これからの地獄に備えてね
3人の村に帰ってきたら、ゆうひが行方不明になっていることがすでに公になっていた。
その後みやはとれうは公園のベンチに座り、ルグレの状況を見つつ、ゆうひのニュースを探した。
「地元ニュース、これかも。中学2年女子生徒行方不明…同級生の女子生徒といたのを最後に行方不明になっているとされており事情聴取をしている…行方不明者の母親は事件性があると語り、行方不明者の同級生の女子生徒に事情聴取を試みている」
みやははゾッとした。崎田あさひ。ゆうひの母にはなぜかみやはがゆうひをころしたことがおそらくバレている。
「もう終わりだ…」
「逃げよう」
「えっ?逃げるって、どこに?」
「分かんねえよ。でも、みやははこの場にいても確実に捕まる。そして、崎田あさひが何をしでかすか分からない…ならもうどこか遠くへ行くしかないんだよ…!」
「学校は?私のお母さんは?」
「それもこれも、全部終わったら考えよう」
「れうもついてきてくれるの?」
「元はと言ったら俺のせいだ。みやはのことはいつまでも支える」
「…ふふ、なんか、変な気分。分かった。とりあえず家からお金とか持っていこうよ」
みやはの家の前に警察がいた。
「どうしよう、れう…」
「庭の方の壁を登っていこう」
裏からこっそり周り、れうがみやはを肩車した。
「重…」
「おい」
みやはがよじ登り、内側の花壇にそーっと足をつけた。
「無事かー?」
「うん、ちゃんと入れたよ」
「俺はそこの路地で見張ってるね」
みやははモバ充、お小遣い、缶詰、着替え、母とのツーショットをリュックに雑に突っ込んで花壇から壁をよじ登った。
「先にリュック落とすから受け取って〜」
「はいよ」
支えてもらいながらみやはは道路に降りて、警察に見つからないようにそそくさと逃げた。
「れうの家にも着いていくよ」
「ん」
その後は雑談しながら20分ほど歩いたら、薄暗い路地へ入り、森へ繋がった。
「ちょ、待って…ここどこ…?」
「ここだよ」
路地の先にあった一軒家、廃墟のように見えるが…
中へ入るとさらに地下へ続く道があった。
「暗くない…?」
途中の階段でれうはピタッと足を止めた。
「ここで待っていてくれ。もし誰か人が来たら、挨拶して。何か聞かれたら『井田れうの付き添い人です』って答えてくれ」
「あ、うん、わかった」
れうが下まで行き、ドアを開けて中へ入って行った。スマホでニュースを調べながらみやはは待機していた。そして、動画投稿サイトに一本の動画が上げられているのを見つけてしまった。
「えー…行方不明者の女子生徒…崎田ゆうひという子の母、崎田あさひです。崎田ゆうひは、イグニアの研究によって生み出された化け物、通称“ヌマタコ”による最初の被害者になりました。それは、生前、私の娘の同級生だった、杉井み」
ありったけの力をこめてスマホを閉じた。
(やっぱり、バレてる!全てが、私、これから、死ぬ?どうなる?)
夕陽が沈んだあの日…ゆうひが死んだあの日からみやはは罪悪感と不安でとっくに押しつぶされていた。
その瞬間ドアが開いた。