どうして
井田れうはなぜか立ち入り禁止のはずの山道に入って行っていた。
井田れうは奥の立ち入り禁止看板も無視してずんずん進んで行った。周りはすでに少し暗くなって、この辺りには防犯カメラも仕掛けられていない。こんな誰もみていないところで、何をしているのだろうか。
「もしかして、犯罪に巻き込まれてるんじゃ…」
すると、みやはの横ににゅっと顔が出てきた。
「やっほ」
「うわぁっ!?なんだ、ひのか、びっくりした〜」
ひのは驚いた顔のみやはをニタニタ笑った後、視線を山に送った。
「お前こーんなところで何してんの?あ、野糞する場所でも探してたんか?」
ひのは自分の言ったことにツボって話が上手く進まない。
「何が面白いんだか…」
いつものことだが呆れ返り、みやはも山を見た。そこにはもう井田れうの姿はなかった。
(馬鹿馬鹿しい、もう帰ろうかな…)
「ひの、この後なんか用事あるの?」
「ないよー」
「まじ?じゃあ一緒に帰…」
山の奥の方を、よーく目を凝らすと、まだれうの足が見えていた。
「ごめん、今日、ひのの家に泊まってるってことにしといてくれない??」
「え、えぇ?何急に」
「私帰り遅くなっちゃうかもしれないからさ、荷物もひのの家に置いといて欲しい」
「ぇ、うん、そんな、えぇ?まあ、わかったよ。じゃあみやはのお母さんにもそう伝えておくからね?」
「うん、ありがとう」
やや強引にみやははひのに荷物を押し付けひのを家に帰した。ひのがいなくなったらみやははスカートを捲り上げ山道を走り出した。
(草が痛い…!こんな整備されてない道を井田はなんで行ったわけ!?)
「うわっ虫っ!」
みやはは山道に入ったことを後悔したが、今更戻るのも面倒だった。そもそも、なんで井田をここまでして追いかける必要があるのだろうか。
(やっぱり、犯罪に巻き込まれて、死んだりしたら、あの時無視したことを後悔するだろうし、行っといた方がいいよね。うん。それに、単純に気になる、この山の先には何があるのか!)
井田にだんだん近づいてきた、みやはも疲れていたが、井田も相当疲れているっぽく歩くスピードはかなりゆっくりになっていた。
急に平らな道があった。井田は一段落そこまでつくと、一度止まって伸びをした。みやはは近づきすぎるとバレるので斜面で井田の様子を観察した。もう少し登ってみると、みやはは奥に洞窟があるのを見つけた。
すると、井田が動いたと思ったらその洞窟に入っていったのだ。
(えぇ…?)
ふと、みやはは自分の体に違和感を覚えた。感染症だ。体の横半分がイグニアのように赤くなってしまっていた。
「えっえっ、なんで!?」
流石にここまで体の半分を埋め尽くすほどイグニア化が進んだことは今までなかった。
「みやは?」
突然、後ろから声がした。ひやりと汗が頬を滴る。
「誰…?」
周りはすっかり暗くなっていた。井田れうのこと、自分の体、後ろから誰かが追いかけてきていたこと、全てが怖がりのみやはにとっては耐えきれない状況となっていた。
故に、みやはは、振り返れなかった。怖かった。
「私だよ…ゆうひ!」
ひのはおそらくとっくに家に帰っていたのだろう、そこにいたのはゆうひだった。