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これからのこと

お気に入り登録、評価、拍手ありがとうございます。

至らない点が多すぎて申し訳なく思いますが、少しでも楽しいで頂ければ幸いです。

今回は少し長いです。なのに予定の半分くらいしか話が進まなかったです…

 自室に戻った早苗がまずした事は、やはり自分より後に謁見の間を出たはずのルッティアが既に部屋でお茶の準備をしていた事を問い詰める事だった。


「ルッティ……瞬間移動とか分身の術とか使えるの……?」


「いやですわ、サナエ様! そんなこと出来ませんよ!」


 ソファに腰掛けながら尋ねると、とても楽しそうな顔をして答えられた。ルッティアは普段から基本笑顔だ。それが彼女の魅力の一つである事は確実だろう。

 ダークブラウンの髪と同じ色で大きくつぶらな瞳、頬にあるそばかすが彼女の印象を幼く見せ、そこへ無邪気な笑顔だ。早苗は思わず抱きしめたくなる。だがここでうっかりその誘惑に負けてしまえば、疑問は解決されないので、質問を続ける。


「行く時も今も、私より後に出たよね? 部屋」


「はい! 勿論です! あ、気になられますか?」


「うん。物凄く気になる」


「実はですね、庭園突っ切って全力疾走しちゃいました!」


「……いいの? 庭園」


 確かにここから謁見の間に行くのに突っ切れば随分時間を短縮出来そうな庭園があった。だがそこは、庭師が庭園の構造をかなり複雑に造っている。通った所で余計に時間がかかりそうな気がする。

 短縮しようと思えば、庭師が丹精込めて造った庭園を踏み荒らして行く事になるのではないかと思い尋ねると、ルッティアはますます楽しそうな顔をした。


(何か……とっておきの楽しい秘密を打ち明ける子供みたいな顔だなぁ)


「実はですね、庭園にはちょっとした秘密があるんですよ」


「秘密?」


「専属侍女になったら教えて頂けるんですが、庭師の方がそうとは解らないように専属侍女の抜け道を作ってくださっているんです!」


(……なんだそれは)


 思わず顔に出ていたらしい。ルッティアは無邪気な笑顔から一点、悪戯に成功した子供の様な顔に変わった。


「専属侍女は主の急な御用命にも応えなければなりません。ですので王宮内を少しでも早く移動できるようにと、庭園に通り抜けられる道があるんですよ! なのでわたくしはサナエ様より早く謁見の間へ到着する事が出来たんです!」


「……それはまた、凄い事考える人もいるんだねぇ……」


 何故庭園を複雑に造ってわざわざ抜け道を造るのか早苗には解らなかったが、高貴な方々の趣味だの何だのと侍女たちの仕事を少しでもサポートするための折り合いだろうか。

 考えても仕方ないのでそれはそれで納得しておく事にする。


「はい! 今日の様な日はとても助かります!」


 この二ヶ月、ルッティアは本当によく早苗を支えてくれた。最初は意識しないと口調も随分口堅苦しかったのだが、最近では大分自然と話してくれるようになった。勿論立場上譲れない部分はあるのだが。


「これからお忙しくなりますね」


「そうだね……まだまだ勉強もしないといけないしね……うー、ちょっとズルしちゃおうかなぁ……」


「ズル……ですか?」


 ルッティアが不思議そうに口元に人差し指を当てながら首を傾ける。


「うん、流石にちょっと慣れた方で一回やってみようかなって思って」


 この国の勉強を始めた時に発覚したのだが、早苗はルファ国で使われているアーシェリア大陸の公用語が話せているらしい。-らしいと言うのは、早苗にあまりその自覚がないからである-文字も読める。だが、何故か文字を書く事が出来なかった。

 真理に聞いたところ、真理も最初そうだったと言っていたので、どうもフィルは脳に何かしらの影響は与えてくれていたのだろうが、身体は話す事が出来ると言う以外は特に何もしていないのだろうと結論付けた。


(神様特典ってこれだけなんだよね……まあ、あの時答えなかったからこれだけでも十分助かってるんだけど……何だかなぁ)


 字は見よう見まねで何とか書いているが、王宮で主に使われている羽ペンが使いづらい。文字を書くのは羊皮紙で、紙とボールペンやシャープペンシルを使い慣れた早苗からすればこれがなかなか難しいものであった。最近やっと慣れてはきたが。

 今までは郷に入っては郷に従え、こちらに慣れるためにも極力こちらにあるものでやってきのたが、言うなれば公爵家の監査をするのだ。しかもこれから先間違える訳にはいかない。ここはずるいかもしれないが、元の世界の文明の利器の力を借りてみるのもありなのではないか。


(と言うか今までも別に使うなとは言われてないんだけどね)


「慣れた方と言いますと……サナエ様の御鞄ですか?」


「うん、そう」


 ここに来た時、すっかり混乱していて気付かなかったのだが、早苗が通勤する時に持っていた鞄も一緒 にこの世界に来ていたのだ。

 最初の日、ディスファルトが夕食の前に部屋に持って来てくれたのだ。


(中身で使えそうなのは筆記用具、手帳、手帳サイズのメモ用ノート、携帯、電卓、そろばんくらいかなぁ?)


 財布やコスメポーチ等他の物は、今の所使い道がなさそうなので保管しておく。

 因みに何故そろばんがあるかと言うと、実家で珠算塾をしている母から昔初段に受かった時にお祝いに貰った携帯用のケース入りそろばんで、早苗にとっては縁起のいいものであり、験担ぎで持っている事がある。

 鞄に入れていても特に邪魔になる大きさでもなかったので、就職してからはいつも鞄に入れていたのだ。


「それは、何でございますか?」


 考えながら鞄を持ってきて中身を物色していると、ルッティアが不思議そうに声をかけてきた。手に持っている電卓とそろばんが気になったらしい。


「これ? 計算道具。こっちがそろばんで、こっちが電卓。そろばんはこの国にはない?」


「いえ、其方の、そろばんと似たような物はありますが……もっと大きいです!」


「大きいの? どのくらい?」


「そうですね……大体このテーブルを横向きに立てたくらいでしょうか?」


 そう言ってお茶が置かれているテーブルを指す。


「……え?」


「ですからこちらのテーブルです!」


 元気いっぱい答えてくれたが-


「でか!?」


(ちょっと、テーブルって……私が両手広げたくらいあるよね!? ってことは155㎝くらいあるってことだよね)


 以前両手を広げた長さと身長がほぼ同じ長さと言う話を聞いて、好奇心から長さを幼馴染と共に測ってみたのだが、早苗の身長が156㎝なのに対し、手の方は155㎝程だった。

 早苗がまだまだ知らない事は山のようにあるのだと実感し、課題をクリアする為にもこれからも勉強し続けねばならないと痛感したのだった。



早苗が一番気になったのはやっぱりルッティア。

大きなそろばんの様な計算機はそのうち出てくるかも知れません。

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