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ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい  作者: あまぐりムリーパー
贖罪の獣と常夏サバイバル

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主人公くん、出撃準備をする

 もう明日には出撃すると、育成機関から連絡があった。


 出撃前最後の日、たまたま休日だったので呼び出されて蒼空さんの家に来ている。


 ……初めてじゃないけど、蒼空さんも結構無防備だよね。琴塚さんとか他にも人を呼べばいいのに。


「何?」


 ぎゅっ、と握った手の温もりを感じる。じろり、と蒼空さんから睨まれた。


 ……この前も、こんなことがあったような。

 あのときに比べて蒼空さんは安定してる気がする。


 そうやって安定していくと――依存していくこともなくなるんだろうか。


 少なくとも、寂しそうに引っ付いてきたりしてない。……どっちかというと、今手を繋いでいるのをちょっと恥ずかしそうにしてる。


 繋いだ時に、顔を背けて頬を紅潮させてる。今まで、蒼空さんがずっとしてきていたのに。


 というよりも、コネクトリンクするためにほぼ毎日繋いでるはずだし。


「さっきから、なんでこっちを見てるんだよ」


 蒼空さんが目を細めた。そんなに見てたかな。


「なんとなく」

「何、見惚れた?」

「まあ、そうかもね」

「えっ」


 びくり、と肩を震わせた。蒼空さんは、人をいじってくる割りに本当に反撃に弱い。


 ちょっと楽しくなってしまう。


「冗談だよ」

「……意地が悪すぎ」


 ぷい、とそっぽ向く様も少し可愛い。


 ……可愛い?

