第二話 ~ギルドメンバーと芋ほり~
ギルド分けが終わった翌日、ポトス達のギルドは芋畑に座って芋ほりをしていた。
「なあ、ポトスよぉ」
うずたかく積み上げた芋の隣に座っている大男がすぐ傍に居るポトスに声をかけてくる。
その声はけだるそうで不満げだ。
この大男はポトスと同じギルドのヒゴという男。ノルウェン国の東のまた東、和国からやって来たという金髪の戦士だ。
華奢なポトスとは違い、筋骨隆々、豪然たる様はまさに屈強な戦士だが、先日あった『闘技』の初戦で破れてしまった。更に脳まで筋肉と化していたので筆記試験はボロボロ。そんな過程を経て、ヒゴは底辺ギルドへ納まったのだ。
初戦敗退ではあるが屈強な肉体をもった戦士が農作物の収穫に勤しむ姿は場違いで、いかんともしがたい雰囲気がある。
「何だ」
大男程の高さではないが積み上げた芋の隣でポトスもけだるそうに応える。
屈強な肉体を持った戦士ヒゴにとってこの作業は面白くないだろう。
「何で芋ほりなんだ……他にもっといい依頼はなかったのか?」
「あるわけないだろ。底辺ギルドでも受けれる依頼なんてこれくらいしかないんだからな」
ポトスは広場でやらかした後のギルド分けで底辺ギルド配属となった。
試験の順位からすればポトスは百位で底辺ギルドに所属するわけはない。それがなぜ底辺ギルドなのか。それは今回、ドラゴン追随部隊へ選出する人数が減った事に起因していた。
この振り分けの発案はイクスの前で演説していたゴードンだった。追随部隊選出を十人に減らし、残りのイクス約九百九十名をマスター一名、ギルド員十名ずつのギルドに分けることにしたのだ。よって十一人ずつのギルドが九十できる計算で、順当にいけばポトスは上位ギルドに食い込むはずだった。しかしここにゴードンの新たな案が適用されてしまったのだ。
「そうか……しかしおめぇも災難だな。百位だっけか? かなりいいとこいったのに底辺ギルドなんてな」
「ああ、まさか上位九十人がギルドマスターになるなんてな……」
ポトスが述べたように上位九十人がギルドマスターとなり、百一位以下の九百人を十人ずつのギルド員に分ける。そのグループを上位者のマスターから順に振り分けたのだ。つまり百位のポトスは順位でいう九百九十一位以下の端数をメンバーとしたギルドマスターとなる。能力の低い人材ばかりが集まるギルド、つまり底辺ギルドのマスターというわけだ。
もちろんポトスは反論はした。だがその発案者であるゴードンにもそれなりの持論があった。順位の低いイクス達は見下され、肩身の狭い思いをする。その為、国を去るものが多かった。だから一人上位の者を入れることでそれを解消できるのではないか、という安直な考えだった。ポトスはその安直な策の犠牲になったわけだ。
「まあとにもかくにも。ギルドランクを上げないとずっと芋ほりをすることになる」
「それはごめんだな……しっかし、こんなことでギルドランクは上がるのかねぇ」
こんなこと、とは他ならぬ芋ほり。ヒゴはこの芋ほりに余程不満なようだ。
「ああ、時間は少しかかるが報酬がでかいからな」
「報酬がでかいと上がるのか?」
ギルドランクアップの方法は依頼の難易度、報酬額によって決まる。難易度の高い依頼をこなせばランクがアップするし、難易度が低くても報酬額が高ければランクが上がるのだ。細かく言えば報酬額の何割かが国に取られる。その貢献度によってギルドランクが上がるのだ。
それを説明してやるとヒゴは「なるほど」、と関心したように顎をさする。芋ほりの際、指についたであろう泥がヒゴの顎にひげを作る。
「でもなぁ、これを見てみろよ。どこを見ても芋、芋、芋。たまんねぇぜ」
ヒゴの言う通り。周りは地平線が見えそうなほどに芋畑が広がっている。
