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守るべきを守るために

今日から明日の夜にかけて外出する為、その間は更新出来ないです。楽しみにされてる方がいるか分かりませんが、すみませんm(._.)m

1916年4月16日、マルタ・グランドハーバー停泊中

装甲巡洋艦「出雲」艦内、艦隊司令部会議室


第二特務艦隊旗艦「出雲」にて、佐藤皐蔵少将を議長とした艦隊戦術再評価会議が開かれていた。出席者は各艦の艦長、参謀、通信・砲術・航海・機関各分野の責任者らである。



佐藤少将:「まず言っておかねばならん。――我が艦隊の任務は“撃滅”ではない。**商船を護ることこそ、我々の第一目的である。**これを取り違えてはならん」


一瞬の沈黙ののち、今村少佐(駆逐艦“潮”艦長)が低く応じた。


今村少佐:「……敵を仕留められなかった悔しさが痛烈に残ります。しかし、護衛対象のうち四隻が無傷で港に入れたこと、それが本義であるなら……任務は果たせたと申せましょう」



佐藤:「次に、被弾した仏商船“モン・サン=ミシェル”からの救助対応について。乗員救出は評価されている。だが――実際には“幸運”に助けられた面が大きい」


“白雪”機関長(大尉):「正直なところ、火災消火と浸水制御の手段は限られておりました。浮環・梯子・網、それに人力頼みの救助。海中油膜による二次災害の危険も見落としておりました」


佐藤:「今後は、我が海軍の艦艇は当然として、

“商船型”船体の構造も把握し、被弾時にどのような破壊が起きやすいかを予測・共有しておくべきだろう。ダメージコントロールに関しては、英国側と連携し研究班を設ける」



“村雨”通信長(中尉):「私からも1つ。艦艇間通信について、全体に“間が悪い”印象がありました。とくに仏商船との合図交換が遅れ、被雷直後の混乱が収拾しづらく……」


佐藤:「電信、手旗、音響、いずれの方法も“時と場所”に応じて即応せねば意味がない。全艦艇は信号訓練を再徹底し、“10秒以内に指示が伝わる態勢”を目指す。通信士官は毎日、簡易訓練を行うこと」



佐藤:「我々は、敵潜水艦を撃沈できなかった。だが、それは“対応装備と戦術の未成熟”に起因するものであり、個人の怠慢ではない。重要なのは――次に向けた備えだ」


会議の空気が、静かに引き締まった。


佐藤:「よって、今後は以下の三点を訓練主眼とする」


1.海上救助訓練の標準化:火災、沈没、負傷者搬送に対する段階別対処

2.ダメージコントロール研究:被弾時の艦内浸水区画封鎖・ポンプ運用訓練

3.高密度通信連携訓練:信号、無線、旗、手旗、口頭伝令を組み合わせた即応体制



佐藤は静かに口を結び、会議室内を一望した。


佐藤:「本会議は叱責の場にあらず。失敗から“守るべきもの”を掘り起こし、積み上げる場である。君たちを信じている。――それだけは、言っておく」


出席者たちは一斉に起立し、敬礼した。

その背筋は、海の彼方の何かを――まだ見ぬ次の戦場を、確かに見つめていた。


4日後の1916年4月20日、艦隊旗艦「出雲」より各艦に新たな訓練命令が通達された。

内容は多岐にわたり、従来の単発的な砲術・航法訓練から、より実戦的かつ体系的な訓練体系への移行を示していた。



艦隊会議室、訓練再編に関する全体説明が佐藤皐蔵少将から行われた。


佐藤少将:「諸君、先日の実戦で明らかになったのは、我々が“砲を撃つ前”にこそ備えるべき領域があるということだ。――よって、本日より以下の訓練を段階的に実施する」



佐藤:「被弾時の“生存性”は、構造ではなく“即応手段”に依る。

水密扉の閉鎖訓練、浸水封止、ポンプ起動、火災隔離、負傷者搬出――これを“1分刻み”で行う。演習艦も容赦なく破壊配置で想定する」


技術参謀の報告によれば、英国艦隊では既に**“艦内避難経路の染色図”**と呼ばれる緊急行動マニュアルが実用化されていた。


技術参謀:「これを我が艦隊向けに改訂した“海軍型DCマニュアル”を、仮制式として全艦に配布いたします」



佐藤:「敵潜望鏡の視認は、我々の唯一の“索敵手段”だ。よって、全艦は見張り員を倍増せよ。交代制も従来の2時間→1時間に短縮、疲労を軽減する」


また、見張り兵の視力測定、双眼鏡使用訓練も並行実施。

さらに、各艦の見張り台に反射防止塗料を施し、海面との“ギラつき”を低減させる工夫も始まった。



通信参謀:「信号伝達訓練では、“全艦5秒以内の同期確認”を目標とします。手旗・発光信号・音響信号の混成使用訓練を日次で実施」


実地訓練では、以下のような演習が組まれた:

•「商船被雷→浸水→救助要請→艦隊内通信→

対応分派→救助→護衛再編」までを模擬的に再現

•通信の伝達速度と正確性を記録・比較

•指揮艦→各艦への号令時間を“最大8秒以内”に短縮



訓練海域、“潮”艦上――


長井中尉:「小沢、こっちのポンプ間に合わん!隔壁封鎖急げ!」


小沢中尉:「浸水止まった!予備ホースで後部に回す!」


汗と油にまみれた若い士官たちは、今や“敵を撃つ訓練”以上に、

“仲間を生かす訓練”に心血を注いでいた。



訓練終了後、浅間の作戦会議室にて――


佐藤:「今回の“救助・制御”訓練の成績は、正直に言えばまだ道半ばだ。だが、“守る海軍”としての再出発には確かな一歩である」


今村少佐が、小さく頷いた。


今村少佐:「敵を撃てねば、せめて味方を沈めぬこと……それが今の海軍の矜持ですな」


佐藤は黙って、手元の報告書に目を落とした。

そこには、油まみれの艦内で交代なしにポンプを動かし続けた兵たちの名前が、丁寧に記録されていた。



「敵を撃てずとも、味方を沈めない」――

それが、潜水艦の牙をかいくぐるこの時代の“海の戦術”だった。


そして、佐藤皐蔵とその艦隊は、

その静かな戦場に、確かに一歩ずつ足跡を刻みつつあった。

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