第十九話 爆撃漁法
「バカ野郎!!!!」
「ギャーーーー!!!」
傷だらけの戦車を見た爺さんは即座に俺をハッチから引きずりだし、首を二の腕で絞めてきた。体罰ですよ!!!
「これを作るのに何億かけたと思ってるんだ!!!ったく、ろくな利益も出ないのになんでこんなものをつくらにゃならんのだ...」
「利益ねぇ...これを民間向けに売れば利益にはなるんじゃないの?」
「これは王子の指示通り、石炭で動く仕組みを採用している。だが石炭は『炭鉱夫はすぐ死ぬ』と言われているように、誰も掘りたがらんから貴重なんだ。一般向けに売ったら石炭なんか一瞬で魔法石より高くなるだろうな。まぁ、戦争特需のある魔法石よりはマシだろうが」
そう、あの戦車はあんなデカブツであるために高価な魔法石を燃料に使うわけにはいかず、石炭を使って蒸気機関を動かしている仕組みになっていた。
だがどうやらこの世界の炭鉱夫は忌避される仕事のようで、俺は道理でこんなに発達した世界なのに蒸気機関もないのかと納得した。
「それに、アンタ。王都避難民に与える食料はどうするつもりなんだ?どんなに兵器を生産した所で食い物にはならないぞ?」
「うーん兵器は必要だけどなぁ...
…そうだ、兵器で食料を生産すればいいじゃん。」
「...どういう事だ?」
「ダイナマイト漁だよ。確かIDEもまだ余ってるはずだし、爆弾を海に投げ込めば魚が沢山浮き上がってくる!」
「...とんでもねぇことを思いつくな。アンタ。」
そうと決まれば早速実行だ。フレイヤに通信魔法で指令を送った俺はそのまま海岸へと向かった。
「ま...まぶしすぎるよ。フレイヤとアグネスの水着姿なんて...」
「「殿下がそうしろって言ったんじゃないですか(言ったんだろう)」」
海といえば水着だよね、そりゃあ着せますよ、えぇ。
準備したのはボートとIDEを載せて、浮きを付けたワイバーン。近隣の海域でダイナマイト漁法をすると魚が辺り一帯からいなくなってしまうので、遠くにあるちょうどいい漁場がある場所まで向かうことにした。
「ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「ふぅん、ジークは戦車は得意でもワイバーンは苦手なんだねぇ、もっと速度を上げるよ。」
「やめてくださいしんでしまいます」
なにこれ速すぎない?
編隊を組みながら飛んでいくワイバーンの編隊の速度は亜音速。風圧がすごい。
せっかくアグネスにしがみついていてフレイヤにしがみつかれているのに感触を楽しむ暇もない。ただ怖い。
「ほら、ついたよ。世界海底火山域だ。」
「なにそれ...ッ!?」
目の前に広がったのは海から噴き出す何本もの煙。わずかに赤く光る海底。そしてその火山域を囲むように形成された巨大なサンゴ礁だった。
あまりにも雄大な光景に息を呑んだがそれと同時にたじろいた。
「...こんなのを壊すのか、俺たちのために。」
「...キーレの人々を飢えさせるよりはましだと思います。」
「そうだねぇ...私の生まれ故郷にもダイナマイト漁法をするかどうか選べるほどの環境があれば、魔王軍に負けたりもしなかったんだろうねぇ...」
仕方ない。やるか。
「爆弾投下!」
ヒューーーーと気の抜ける音を出しながら数えきれないほどのIDEが美しいサンゴ礁に投下されていく...
そして水柱、しばらくしてから爆発音...そのうちに死んだ魚の群れがいくつも水面に上がってくる。
「直接触れないようにね、毒を持ってるかもしれない。選別は街に帰ってからするから今はとりあえず全部網で掬うんだ」
「...なかなかな光景だねぇ...仕方ないとはいえ」
破壊されたサンゴが水面に浮き上がり、海面を白くしておりまるで海が死んで骨になっているようだった。
グロテスクな場所ならいくらでも見てきた。さっきまで生きていた人が死んでいく様も。
だが美しい場所が破壊される光景を見たのは初めてだった...きっと忘れることもないだろう。
「戦争が終わったら、環境保護にも投資すべきかな...」
港町に戻って魚を水揚げ...空降ろしと言った方が正しいのだろうか?とにかく、した。
「...俺は魚はあまり詳しくないが、まさかこんな量が獲れるとは思わなかったぜ...」
「俺たちの漁場じゃなくてよかったなァ..」
職人の爺さんも地元の漁師も、それ以外の人々も皆驚いている。なんなら俺も驚いている。
「野郎ども!干物にしますわよ!...わたくしは干物自体を食べたことがないけれどね!」
兵士も住民も総動員して海岸で干物作りを始める。魚は日持ちしないからだ。その様子をカモメやトンビたちがごちそうを見る目で見ていたし、我々のワイバーンも彼らをごちそうを見る目で見ていた。
「魚は俺たちが食べるし、それを狙う鳥はワイバーンが食べる。完成されてるね。」
その日は魚で久しぶりに腹をいっぱいにした。




