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第十八話 火力の天国、敵の地獄、死んでも帰れぬ暗黒森

今は深夜、敵軍は途中の農地で休憩をとっている事が予想されていた。


猟兵部隊が森の中を通って背面に展開しており、歩兵は正面に、そして数多の榴弾砲が今にも敵陣を耕さんと稠密に狙いを定めていた。


「殿下、配置が整いました。ご命令を」


狭い車内の中で上手く通信魔法を使っているフレイヤが伝えてくれる。


「うん、攻撃開始!!」

「射撃開始!!!」


フレイヤの号令と共に砲列の右から順に榴弾砲が低い轟音とともにつるべ撃ちされていく。撃ったものから再装填し、次の射撃に備える。

そして次の射撃、そして再装填、射撃…


「陣地転換しなくて良いのですか?」

「あぁ、敵の砲兵陣地なら攻撃開始と共にワイバーンが空爆で潰してるよ。制空権を失うとこうなる。」


しばらく火力で敵陣地を耕し続ける。

あぁやっぱり火薬式の大砲はいいね、あの甲高い砲声じゃないだけでストレスはだいぶ減る。


「…そろそろかな、Panzer Vor!!!」


その号令と共に俺の乗る戦車が動き出す。


「いや私これ乗るの初めてなんですけど、ぶっつけ本番なんですけど???」

「そのうち慣れるよ!まだ歩兵には防衛はさせても突入はさせないでね!!」


道なりに進んで歩兵の待機している陣地までくる。


「おいなんだよあれ…ありゃ鋼鉄の化け物だ……」

「やっぱり大砲付いてる…」


兵士達の感想を聞きながら歩兵陣地を通り抜ける。


「…そろそろだ、歩兵部隊!!突撃開始!!!」

「歩兵部隊突入!!!」


「「「「ハンザァァァァイ!!!!!」」」」


やっぱり気になるけどなんでバンザイ突撃なの?





榴弾砲の破片と敵の銃弾が装甲に弾かれる音を立てながら、エンジン音とともに戦車は進む。


「砲弾のクレーターに隠れろ!向こうは塹壕を掘ってる!!」


どうやら敵は塹壕を掘ってこちらを正確に狙っているようだ。

ほとんどの兵士は榴弾の爆発が作ったクレーターの中で伏せ、勘のいい兵士達は足の遅い戦車の後ろに隠れて前進している。


「王子!射程に入りましたよ!!」

「撃て!!」

「待ってました!!!」


戦車が敵の塹壕に轟音とともに砲弾を放ち、榴弾の破片を辺りに撒き散らして周りの敵兵を殺傷する。


「銃眼からもガンガン撃て!!向こうはこっちを狙えないから正確に狙えよ!!!」


戦車に設けられた銃眼からクルーが銃撃し始める。

この時点で大分敵の塹壕に近づいているが、まだ突破しきってはいない。


「ハハ!!いいぞいいぞ!このまま突っ切れ!!!」

「ボイラー出力全開!!馬力は十分だ!!」

「行くぞぉぉぉ!!!!」


車体が下に傾く感覚、そして元に戻る。

塹壕を通り越したのだ。

沢山の銃弾が弾かれる音が聞こえる。この戦車は注目の的だ。


「死ねぇぇぇぇ!!!!!」

「バンザァァァァイ!!!!」

「うらぁぁぁぁぁ!!!!」


各々恐ろしい声を上げながら塹壕に吶喊する…おい一人ソ連兵混じってたぞ。





突撃は成功し、なんとか塹壕を支配下に置いた。

どうやら魔王軍は塹壕を勘違いしていたようで、事前の偵察で本陣の周りを塹壕で囲んだだけの防備である事が判明していた。

なので後は榴弾砲で掃除し、歩兵で制圧するだけだった。そうだと思っていた。


「…!この足音は…」

「ゴーレムだ!!対機甲戦闘用意!!」


外の兵士の話し声からゴーレムである事を知る、そして覗き穴から外を覗けば…やはりいた。


辺りの地面が爆発する。ゴーレムは今や肩に大砲を装備していた。


「塹壕に隠れろ!!ゴーレムと一緒にオーガも来てるぞ!!」

「無反動砲だ!アレを撃て!!」


「来るぞ!!!」


激しい揺れと爆発音。気を失いかけ、白い視界の中で意識をかろうじて保つ。ゴーレムの放った砲弾が戦車に命中したのだろう。


「すげぇ!!あんなの食らって生きてるぞ!!!」

「向こうにも喰らわせてやる!!」


「弾をHEに切り替えるんだ!ゴーレムに撃て!!」


兵士達が無反動砲を撃つのと一緒に戦車からも徹甲弾を放つ。次々と倒れるゴーレム達。やはり多脚戦車は脆いね…


だが問題はオーガ達だった。


「クソ!弾が効かねぇ!!無反動砲を装填しろ!!早く!!!」

「フレイヤ!榴弾砲から支援射撃を!!」

「もうやってます!!ですが効いてません!!!オーガは表皮が硬くてライフル弾くらいなら弾いてしまいます!!」


これはまずい…だが、背後は空いている。


「猟兵部隊を突入させて、無反動砲で仕留めさせるんだ!!」

「猟兵部隊突入!」


しばらくするとこちらに向かって走ってきていた連中の背後に次々と無反動砲の砲弾が突き刺さり、倒れていく。


「危なかった…猟兵がいてよかった」

「殿下!まだ早いです!!まだかなりの数が…ッ?!」


突然耳をつんざく爆発音が轟き、地面が揺れた。







「…空爆ってこんな感じなのか…」


車体後部のハッチを開けて、空を仰ぎ見る。

そこには数え切れないほどのワイバーン達が旋回して生き残りがいないか探していた。

しばらくぼーっと眺めていると、そのうちの一体が左からしめやかに降下してきて目の前まで来て翼を翻して急減速し、着陸した。


「随分危ない作戦じゃないか。あと1分遅れてたらジーク達は一体どうなってたんだい?


まぁ、遅れることなんてないけどねぇ」

「流石だ、やっぱ制空権って大事だね…」


ワイバーンの特有のいななきを聞きながら星空に舞う竜騎兵達を満足するまで眺めた後、俺達はもう用のない廃村から撤退した。

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