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セーラー服と雪女 第2巻 「酒井弓子の日常」  作者: サナダムシオ


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3/4

チャプター3 釘を刺す少女

 病室のベッドの中で、弓子はウキウキしていた。

 というのも、ついさっき担当医の先生から、「治療の経過も順調だ。だから9月には退院可能だ。」というお墨付きをもらったのだ。


 去年あの人が言ってたことはウソじゃなかった。

 私は高校受験に間に合うんだ。

 雪村君にもまた逢える。

 弓子は嬉しくて仕方が無かった。

 と、そこへ病室のドアがノックされた。


 あれ?先生また戻ってきたのかしら?

 弓子が返事をすると、制服を着た少女が入ってきた。

「お久しぶりね。もうすっかり良くなったみたいね。」

 それは同級生の村田京子だった。


「ありがとう…急にどうしたの?」

 よく考えたら、小学校以来、あまり親しく話したりしていない彼女の登場に、弓子はいささか戸惑っていた。


 京子は病室の花瓶に赤いバラの花束を飾ると、振り返ってこう言った。

「アナタにはウソが通じないのは分かっているので、単刀直入に言います。」

「雪村君のことは、私にまかせて諦めてください。」

「!?」

「アナタも雪村君のことが気になっていたのでしょう?はっきりしたのは、あの誕生日会のころかしらね。」

「…。」


 京子はしゃべり続ける。

「雪村君はね⋯何者かに常に狙われているの。」

「残念ながらアナタのチカラでは雪村君を守り切れない。」

「…でも、私ならできる。」

 彼女はウソを言っていない。弓子には分かった。


「この世に男なんて星の数ほどいるわけだし…悪いけど今回は私に譲ってね。」

 この人はいきなりやって来て、ナニを勝手なことを言ってるんだ。

 弓子はそう思いつつも、彼女の内側からにじみ出る、底知れない重圧を感じて黙っていた。


「あとは私に任せて、アナタは安心して治療に専念してね。」


「じゃあ、要件はそれだけだから。お大事にね。」

 言いたいことだけ言って、彼女は病室から去って行った。


 あとに残された弓子は、戦わずして、すっかり負けた気分だった。

 こんなことは人生で初めての経験だった。

「格の違い」を見せつけられたような感じがした。


 コレが1979年8月某日のことである。


挿絵(By みてみん)


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