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第十六話 難民問題

「おぉ!ジークなのか?久しぶりじゃないか!!」

「申し訳ないけど誰なの?」

「...記憶喪失だっていうのは本当なんだね...」


この細くて病弱そうな青年はアドルフォというらしい。なんでもゲルマーの第一王子で、あの地獄のような王都から脱出して港町まで逃げてきたという。


「はえーそりゃ生き延びれて良かったね。住む場所とかで困ってるなら軍の施設を貸し出せるよ」

「いや、それは必要ないよ。父上の別荘があるはずだからね...それよりも僕はジークにもっと大事な話をしたくて来たんだ。」

「なに?」


「実は...ジークにこの国の政治を任せたいんだ。」

「え?なぜに?」

「僕が病気なのはさっき言ったけど、その上王国の継承者になったせいでみんなが僕の摂政になろうと接触してきているんだ。そのほとんどが王都で反乱を起こした司令官と同じ、軍部の人間だから信用できなくてね...だからジークに任せたいなと思って。」

「そんなに俺は信用されてたのか...だけど記憶喪失だし、君の知ってるジークじゃないかもしれないよ?いいの?」

「それでもジークは今まで国のために戦ってきてくれたじゃないか。功績もあるんだし、僕が言うのもなんだけど自信を持ったほうがいいよ。」


「...そこまで言うなら、少なくとも一時的にその権利を頂くよ...」

「よかった。これで政治から離れられる!どこに行こうかな。三日月島に旅行にでも行こうかなぁ」


それが目的だったのか...

ともかくこの国の行政権と立法権を手にした俺は、この国の軍事のみならず内政も考えなければならなくなった...
















最初の問題は難民だった。


「ジーク様?ジーク様なんですか?!どうして王都を見捨てたのですか!?」

「王都は破壊されました!もう住めるような場所ではありません!」

「ジーク殿下、どうかお助けください...」


そう言いながら謁見に来た難民の代表たちは詰め寄ってきた。


「ッ!あぁ、わかったよ。君たちの事ならなんとかする。安心するといいよ」

「あぁ、ありがとうございます殿下!まずは食べ物や水、住居を頂けますか?」


俺が見捨てた、と聞いて一瞬フラッシュバックを見たが、なんとか耐えて応答した。

だが残念な事に食料は戦時中なので前から既に不足している。港町だから水もない。戦死者の残した空き家が沢山あることだけが救いだ。

なにか俺に出来ること...思い当たったのが、オーハン王国のローザリンデだった。


「そうだ!国際援助を頼めばいいんだ!」


やっぱ国際支援はいいものなんだなって。恵まれないゲルマーの子供たちに支援を!





フレイヤから借りた通信魔法装置でローザリンデに呼びかけ、テレビ電話のような感じでローザリンデとお互いの顔が見える状態で話しはじめた


「ふーん、援助が欲しい、ねぇ...」

「そうなんだ。あまりにも難民の数が多すぎる。水は大丈夫だから食料の援助が欲しい」

「うーん、出来る限りのことはするけど、実はオーハンにも食料はあまりないんだ。今年は冷夏だったからね。それに、魔王軍が核撃魔法を使ったからたぶん来年も冷夏になるだろうし備蓄も必要だからね...まぁそっちの難民で1か月分の食料なら送れると思う...けど、それ以上は難しいね...」

「そっか。ありがとう。一か月持つだけでも大分助かるよ」




「それにしても、アタシは君の婚約者なのにどうして何か月も話に来てくれなかったの?戦争は前からあったのに、前は沢山話にきてくれたじゃないか」

「そ、それは...」


まずいガチで忘れてた。


「ふーん...ふーん...そうなんだ。へー...」


何も怒っているような雰囲気はないのに、なぜか背筋が凍るほど怖い。


「...アタシは記憶を失った後の君も好きだけど、君はそうじゃないのかな?アタシの事より...もしかして、ミズ・フレイヤの方が好きなんじゃないのかい?」

「ヒュッ...」


怖い。


「...ふーん、答えなければどうにかなると思ってるんだ。へー...」


「...アタシが超能力者って話はこの前したよね?」


あ...やっべ


「今君が『あ、やっべ』って思ったのも分かってるんだよ?」

「あと、その気になれば画面越しに君を殺して、私も死ぬことだって...」


なにこの子こんなに重い子だった??

考えが読まれていると思うと、普段考えないような事まで考えてしまう。

ローザリンデもかわいいよな...正直怒ってるのもかわいい、あと俺は重い子は割と好き。

こんなかわいい子と一緒に死ねるならまぁ...うん...


「...ふーん、じゃあ本当に...」


ただ心残りがあるとすれば、一度こういう子とアレしてから死にたかったなぁ...


「...!?」


やっぱりケモノはいいよね、それに重い子だからなんでもしてくれそう。かわいいし。


「...ッ!?」


あーあぁ。ローザリンデともしたいなぁ...


「...あははははは!!!君頭おかしいの?今まで見てきた中で殺されそうな時に私に欲情した人なんて見たことないよ!!」


だってこんなにかわいいし、あと重い子だし、割と性癖ドストライクなんだよなぁ


「...まぁ、自分に嘘をついているとすればアタシの能力でも分からないし、いつか一度会って...その...シてみてから、殺すかどうかは決めてあげるよ。」


殺されそうな状況でそういう事するのすごい興奮しそう


「君そういう事しか考えられないの...?」

「だって君俺の性癖そのまんまだし、フレイヤと同じで(いや、俺は理性ある人間だよ)」

「本音と建前が逆になってるし...」


「...というか、フレイヤと同じって、何?」


あ、やっべ、まじでやっべ


「...ふーん、フレイヤと、そういう事したんだ...へー...」


これ死んだかもね、なんてことだ、もう助からないぞ。


「...覚悟しておいてね、いつか会えたら私の能力を使って、君を壊してあげるから。それまではまぁ...毎日その日に期待してるといいよ。」


何この子すごいゾクゾクする事言うじゃん。壊されてぇ~


「...本当にバカなんじゃないの...?」




ともかく食料問題を先延ばしした俺は次に水問題に取り組む事にした。

やはりこういう時に役に立つのはそこに生きる人々の知恵なので、フレイヤに訊いてみることにした。


「水の確保...ですか?海の水を浄水器で真水にしているって聞いてますね。魔導回路さえあれば作れると思います」

「それはいい。早速作ろうよ」


「殿下...それが...」

「なに?」

「魔導回路のインクの在庫が、もうないです...」

「...対空砲の回路を再利用したりできない?」

「一応できますが...いいんですか?あんなに活躍した対空砲を無くしてしまって」

「いいよ、死ぬよりマシだよ。」





これで水問題も解決した。後は先送りした食糧問題をどうにかするだけだ。


…あれ?俺は今まで魔王軍とずっと戦ってきたよね?なら王都を陥落させた魔王軍はこっちに...

…やっべ

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