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ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい  作者: あまぐりムリーパー
贖罪の獣と常夏サバイバル

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TS娘、イベントの敵と戦う

 強引にマヒロの手を引いて、深禍の方に走り出す。たぶんこっちの方かな。


 とりあえず建物から出て、海の方を目指す。


 元々、渚くんと帆花でも確認しに行くかなと思って、部屋を出ただけなんだけどな。


 そもそも、希沙はなんでマヒロを捕まえてたのって感じだけど……希沙ってあれだよね、動いてるものを捕まえてくる猫みたいな習性でもあるんじゃないかな。


 ……なんか、触れてる手から震えが伝わる。

 なにこいつ、私にびびってんの?


 少しだけ後ろを振り向いて様子を見る。


 びくびくしてる……というよりは、落ち着きがないみたいな様子だ。よくわかんない。


 あのさ、ワンチャン監禁されそうな私の方がびびるべきだからね?

 ヤンデレ属性は勘弁。メンヘラは溢れてるのでいいものとする。


 ……っていうか、飯島夏音が出撃不可はね、その……さすがにやばいかな。


 いや、ガチでどーしよ。


 飯島夏音のスキルであるサウンドウェーブは、音をいい感じに鳴らすことで相手の注意をそらしたりバフをかけたりするんだけどね。


 獣の深禍はその音に過剰に反応する。だから、周囲にいる取り巻きとかもそれで誘導できてすごい便利なんだよね。


 第四深禍災害って混合型深禍を中心として、そこからぽろぽろ獣の深禍が出てくる。


 で、それを潜り抜けて混合型のところまで行って倒さないと行けないんだけど、飯島夏音がいるとつまり、雑魚戦のスキップができる。戦力を完全に温存したままボスまでいけるってこと。


 それがなくなると、さすがにきついよねえ……いけるかな。

 いや、私がアバドン状態だからちょっと戦力が強くなってる可能性はあるのだけども。


 でも、一つ解決策を閃いたよ!


 マヒロって見た感じ、コピーのスキルでしょ?じゃあ、サウンドウェーブをコピーすれば完璧じゃん!


 はい、勝ちです。……なんか寝起きで私、テンション高いかも。


「あの、蒼空ちゃん」

「ん、なに?」

「手、柔らかい……」

「限界オタク?」


 えっ、手の感触楽しまれてる?ちょっと、キモいぞさすがに。

 確かになんかにぎにぎされてる気がしないでもないけど。


 ……まあ、今はいいか。


 なんかね、マヒロって放っておけない感じだよね。私たちとは別ベクトルで、ボロボロっぽそうというか。


 この挙動不審な感じって、そういうのありそうだよね。


 こういうとき、渚くんなら手を伸ばす出そうから代わりに私がやってあげようかなってこと。


 ……あと、能動的になんかしてないとこう、私のメンタル強度がヘボになっちゃいそうだからね。


「ごっ、ごめん。なんか変なこと言っちゃって」

「今更じゃない?前も言ってたよ」

「ひぃんっ、ごめんなさいぃ……」

「なんかずっと謝ってない?もういいよ、そういうのって。一旦、深禍倒しに行くよ!」

「う、うんっ!」


 なんだ、元気な返事も出せるじゃん。


 じゃあ、一緒に行っちゃうか!

 ……ってかみんな、早く来てね。さすがにマヒロと二人じゃ心細いから。


 ――グルルルル


 不快な唸り声が、耳の奥を引っ掻くように入り込んでくる。


 ズシズシ、と持続的に地鳴りのように響く。足音だ。


 物陰から恐る恐る見に行くと、そこには首がバラバラに三つついてる獣の深禍がいた。


「け、ケルベロス」


 そう、言葉にするならケルベロス。というには、不恰好だ。

 だって、首の位置があんまり揃ってないし。普通の頭と、右の横っ腹と左の足についてる。


 ……混合型深禍かあ、今私ってコネクトリンクないからまともに戦えないんじゃない?


