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妻の殺気に脅える騎士団長、寝言でピンチ!

作者: 満原こもじ

 王国の騎士団長である俺は、一流の戦士だと自負している。

 胡乱な気配を察知するなどというのはお茶の子さいさいだ。


 しかし殺気を自邸での就寝中に感じるとは思わなかった。

 しかも妻から。

 何このシチュエーション。

 怖い怖い。


 怪しまれないよう寝たふりを続けながら、ぶつぶつこぼれてくる妻の独り言に神経を集中する。

 寝言、どこの誰なの、ドロボウネコ。

 つまり俺がどこの誰ぞの女性名を寝言でつぶやいたということらしい。


 いや、誓って俺は浮気なんかしていない。

 妻一筋だ。

 寝言くらいで殺気を発しないで欲しい。

 まあアンナはそういうやきもちやきなところも可愛いな、うん。


 おっと、危機から脱したわけではないのだった。

 どうすればいい?

 俺は一計を案じた。


 寝たふりのまま一言。


「……アンナ。愛している。ぐう……」


 よし、成功だ!

 殺気が消えた!

 いやあ、何げに人生最大のピンチだった。


 やはり経験を積み、気配を察知できるようになることは重要だな。

 新入りどもにもよく言い聞かせたいが、俺の実際の体験エピソードとして話せないことは残念だ。


 妻も安心して寝たようだ。

 危機は無事去った。

 俺も朝までもう一寝入りだな、ぐう……。


          ◇


 ――――――――――翌朝、朝食時にて。


「おはようございます、ディーン」

「やあ、アンナおはよう」


 朝食は一日の元気の源だ。

 バリバリ食うべし。


「あなた、今日の御予定は?」

「月末だから陛下に定例報告を奏上する。それ以外に特に変わったことはないな」

「ではお帰りはいつも通りですね?」

「うむ」


 ……妻からピりついた感じがする。

 昨晩の続きか?

 よろしくないな。


「ジェーンさんというのはどこのどなたですの?」

「ジェーン?」


 どうやら俺が寝言で呟いた名前がジェーンということのようだ。

 しかし……ジェーン?


「……ジェーンか。懐かしい名前だ」

「まあ、あなたったら」

「俺が子供の頃に飼っていたネコの名だ。君も覚えがあるんじゃないか?」

「……ああ、あの三毛ネコですか?」

「うむ。それ以外にジェーンという名の知り合いはおらん」


 あからさまにホッとしているじゃないか。

 可愛いやつめ。


「……ドロボウネコではなくて、本物のネコだったんですね」

「ん? まだ何か?」

「いえいえ、こちらの話ですのよ」


 これで昨晩の話は完全に終いだろう。

 ジェーンよ。

 お前は寂しがりで、イタズラ好きのネコだったな。

 俺の夢にまで登場して、家内安全を脅かそうとするとは。


 ……たまにはまた、俺の夢に出てくるがいい。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
とてもホッコリするお話でした。いたずら好きの猫ですね! 読ませて頂き、ありがとうございました。
ジェーン的には奥様の方がドロボウネコなのかもしれません。 見知った仲なら尚更、NTR感があるのかも? だから旦那さんの夢に出てイタズラしてしまったのでしょうかね。 ネコと和解せねば。
たのしく読ませて頂きました。 そのあと、妻はこっそり興信所に依頼を申し込んだのでした…… 「ま、万が一ということもあるからねっ!」
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