 自然と、そう思ったことはあったっけ。


 確かに、蒼空さんは可愛い。出会ったときから、ずっとそうだ。


 でも、今はなんというか……まるで愛おしさみたいな。


 なんか、よくないな。変な方向に考え始めてる。


「……すぅ」


 耳元に、寝息が聞こえてきた。するり、と握っていた手が抜けていった。


 寝てる。やっぱり、無防備だと思う。


 こくり、と頷くように首が揺れる。蒼空さんの細い首が目につく。

 いつも、一緒にいるけどこうしてみるとやっぱり小さくてすぐに消えてしまいそうで。


 不意に、蒼空さんの髪を触っていた。髪を梳くように、髪の間に指を滑り込ませる。さらさらとした髪が、指の間を通っていく。


「んっ……」


 僕の手に反応して、少しだけ身動ぎした。揺れた体が、ベッドにもたれかかった。


 髪から手を離して、蒼空さんの頬に触れた。滑らかな皮膚に指が滑る。

 つーっと、指でなぞってから、その後に普通に手で頬に触れた。


 温もりを感じる。ここで生きてる。


 ……あのときに死にそうだった蒼空さんを助けられたんだ、という実感が今さら生まれた。


 やっぱり僕は、この人と一緒生きていきたいんだ、と思うのは少し大袈裟かな。


 ……何してるんだろう、僕は。寝てる蒼空さんに勝手に触るなんて。


 こんなことをしてるなんて、まるで――


 まるで、なんだろう。まあいいか。


 ゆっくりと、ベッドで寝かせた。


 寝息を立てる蒼空さんを眺めながら、一応手を握った。今日の分のコネクトリンクが、まだ足りてないかもしれない、なんて言い訳をした。




「……おはよ」

「おはよう、蒼空さん」


 起きた蒼空さんは、寝てる間のことは知らないみたいだった。それはそうだろう、たぶん起きてたら騒いでただろうし。


 なんか、僕の気持ちも少し変になっている気がする。


「いつまで握ってんの?」


 起きてから、握ってた手に気付いた蒼空さんに睨まれた。


「今日の蒼空さんは男っぽい方なんだね」

「男だったし」

「……え?」

「あー、ごめん。今のなし。で、いつまで握ってんの?」

「……まあ、寝てる間はいいかなと思って」

「なんか、お前変じゃない?」

「気のせいだよ」

「ふーん」


 蒼空さんは、「まあいいか」と呟いて僕の手を振り払うように離した。


「そんな乱暴にしなくても」

「なんかはずいじゃん。ってか、何。握りたいの?」


 冗談めかして言うので、少しだけ意地悪したくなって「うん」と答えてみると固まった。


「えっ、そ、そう……?ふーん?えっ、なんで?」

「握り心地がいいとか?」

「……渚くん、冗談で言ってるでしょ」

「はは、よくわかったね」

「何、今までのやり返しをしてるの?」

「そうかもね。蒼空さんが、いい反応するから」


 付き合うかだとか、半分本気だとか、そんなことを言ったんだから、ちょっとだけやり込めても、いいんじゃない?


 ……少し、意地悪だとは思うけど。


 それに、触ってしまったあの時の気持ちを誤魔化したかったから。


 だから、僕はちょっとだけ蒼空さんの反応を楽しんでそのまま帰った。


 まあ、もう少し無防備にならないでほしいかな。また、変なことしてしまいそうで困るから。


◇◇◇


 次の日に集まって、蒼空さんと、ブルースカイのみんなと並んだ。


 ついに、来てしまった。

 第五深禍災害、その時以来の緊張が走る。


 今回は、どれだけ危険なのかもいまいちわからない。


 深く息を吸い込んで、気持ちを落ち着けた。


「そ、その……ボクも今日は頑張るから!」


 西園さんが、気合いをいれて手を握りしてる。


 目の前には瓦礫の山が並んでいた。もう、すぐそこに獣の深禍の姿が見えた。


 周りにもカースシーカーやコネクターたちが何人もいる。


 この作戦に参加してるチームの人たち。


 総力戦なのかもしれない。


 ――ブブブブ


 端末から、出撃の命令が来た。


「行くよ、みんな。"コネクトリンク"」


 みんなとタッチしながら、コネクトリンクを繋ぐ。


「篠崎くん、今回も頑張ろうね?」


 希沙さんは、いつものように元気よく笑った。

 それは空元気で、希沙さんは空虚さをその内に秘めてることは知ってる。


 でも、最近は本心から笑ってるような気がする。


「篠崎渚、あまり気張らなくていいわ」


 琴塚さんは、あまり表情に出ないタイプだ。だから今日も、無表情に近い。


 でも、人一倍優しい人で、最初に比べたらかなりみんなとの距離も近づいて、表情も柔らかくなった気がする。 


「コネクター、じゃないわね。篠崎渚、あんたに明上のことは預けるわ」


 椎柴さんは、ぶっきらぼうに言うけど、ツンデレが近いというか……そういうタイプだ。


 本当は、家族や友達を失っているけどそんな様子は微塵も見せない。少しは弱さを見せてくれてもいいのに。


 ……でも、この前の砂浜の時に少しだけ仲良くなった気がする。


 僕のことは、少しでも信頼してくれてるならその気持ちに応えたい。


「そ、その……頑張りますっ!」


 西園さんのことはよくわからない。蒼空さんとちょっと絡みがあるぐらいか。


 今後も、仲良くしてはいきたいけど、繋がりはないかもしれない。


「行くよ、渚くん」


 蒼空さんは、どうだろう。


 僕と蒼空さんの繋がりは、どう表したらいいのかわからない。


 少なくとも、大事な人だと思う。


「みんな、行くよ」


 だから、そんなみんなと今後も平和に過ごしていけるように、今回の敵も無事に倒さないといけない。


 アバドンの力を使うことになるけど、蒼空さんのことは絶対に無事に帰して見せる。


 と、覚悟を決めて蒼空さんと繋いだ手を握りしめた。


「《セイントアーツ》――"ランス"」


 光の槍が、雨のように降り注いだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


[アーカイブ]


 深禍の影響で孤児が増えているので、それ用の児童養護施設がいくつか作られています。

 被害にあった孤児たちはカースシーカーやコネクターになることも多いので、その影響で育成機関との繋がりもあります

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