 えっ、やばいか。


 混合型って強いんだよね。だって、第五の時に私一人でギリギリだったもん。


 ズシズシ、とこちらの方に歩いてくる。まだ見つかってはなさそうだけど、早いとこなんとかしないとあばれだしかねない


「そっ、蒼空ちゃん。これ大丈夫?」

「うーん、やばいかもね。通常の深禍ならいけるかなって思ったんだけど」

「そんなぁ……」


 あれ、っていうかこいつも獣の深禍だよね。


「マヒロ、飯島夏音のスキルをコピーできないの?」

「えっ、あっその……完璧にコピーはできないけど真似っこはできるよ?」

「真似っこ?」

「うん、ボクのスキルはね、一時的に何かの能力を使えるだけなの」

「一時的に?」

「うん、だからボクのスキルで第四深禍災害攻略はできないよ」


 ……マジかあ。


 たぶん、一時的にスキルで獣の注意を引いたりとかしてちょっとだけ進めるけど、すぐに効果切れてボスまでは行けないってことか。


 ええ、じゃあやっぱりきつくない?


「あっ、蒼空ちゃん……こっちくる」

「うーん、渚くんたち遅いし……ちょっと頑張っちゃうか」

「えっ、ええっ!?」

「《セイントアーツ》……ぐぅ!?」


 どろり、と体の何かが溢れる。ぐつぐつと、煮えたぎった何かが体の中から吹き出しそうになって、体が揺れた。


 壊れた蛇口が吹き出しそうになった。これは、ダメか。


「そ、蒼空ちゃん大丈夫!?」

「ごめん、ダメそう……」

「ええっ、うぅ……ぼ、ボクがやる!」

「マヒロ!?」


 ざくざく、と砂浜を走る音がした。止めようとする手が空を切る。地面にそのまま倒れる。


 体がまだ動かない。ちょっとのスキルもダメなんて、本当に使えない。


「《インストール》――"ソウルフレイム"」


 いつものおどおどした喋り方とは違う、芯のある力強さを感じた。


 もしかして、戦いの時はやれるタイプなんだろうか。


 なんとか、体を起こす。


 マヒロの両手には、希沙と同じガントレットが嵌められていた。


 手のひらにバチバチ、と発生した火花が落ちて、足元で軽く爆発を起こす。


 その爆風に乗って飛び上がり深禍を殴り付けている。拳から爆炎が発生して、衝撃で後退してギリギリ攻撃から逃れてる。

 えっ、結構戦い慣れてない?


