純白の拍動
真っ白な空間を僕は歩いていた。
何もない、誰もいない空間だった。でも、不思議と落ち着く。居心地が良かった。
なぜこの空間に来たのかは僕自身も把握していない。覚えている最後の記憶は、いつも通り就寝したということ。ただ、どんな理由があってここに来て、ここがどこなのか、それは僕にとってはどうでもいいことだった。
ふと後ろが気になり振り返る。少し離れたところに、少女が立っていた。
恐らく僕と同年代で、真っ白な服、肌も抜けるように白い、髪は空間や服とは対照的に真っ黒だった。
突然現れたにも拘らず、彼女はそこに立っているのが当然であるような顔をしている。いや、彼女がそこにいるのは当然のことだ。何もわからない状況で、それだけははっきりと理解できた。
「貴女は誰ですか?」
自然とそんな質問が口から出た。
「私は貴方です」
無表情のまま彼女は確かにそう発音した。
僕は吹き出した。
「貴女が僕?」
「ええ、私は貴方」
綺麗な発音。
違和感は全くなかった。それどころか、彼女が言っていることが正しいとすら思えてくる。
空のある一点から光が射した。
僕と彼女は同時に光の方へ向く。真っ白な空間だけど、それが光だということは認識できた。
温かな光だ。どこか懐かしい。
「綺麗な所ですね」
僕は微笑みながら言った。微笑んでいるように見える表情を作って言った、という意味だ。
彼女は僕の顔をじっと見つめたまま、一瞬だけ固まった。そして表情を崩すことなく首を縦に振った。