ノルウェン国は周囲に魔物が出る森はなく、広大な大地が広がっている。更に年中涼しい気候のおかげで農作物の生産に適してしているのだ。その為ノルウェン国は農産物の生産量がウラシア大陸でも上位に食い込んでいた。しかしコールドドラゴンの出現によって多大な被害をこうむり人手は不足、生産量はがた落ち、現在も徐々にその順位を落としつつある。
だからノルウェンはそれをイクス達に任せようとしたのだ。イクスの仕事はドラゴンを倒す事だけではない。ノルウェン国の情勢を立て直すことのほうが大きいのだ。むしろドラゴンはノルウェンが意地でも自らの兵力で打ち取りたいと思っているに違いない。だからイクスにはその支援をして欲しい、というのが本音だろう。
しかし、わざわざ遠方に来てまで芋ほりをしたい物好きなどいない。報酬はかなりいいのだが、ポトスのように進んでやろうというものはなかなかいなかった。
「肉体労働で汗水をたらし、高額の報酬が手に入るんだ。それの何が不満なんだ」
ポトスはニヤニヤしながら掘った芋をひょいっとヒゴに投げつけた。
ヒゴはそれを眼前でキャッチする。
「ははっ、おめぇ、絶対そんな泥くせぇタチじゃねぇだろ」
芋を掴んだ手をどけるとヒゴの楽しそうに笑う表情と言葉が顔をだす。先程まで自分と同じく、けだるそうに芋ほりしていたのだ。この芋ほりに対する二人の意気込みは同じだろう。
「ふふ、当たり前だ。泥遊びなんて性にあわん。子供じゃないんだからな。こんなことさっさと終わらせてやる」
不敵な笑みをもってポトスはそう言い切った。このいつ終わるかも分からない芋掘りにすぐさま終止符を打つと。
「お、まさかさくっと終わらす方法でも思いついたのか?」
「二つほど」
ポトスはニッと片唇を吊り上げて笑いヒゴもそれに合わせて方唇を釣り上げた。
「いいねぇ、ならお手並み拝見といこうじゃねぇかっ」
ヒゴは投げられた芋をポトスにひょいっと投げ返した。
「にしてもランクを上げたところでドラゴン追随部隊には入れないだろ? 何か他に目的があるのか?」
ポトスは帰ってきた芋をキャッチし、山においてまとめると同時にうなずいた。
「俺には他にやりたいことがある」
ここノルウェンにはコールドドラゴン討伐の救済措置として近隣諸国から様々な依頼が舞い込んでくるようになったのだ。
金は他の国々でも必要でその多さが国力と言っても過言ではない。よって援助金の妖精が難しかったのだ。あったとしてもその額はたかがしれている。
だから飽和している依頼をノルウェンにまわしその報酬を援助金として受け取っていたのだ。
その舞い込む雑多な依頼の中にポトスのお目当ての依頼があるようだ。
「へぇ、興味本位で聞くがそいつは――」
「リーダー!」
二人の会話をぶった切ってポトスに歩み寄ってきたのは長い黒髪の少女だった。背は低く、ポトスの肩にも届かないほど。黒い服に黒いスカート、露出や派手さのない地味な出で立ちの少女は一般に聖職者呼ばれる職。聖系の魔法を行使し闇を払い傷を癒やす魔術師である。
リーダーというのはその少女がギルドマスターであるポトスのことを勝手にそう呼んでいるだけ。
「これだけ取れたよ」
そういってスカート一杯に包んだ芋をポトスの隣に積んでいる山にゴロゴロと転がして一つにまとめた。
「ご苦労さん」
少女の名はマリア。ノルウェン国からかなり南に位置する聖教都市アレナスカというところから来たらしい。更にはその聖教都市の長である人物の一人娘とのこと。
それを踏まえて改めてみて見れば肌は日に焼けておらずとても白い。腰まで掛かるほどの髪にもかかわらず艶やかで痛みがない。目もくりっと丸くて大きく、美男美女の子として生まれた事が分かる。美男美女が多く集まる場所には権力が集まる。権力あるところに美男美女ありだ。大都市の長の娘と言うことも頷けるというもの。
だが、いささか言葉遣いが俗っぽい。更にこんな泥臭い芋ほりも嫌がると思ったのだが、依頼内容を告げると目を輝かせて喜ぶほどだ。
