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Wrong Gears  作者: 無駄に哀愁のある背中
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第十一章:いつの間にか一緒に強くなった二人

ついに話は終焉に! バッドエンドが待っているのか、はたまたハッピーエンドか……。はっきり言って、どっちに転ぶかはここで決めました! 伏線とかは張り忘れてました(笑)

     〇

 目が覚めると、霞がかった白い天井が見えた。背中に柔らかい感触があった。私はベッドで横なっていることがわかった。左手に違和感があった。見てみると点滴が刺さっている。耳を澄ませると、右手から機械音がしていた。右側に体を向けてみると、そこには楠雄がいた。私はビックリして、思わず背中を起こした。すると、私が背中を起こしたことに気づいた楠雄の横に座っていた見覚えがある女性が驚きながら言った。

「椋乃さん、気が付いたんですね!」

「えっと、ここはどこなの? あなたは?」

「覚えていませんか? ……ってそういえば、私まだ、自己紹介もちゃんとしてなかったですね。私は加賀見春花と言います。楠雄君とは同じ研究室の仲間です」

 その女性は楠雄の部屋にお見舞いに来ていた、楠雄の恋人だった。名前はさておき、自分や楠雄の状況がわからない。

「ちゃんと話すのは初めてですか? ……二度あったことあるけど……私は金子椋乃って言います。えっと、ここは? というか、楠雄は?」

「私のほうから言うのもアレなので、担当医さんを呼んできます。あと、楠雄さんのお母さんも」

 春花さんは駆け足で病室を出て行った。私は楠雄の調子が心配だった。楠雄の方をずっと見ていると、担当医という女性と楠雄のお母さんの美子さんがやってきた。担当医は近くの丸椅子に座ると私に向かってカルテを見ながら病状を話しだした。

「初めまして、金子椋乃さん。担当医の篠原純って言います。えっと、あなたの状態ですが、心的ショックによる気絶をしていました。あと、軽い栄養失調です。今は点滴を刺しています。退院は栄養失調気味なのが少し良くなったら、あと長くて三日間くらいですかね。あと、記憶のほうですが、どれくらいまでの記憶がありますか?」

「えっと、楠雄……じゃなくて、今隣にいる須藤君の家で二人で話していたことまでは覚えています、それからは……思い出せません」

「なるほど、でも、良かったです意識が早く戻って。あなたが運ばれてきたのは昨日なので、気を失っていたのは丸二日ということでしょうね。大事に至らなくてよかった」

「あの、先生? 須藤君は?」

「あー、彼はですね、完全な栄養失調です。それが原因で肝臓の一部に菌が入り、昨日緊急手術しました。意識を失った状態での手術で心配だったのですが、一応成功しました。麻酔が切れるのは後、五、六時間くらいですね。そしたら、起きると思いますよ。にしても、すごい栄養失調でした。かなりの間、飲まず食わずだったのでしょうね。退院は容態が安定したらなので、早ければ三日間くらいですね」

 担当医さんはカルテを見ながら言った。私は楠雄が思い悩んでいたことを今になってやっと理解した。

「あの、なんで私はここに?」

 すると、楠雄のお母さんの美子さんが話しだした。

「楠雄の部屋に春花ちゃんがお見舞いに来た時に、応答がなかったんですって。で、楠雄からもらっていた合鍵で入ったら二人共倒れていたらしいの。まあ、本当に二人共大事に至らなくてよかった。あとは楠雄が目を覚ますだけね」

「美子さん、心配してくれてありがとうございます。えっと春花さん、ありがとうございます……あと、ごめんなさい、こんなことになってしまって」

 春花さんは恥ずかしそうにでも、申し訳なさそうだった。

「いいえ、私じゃなにも出来ませんでした。それに強引に頼んだのは私です。楠雄さんと椋乃さんをこうしてしまったのは私の責任でもあります」

「春花さん、責任を感じないでください。だって、あなたが来てくれなかったらそのまま餓死で二人とも死んでいたかも知れないんですから」

「そう言ってもらえると、すこし気が楽になります……」

 春花さんはそういうと楠雄の寝顔を見ていた。すると、美子さんが春花さんに話しかけた。

「春花ちゃん! 今日は私が来れたし、もう大学に行っていいわよ。楠雄と椋乃ちゃんなら私がついてるし、ここのところ楠雄に付きっきりでまともに行けてないでしょ?」

「ええ、でも、楠雄さんが心配なんです」

「あのね、春花ちゃん。あなたは学生としての義務もあるし、楠雄は大学で教授をよく手伝っていると聞いたわ、その分の手伝いをする人が必要だと思うし、それはある意味楠雄の彼女であるあなたの義務かも知れないの。ね? 今日は私がいるから行きなさい」

