてさ。君の一人暮らしに関しては考えておくよ。場合によっては俺の家に来て生活すれば……と思ったけど、俺、来年度から一人暮らしだったんだ」

「え?」

 楠雄という支えがなくなるかと思って一気に不安になった。


     〇

「よかった。椋乃がわかってくれてさ。君の一人暮らしに関しては考えておくよ。場合によっては俺の家に来て、生活すれば……と思ったけど、俺、来年から一人暮らしだったんだ」

 俺が一人暮らしするのが決まったのは本当に昨日今日の話だった。俺がそろそろ三鷹にいるのは研究室やレポートの問題で辛いと、両親に言ったら簡単に一人暮らしを了承してくれた。でも、あまりにも急だったので、三月の終わりに引越しができるように急ピッチで引越し先を見つけようと思っていた。

「え?」

 椋乃は不安そうに言った。

「あの、四月からどっか行っちゃうってこと?」

「まだ、不確定だけど多分……」

「そ、そんな……」

 椋乃は見るからに落胆した。俺はそんな椋乃の姿が異常に不安になった。そこで、冗談半分で提案した。

「じゃあ、一緒に来る?」

「え?」

「俺は一人暮らし不安だし、キミとふたりだったら多分大丈夫だしね」

「え、ホント!? じゃあ、一緒に行く!」

「だよね、嫌だよ……え? マジで?」

 完全に断られると思っていたのに、めっちゃ軽い感じで椋乃は了承した。

「うん、一緒に暮らそ。あーあ、不安だったの、親がこの家を出て、一人暮らし。だから、あんなくだらないこと考えちゃって」

「お、おう」

「ちゃんと、家事は分担しようね。あなたが家主だろうが、公平制だからね」

 椋乃は微笑みながらそういった。椋乃の笑顔を見たのなんて久しぶりな気がした。また、そんな笑顔見せた椋乃は事件後の椋乃じゃなくて、事件前の椋乃にとても似ていた。俺はこの調子で椋乃が椋乃自身を取り戻せることを確信したのはこの時だったと思う。

「よっしゃ、そうと決まれば荷造りだ!」

「バッカ、その前に親の交渉と部屋探しでしょ。まったく」

 椋乃との二人での生活が始まることが決まった。


友人にはジェットコースター小説と呼ばれてます(苦)

推敲足りなくてすみません

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