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到着と歓迎

大正四年(1915年)三月中旬。冬の名残を残すフランス北西部の海岸に、日本から派遣された陸軍三個師団が相次いで到着した。


第一師団(東京)はル・アーヴル港に、金沢の第九師団はブレスト港に、そして第十二師団(小倉)はボルドー港へ。いずれも大西洋に面した重要な港であり、連合軍が最前線への補給と人員輸送の拠点として整備していた場所である。


港にはフランス軍の軍楽隊と歓迎式典の準備が整っていた。凍てつくような風の中、日の丸を掲げた輸送船から、日本兵が整然と甲板に並ぶ。


司令部の命を受けて派遣されてきたのは、現地のフランス軍少将ポール・ド・ロシュ(Paul de Roche)であった。


彼は整列した第一師団の将兵に向けて、フランス語で高らかに語りかけた。


Paul de Roche(仏軍少将):「Mes chers alliés du Japon, la France vous accueille avec gratitude et honneur. Votre présence ici est une lueur d’espoir dans l’obscurité de la guerre.」

(親愛なる日本の同盟軍の皆様、フランスは皆様を感謝と名誉をもってお迎えします。皆様の存在は、この戦争の闇における希望の光です)


それを横で聞いていた通訳将校が、即座に日本語へ訳した。

将兵たちは無言のまま、背筋を伸ばして敬礼する。


少し遅れて、英国軍の連絡将校である少佐、アーサー・マクミラン(Arthur MacMillan)が登壇した。


Arthur MacMillan(英軍少佐):「On behalf of His Majesty’s Army, I extend our warmest welcome. We have followed your journey closely, and your arrival today is most heartening.」

(陛下の軍を代表し、心よりの歓迎を申し上げます。皆様の航海の様子は逐一報告を受けており、こうして無事到着されたことを何よりも喜ばしく思います)


この歓迎式は各港で同様に行われた。日本兵たちは、訓練された所作で整然と応えたが、その目には未知の大陸への緊張と好奇の色が交錯していた。


続いて、日本側の責任者である第九師団長・大迫尚敏中将が答礼に立った。


大迫中将:「我が帝國陸軍を代表し、貴国の心温まる歓迎に感謝いたします。

戦火の地において、共に正義を貫く所存にございます」


礼儀と規律の中で幕を開けたこの“遠征”は、彼らにとってもフランス軍・英国軍にとっても、かつてない試みの序章であった。


それぞれの港では、地元新聞が一面で日本軍の到着を報じていた。


【ル・アーヴル港(第一師団)】


港湾施設を管理する現地当局者は、新聞記者にこう語った。


Paul Lemoine(港湾管理者):「Les soldats japonais sont disciplinés, presque mécaniques dans leurs mouvements. Impressionnant à voir.」

(日本兵はまるで機械のように規律正しい。見事という他ないよ)


第一師団の将兵たちは、整然とした降艦の動作と礼儀で、現地住民にも好印象を与えていた。


【ブレスト港(第九師団)】


金沢を母体とする第九師団は、軍楽隊とともに入港。

入港後、地元の婦人団体から紅茶とサンドイッチが配られた。


村田一等兵:「これ、なんや?パンの中に草みたいやが入っとるぞい……食ってもええんかいね?」


中村上等兵:「ほや、これが“英吉利風”っちゅうやつらしいぞいや」


フランス女性たちは笑顔で「Bon appétit !(召し上がれ!)」と声をかけ、兵たちも照れながら「ども、ありがとござんす」と頭を下げた。


【ボルドー港(第十二師団)】


九州出身の兵士が多い第十二師団では、訛りの強い日本語が飛び交っていた。


吉川伍長:「こげんとこまで来たっちゃ、やっぱフランス嬢はキレかばいねえ」


石井兵長:「よし、今夜は酒場で一杯やらんか?」


町の広場では、日本兵とフランス兵が即興で柔道とレスリングの技を見せ合い、言葉が通じずとも笑顔と拍手で通じ合った。



このように、各港での歓迎と市民との交流は、両国にとって貴重な文化接触となり、日本兵たちにとっては異国の土を踏む初めての体験として深く記憶に刻まれた。

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