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第十七話 The Steel Tolent

水ならフレイヤの浄水魔法ですぐに確保できる。だがどんなに難民への環境を整えようが、魔王軍がここに来たらすべておしまいだ!

市街戦になれば街は完全に破壊される。そうなればここの住民は全員…死ぬ。

そうなる前に軍備を整えなければ。徴兵はもちろん、兵器の生産が最も重要だ。一対一の戦いでは弾倉に一発でも多くの弾を入れている方が勝つ。


「職人のじいさん!」

「あぁん?!俺は職人のじいさんって名前じゃ…あぁ、ジーク王子か。何の用だい?」

「頼んでおいた火砲はできた?!」

「あぁあれか。できてるぜ。こっちに来てくれ…」


工房の奥に案内され、いくつかの大きなものに布が被せられている部屋に案内された。


「ほいよ、これだ。」


そのうちの一つから布を取り払うじいさん…それは真鍮でできた光り輝く、火薬式の榴弾砲だった!


「全く。どうして魔法式にしなかったんだ?こんなの対障壁貫徹力も限られてるし作るのこそ大変だったが一体何の役に立つのか…」

「よくやってくれた!!これで街を守れる!!門数はいくつ?砲弾もあるんだよね?」

「一度に一つ質問しろよ…ったく、奥に大体50門ある。生産体制が整うまでに一ヶ月かかるが、保って二週間分の砲弾があるぜ」

「量産力すごすぎない?10中隊も居れば火力天国だよ。」


恐らくこれから徴兵する師団のほとんどに火力支援を行き渡らせる事ができるだろう。良かった。これでまともに戦闘ができる。


「あと頼んでおいたアレは?」

「アレ?…あぁアレか。まったく。手持ちの大砲なんて頭のおかしい事を言い出すのは王子くらいだぜ…」


床下収納から布に包まれたそれを…無反動砲を取り出したじいさんはにっと笑った。


「安心しろ、こいつは真正面から鉄の板にぶち込んで、200mmも穴を開けたバケモンだ。」

「そいつは素晴らしいね」


渡されて、ずっしりとした重みを感じる。


「重いね…でも、重すぎはしない。完璧だよ。さすが」

「聞き飽きたね、満足いただけたなら幸いだ。榴弾と煙幕の弾もバッチリ用意してるぜ。…こんなのを撃たれる魔王軍が可哀想で仕方ないぜ」


素晴らしい。それしか言葉が出てこない。

分隊支援火器を充実させる事ができればそれは前線への火力がより増え、より多くの敵を撃破できる事を意味している。

それにこれで対空砲以外に装甲目標を撃破できる手段が増えた。これで魔王軍がゴーレムで攻勢を仕掛けてきても対処できる。


「おいジーク…あぁ、ここにいたのか。」

「どうしたのアグネス?」


「敵だ。偵察のワイバーンが見つけた、道なりに50km。このままだとあと数日でここに着く。」

「いいね。ちょうどこいつらを試したかったんだ。あぁそれとじいさん、頼んでおいた例の試作品はできてる?」

「おいおい、まさかあれを戦闘に出すのか?…まだ未完成だから正直やめておいた方が…」

「壊さないから頼むよ。じいさんもデータは欲しいでしょ?」

「…しゃあねぇな。それなら店の裏にある。ついて来な」


言われるがままに店の裏口までじいさんについていく。なぜかアグネスもついてくる。


「…えぇ…なんだいこのデカブツは?」


アグネスがそう言うのも無理はない。幅が3m、長さは7mほどもあるそれはあまりにも大きすぎた。


「驚くのはこれからだ。耳をすましてよく聞いて…あれ?アグネスって耳どこにあるの…?」

「誰かいないのか…おい!運転手!乗り込んでくれ!!試運転だ!!」


じいさんがそれの後ろでボイラーを操作している…しばらくすると、人がやってきて車体のハッチから中に乗り込み、蒸気の漏れる音がし始めた。


「本当になんなんだいこれ?まるで今にも動き出しそうな…ッ!?」


シューと煙突から大きく蒸気を吐き出すそれは産業革命の産声を上げているようだった。

ドドドドという音ともに側面のキャタピラが動き出す


「え…ええええぇえええ!?!?!?!?」


キュルキュルというキャタピラ特有の音を立てながらこちらに向けて前進してくるそれは、




戦車だった。



「よく分からないけどとにかく助けてくれ!!!ジーク君!!!!」


ずんずんこちらに近づいてくる、その距離は50m、40m、30m、20m、10m…


「ええぇぇぇぇぇええええ!!!」

「クールそうな見た目してるのにこういう時だけは取り乱すのね、好き」


流石に危なそうな距離に入ると戦車はゆっくりと停止し始めた。手を伸ばし、その正面装甲に触れる。手のひらの熱が奪われる。


「これを作るためだけに何人が過労死しかけたか…おい王子、代金はたっぷりいただくからな。」

「もちろん、こんなのあの値段でもあまりある価値があるよ。…それと運転手の君!後で戦場まで着いて来てね。まだ君以外の戦車の操縦はできないから……そこの人かな?!君もだよ!!砲手なしに戦車は役に立たないよ!!」


樽の後ろに隠れてチラチラ見ていた砲手らしき人にも声をかける。二人ともなぜか喜んでいた。


「王子!王子も一緒に乗りましょうよ!!きっと楽しいですよ!!」

「そうだね!…ほらアグネス!折角来たんだから乗ろうよ!!」

「い、いや私は遠慮して…」














キャタピラとエンジン音を立てながら戦車が街頭を往く。


「おいおい、なんだよあれ…あぁ、王子か。」

「えぇ…なにあれ…あぁ、王子が乗ってるのね…」


「えぇぇぇぇえええええ!!!」


アグネス以外はなぜか俺が乗っていると知った途端に納得したような顔をしている。なぜだ。


「やっぱり王子をのせておいてよかった!みんなを困惑させずに済みますからね!」

「なぜ困惑しないんだ…(困惑)」

「えぇぇぇえええええ!!!」


アグネスはいつまでも驚愕している。


「ジジジジーク君!!これは嵐の中を飛んでいる時よりも揺れるよ!!そのくせどんなワイバーンより遅い!!なんなんだこれは?!!」

「戦車だよ。」

「えええぇぇぇぇぇえええ!!!」


いつまで驚いているんだろう…?


ともかく、これで装備は整った。

きっとこの戦いに動員できる兵力は少ないが、火力がそれを解決するだろう…




翌日、部隊と王都を前に戦車の上に立ちながらこう話した。


「諸君!この町が焼かれれば、俺たちも、また住民も、残された国民は皆死ぬ!!だがそうはさせない!!!」

「諸君の前に並ぶのは新型の火砲である!これらを用いてやつらを圧倒的火力の中で死なせてやれ!!!」


やっぱり優勢火力だよ優勢火力。

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