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近衛騎士

 沈黙が場を支配する。


「……」


「……」


 無言でお互いの顔を見つめあう。それが一瞬の事なのか暫くそうして居たのかはわからないが-


「…………何やってんの?」


「っ!」


「うはぁ!?」


 突然真後ろから聞こえた声に飛び上がる。


(心臓! 心臓に悪い!! バクバクいってるよぅぅ!!)


「シス」


「なになに~? 逢引きぃ? ディスファルトとうとう落ちたの?」


「……そう思うなら何故声をかけるんだ……」


 ディスファルトがそう言って額に手を当てる。


「え? 嘘!? マジで?」


 予想外の答えだったんだろう。驚いた声が聞こえる。


「詳しくは後で話すが、彼女は俺の婚約者のサナエだ」


 そう言われて、恐る恐る振り返る。

 そこにはまた絵本や童話の出てきそうな金髪碧眼の見るからに騎士様がいた。


「うわ! ワフウビジン!!」


「…はい?」


(今明らかにおかしなセリフを聞いた気がするんですけど!)


「え、あーうん。君みたいな子、王妃様の故郷じゃワフウビジンって言うんだって」


「言いません」


(思わず即答してしまった)


「シス。彼女はその王妃様の故郷から来たんだ」


「うっそ!? マジで!? 俺の事からかってんじゃなくて!?」


(そんなキラッキラした瞳で観察しないで!)


 早苗が若干引くくらいに瞳を輝かせて、まじまじと見つめてくる。


「からかってどうするんだ」


「そうだよな。ディスファルトはそんなことしないよな。て事はマジなんだな! マジなんだね!!」


 ディスファルトと早苗ににじり寄って確認するが、肯定以外受け付けない勢いだ。


「ああああ~! 逢えて嬉しいよ~!! 俺はシス・ティルボスティーノ! シスって呼んでね?」


 物凄く期待に満ちた目で名乗られた。


「真木早苗です」


「サナエちゃんか~。よろしくね。あ、俺第一近衛師団で主に国王の護衛やってるんだ」


 そう言いながら、早苗の手を取りぶんぶんと音が鳴りそうなほど振る。


(軽い! 何か色々軽いから! 近衛騎士ってエリートなんでしょ!? 何なのこの軽さは! そして何なのこのテンション)


 頭の中では一応突っ込んでいるが、体は固まってしまってされるがままに腕を振り回されている。


「シス、その辺にしておけ」


「あ? ああ、ごめんごめん」


 ディスファルトに止められてようやく我に返ったのか腕を解放される。


「あの、それで、ええと……」


 何と言っていいかわからず言いよどむ。


「改めまして。俺はシス・ティルボスティーノ。第一近衛師団所属で主に国王の護衛をしてる。去年まではマリ……王妃様の護衛してたんだ」


「そうなんですか」


「そうなんですよー。ま、何かあったらいつでも言って。俺も割とこの辺うろうろしてるから」


「うろうろ!?」


「いやー、結構移動が多いんだよねー。陛下と王妃様の護衛は第一近衛師団で受け持ってるんだけどね、二人ともよく動くからさ」


「そう言えば何だか行動力抜群なご夫婦でしたね」


「そうそう。結構大変なんだよね。だから傍で護衛する奴でローテーション組んで要所要所に配置したりしてるんだ」


「他の師団? の人じゃダメなんですか?」


「ダメじゃないんだけど、何かあったら結局第一師団に連絡来るからね。なら近場に居た方が早いでしょ?」


「……何だか色々あるんですね」


「そうそう。色々あるんだよ。ま、そんな訳で俺は主に陛下の傍に居るけど、この辺に居る事も割とあるんだよ」


「そうですか。ではこれからよろしくお願いします」


「うん、よろしくね」


(シスさん。シス……苗字は覚えられない。諦めた)


 そう挨拶して少しばかり失礼なことを考えながら頭を下げた早苗を、シスは優しげな眼差しで見ていた。



「そう言えばこの後陛下の所か?」


 それまで口を挟まずに二人のやり取りを眺めていたディスファルトがシスに向かって問いかけた。


「ん? ああ。まーたやったんだろ?休憩返上だ」


「悪いな。止められなかった」


「気にするな。あいつを止められる奴はそういないからな」


「まあな。ところで……」


 ディスファルトはそこで言葉を止めて早苗に視線を移す。


(んあ?)


「ワフウビジンとは何の事だ?」


(それかー!!)


「おう、サナエみたいな子の事だろ?」


「違います」


「えー! だって前にマリが言ってたぜ?確か…黒目黒髪で髪の毛は艶があって、ついでに長いとなおよし。それで色白で……あ、たれ目よりちょっとだけ上がり気味で、そう、言い表すなら凛とした美人! んで背は高すぎないのがイイ! とか何とか」


 身振りまでつけて熱演してくれた。


「いえ、それは多分真理さんの独断と偏見と好みが入り混じった物だと思います。ついでに私はそんないいもんじゃありません」


「いや、当てはまっていると思うぞ?」


 さらりとディスファルトにまで言われ、顔が熱くなっていく。


(なんなの!? もう!!)


「…和風美人って多分着物や浴衣…私の居た国の民族衣装ですけど、それが似合う綺麗な人の事だと思います。それに、基本的に日本人は黒目黒髪です。最近じゃ染めてる人も多いですけど…」


「染めてるって…髪をか?」


「はい」


「へ~、でもサナエは染めてないんだ?」


「はい。必要性を感じなかったので」


「そうだな。これだけ綺麗な髪だ。染めない方がいい」


 そう言ってディスファルトは早苗の髪に触れる。


(うわぁぁぁ!?)


 顔が熱いどころではない。恐らく真っ赤になっているだろう。


「へ~?」


「なんだ?」


「いや、別に? そう言えばさっきも見つめ合っちゃってたよね~」


 早苗を挟んで会話しているが、ディスファルトは早苗の髪に触れたままで目の前のシスはニヤニヤと嫌な笑顔を浮かべている。


「ああ。驚いていてな」


「驚いて……見つめあってたの?」


「まあそうだな。王妃様はサナエに元の世界に心残りはあるが還りたいほどじゃないと言ったそうだ」


「……そう、か」


 この時、明らかにシスの表情が変わった。


「っと悪い、そろそろ行かないと文句言われる」


「ああ。そうか」


「またな、お二人さん」


そう言ってシスは王妃の間の方へ歩いて行った。


「あの、やっぱり意外な事だったんですか? 真理さんが還りたい訳じゃないのって…」


 ディスファルトは何故か未だに早苗の髪を触っているので、振り向けずそのままの体勢で聞く。


「そうだな。何しろ一年程前に王太子殿下を連れて還ろうとなさったからな」


「…ええ!?」


 驚いて振り返りディスファルトを見上げると、彼は何とも言えない苦い表情をしていた。

ほっといたらずっと見つめ会ってそうだったので、シスに声をかけてもらいました。なかなか先へ進まない…

サブタイトルと内容の不一致さは出来ればスルーして下さい。

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