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ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい  作者: あまぐりムリーパー
贖罪の獣と常夏サバイバル

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サイドテールは仲間になりたい

 刀からぶつかった衝撃が、腕に伝わる。


 黒河希沙のガントレットと私の刀が押し合う。こっちは両手であっちは片手のはずなのに……互角なのっておかしいでしょ。


「いくよ、帆花」

「戦闘中に掛け声とは余裕ね」


 バチバチ、と希沙の手のひらで作られた火花が振るった腕とともにまき散らされる。


「《斬撃領域(スラッシュテリトリー)》――切り替え、セミオート」


 周囲の斬撃を飛ばして火花を遠くに飛ばした。遠くで爆発して、僅かな風が肌を撫でる。


「やるね、帆花」

「これでも、中学の頃は結構出撃してたのよ」

「ふーん、そ。どれぐらい?」

「さあ。蒼空は三桁ぐらいの回数行ったんじゃない?」


 軽口を叩いて、汗を拭った。疲れたな。


 ここは訓練所で、黒河希沙に誘われたから気分転換がてら付き合って訓練してる。


 チームの部屋にでも行こうかと思ってたときに、急に「訓練でもしようよ!」と引っ張られてしまったので、付き合って来たというか強引に連れて来られたというか。まあいいわ。


 シミュレーターを起動すれば、対人戦もできるらしくてこれで安全に戦えるってわけ。どういう技術かはよくわからないけど。


 にしても、パワーでは勝てないわね。スキルそのものの火力も高いのに本人の力が強い。


 そもそも、火花だして爆発させるやつもおかしいでしょ。


 ソウルフレイム……だったっけ。あれってガントレット嵌めた状態でぶん殴ると爆発させるってスキルだった記憶なんだけど。遠距離攻撃は別であるみたいだし。


「どうしたの、帆花」

「休憩」

「えー、しょうがないなあ」


 あと、この体力ね。かれこれ数十分は戦ってるのに、息も上がってない。付き合ってらんないわ。

 バイタリティお化けじゃない。


 シミュレーターを解除して、ゆっくり座る。上がった息が少しずつ収まっていく。 


 横に、希沙がゆっくりと座ってきた。無駄に距離が近い。


「どう、気が晴れた?」


 にこっ、と希沙は笑みを浮かべる。


 この笑顔は、少し薄っぺらく見える。


 ちょっとだけわかるのよね。聞いた話によると、黒河希沙は深禍に家族を殺されたらしい。私たちと一緒。


 あのときに感じた空虚はそうそう薄れるもんじゃない。きっと、この性格なら友達も多かっただろうし。

 私だって、結構いたけど。


 そう考えると、雲山悠里しかいない明上が異常なだけか。


「すっきりはしたけど、別に悩んでたとかではないわ」

「そう?でもなんかさ、帆花ってさーこう空回りしてそうだから」

「空回り?」

「うん。みんなと仲良く……っていうか、篠崎くんとちゃんと話ができるようにする、みたいな気迫があるって感じ?」

「気迫って……まあ、そういう気持ちがないわけじゃないけど」


 コネクターとのコミュニケーションに問題があると、命に関わる。


 ……私は、もう誰にも死んでほしくない。あんまり、その気持ちを表に出したくもないけれど。


「でも、そんなに考え込まなくても大丈夫だよ」

「楽観的ねえ」

「そうかも?前に、蒼空ちゃんがねー私が生きる理由はチームのみんなで探していけばいいって言ってたんだ」

「明上が?」

「うん。私たちはみんなで頑張るチームだから。なんかあるなら一緒に頑張ろうよ」


 そう語りかけてくる黒河希沙は、ちょっとだけ優しく微笑んだ。


 ……そうか、私はちょっと焦ってたけどチームの一員になりたいのね。


 高校になってから、あんまり人付き合いをしてこなかったから。


 はあ、こんなとこで気付かされるなんて。


「……あんたって、元気なだけのやつじゃないんだ」

「えっ、どういう意味?」

「別に」

「えー、なんなの?このこの」

「鬱陶しいわね……」


 つついてくる肘を、手で受け止めて押し返した。


 ちょっとだけ、気は晴れたか。わかったけど、希沙って強引に入り込んでくるタイプね。やりづらいわ。


「で、帆花って渚くんにキスしようとしてたの?」

「……それ、前に説明しなかった?こっちを向かせようとしただけって」

「なんでそんなことしたの?」

「目を逸らされてムカついただけよ」

