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short story

純白の拍動

作者: 沖田コウ

 真っ白な空間を僕は歩いていた。

 何もない、誰もいない空間だった。でも、不思議と落ち着く。居心地が良かった。

 なぜこの空間に来たのかは僕自身も把握していない。覚えている最後の記憶は、いつも通り就寝したということ。ただ、どんな理由があってここに来て、ここがどこなのか、それは僕にとってはどうでもいいことだった。

 ふと後ろが気になり振り返る。少し離れたところに、少女が立っていた。

 恐らく僕と同年代で、真っ白な服、肌も抜けるように白い、髪は空間や服とは対照的に真っ黒だった。

突然現れたにもかかわらず、彼女はそこに立っているのが当然であるような顔をしている。いや、彼女がそこにいるのは当然のことだ。何もわからない状況で、それだけははっきりと理解できた。

「貴女は誰ですか?」

 自然とそんな質問が口から出た。

「私は貴方です」

 無表情のまま彼女は確かにそう発音した。

 僕は吹き出した。

「貴女が僕?」

「ええ、私は貴方」

 綺麗な発音。

 違和感は全くなかった。それどころか、彼女が言っていることが正しいとすら思えてくる。

 空のある一点から光が射した。

 僕と彼女は同時に光の方へ向く。真っ白な空間だけど、それが光だということは認識できた。

 温かな光だ。どこか懐かしい。

「綺麗な所ですね」

 僕は微笑みながら言った。微笑んでいるように見える表情を作って言った、という意味だ。

 彼女は僕の顔をじっと見つめたまま、一瞬だけ固まった。そして表情を崩すことなく首を縦に振った。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 様々な思索の余地があり、考えることでより一層深まる話ですな。 [一言] 白い。とは潔白や純粋さをあらわしているのかな…と一人思いました。
2013/01/10 20:16 退会済み
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