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プロローグ




「優那! 今日は合コンに参加してくんない? 優那に会いたいって人が多くてさあ・・・」


 まただ、友人が合コンに参加してくれないかと頼まれる。

 週末はほぼ毎回の事である。

 仕事での同僚、昔の友人に、稀に知らない人まで、私に男絡みの参加を求めてくる。


 知らない人が私を知っていることなど当然のようにあり、友人が私の写真でも見せたのかは知らないが、かなりの数の迷惑メールなどが来るたびにアドレスを変更する様である。


 一度だけ、友人の頼みという事もあり、合コンに参加したのだが、男どもの私に対する必死のアプローチに私は内心で嫌気がした。

 気持ち悪さもあるが、一番の嫌気は、私の友人の放置である。


 私以外の女の子は全て粗末に扱われており、居心地が悪い事この上なかった。

 他の女の子は途中から諦めて私を引き立てる役に回っていたのが伝わった。


 こういう事から、合コンに行くメリットはもはや一パーセントもなく、行く意味が全くない。

 だから、私はいつものように自然なウソをつく。


「ごめんね。今日久しぶりにお母さんと食事に行くんだ」


 一人暮らしの私が久しぶりに母と食事に行くと、真剣な表情で言えば友人は信じてくれる。

 今までの行動や私の性格からして信じてもらえたようだ。

 あまりこういう事はしたくはないのだけど。


「そっかー、お母さんと中々会えないもんねー。じゃあ、また今度頼むね!」


「うん、ごめんね! じゃあ行ってくるよ」


 そう言って急ぎ足で私は自宅に戻る。

 アパートの最上階、街の明かりが良く見える場所でドアに鍵を差し込み、流れ込むように靴を脱ぎ、鞄をソファーに投げ捨て、体をそのままソファーに任せる。

 柔らかいソファーは衝撃を吸収して、少しだけ跳ねる。


「はぁー、毎回毎回やだな」


 友人と遊ぶことは全然良いのだけれど、男が絡むことはしたくない。

 だから、毎回毎回断り続けるのも精神的に楽な事ではなかった。

 承諾しても友人のとの関係が気まずくなり、断っても気まずくなるのならどうすればいいのだろう。


 テレビのリモコンを持ち、電源のスイッチを押そうとした時であった。

 ポケットの携帯が振動を起こして、私に着信を知らせた。


 投げやりな気持ちで画面を見ると、上司の名前が表記してあった。

 私は少し姿勢を正して電話に出る。

 この時間帯なら仕事の頼みごとだろうと何となくは想像できていたが。


「もしもし、どうかされましたか?」


「ああ、里見君。急に片付けてほしい仕事が出来てね・・・」


 やっぱり・・・。


 普通こういうことは新卒者である、私に頼む事ではない。

 何年か仕事をこなしてきたベテランに頼むのが普通である。


 そして、仕事内容を聞いた。

 内容は大変面倒なものであると一般の人なら思うだろう。

 新卒者に任せられるほど簡単な事でもない。


「ああ、それでしたら昼の休憩時間に手が空いていたのでやっておきましたよ」


「本当か! いやーいつも助かるよ。決められたこと以上の事をこなしてくれるのは君だけだよ」


 そう、上司が私に頼んできそうな仕事を私は予測して昼間の内にやっていたのだ。

 案の定電話がかかってきたので予想は当たっていた。


「はい、はい、じゃあ、失礼します」


 少しだけ話した後に私は電話を切った。

 携帯も雑にソファーに投げる。


 仕事に関しても私は上手くいっていない。

 正確に言うと、人間関係が中々築けないでいるのだ。

 別にコミュニケーション能力が低いわけでは無い。

 そっちはむしろ得意な方なのだが、仕事が出来過ぎてしまうのだ。


 それにより、自分自身をダメ人間だとを攻めだす先輩が表れ、精神的に病んで仕事を辞めていくのを私は何人も見た。


 与えられた仕事をきちんとこなす性格の私は手を抜くことが出来ない。

 よって仕事が出来過ぎてしまう私を見て「今までの自分は、今の自分は役立たずだ」と言って辞めていくわけである。


 大事な仕事も重要なプレゼンも、何年も真面目に仕事をしてきた先輩では無く、私に頼まれる。

 これは相当精神的にこたえることだろう。

 私が逆の立場でも嫌なのだから。


「はぁー」


 私はため息をつきながら、DVDを付ける。

 序盤の話は盛り上がらない事が多いから、今の内に夕食を作る。

 数十分で三ツ星に匹敵する料理を作り、ソファーでくつろぎながら食べる。


 自分で三ツ星というのも自慢のようだが、実際に仕事の人間だけでは無く、シェフも何人が退職させた苦い経験がある。

 店のシェフが作る料理の食材を当てるのもあれから止めた。


 料理を淡々と口に運びながら、私は海外ドラマのDVDを見ていた。


「私はこの世界に必要なのかな・・・」


 きっとここまで何でも出来る自分が異常なのだろう。

 出来過ぎて良い事など一つも無い。

 私の所為で人が壊れて傷ついていくのだ。


【両手を上げろ!!!】


 犯人を追いつめ、銃を構える主人公。

 定番であり、港の方へ逃走した犯人を主人公が銃を持って追いつめる。

 一見主人公が優勢だが私にはそうは思えなかった。


「私が主人公でも、犯人でも乗り切るのは簡単だろうな」


 楽しみにしていたDVDすら私の目には憂鬱に映った。

 私は一体どうすればいいのだろう・・・。


(里見優那、お前を連れて行く・・・)


 突然、脳みその奥に重苦しい声が聞こえてきた。

 どうやら幻聴まで聞こえるほど、私は重症のようだ。

 いよいよ、病院に行かないといけないのかな。


 いや、しかしどう考えても部屋には自分しかいないわけで、部屋から声が聞こえてくるわけがない。

 今音を発しているのはテレビだけなのだから。


(返事がないが、とりあえず連れて行くからな。グヘヘ・・・)


 いや、幻聴などでは決して無かった。

 私の耳にゾクゾクするような声がリアルに聞こえてくる。

 一応私の耳は正常なのだから間違いない。


「誰、なの?」


 質問して間もなく、意識が遠くなっていくのを感じた。

 強力な睡眠薬を飲まされたかのような睡魔は、あっという間に私の意識を深く引きずりこんでいった。


 薄れる意識の中、最後に聞いたのは、ドラマの主人公が発砲した銃声であった・・・。






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