「そ、そうですね……じゃあ、今日はこれから行ってきます。午後の授業には間に合うと思うので。行ってきます、お母さん!」

「はい、行ってらっしゃい」

 春花さんは楽しそうに出て行った。さっきまで落ち込んでいたのになぜだろうか? すると、美子さんが話しかけてきた。美子さんは私が一番病んでいた時に、たくさん話しかけてくれた人で、私が事件後に楠雄以外で一番最初に不信感を抱かなくなったのは美子さんだった。

「まったく、たかが『彼女』って言われただけで認められたと勘違いしちゃってホントに可愛いわ。ね、椋乃ちゃん?」

「ああ、なるほど、だから春花さんは喜んでいたんですね」

「あら、気付かなかったの? 最後だってちゃっかり私のこと「お母さん」って呼んでたしね。近頃の子ってホントに押しが強いのね」

「そうかもしれませんね……」

 すると、美子さんは一度席を立ち、病室から出て行った。すぐに給湯室からお湯を持ってきてほうじ茶を淹れてくれた。

「ねえ、椋乃ちゃん?」

「はい?」

「あなたは今、洋君と付き合ってるんだよね? このことは伝えなくていいの?」

 洋という言葉に頭が反応して痛みが走った。でも、なぜか痛みはすぐに消えた。正しくは、楠雄が抱きしめてくれたことを同時に思い出したら、楽になったのだ。

「はい、伝えなくていいです。実は最近、というか気絶する直前にちょっとあったんです……」

「そっか、詮索はしないけど辛くなったら私にでも楠雄にでも言いなさいね!」

「はい、ありがとうございます」

 すると、美子さんは深いため息をついた。

「あのね、椋乃ちゃん。あのときも言ったけど、あなたと楠雄は幼稚園の前からの付き合いなのよ。私にとって椋乃ちゃんは私の子供みたいなもんなの。それに今、ご両親は日本にいなくて頼れないんだし、もっとウチに頼りなさい! わかった?」

「はい」

「まだ、椋乃ちゃんらしくないけど、いいわ。で、話は変わるけどもう楠雄は諦めたの?」

 思わず私は、飲んでいたほうじ茶が変なところに入ってしまった。

「グヘッ。ごめんなさい、ちょっと変なところに入っちゃって、というか諦めたってなんですか!?」

 美子さんは笑いながら言った。

「あら、ちょっと椋乃ちゃんらしくなったわね。別に他意はないわよ、昔から何かとあるとすぐに「楠雄」「楠雄」って言って、たまに私なんかより親っぽいことして、昔から楠雄のこと好きだったでしょ?」

 美子さんに言われて、確かにそうだったと思った。昔から何か行事があれば「楠雄と!」と思っていた。それが当たり前で、だからなにも変なことだと思わなかったけど、確かに今の自分が客観的に見れば、あれは好きということだったのかもしれない。

「うーん、そうかもしれませんが、もう楠雄には彼女がいるし、つけ入る隙はないかなって」

「何を言ってんのよ、年頃の男の子が誰かと付き合うって当たり前じゃない? もしも楠雄が未だに彼女を作っていなかったら、私が見つけてくるレベルだもん。で、どうなの、まだ好き?」

 すごく恥ずかしくなった。好きか嫌いかで言えばもちろん好きだし、大好きか好きかで言えばもちろん大好きだし、彼氏にしたいかしたくないかで言えば洋が居ない今、すごくしたいって気持ちだった。

「……はい」

「わあいいなあ、青春は。にしても、楠雄はほんと運がいいわね。椋乃ちゃんに春花ちゃん、美人さん二人から思いを寄せられるなんて」

「はあ。でも、もう私は手遅れです。遠回りしすぎました」

「なに言ってんの? 確かに春花ちゃんのお父さんは日本医学の世界の重鎮だし、うちのお父さんだって賛成してるけど、私は椋乃ちゃんを応援してるんだからね!」

「え、本当ですか!?」

「もちろん! あなたほど楠雄を知っている人はいないし、任せられるから」

 とても嬉しくなってしまった。ノホホンという気持ちに浸たりながら、美子さんとお茶をしていると面会時間が切れてしまった。美子さんは帰っていてしまった。すると、突然、右から声がした。

