表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/80

都市と農村のあいだ

都市と農村のあいだ


都市化の波は、雑誌、新聞、映像、そして「成功物語」となって農村に届いていた。

しかし、都市での生活に挫折して帰郷する若者たちもまた、各地で少しずつ増えていた。


千葉県・上総のある村。明治四十五年秋、東京で職工として働いていた青年・政男が帰ってきた。

父母は心配しつつも、何も問わず、縁側で芋を焼いて迎えた。


「すまん、やっぱり、おれ、向こうじゃ出来がわりーで、おいねぇ…」


「無理に行かんでもいい。人には合う地ってもんがある」


夜、かつての友人たちが集まり、村の集会所で再会の火を囲んだ。


「政男、帰ってきたんだな」


「おお。東京はどうだった?」


「……毎日、工場で機械の音と怒鳴り声。賃金は約束より安いし、ひと月で指切ったやつもいた」


「それでも、東京に行けるってだけで、おれたちは憧れてたぜ」


政男は火に手をかざしながら、ぽつりとつぶやく。


「雑誌で見る東京と、実際の東京はちげえんだ。……でも、あの街の“速さ”は、やっぱり、何かを持ってた」


このように、都市文化の光と影は、農村の若者たちにとって「希望」と「現実」の両面を持って迫ってきた。


村の郡役所では、教育と産業振興を担う職員と、地元の小学校長が話していた。


「東京に憧れる子が年々増えています」


「それは自然なことだ。だが、“東京を知った者が、村をどう変えるか”――そこを教えるのが、わたしたち教師の役目じゃないかな」


都市と農村は断絶していたわけではない。

だが、同じ“日本”でありながら、見る風景も、感じる時間も、求める夢も、どこかずれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