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宰相と王妃・2

いつもありがとうございます。

タイトルが2である必要は余りない感じですが…

いや、終わらなかったんですよ。ディスファルト視点が…

多分もう一話続くと思います。

 レジアスに事の次第を報告すると、案の定政務を放り出してマリの元へ向かおうとした。


「とにかく今日の分の書類だけでも処理してからにしろ!」


「そんな事をしている場合か!」


「お前の仕事だろうが!!」


「マリに何かあったらどうする!?」


「安心しろ、現れたのはマリと同郷の女性だ」


「里心がついたらどうするんだ!」


「流石に向こうも来たばかりで還れないだろうが……」


 そこでやっと我に返ったのか、レジアスは大人しく机に戻った。


「……あいつは……」


「今回も例の黒外套の仕業の様ですね」


「…………」


 現れたのがマリと同郷の女性と言う事もあって、今回はまだ理性が残っていたから止める事が出来たが、かなりの速さで今日中に処理した方がいい書類だけを処理して執務室を飛び出して行ってしまった。


(心配……なんだろうな。黒外套がその気になれば……俺たちどころかマリの意思も関係ないからな……)


 飛び出していったレジアスの後を追いながら思う。そう、黒外套から、神からすれば人間の意思なんてほんの些細な事に過ぎないんだと。



 黒外套が神だと名乗った訳ではないが、話した内容、人間を別の世界に送る事、送られた者が現れてすぐに神殿に降りた神託……全てあの黒外套が神かその眷族である事を表しているようにしか思えない。


(例えそうでなくとも、俺たちにはどうにも出来ないほどの力を持っているんだろうがな……)


 レジアスは不安なのかも知れない。マリを失ってしまうかもしれないと。



 王妃の間の目前でレジアスに追いついた。が、そこではレジアスが扉を蹴破ろうとしていた。


「レジアス!?」


(今蹴破る必要は何処にもないだろう!!!)


 制止の声も空しく、王妃の間の扉は蹴破られてしまった。


(……これで何度目だ……)


 正直、頭が痛い。近衛騎士団-主にシスだが-が厚意で修理してくれているのだが、それをわかっていて繰り返されるこの暴挙はちょっとした嫌がらせなのではないだろうかと穿った見方をしてしまう。

 当のレジアスは全く気にしない様子で室内へ踏み込んで行く。


「陛下!!」


 ディスファルトも頭を切り替え、レジアスを追って部屋へと入った。

 レジアスは早速マリに小言を言われているらしい。

 大丈夫だとは思うが、サナエに怪我がないか確認すると、レジアスがこの国の国王なのかと確認してきた。

 見た目と肩書きは男のディスファルトから見てもこの上なく一致している。多くの女性も憧れる存在-なのだが、肯定するとサナエは物言いたげな視線を返してきた。


(まあ、扉を蹴破って入ってくれば誰だって何か言いたくはなるだろうが……)


 ようやくマリのお説教が一段落したのだろう。マリがサナエにレジアスを紹介する。

 驚いた事にレジアスが少し言葉を交わしただけで、素を見せた。

 レジアスの本性を知っているのは本当に極一部の人間だけだ。


(会ってすぐに素を見せるなんて王太子となってからはなかったんじゃないだろうか…)


 だがレジアスは更に大きな爆弾発言を落とした。

 サナエはレジアスが表情を作っている事に気付いた。

 マリは状況が特殊だったので除くが、初対面の女性はまず気が付かない。レジアスの“王子様スマイル”(マリ命名)に思考を奪われる、ようだ。

 どうして気がついたのか、その答えは至極あっさり本人が答えてくれた。が、その後もレジアスの爆弾は連投された。


(サナエを俺の婚約者に……な。確かに適当な理由を付けて俺が引き取るつもりではあったが……)


 何の相談もなしに婚約者はサナエは受け入れがたいのではないだろうか。

 そう思って抗議するが、それ以上にマリがレジアスに猛然と抗議し始めた。


(レジアスの言っている事は確かに一番手っ取り早いかもしれない……が……)


 だがこれも驚いた事にサナエがあっさり了承した。


(サナエは本当に構わないんだろうか?形だけとは言え……)


 他に方法がない訳じゃない-そう言おうと思ったが、サナエの瞳を見て口にする事は出来なかった。

 真っ直ぐに、覚悟を決めた者の瞳。

 ならばこちらも出来る限りの事をしてやろう。

 きっとレジアスは何か考えがあるのだろう。でなければ婚約者になどしないだろう。

 多少苦しくとも他にやりようもあるはずだ。

 仕えるべき主君がこうと決め、庇護すべき彼女がそれを是とした。

 恐らくサナエも何かしら感じたからこそ受け入れたのだろう。

 マリも心配そうではあるが、決して悪い案ではないと思っているようだ。


(マリの不満は事前に当事者へ確認がなかったことだろうしな。ならば従うまでだ。後で不都合が起きれば俺が何とかすればいい)


 ディスファルトもそう思い、これ以上は何も言わずに従う事にする。

 サナエの立場さえ決まれば、今日のところは部屋に連れて行って休ませてやろう。

 今後の事は夕食時か、無理なら明日でも問題ないだろう。

 レジアスとマリに退室を告げ、サナエを伴い自室へと向かう。


(祈ろう。彼女が笑顔でこの世界での生活が送れるよう。俺も出来る限りの事をするから……)


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