「母さん、相変わらず話が長いな」

 それは楠雄の声だった。


     〇

 目が覚めたのはかなり早かった。でも、体が馴染まず目を開くことができなくて、口の動きもだるかった。すぐになにか麻酔が効いているとわかったので抵抗はよして、耳だけを立てることにした。最初は聞こえが悪く、二人の女性が話していることしかわからなかったが、次第に鮮明に聴こえてくるようになった。会話は椋乃と母さんのものだった。でも、している内容がなんとも言えない感じだった。

(なんで俺を彼氏にすることを前提に話しているんだ?)

 恥ずかしいせいで会話が終わるまで、声が出るのかを試すのが遅れた。でも、母さんが帰った今、変な独り言を言うのもダメだと思った。考えた結果、椋乃に話しかけてみることにした。

「母さん、相変わらず話が長いな」

「え、楠雄起きたの!? ナースコール!」

 椋乃は興奮して、ボタンを押そうとした。俺は上半身を起こして、椋乃の方を見ながら言った。

「押さんでいいわ! そろそろ面会時間終わるってことは看護師さんとかくるでしょ?」

「あ、そっか……ってもしかして起きたんじゃなくて、起きてた?」

「まあ」

 椋乃はすごく赤面した。なんか久しぶりにこんなに椋乃を可愛いと思った気がする。

「ねえ、起きてたら声かけてよ!」

「だって、麻酔が効いてて、口がうまく動かなかったから」

「もう!」

「なあ、椋乃? なんか聞いてない、容態のことで?」

「なんか緊急手術したらしいよ、肝臓を。早くて退院は三日後だってさ」

 普通に驚いた。自分の知らないところで自分の体が病気になって治っているのだから。体を触ってみると腹部に違和感があった。

「マジかよ、体に……本当だ。縫合痕あるわ。なんか手術したなんて実感ないなー」

「まったく、呑気なこといわないでよ。死ぬかもしれなかったんだから」

「かもね」

 椋乃はため息ばかりをつき始めた。俺のあまりのテキトーさに少し飽きているようだった。でも、俺はそんな日常の会話が戻ってきたような気がして嬉しかった。

「ねえ、楠雄?」

「うーん?」

「私ね、さっき、美子さんと話してて決めたことが二つあるの」

「うん」

「私、あの二人を訴える。で、私はあの出来事にケジメをつけてもっと強くなる!」

 椋乃の口から意外な言葉がでた。自分から事件のことを口に出し、二人を訴えると言ったのだ。俺は嬉しかったまるで、親のような目線だが椋乃の成長を感じたのだ。

「うんうん。いいと思う! 手伝うよ。でもね、学だけは話がちょっと違うんだ。家にあるんだけど、それを聴けば学も被害者だってわかると思う」

「え、そうなの? でも、私はなんにしても訴える!」

「俺も一緒にやるから頑張ろうぜ!」

 椋乃の意志の強さを感じた。同時に、俺の心にあった後悔が取れていくような気がした。でも、椋乃はそういった後、突然恥ずかしがりながら言った。

「あのさ、楠雄……?」

「うーん?」

「私ともう一度やり直さない? 幼馴染という微妙な関係じゃなくて、恋人として」

 はっきり言って、こんなに単刀直入だとは思わなかった。でも、俺には春花という彼女がいる以上、断る他ないのだ。

「あのさ、突然過ぎるし俺に彼女がいることは知ってるでしょ? 俺は椋乃のこと好きだよ。でも、今は無理だよ」

 椋乃はすこし悩んだ様子だったが、すぐに言い返してきた。

「なんだろうと、私は諦めないからね、あなたが私のことをもう一度好きになり直すまで!」

「お、おう」

 俺と椋乃は無事仲直りができた。そして、お互いの気持ちを確認することができた。

無理矢理感満載とはこのことですね^^ まあ、完結しました! 次の会で本当のラストになります。同時投稿ですね! 

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