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ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい  作者: あまぐりムリーパー
贖罪の獣と常夏サバイバル

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主人公くん、心配する

 一泊だけして僕たちは海を後にした。


 ちょっとだけしかいなかったはずなのに、濃い日になってしまった。


 海で遊んでるみんなを見たり、椎柴さんと歩いたり、混合型深禍と戦ったりしたけど。


 それよりも……蒼空さんの「いっそのこと付き合う?」の言葉が、頭の奥にこびりついている。


 自然に言うもんだから、冗談みたいに聞こえなくて。その後は冗談って言ったけど、半分本気だとか言ってて、結局どうなのかわからない。


 だから、少しこっちからも言い返してしまった。本当に、そんなことばっかりされてたらどうなってしまうかわからない。


 少し顔を赤くしていたので、たぶん次からは気を付けてくれる……と思う。

 人をからかう割りには、同じことをされるのは慣れてないっていうのは蒼空さんらしいけど。


 ……なんか、蒼空さんのことばっかり考えているな。よくない、本当に。


「……篠崎渚、何を呆けているの」

「ごめん、琴塚さん。ちょっと考え事してた」

「人を放っておいて、そういうことはあまりよくないと思うわ」

「琴塚さんもそんな風に思うんだね」

「……あなた、だいぶ遠慮がなくなってきたわね」


 チームの部屋で、琴塚さんと対面する形で椅子に座っている。


 結局、動き始めた第四深禍災害は早急に対処しないといけないけど、どのように倒すのかとか決めるために少しかかるみたいで、数日はやることがないらしい。


 他のみんなは、まだ来てない。


「正直ね、少し不安だわ」


 珍しく、琴塚さんは物憂げな表情を見せた。


「どうしたの?」

「獣の深禍は私がカースシーカーになるきっかけって話をした思うけれど。別にトラウマってほどでもないけど、なんとなく嫌な気持ちにはなるのよね」


 はあ、と琴塚さんは深く息を吐いた。


 ……嫌な気持ちになる、か。僕も初めてコネクターになったのは、近くに深禍がいたときだった。

 あのときの恐怖をもう一度味わおうとは思わないし。


 もしかして、琴塚さんはその時に大事な人が傷ついてしまった……とかそういったことでもあるのだろうか。


「何?」


 じろ、と視線がこちらを向く。考え込んでしまっていて、顔を眺めるような形になってしまった。


「いやその、もしかして琴塚さんもその、深禍災害に嫌なことでもあったのかな、と」

「回りくどいわね。わからなくもないけど。別に、トラウマってほどではないって言ったでしょ?」

「……まあそうなんだけど。もしかしたらって」

「はあ、明上蒼空のせいね」


 ……最初にあんなに普通そうにしてた蒼空さんが一番、ボロボロだったせいでちょっとそういう話に警戒してるかもしれない。


「ごめん、ちょっと神経質だった」

「いいわ。それにね、私がもしそういう精神的に疲弊した女だったのなら……」


 琴塚さんの口許が緩んだ。


「――あなたが助けてくれるのかしら」


 普段、あまり表情を見せない琴塚さんの自然な微笑みに、言葉を失った。

 酷く綺麗で、目を奪われそうだったから。


「そうだね、その時は助けるよ」


 少しだけ間を置いてそう答えた。

 傷ついた女の子なら、僕はきっと放っておけないから。


「そう、あなたらしいわ」


 すぐに、笑みが消えて元に戻った。まるで、幻だったみたいに。


「ところで、結局あなたは明上蒼空と付き合うの?」

「……なんで?」

「告白されてたでしょう」

「冗談って言ってたよ」

「半分本気とも言ってたわね」


 ……そんな風に思ってたのに、すぐに蒼空さんと僕の話に繋げてくるのはどうなんだ。


「たぶんそれは、依存みたいなものだからそうはならないと思うよ」

「そういう話ではなく、あなたがどうかと聞きたかったのだけれど」

「僕が?」

「そうよ。なんというか、あなたってそういうところに興味あるのかもいまいちわからないのよね。女の子に興味あるの?」

「めちゃくちゃ言うね!?」

「でも、明上ユーリだった頃の反応からすると体には興味あるのかしら」

「ちょっと待って。それだと、僕は結構最低じゃない?」


 と、風評被害紛いな話をしているとがらがらと扉が開く。


「よっす」


 片手を上げて、気だるそうに蒼空さんが入ってきた。……ちょっとテンション低そうだ。


「どうしたの、明上蒼空。元気ないわね」

「うん、まあ。眠いから」


 ふあっ、と大きく口を開けてあくびしている。


「眠れなかったの?」

「いやー、第四深禍災害の攻略でちょっと連絡きて面倒だなーって」


 連絡が何か来てただろうか。思い出してみるが、何もなかったはず。


「そ、その……ボクそろそろ入ってもいいかな」


 蒼空さんの後ろから、西園さんが顔を覗かせた。なんでここに?


「マヒロもちょっと絡んでてね?チームブルースカイをメインに攻略戦しようぜ!ってことらしいよ」

「……なんで?」


 確かに、僕たちのチームは強いけど。それでも、特別僕たちじゃないといけない理由がわからない。


「え、えっとね……そのボクのチームに飯島夏音って子がいて。その人のスキルが獣の深禍を誘導したり、下手すると眠らせたりもできるんだけど」


 そんな強いスキルの人がいたのか。なら、尚更僕たちじゃなくてそのチームをメインにするとかじゃダメなんだろうか。

 ……火力がないとかなのかな?


「……この前の、第五深禍災害でボクを庇って、今大怪我してるんだよ」


 ……なるほど、本来ならその人がいるから楽に攻略できるはずだったってことだろうか。


 と、言いきった後でマヒロさんはなぜか蒼空さんの後ろに隠れていった。……なんでだろう。


「それで、誘導ができないんだったら殲滅しようってことになって。私がその役目になるんだって」

「……それは、アバドン化した蒼空さんの力でごり押しするってこと?」

「まあ、そうだね。渚くん、ちゃんと私を繋ぎ止めてね?ミスったら、渚くんごとバンッ!だからね」


 ……本当に怖いことを言うなあ。


 にしても、蒼空さんも出撃か。本来、アバドン化した蒼空さんはわりと待機を命じられることが多い。


 あまり力が使えないし、オーバーなパワーだから。この前の海は、ひとりぼっちはかわいそうだからという意図があったらしいけど。


 少なくとも、深禍災害だ。出し惜しみしていられないってことなのかもしれない。


 次は絶対、蒼空さんを危険な目に合わせずに帰る。そのつもりだ。


「……ところで、西園さんはいったいどういう繋がりが?」

「ああ。預かってってその飯島夏音って人から言われて」

「その、ボクなんかがごめんなさいぃ。で、でも一時的になら、飯島さんのスキル使えるからっ」


 確かに、この前も獣の深禍の動きを止めていたのを見た。なら、きっといてくれたら心強いんだろう。


 ……にしても、メインって言う割には役割が露払いなんだよね。僕たちが道をつくって、他チームに繋ぐ役割だ。

 怜菜さんも椎柴さんも、多数の敵を相手に戦えるタイプだから相性がいいのかもしれないけど。


 中心にいる混合型深禍はどうやって倒すんだろうか。


 そこに一抹の不安を抱えたまま、僕たちはようやくやってきた作戦の連絡を確認することにした。

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