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ヴィミー高地突撃

1915年5月9日午前5時、曇天の空の下、仏軍による砲撃が突如として始まった。

まるで大地が裂けるような轟音とともに、1500門を超える仏軍の榴弾砲、臼砲、野砲が一斉に火を噴いた。続いて、日本陸軍遠征軍の各師団砲兵も発砲を開始。

大地が揺れ、土煙と硝煙が天を覆う。砲弾の爆発音は耳をつんざき、兵たちの鼓膜を麻痺させた。


村井三郎(二等兵):「う、うるさっ……まるで地獄の釜が開いたみてえや……」


三好一等兵:「煙で何も見えんちゃ。……こりゃ敵も味方も分からんのうなるげ……」


爆撃の余波で、かつて緑で覆われていたはずの大地は、一瞬にして無数のクレーターが穿たれた泥の荒野へと変貌した。

既に攻勢をかけていた仏軍先鋒部隊の遺体が、肉片のまま散乱し、焼け焦げた制服と入り乱れて判別もつかない。


午前6時。日本軍突撃部隊に「突撃開始」の伝令が下される。

第7歩兵連隊の村井三郎と三好一等兵も、第2大隊の先鋒として突撃陣地から飛び出した。


指揮官の怒声:「突撃ーーッ! 前進せよ!!」


村井は泥と血に濡れた地面を必死に駆けながら、後方で爆発する砲撃の衝撃波に身をかがめた。

一歩踏み出すたび、左右で「うっ」「ぎゃあ!」という絶叫が上がり、同僚の兵士が機関銃の掃射によりバタバタと崩れ落ちていく。


村井:「三好っ、生きとるか!?」


三好:「わ、わからんけど……前、見えんげ……撃たれんように、伏せて、伏せて進むしかないちゃ!」


敵の塹壕が近づくと同時に、ドイツ軍のMG08重機関銃が火を噴き、日本兵たちを容赦なく薙ぎ倒していく。

その間にも日本軍は突撃を続け、僅かに開いた隙間から村井と三好は塹壕へ飛び込んだ。


塹壕内では既に血みどろの白兵戦が始まっていた。銃剣、短剣、銃床での殴打。

狭い通路で、互いの顔が触れ合うほどの距離で突き立てられる銃剣。人間の叫び声というより、獣の咆哮のような唸り声が響き渡る。


突然、村井の目前に飛び出してきた敵兵の顔。まだ若い、自分と同い年くらいの怯えた顔。だが――


「……うおおぉおッッ!」

村井の銃剣が敵兵の胸を貫いた。手応えは、ぬるりとした内臓の感触。そのまま倒れ込んだ敵兵の頭部を靴で蹴り飛ばす。


三好:「あ、後ろ、村井ッ!」


咄嗟に身をかがめた村井の後ろで、三好の銃弾が別のドイツ兵の腹部を撃ち抜いた。敵兵は呻き声を上げ、塹壕の壁にもたれて崩れた。


三好:「……あ、あれが……人、殺したんか……」


村井:「……後で考えろ。今は、生き残るんが先や!」


一進一退の中、各小隊は塹壕を次々と奪取。日本軍の突撃はその勢いを止めず、午後には塹壕後方のドイツ軍補給溝まで制圧に成功する。


夜。攻勢が一段落した時、村井と三好は血と泥にまみれた軍服のまま、壕の壁にもたれて座っていた。


三好:「……いっぺんも撃たれんかったな……運だけやちゃ、これ」


村井:「わからんけど……ワシ、今日……三人はやったわ。刃、抜けんくなるほど突いた……」


彼らの目は、もはや新兵のそれではなかった。

その背後には、白布を被せられた味方の遺体が並び、その周囲には、敵味方入り混じった死体と砲撃で折れた木々、血の染みた泥だけが広がっていた――。

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