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編成会議

関東に寒波が到来し、陸軍省の木製の廊下を冷気が走る中、陸軍省における重要会議が開かれた。

議題は、協商国から要請を受けた「欧州への陸軍部隊の派遣規模と体制」に関する最終調整であった。


出席者

•軍務局長:柴勝三郎 少将

•兵器局長:筑紫熊七 少将

•経理局長:隈徳三 主計中将



会議の冒頭、軍務局長の柴勝三郎少将が文書を机に置きながら口を開く。


柴勝三郎(軍務局長)

「協商三国からの正式な返答は既に外務省より通達済み。

費用は全面的に向こうが負担、装備も一部現地調達可能とのこと。

よって、参謀本部よりの通牒に基づき、我が陸軍として3個師団の派遣を前提に計画を進めるようにとの指示が出た」


これに真っ先に異を唱えたのは、経理局長・隈徳三中将だった。


隈徳三(経理局長)

「3個師団とは、予想より大規模ですな……。仮に費用全額を協商国が持つといっても、

我が方で先行手配せねばならぬ部分も多い。装備の発注、糧秣、兵站準備。

国内財政の圧迫を招かぬよう、極めて慎重な財務設計が必要です」


次に兵器局長・筑紫熊七少将が口を開いた。兵器調達と生産に関しては、彼の管轄であった。


筑紫熊七(兵器局長)

「装備品が決定的に足りません。特に野砲・機関銃・電信装置は数が限られております。

現時点では、1個師団分でさえ国内備蓄では賄いきれない。3個師団など、無理があります」


空気が重くなった会議室内で、柴少将は静かに、しかし明確に言葉を返した。


柴勝三郎(軍務局長)

「承知している。だがこれは、単なる軍事的な判断を超えた政治判断である。

陛下の大命に基づき、政府と参謀本部は“3個師団派遣”をもって国際的地位を確立すべしとの意志を示された。

我々には、それに応える責任がある」


一瞬、場が沈黙する。


「経理局殿、ご指摘のとおり国内負担の回避は最優先事項だ。

だが、協商国からは戦費、兵站、補給線に至るまで“完全支援”の書面が届いている。

我が方は概算だけまとめ、実支出は相手方に委ねればよい」


「筑紫殿、装備不足については、英仏両国が“旧式ながら余剰火器”の提供を申し出ている。

口径こそ異なるが、訓練すれば即時投入可能との見通しだ。むしろ、我が国の火器改良の好機でもある」


やや眉をしかめながらも、筑紫少将は帳簿の書類を見下ろし、短く答えた。


筑紫

「……フランス製75ミリ砲と、英国製エンフィールド銃の運用は、講習を徹底すれば何とかなるでしょう。

ただし、整備班と補給兵には、必ず通訳と技官の派遣を付けてほしい」


隈中将も、やや硬い表情で応じた。


「我が国の通貨・会計体系と異なる支出計上には慎重を期したい。だが、外務・大蔵・参謀本部と連携の上で

“協商側実費精算”という形にするならば、実行可能ではある」


その言葉に、柴は頷いた。


「では、我が軍は第一、九、十二師団を中心とする3個師団を編成する。

編制規模、将兵数、装備要項については速やかに再検討を行い、派遣準備に入れ」



こうして、当初は各局が反対する中で始まった協議は、軍務局の強い主導と政府・参謀本部の支援により、

3個師団派遣という形で最終決定を迎えることとなった。


この判断は、のちに欧州における日本の存在感を決定づける重要な分岐点となる。

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