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6話

それから1ヶ月。のぞみとさやかは、厳しい体力トレーニングの日々を乗り越えていた。

毎日のランニング、筋トレ、基礎体力作りを続ける中で、のぞみは筋肉痛にも慣れ、自分でもわかるほど体が締まってきたのを感じていた。


そして、待ちに待った日がやってきた。


「今日からリングでの練習を始めるぞ。」


道場に集まったのぞみとさやかの前で、天野が腕を組んで告げた。その背後には彩香と沙織の姿もある。


「お前たちはまだ新人だ。まずはリングの感覚に慣れることから始める。走り方、動き方、ロープの使い方――基本をしっかり体に叩き込め。」


「はい!」


のぞみは声を張り上げて答えたが、その目はリングに釘付けだった。1ヶ月間、見ているだけだったリングに、ついに立てる日が来たのだ。


「じゃあ、まずリングに上がってみろ。」


天野の指示に従い、のぞみとさやかはリングの階段を上がり、慎重にロープをまたいでリングの中へ入った。


「おお…!」


リングに足を踏み入れた瞬間、のぞみはその感触に驚いた。想像していたよりも床が柔らかく、少しだけ沈むような感覚がある。


「結構、弾むんだね。」

「そうだろう?マットの下にはクッション材が敷かれている。とはいえ、落ちたら痛いぞ。油断するな。」


彩香がリング脇から声をかける。


「まずはリングの中を全力で走れ。四隅を往復して、体を慣らせ。」


天野の声に、のぞみとさやかはリング上で向かい合った。


「いくよ、のぞみ。」

「うん、頑張ろう!」


さやかの掛け声とともに、2人はリングのロープに向かって走り出した。

だが、すぐに慣れないマットの感触や微妙な揺れに、のぞみは少し戸惑いを覚える。


「なんか、思ったより走りにくいね。」

「そうだね。床が揺れるから、バランスが取りにくい。」


さやかが冷静に答える。そんな中、天野が指示を追加した。


「次はロープを使うぞ。ロープに体を預けて反動をつけながら、リングを往復しろ。」

「ロープを使う…?」


のぞみは言われるまま、ロープに向かって走り、体を傾けて肩を預けた。

その瞬間、ロープがぐいっと背中を押し返すような力を感じた。


「わっ!」


思わずバランスを崩しそうになったが、さやかの声が響く。


「のぞみ、もっとしっかりロープを使って!」

「う、うん!」


再びロープに向かって走り、今度は少し強めに肩を押し付ける。ロープが弾み、その反動で体が前へ押し出される感覚に驚いた。


「これがロープの弾力…!」


ロープを使った往復を続ける中で、のぞみは少しずつリズムを掴み始めた。足を動かし、ロープを押し、反動で前へ進む。


「慣れてきたじゃないか。」


リング脇で見守る彩香が笑いながら声をかける。その言葉に、のぞみは少しだけ自信を持てた気がした。


◇ ◇ ◇


20分ほどリング上での往復を繰り返し、体力が限界に近づいた頃、天野が声をかけた。


「よし、今日の練習はここまでだ。」


その言葉に、のぞみは思わず膝をつき、汗をぬぐった。


「リングの上って、こんなに疲れるんだね…。」

「でも、これでスタートラインに立てたってことだよ。」


さやかが隣で微笑む。その言葉に、のぞみは大きく頷く。


「うん、もっと頑張らないとね!」


こうしてリングでの初めての練習を終えた二人は、その後道場の掃除を行い寮へと戻るのだった。

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