表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その手紙、異世界にもお届けします  作者: 冲田


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/7

第1話 ラブレター

 中学生になってから増えたなぁと思うこと。彼にとってそれはそこらへんを飛んでいるカラスの数と、それから……。


「あの……嵯川(さがわ)くん、ちょっといい?」


 少しはにかんだような表情で、クラスの女子は彼の学生服の(すそ)をひっぱる。そうやって廊下に出るように(うなが)された嵯川(さがわ)侑惺(ゆうせい)は、階段下という少し人目が(さえぎ)られる場所まで連れて行かれた。


「えっと、この手紙なんだけど……」


 女子はおずおずと(あわ)いピンク色の封筒を侑惺に差し出す。

 いつもここまでは、ひょっとして? と侑惺も期待をするのだ。

 女子は中学生になってから、恋の話が格段に増えた。小学生の頃とは比較にならないほど浮き足立って、恋人になってくれる人を探している。

 だから、自分の番がそろそろ回ってきてもいいのではないか、なんて、男子中学生としてはソワソワしても仕方がない。


「この手紙、後藤くんに渡してもらえないかな……」

「うん、知ってた!」


 侑惺は、(かく)すこともなく、大きくため息をついた。女子の顔がムッと(ゆが)む。


「自分がモテないからって、あからさまに嫌そうな顔しないでよ!」

「文句があるなら、俺を(かい)さないで自分で渡せば⁉︎」

「だって、他のクラスに行って、()んなの前で後藤くん呼び出してって? ハードル高すぎるでしょ! だから、(はじ)(しの)んであんたに(たの)んでるのにー!」

「じゃあ、なんでラブレターなんて方法を選ぶわけ?」

「だって、連絡先知らないし……チャットで告ったら百(パー)振られるって噂だし……直接とかさらにムリだし……」

「手紙だから成功率が上がるとも思わないけど」

「『直筆の手紙がいいな』って後藤くん本人が言ってたって、確かな情報があるんだってば!

 とにかく! お願い! 後藤くんの幼馴染で親友の嵯川くんに頼むしかないんだよぉ!」

「……渡すだけだからな。どうなっても俺の責任じゃないからな?」

「もちろんだよ! わぁい、ありがとう!」


 そう。侑惺が最近増えたなぁと思うことは、友達()てのラブレターの配達を頼まれること。

 クラスメイトに限らず、もう何通もの手紙を後藤に届けている。

 侑惺はなんとも憂鬱(ゆううつ)な気分で、受け取った手紙をポケットに入れた。



 放課後、後藤と一緒に帰路についた侑惺(ゆうせい)は、女子から受け取った手紙を渡した。

 後藤は実際(じっさい)、とんでもないイケメンで、女子が熱狂するのも無理はなかった。中一とは思えないくらい(すで)に背が高いし、目鼻立ちもモデルやアイドルのように整っている。見た目だけではなく外面(そとづら)もすこぶる良いので、好かれやすい。

 侑惺が知っている限り、幼稚園の時は何人もの女の子が後藤と結婚の約束をしようとしてたし、小学生の時もモテエピソードには事欠かなかった。


 後藤は「ありがとう」と手紙を受け取りながらも、一瞥(いちべつ)しただけでそれをぐしゃりと(にぎ)りつぶした。

 侑惺が手紙を受け取って憂鬱(ゆううつ)な気分になるのは、何も友達ばかりがモテて自分がモテないからというだけではない。この結果が想像できるからだった。


「えー……。中身くらい確認しろよ。薄情(はくじょう)なやつだな」

「自分で届けるべき手紙を人に(たく)している時点で読む価値なんてないよ」

「そう言って、一応持って帰ってはいるんだから、本当はこっそり読んでる?」

「いや、そのへんに()てるわけにはいかないからってだけ」

「どうせ手紙の辿(たど)末路(まつろ)がそれならさ、一切(いっさい)受け取らないって言ってしまえばいいんじゃないの? 俺の手間も減るし」

「手紙をもらえるのは(うれ)しいよ」

「意味わからん。読まないくせに」


 こんな薄情なやつだと知っていても、女子はまたコイツに宛てて、手紙を書くのだろうか。世の中不公平なもんだと、侑惺はまたため息をついた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