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その手紙、異世界にもお届けします  作者: 冲田


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第4話 郵便配達人

 リュートが扉をノックすると「どうぞ」という女性の声が聞こえて、二人は局長室に入った。


「やあ、ユウセイくん。はじめまして。私が局長だ」


 局長と聞いて、侑惺はなんとなく初老のおじさんが出てくるのだろうと思っていたが、意外にも局長を名乗ったのは美人なお姉さんだ。受付のお姉さんとあまり歳は変わらなそうに見えるけれど、とても迫力のある人だった。


「なにやら黒山羊に襲われたとか。災難だったね。

 リュートくんはお迎えご苦労様」


 侑惺とリュートは局長に促されて、応接スペースの椅子に座った。局長は手に持った書類に目を通しながら、話を始める。


「ここに来てもらったのは他でもない。ユウセイくんを正式に中央郵便局員に起用する時が来たからだ」


「はい?」


「きょとんとしているようだから、順に説明しよう。まず、ここは中央郵便局。世界と世界の狭間(はざま)、どこでもないところにあって、全ての世界に繋がるところにある。

 私たちは世界を超えたメッセージを届けるため、あるいは、ある世界の郵便業務を代行するために存在している。詳しいことは仕事をしているうちに知ることになるだろう」


 侑惺はさらに“きょとん”とすることになった。局長はそれにはかまわずに続ける。


「君がここにいるのも、君が異世界に送った手紙が無事に受領(じゅりょう)された結果だよ」

「どういうことですか?」

「『郵便屋さんになれますように』と星に願いを送っただろう?」


 つまり、こういうことだそうだ。侑惺が小学校低学年の頃に七夕(たなばた)に書いた短冊(たんざく)への願い。その願いが手紙となり、郵便配達人によって天帝や織姫(おりひめ)やのいる世界へと届けられた。

 その結果『郵便屋さんになれますように』という願いが今、(かな)おうとしている。


「いや……『郵便屋さんになりたい』って、書いたこともあんまり覚えてないくらいなんですけど……。え? 七夕の願いって、こんなふうに叶うの?」


「願いの受領から時間が経ってしまったのは、君がまだ就労(しゅうろう)するには早すぎる年齢だったからだな。就労可能年齢になったことだし、迎えをやったというわけだよ」


「けど、今は別に、郵便屋さんになりたいとは思ってないです。あの頃は将来なりたいものなんてコロコロ変わってたし……」


「素質はあると思うぞ?」

 そう言いながら、局長はまた書類に視線を落とす。それは、リュートが受付で書いていた報告書だった。


「郵便局員になる前から“黒山羊”が見えていたようだし、配達業務も始めていたようじゃないか」

「それは、友達宛のラブレターのことを言ってます?」

「ああ。ラブレターっていうのはものすごく重要な手紙なんだ。その人の運命に関わってくるだけでなく、時に国や世界をも動かし()る」

「中学生のラブレターはそんな大層なものじゃない気がしますが……」


「ともかくだ、長々と話していても仕方がない。まずは初仕事といこう」

「え! 俺に拒否権ってないんですか⁉︎」

「ユウセイくんが()()ったポケットの中の手紙を、責任を持って宛先まで届けなければ」


 そういえば、と、侑惺はポケットから謎の手紙を取り出した。


「これを俺が中央郵便局? に、渡せばそれで終わりになるんじゃないんですか?」

「差出人から直接受け取ったんだろう? 配達人が一度請け負った手紙は、他の誰にも(たく)すことができないんだよ。大怪我や死亡などの理由で、業務遂行(すいこう)不可能でない限りね」


 そんな物騒(ぶっそう)な……と侑惺は顔をしかめたが、さっきの巨大な黒い山羊の突進を思い出すと、さほどオーバーな物言いでもないのかもしれないと思った。


「じゃ、そう言うわけなので、あとは新人をよろしく、リュートくん」


「ああ、私がずっと同席していたのはそういうことでしたか」

 ずっと黙って横に座っていたリュートはここで初めて口を開いた。


 局長は話は全部終わったとばかりに満足げに頷くと、自分の席に戻っていった。

 リュートにも新人研修の拒否権はないらしい。



 リュートの案内で、二人は事務室へと向かった。そこで、侑惺は制服を支給される。この場所にいるほとんどの人が羽織(はお)っている黄色いジャケット。黒い帽子と、がま口の郵便(かばん)。なんだか全部合わせるとチグハグな印象だ。

 侑惺は、学生服の上からジャケットを羽織り、ポケットに入れていた手紙は郵便鞄の中に入れた。


「これから、ユウセイが持っている手紙の宛先の世界に行くよ。壁一面の扉の向こうは全てが異世界。それぞれの扉がそれぞれの世界へと繋がっているんだ」

 リュートが言った。


「じゃあ、さっきの扉を通れば、元の世界にも簡単に戻れるってことですか?」

「ああ、もちろん。ただ、一度帰ってもまた、勤務のために(かよ)ってもらうことになるだろうけど」

「あ……やっぱり拒否権はないんですね……」

「大変なこともあるけど、やりがいもあると思うよ」

 不安と一緒に困惑した表情をみせる侑惺に、リュートは笑いかけた。



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