「ふーん、帆花って胸はあんまり大きくないけど、結構スタイルいいもんね」

「嫌味?」


 なんならあんたは胸もでかいでしょ。別にでかけりゃいいってものでもないけれど。


 ……ちゃんと見られないことにプライドが傷ついたってのは本当だけど。


 あーあ、明上よりも中学の時にモテてたせいで気持ち悪いもんが染み付いてるわ。

 いや、あいつの場合は立ち回りがおかしいだけだけど。


「嫌味じゃないよ。なんか私よりも痩せてるし」

「肉つきがよくていいんじゃない?」

「よくない!」

「暑苦しいから、引っ付かないで」


 急に後ろに回ったと思えば、そのまま抱きついてきた。しなだれかかってくる。何、本当に。


 触れてから思ったけど、体温が高い。ぽかぽかしてる。


「私みたいな空虚な子は、こうやって触れ合うの好きなんですー!」

「あんた、いきなりぶっ込んでくるわね」

「蒼空ちゃんだってそうだし!」

「それはそうだけど」

「帆花もそう?」

「別に、あんたらほど空虚じゃないわよ。人の生活めちゃくちゃにしてくれた深禍のやつに、ちょっとぐらいはやり返したいだけよ」


 はんっ、と鼻を鳴らすと抱き締める力が少し強まった。


「強がりだね、帆花」

「そういうこと思ってんなら、あんま言わないでもらえる?」

「やーい、ツンデレ」

「あんたねえ……」


 強引に距離をグッと縮められてしまった。


 ……しょうがないから、生きる理由とやらを探してやるとするか。他のチームのみんなと一緒に、だけど。


◇◇◇


 希沙と一緒に、訓練所から出てチームの部屋に行く。


 廊下を歩いていると遠くに明上らしきやつが見える。


「あれ、蒼空ちゃんかな?」

「たぶんそうよね」


 そして、その隣には――ギプスだとか包帯を巻いた女がいた。


 ……妙なのが、やけにボーッとしてる明上をその女が撫でていること。


「……なんか、蒼空ちゃんの様子おかしくない?」

「……そうね。いつもなら、撫でられてたら反発しそうなもんだけど」

「あっ、もしかして甘えん坊状態?」

「そうだとしても、私たち以外にそんなことする?」

「しないかも……」


 よく見ても、体をその女に預けて撫でられてるだけだ。……と思えば解放されて、ボーッとしたままスタスタと歩いていく。


「追うわよ」

「その前に、あの子のこと聞いてみない?」

「そうですねー、そういうときは聞いた方がいいですよっ!」


 ――さっきまでそこにいた女が消えたと思えば、隣にいた。


「"ポジティブビート"、気持ちいい音楽を聞くことで痛みを和らげながら、いい感じにパワーアップできちゃうんですっ、どうです?」


 えへへ、と可愛らしく笑うその女にゾッとした。得体の知れない。


「一応聞くけど、明上に何したの?」

「あー、蒼空ちゃんの知り合いですか?それはもちろん、お願いを聞いてもらいましたっ!」

「……変なことじゃないでしょうね?」

「友達を預けようって思って。皆さんも知ってます?マヒロちゃんのこと」

「まっひーのこと?まっひーの友達なら、大丈夫そうかな?」


 いつの間に、まっひーなんてあだ名をつけてたのよ、本当に。


 ふうん、マヒロの知り合いなのね。それを無理矢理、明上にお願いしたってこと?


 私はそのマヒロってやつのことはあんま知らないから何とも言えない。


「ってなわけで、皆さんおさらば!」

「ちょっと待って」

「《サウンドウェーブ》――"シェイク"」


 その瞬間、世界が揺れた。


 体がぐらつく。体のバランスが狂ったみたいな。


 ……平衡感覚を乱されてる?


 ぱち、と瞬きした瞬間にそれが戻った。


「なんだったの、あいつ」

「うーん、よくわかんないね?あのスキルはすごかったけど」

「……明上のやつもあんなスキル食らったってこと?」

「違うスキルじゃない?」


 と、話しながら歩いていると明上が例のマヒロって子を強引に連れていくのが見えた。……少なくとも言ってることはあってそうか。


 でも、さっきの女は多少警戒しておいた方が良さそうね。


 なんて思いながら部屋に入ることにした。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


[アーカイブ]


 訓練所では対人用の設定のシミュレーターがあります。

 この設定を使用した場合、非殺傷の状態でスキルを行使した戦闘を行うことができます。

 ただし、ある程度のダメージは残るので戦闘後は回復を推奨されています。

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