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第二話 大量突撃ドクトリン?優勢火力の方がいいでしょ(優勢火力信者)

「ん…?」


目が覚めると知らない天井だった。

辺りを見渡してみれば綺麗なベッドや高そうな家具が部屋の中に配置されており、さっきのボロボロな街とは嘘みたいに異なる様相だった。


コンコンコンというノックが聞こえた。


「入ってまーす」

「ちゃんと3回鳴らしましたよ!」


入っていると言っているのに入ってきた彼女は無遠慮に部屋に入ってきた。


「全く…記憶喪失になる前の殿下はあんなに可愛らしい方だったのに…」

「まるで今は可愛くないみたいな…」

「そうですよ!大体今は戦時中なんですからそのようなふざけた行いは慎んだ方が…」

「…え?今って戦争中なの?」

「はい、そうですよ」


「…その戦争の事について教えてよ」


「…いいでしょう、お教えします。」




「始まりは今や重要ではありません、とにかく、何かが原因で魔王軍とゲルマー王国は戦争に突入しました。

初期は王国軍が勝つと予想されており、各国から義勇兵も集めて赤い森を越えて中央砂漠に繋がる道を通って魔王領へと進軍しました。


しかし、それは間違いでした。


進軍した王国軍を待っていたのはワイバーンという空からの支援を巧みに用いた、いわば『殺し間』でした。

そこで王国軍が誇る竜騎兵と騎士達は多くが死亡し、形勢は逆転しました。

民を何万人も動員して戦地に送り出しましたが、それも魔王軍を遅らせる程度の効果しかありませんでした。

そして、今やレーン川を境界に魔王軍が北を、王国軍が南を支配しています…が、そのレーン川はこの王都の中央を流れる川です。


かくして王国はこの王都を守り抜くための戦いを何年も続けているのです。

幸いにもまだ城壁を越えられた事はありませんが、それも時間の問題です。


こんな所ですね」


「え、軍を一つの道に集中して通らせたの?」

「えぇ、私のお父上も反対していましたが、国王はそれを無視して侵攻しました…」

「それは侵攻じゃなくて自殺でしょ、コンボイの端を攻撃されて身動きが取れなくなってるのが脳裏に浮かぶよ…」


「ちなみに国王は今どうしてるの?」

「今は王都ベルンを脱出して港町のキーレに滞在していますね…」

「よしちょっと国王しばきに行ってく「おやめ下さい!!!」


「なんで?侵略戦争始めておいて負けたら首都から逃げ出すとかカスしぐさじゃん」

「…間違っても国王の前でそんな事言わないでくださいね…

国王は王都防衛戦が始まると自分に反対する者を粛清し始めました…私のお父上も…」


「…やっぱりしばいた方がいいのでは「本当にやめた方がいいと思います…」」


「…そっか、所でフレイヤは今は何の仕事に就いてるの?」

「…私は、魔法砲兵団の団長ですね…」

「おお、砲兵か。戦場の女神だね。道理で女神みたいな見た目をしてる訳だ。」


「…?魔法砲兵が女神?どういう事ですか?」


「…え?だって砲兵なんて戦場の花形じゃん。戦車ほどではないけどさ」

「…戦車というのも分かりませんが、魔法砲兵が戦場の花形っていうのはもっと分かりませんね…砲兵なんて魔道騎兵にさえなれない、攻撃魔法しか使えない貧弱な存在ですよ?」