そのお嬢様で俗っぽい娘がなぜ底辺ギルドなんかにいるかというとそれは前日のギルド分けが終わった後の出来事。
ポトスがギルメンと専用の宿舎に移動している際、大きな荷物を重そうに運んでいる少女に鉢合わせしたのだ。最初ポトスはその少女の横を無視して通り過ぎようとしたのだがその間際、急に独り言を呟きだしたのだ
「はぁ~……重いなぁ。誰か運んでくれる心優しい人はいないかなぁ」
同情を誘う言葉に加えチラッチラッとポトスに視線を送ってきたのだ。ポトスはそれを無視して進むとがっしり腕を掴まれた。
「聖人たる我が身に差し伸べる救いの手に感謝の意を示します」
マリアは自ら掴んだ腕を救いの手と比喩し、神の名の元に慈悲という肉体労働をポトスに強要したのだった。
だがそれは底辺ギルドのメンバーリストに載っていた人物だとすぐ分かった。未受験と言う烙印を押された二人の内の一人だったのだ。
ノルウェン国に大荷物をイクスの選別を行う試験のある日に持ってやって来る人種は限られている。更に未受験ということですぐに残りのギルメンということが判明しそのまま底辺ギルドへ連行したのだった。
ちなみになぜこんなに遅れたのかと聞くと「寝坊」、ということらしい。ふざけている。
「ねぇ、さっき笑い声が聞こえたんだけど」
マリアは汚れたスカートをパッパと払うとポトスとヒゴを非難がましい目で睨みつけてきた。自分はこんなにがんばっているのに二人は談笑していた、と不服を申し立てるつもりなのだろうか。
「あ、いや、別にサボってたわけじゃなくてだな」
マリアは聖女。悪を許さず、善を遂行する者。この流れは恐らく説教となるだろう、と思われたがそうでもなかったらしい。
「何か面白い話?」
先ほどの睨みはサボる二人を怒るわけではなく、面白い話なら自分も混ぜろというねたみからだったようだ。聖人といえば堅苦しく融通の利かない頑固者なのだが、この娘はやはり少し俗っぽい。
「ほう。なかなかいける口だな」
「何が?」
「いや、何でも」
当初マリアは芋ほりに夢中で大きいのを見つけたらすぐにポトスに見せ付けてきていたが少々疲れたのか、それとも終わりの見えないこの作業に飽きたのだろうか。けだるさはポトスとヒゴ同様、聖女であるマリアも同じらしい。
マリアは疲れたようにため息をついてポトスの隣にちょこんと座った。長い髪が土について汚れてしまっているがマリアは気にしていないようだ。
「私も混ぜてぇ」
「いいだろう。その前に他の女子メンバーはどうした?」
「あっち」
マリアが指を刺すとそこには一人、せっせと芋を掘っている少女。
ポトスと同じ栗色の髪。それをかなり短く刈った短髪にハーフパンツ、胸を白い布でぐるぐる巻きにしただけのへそ出しの身なり。動きやすいといえば聞こえはいいがマリアやポトスに比べると若干お粗末な服装だ。しかし、その布でくるまれた胸はマリアとは対極的にかなりでかい。今にもこぼれ落ちそうなくらいだ。
その周りには毛玉のようなものが三つ浮遊している。
彼女はイヨナ。召喚士だ。周りに浮遊している毛玉は召喚獣である。
イヨナは筆記試験、実演を真摯にこなし見事この底辺ギルドに納まった。筋金入りの落ちこぼれだった。
召喚獣はあの毛玉に加えて蛇子モグラという生物だけ。その召喚獣はドラゴン討伐に何の役にも立たず、筆記試験でも点数は微動だにしなかった。
通常、筆記試験は魔法の構造、原理など、専門的な問題が出されることが多い。
『闘技』と違い『実演』は点数が低い。魔術師で『闘技』を行う者はあまりいない為、その補完だ。だからイクス選出の試験は召喚士には少々厳しい条件となる。
「あのこはペットを出して一人で喋ってるし」
「ペット? 一人で?」
「たぶん……ペットは喋らないでしょ? もう一人は隠れてるのかな? その隠れてる人と喋ってるのかなって、後ろで見張っていたんだけどその人と喋ってる気配はないし……」
