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王妃の決意

サブタイトルってどう付けたらいいんでしょうね、本当に。


お気に入り登録、評価、拍手ありがとうございます。

今回は真理の独白です。

(どうして彼女が選ばれたのか……)


 月が美しく輝く夜、ルファ国王妃マリー・イートゥア・ルファこと伊藤真理は、一人自室の窓辺に佇み考えていた。

 自分がこの国に来たのは、元の世界との繋がりが希薄な所為かと思っていた。しかし、今回連れてこられたのは、元の世界に家族も仕事もある人物だった。

 彼女が現れたあの日、突然抗い難い睡魔に襲われ転寝をしてしまっていたら、夢に真理をこの世界に無理矢理連れてきた黒外套の人物が現れ、彼女の来訪を告げた。

 それを聞いた時、ディスファルトに限って大丈夫だとは思ったが、自分と同じ目に合わせるわけにはいかないと一も二もなく部屋を飛び出した。

 真理とレジアスの出会いは、真理からすれば最悪だった。とてもじゃないが口に出して言えるものではない。

 ディスファルトの私室に現れると言っていたので大丈夫だと思うが、万一ディスファルト以外の人物と出会ってしまってもややこしい事になると思うので、とにかく急いで彼の部屋まで行かなければならない。



 最も人に会わないルートを選んだが、王宮内を一人で全力疾走なんて無茶をしたのは一年ぶりだった。

 一年前までは護衛にシスが居た。彼はどんな時でもこちらの動きに対応してくれたので、思う様に動く事ができた。


(まあ、どうせ隠密が付いてきてるんでしょうけど)


 自分が一人で動けているなんて思わない。シスが護衛を外れてからは恐らく、普段の護衛以外にも隠密が付いているのだろう。

 何しろシスとエルミア以外は真理の動きに付いていけないのだから。

 別に真理の身体能力が特別優れているわけではないが、育った環境の違いなのか真理の行動はこの国で生まれ育った人間には破天荒で突拍子なく映るようだ。

 勿論その辺は嫌と言うほど分かっているので、シスが護衛を外れた時点で随分自重するようになったのだが。


(いい加減ストレス溜まるし色々不都合だからシスに戻ってきて貰いたいんだけどね……)


 そうして無茶を承知で会いに行った彼女は、何と自分と同じ日本人だった。

 それを知った時、彼女に“真理さん”と呼ばれた時、感じたのはどうしようもない喜びだった。


(突然異世界に送られた早苗さんの状況を思えば喜んでいい筈なんてないのに……誰より私が解ってる筈なのにね)


 それまで積み上げてきたもの、家族、友人。その全てと無理矢理引き離されたのだから。

 特に彼女は幼いころからの夢に、もう少しで手が届きそうになってきた矢先の出来事だったのだ。

 そんな彼女の来訪を喜んでしまった。自分の弱さが嫌になる。


(もっと強くならなくちゃいけない……早苗さんの力になるためにも)


 いつか彼女も選択を迫られる。還るか、残るか。

 今はまだ還りたいだろう。でも、この国で生きていく以上、他者との関わりを避ける事は出来ない。月日が流れれば情も深くなる。

 その時、きっと決断を迫られる。自分の様に。

 フィルは、こちらの一番弱い部分を突いてくる。


(フィルが何を思って人を異世界に送って、慣れてきた所で引っ掻き回すのかは解らないけれど……その時、早苗さんの選択肢が潰されないようにしないと)


 帰還する事を選ぶのは、時間と共に不利になりかねないのだから。

 地球とこの世界とは時間の流れが違う可能性がある。

 暦が違うだけならいいが、時間の流れる速さそのものが違ったとすれば、この世界に居る時間が長ければ長いほど帰還した時大変な事になってしまう。

 時間の流れる速さなんて、誰にもわからないのだから。




 とりあえず彼女の立場がはっきりするまで、人との接触をなるべく少なくする為、この国の歴史と常識そしてマナーを学んでもらう事になった。

 二ヶ月間彼女は必死で学んでくれた。


(私なら二ヶ月ほぼ缶詰なんてきっと耐えられないわ)


 真理が息抜きに連れ出さなければ、限界を超えるまでやってしまっただろう。


(早苗さんはきっと真面目な努力家で、委員長タイプなんでしょうね……ふふ、私とは全然違う)


 真理は割と思い付きで行動する方だ。気になったら自分で確かめないと気が済まない。だが、彼女は行動する前にまず考える。気になる事があっても、今必要ではないと判断すれば後回しに出来る。


(私より王妃に向いてるかも)


 ふとそんな風に思ってしまう。

 勿論王妃を辞めるつもりも、譲るつもりもないし譲られても迷惑だろうが。

 王妃になった時、この国の為に生きると決めた。

だが、それすらも揺るがす方法で揺さ振りをかけてきたのだ。フィルは。


(私の二の舞にはならないように……)


 誰にも話せていない一年前の真相。

 知っているのは、最初から最後まで傍にいたエルミアとシスだけ。

 いつかレジアス達にも話さなければならないが、未だに話す勇気が持てずにいた。だが、いつか彼女も試されるのならばその前に話しておかなければならない。


(早苗さんの選択肢が潰されないように。未来を自分の意思で選ぶ事が出来るように……)


 密かな決意を胸に、真理は窓辺を離れた。

謎だらけで申し訳ないです…

今回、真理にするか話を進めるか随分悩んだんですが、そろそろ小出しにしておかないと、後で真理ばっかりな部分が出てきてもバランス悪そうなので…

しかしまあ謎をばら撒くだけばら撒いただけな気がしないでもない…


どうでもいい事なんですが、隠密は正式名称じゃないです。真理は一番しっくりくる名称で勝手に呼んでます。

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