「えぇ…そんな評価をされてるのか。強いのに。」

「…なんで強いのかはよく分かりませんが、そうやって褒められると嬉しいですね…」


「所で俺も軍に入ってたの?」

「えぇ、なんというか、その…長男ではなかったですから。軍に入るしかないと以前自分で仰っていましたよ」

「そうかそうか!それで俺は何の指揮権を持ってたの?」

「…私たち魔法砲兵と徴集兵、そしてわずかな魔道騎兵だけですね…」

「そっか、それなら十分だね。何せ砲兵がいるんだから。」

「?、何をするんですか?」

「とりあえず作戦会議だよ、多分フレイヤが副官だったんだよね。部隊を集めて!」

「は、はい。分かりました」










集まったのはくたびれていそうな魔法砲兵とぺちゃくちゃ喋っている明らかに指揮の低い徴集兵。そしてわずかな精鋭の魔道騎兵だった。


「諸君!静粛に!」


それでも徴集兵はぺちゃくちゃ喋っている。仕方ない、あの手を使うしか…


俺はただ演説台の上で黙った、黙り続けた。

黙って、黙って、黙って、黙った。




すると徴集兵は次第に静かになっていった。


「…皆さんが静かになるまで、5分かかりました。」


うーんこの教頭先生がやりそうな事。


「まずは部隊の状況を確認したい。各部隊の指揮官!前へ出てくるんだ。」


出てきたのはフレイヤと、徴集兵の指揮官三人、そして魔道騎兵の指揮官一人だった。

俺達は司令部のテントの中に入って作戦会議を始めた。


「ほぉ…砲兵一個中隊に魔道騎兵一個中隊、そして歩兵大隊三個大隊か。こんなもんだろうな」

「防衛には十分でも攻撃には不十分です。決して攻撃などなさらないように…」

魔道騎兵の指揮官は前の指揮官を思い出しているのか、恐る恐るそう言った。


「いや、ただ攻撃すれば必ず死ぬが、ただ防衛するだけでもいつかは死ぬ。だから俺達は賢く攻撃してそれを成功させないといけない。

フレイヤ、出てきて」

「はい!何ですか?」

「彼女が砲兵部隊の指揮官だ。きっと君達は彼女に感謝する事になるよ。

我々は今までのように魔道騎士を突撃させて無駄死にするような戦法は使わずに、砲兵を活用して勝利する。」


魔道騎士の指揮官はほっとした表情を浮かべている、彼らにも当然活躍してもらうんだけどね…


「今から作戦を説明するよ。まず、魔道騎兵を三部隊に分けてその内の一部隊がこの森を遠くから攻撃する」

「ちょっと待ってください!話が違…」

「エーデルトラウト君、で合ってるのかな?発言は許可されてからするように」

「ッ!申し訳ありません…」


魔道騎兵の指揮官であるエーデルトラウトという名前の男は申し訳なさそうに席に座り直した。


「別に君達を突撃させる訳じゃないよ、ただ、敵の位置を炙り出してもらう。

炎魔法で森を焼くんだ。射撃している間、馬は常に走らせたままにする。

エーデルトラウト君、きっと君がそわそわしているのはそこまで正確に射撃できる自信がないからだね?それで大丈夫だよ。とにかく森を焼き続けるだけなんだから。


射撃位置から外に出たら次の部隊と交代して、補給を受ける。その次の部隊は待機しておく。こうすればずっと森を焼く事ができるよね。」


「…質問があります。」

「どうぞ、ヤーマン君」

「森を焼いてどうするのですか?見通しを良くするためにしては犠牲が大きい気がします」

「いい質問だ。逆の立場になって考えてみよう。常に攻撃を受け続ければ反撃せざるを得なくなる。そうすれば敵の位置を露出させる事ができる。そうなれば君の出番だ。フレイヤ君」

「は、はい?!」


まさか自分が話に出てくるとは思わなかったのか驚いた様子のフレイヤ、これもまた可愛い。


「位置が露出した敵は砲兵の的だ。位置を確認次第魔道騎兵は砲兵に位置を通信魔法で連絡して、砲兵はその位置に射撃するんだ」

「…砲兵にそんな使い方が…」

「いやむしろどうして今まで使ってなかったの?」

「城攻めにしか使えないのかと…」

「質問があります」


エーデルトラウト君が今回はちゃんと質問した。えらい。


「許可する、何?」

「位置を指揮官に報告する必要はないのですか?」

「無いね、できるだけ迅速に砲撃したいから指揮官は介在しない。兵士一人で砲撃支援を要請できるようにしよう。」

「…そんなやり方が…」


ネットワーク化した戦いって奴だね。指揮官が介在する必要のない所には介在しない。兵士一人一人が情報をやり取りできるようにする。


「まぁ士気が低いとこれはできないから歩兵部隊は指揮官が指揮するんだけどね。頼んだよ三人とも」

「「「了解!」」」


うん、いい返事だ。


「じゃあこれから三日間王都の裏の森で訓練するから、それから本番だよ」

「質問があります」

「どうぞ」


ヤーマン君だ。


「我々歩兵部隊は何をすればいいのですか?」

「あぁ、説明し忘れてた。君達には穴を掘ってもらう訓練をしてもらうよ」


「…穴ですか?」

「うん、森の敵を掃討したら次は歩兵部隊にそこを占拠してもらう。そうしたら確実に魔王軍は逆襲してくるから塹壕を掘って戦うんだ。」

「塹壕を防御に使うのですか?」

「うん、騎馬突撃にも有効だし、何より砲弾の破片が当たりにくくなるからね。」

「なるほど…分かりました。ありがとうございます」




さぁ、三日後には戦闘だ。楽しみ。

それにしても長い夢だなぁ、一回夢の中で寝たのにまだ続いてる。




…もしかしてこれ、夢じゃなくね?

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