「見張ってたって……芋を掘れよ」
腕組みをしてうんうん唸っているマリアにポトスは一言指摘するがマリアはそれを無視し、更に言葉を続ける。
「もう一人はどこを探してもいないの。声だけはするんだけど、見たらジャガイモだけが積み上げられてる不思議現象……たぶん幽霊だね」
そんなマリアの馬鹿な発言にヒゴとポトスは顔を見合わせて呆れ顔だ。目を輝かせて幽霊とほざくマリアには聖女の貫禄の欠片も無い。
「私……ずっとあなたの後ろにいたよ」
「ひぃ!?」
低くかすれる様な声。とても小さく、そよ風で今にもかき消されそうな声なのに不思議なことにしっかりと聞き取れる。そんな珍妙な声に悲鳴を上げたのはマリアではなくポトスだった。
「ひぃって……人をお化けみたいに……」
「でた! 幽霊じゃなかったんだね!」
「こいつか? 幽霊ってのは」
「……傷つくなぁ、グスン」
ポトスに悟られず後ろを取って泣き真似をしているのは底辺ギルドのメンバー、サナだ。
「な、何で俺の後ろにいるんだ……?」
サナはかくれんぼが上手、というのは少し語弊がある。彼女は職業柄そういう性質なのだ。
彼女の職業はアサシン。人の五感をかいくぐり、闇に紛れて事を成す。その姿を見た時は死ぬ時だと称される程。だからマリアの言う幽霊はあながち間違いではないかもしれない。とある筋からは死神と呼ばれ恐れられる職業である。
だが実際、こうして人の背後を取ってびっくりさせたり、投げかけられた質問や言葉にはちゃんと受け答えはする。ぎりぎりしっかりと聞こえる小さな声で。ついでに言うと大根役者もびっくりの泣きまねをするすこし変わった少女だ。
「恥ずかしい……から……」
サナは極度の恥ずかしがり屋だった。そして二人目の未受験者は言わずもがな。それもこの恥ずかしがり屋が原因だった。ろくに試験官の前にも立てず、皆が集まる筆記試験も受けることができず、底辺ギルドにやってきたということだ。本人曰く、これが講じて人目を極度に避けるようになり、人々の死角へ無意識に入り込むようになった。その才能を買われスカウトされたらしい。
「それでサナ、あいつは何してる?」
遠くで一人芋ほりに興じていたイヨナをポトスが顎でしゃくる。見るとイヨナは芋ほりが一息ついたのか一匹の毛玉を手で掴み何やら会話をしている。他の二匹にもまとわりつかれていてくすぐったそうに笑っている。
「イヨナは……毛玉」
サナはただ単に、見たまんまを言ったのだろう。イヨナは毛玉にまとわりつかれている。だから毛玉だと。
アサシンが特化している能力の内の一つが観察眼だ。ターゲットの一挙手一投足を見逃さず行動パターンを把握し行動する。
そのアサシンに聞けば何か分かると思ったポトスだったが当てが外れたようだ。
「……たいした観察眼だな」
「ありがと……」
茶目っ気でポトスの皮肉を理解し開き直って返答する。
「安心しろ。褒めてない」
ポトスもそれに乗って一仕事しておいた。
「でも、何だか楽しそうだよね。イヨナ」
「ん?」
イヨナは毛玉と戯れとても楽しそうだ。更に毛玉に頬をうずめ、今にも寝てしまいそうなほど気持ちよさそうな顔をしている。
加えてそんな聖女らしい発言をするマリアを見ればその表情も聖女らしい聖女だった。
幾分堅苦しいところはある聖人だがそれは善悪の意識がかなり高いため。人が楽しかったり、嬉しかったりと言った行動にはやはり頬が緩むのだろう。
だが今までの発言では少し想像できない表情だった。その若干のギャップにポトスは少し驚いて一度マリアが瞬きをする間だけだがその表情を見つめていた。まだあどけない顔立ちだが穏やかに笑うそれは聖女らしい表情だった。
「ああ、そうだな」
少し笑ってポトスはイヨナに向き直る。
と、ほぼ同時だった。イヨナが気持ちよさそうに毛玉にうずめて細めていた瞼を開いてポトスを目で捉えたのだ。イヨナの視線はばっちりポトスの視線と絡み合っている。