 爆発の衝撃をうまく利用して回避し、撹乱しながら少しずつ攻撃を加えていく。倒せはしないけど、時間稼ぎしてるってことか。やるね、マヒロ。


「蒼空ちゃん、ごめん遅れた!」

「明上、大丈夫?」

「みんな、遅い!」


 渚くん含めてみんな、ようやくきたらしい。


「明上蒼空、あなたなんで倒れてるのかしら」

「スキル使おうとして失敗しちゃった。みんな頼んでいい?」

「わかったわよ、明上。そこでじっとしてなさい」


 帆花が、ヘアゴムを外す。はらり、と髪が下ろされて金色に帯びていく。


「やるわよ、コネクター」

「わかった、みんなもいくよ。"コネクトリンク"」


 帆花と渚くんがタッチする。そのまま、希沙と怜菜ともタッチして、一気にコネクトリンクが繋がった。


「ぎゃうっ!」


 深禍の足でマヒロが転がされて、飛んでいく。……なんか、意外と無事そう。混合型って結構力強いはずなんだけどな。

 転生者だから、なんかずるできて強いみたいなことがあるのかな。でも、登場キャラクターでもないはずなんだけど。


「《斬撃領域(スラッシュテリトリー)》――切り替え、フルオート」

「《マジックワード》――"フレイム"」


 マヒロに追撃しようとした深禍に、斬撃と炎が襲う。表面を焦がして裂いてはいるけど、あんまり決定打になってない。


 希沙も同じように突撃して、爆発によって攻撃してるけど、少し怯むぐらいだ。


 噛みついてくる頭をなんとか殴り付けているけど、前足の蹴りを受けて吹き飛ばされる。


「希沙さん!?……反応はある、無事だね」


 コネクトリンクによる感覚共有に近い効果で、一応希沙は無事がわかるみたいだ。


 帆花の飛ばした斬撃と怜菜の炎でなんとかカバーしてるけど、暴れすぎててちょっと厄介だ。


 ……うーん、なんとか倒しきれないな。普通に強すぎ。

 第五の最初の混合も倒すのきつかったしなあ。


 チーム、ブルースカイの問題、それは単発火力で強いのがないこと。


 例えば、私はまあそのアバドン状態だから変わっちゃったけど、攻防どころかサポートもできるんだけど、火力の高い一撃はあんまない。


 希沙は単発はそこそこ火力高いけど、混合型みたいにでかいのを倒すのは結構厳しい。


 怜菜も、どちらかというと集団を蹴散らすタイプだ。


 で、残ったのは帆花だ。たぶん、本人も気付いてないから、話しかけないと。


「渚くん、ちょっと繋いでくれる?」

「うん。"コネクトリンク"」


 壊れそうになった、私の内側が少しずつ修復されていく。


「帆花、前に混合型倒したときのやつ、やろう!」


 よいしょ、と起き上がって帆花に向けて叫ぶ。


 刀で前足の蹴りを受けながら、帆花の顔がこちらに向いた。


「あれ……ああ、あれね。ちょっと思い出したくもない……記憶ねっ!」


 帆花が深禍の前足を押し返して、後ろにステップして距離を取る。


 思い出したくもない記憶かあ。まあそうだよね。


 私と帆花は、中学のあの日以降ずーっと深禍の出撃に加わってた。

 私たち以外の生き残りも、全員。


 その時に、混合型と戦ったことが一度あった。


 一気に、五人死んだ。私たちはたたでさえ、生き急いで、ギリギリだった。


 そのときの記憶だから、あんまり思い出したくはないよね。


「明上、ちょっと時間かかるわ」

「そうだよねえ」


 ……どうしようかな。怜菜はあくまでサポートで、近接で戦うのは厳しい。


「《マジックワード》――"アイス"」


 たまに、足元を凍らせて動きを止めてるけど、こいつは力が強いからすぐにそれを越えてくる。


「渚くん、希沙はどう?」

「えっ、呼んだ?」

「もういるじゃん」


 振り返ると、あははと軽く笑っている希沙がすぐそばにいた。


「希沙さん、治すよ」

「ごめんね、ちょっと油断しちゃった」


 大きく怪我はしてないけど、擦りむいていたり、痣になってる部分がある。お腹を押さえているし。


 こうなると、帆花が一撃を溜める隙がない。……私が行くかなあ。ちょっと加減を間違えると渚くんごと、ボンって破裂しちゃいそうだけど。


「《インストール》――"サウンドウェーブ"」


 ――きぃぃぃん


 甲高い音が、鳴り響く。


「ご、ごめん。ちょっとだけ、飯島さんのスキルで隙を作れる」


 深禍の動きが少し止まって、揺らいだ。音の反響で三半規管でも狂わされてるのかもしれない。


 砂を払いながら、起き上がったマヒロが少しずつ、こちらに歩きながら深禍に向けてスキルを発動させている。


 ……やるじゃん、マヒロ。じゃあ、ちょっとだけ私も手伝っちゃおうかな。


「《セイントアーツ》――"チェーン"」


 地面から、光の鎖が深禍に巻き付いて動きを止める。ただでさえ、ゆらゆらと揺れて動けてない深禍にはこれで十分だ。


「よくやったわ、明上とそこの変なやつ」

「へ、変なやつ!?」

「後は任せなさい。斬撃装填。《斬撃領域(スラッシュテリトリー)》――切り替え、一点集中」


 帆花の刀の刀身が光る。斬撃を一気に集めて、それを解き放つ。それが帆花……というかたぶんこのチームで一番強力な一撃。


 かつて、ピンチだった私たちを助けた死に物狂いで放ったのと同じ一撃。


 振り下ろした刀に宿った斬撃が、一気に放たれた。


 そこには、真っ二つになった深禍があった。


 疲れたように、座り込んだ帆花の髪は元の茶髪に戻って、伸びた髪も元の長さに戻る。


「これやると、あの時のこと思い出してなんとなく嫌なのよね」


 ポツリと呟く帆花の様子は、少しだけ物憂げで背中を叩いてみたくなったけど、やめておいた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


TIPS:西園マヒロは原作に登場しないキャラクター。スキルのインストールで他者の力を一時的に真似て戦う。

前世は男で、かわいいものが好きなので女の子になったから可愛くなれる!と意気込んでいたがちょっと中学時代にちょっと事件があり、精神的にとても不安定になる。

その時にはちょっと停学していた。

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