「あ」
ポトスはとっさに絡み合った視線を強引に引きちぎり、視線を逸らしてしまった。しかしそれが失策だった。そんな態度を取ればイヨナのことを皆で噂していた、という事実を隠そうと目をそらしたのではないか勘ぐられてしまう可能性がある。更にそれらは得てしていい噂ではない。
「不味いな、どうす――」
と、ギルメンに助けを求めるが他の者はすでに芋を掘る作業に戻っていた。
「甘ぇな。予備動作でこっちを向くって分かっただろうが」
唖然とするポトスに意地悪な笑みを乗せてヒゴが吐き捨てる。
そうはいってもマリアに少しの間見とれていて、向き直るとほぼ同時に目が合ったのだ。予備動作もクソもない。
「ふふん、リーダーはとろいなぁ。修行が足りないんじゃない?」
ポトスがマリアから視線をはずすと同時にマリアもイヨナから視線をはずしたのだった。はずした視線の先にいたヒゴが急に顔を背けた事に気付き、何事かとそちらを見ただけだった。
マリアは無い胸を張って生意気発言だ。お前に見とれていた、などとは口が裂けても言えないだろう、いや、言いたくないだろう。
サナに関しては視線どころか姿すら見られていないに違いない。
「もっと私を見習わなきゃね」
クスクスと追い打ちをかけるマリアにポトスは腹が立ったので集めておいた畑からとれた巨大ミミズをマリアの頭にそっと置いておいたのだった。
「たいした観察眼……だったね」
だが、ポトスへのおいうちははまだ終わらなかった。いつの間にかポトスの背後に回りこんだサナがこの一言。先ほど言われた皮肉をそのまま言い返され、ポトスは眉間にしわを寄せざるをえない。
「ぷぁっはっはっは、やられたなポトス」
加えてサナの言葉にヒゴが溜まらず吹き出したのだからポトスは立つ瀬がない。
「はいはい……お褒めの言葉、どうもありがとうっ」
「安心して……褒めてない」
「ぶぁっはっはっはっは!」
この退屈な芋掘りにヒゴの笑いのハードルはかなり下がったらしく、先ほどと全く同じ展開でついに体を倒し大きな口を開けて転げて笑いだした。
ヒゴが転げたことでその後ろから珍獣サナが姿を現した。しかしポトスにバレているとは気付かずにクスクスと笑っている。
直後、マリアが頭に乗ったゴン太ミミズに気付いて弾けるように倒れこみ大きな悲鳴を上げる。その悲鳴がヒゴの笑いを更に爆発させる。マリアはその頭上で悲鳴を上げて転げ回り始めた。
「お前らぁ……いいのかな~いいのかなぁっ」
ポトスは集めておいた残りのゴン太ミミズを手に持ち、不適な笑みを浮かべた。狙うは大口を開けて笑い転げているヒゴの口。
「俺を怒らせるとどうなるか思いしゲファッ!?」
いきなりの衝撃に視界が歪む。歪む視線はやがて地に落ち、ターゲットとなるヒゴの大口を見失った。
「乙女の頭になんてゲテモノ乗せるのよ!」
原因はマリア。ポトスの側頭部にマリアのドロップキックが炸裂したのだった。
「ちょ……待てっ」
倒れたポトスにマリアはのしかかり、首を腕で絡めて絞める。更に密着し、状態逸らし状態にした。
「ギブギブ! すまん! すまんかった! ごめんなさい!」
「ごめんで済んだら聖人はいらないの!」
聖人が人の首を締めるとはなんとも不思議な光景だ。マリアは更に腕を締めてポトスの首を絞り込む。胸をこれでもかと言わんばかりに押し付けて。
胸があればそれはけして悪くないシチュエーションなのだが、生憎マリアは貧乳族。夢も希望もなかった。
「くっ、くそっ! もっと胸がっ……もっと胸があれば!」
「あー! いいのかな~いいのかなぁ! 私を怒らせるとどうなるか!」
薄れゆく意識のなかポトスが最後に見たのは、遠くで一人毛玉と戯れるイヨナの寂しそうな笑顔だった。
「おーい! 君たち昼飯の時間だよ!」
ヒゴ・・・戦士
マリア・・・聖職者
サナ・・・アサシン
イヨナ・・・召喚士




