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第十五話 Nothing will stop the Germar Air Force!

俺は今まで大抵の場合ぼっちだった。

だから他人と話すことも少なかったし、自分の考えは自分の中にしまっていた。

だがアグネスはしまわれていた俺の考えを乱暴にさらけ出し、それを肯定してくれた。


「えぇ!?君転生者だったのかい?!通りでそんな未来みたいな戦い方をするわけだねぇ...」


「ふぅん...君も大変なんだねぇ...こっちではその王は愚王と呼ばれているが、まさかそんなにひどい王だとはねぇ...」


「魔王は...君から見たらただの破壊者だろうが、多くの魔族にとっては解放者なんだねぇ...多分あの独善的な魔王の事だから、その王の手から王国を『解放』したかったんだろうねぇ...だけど、君たちから見たらそれはおせっかいなんだろうねぇ...」


「ジーク君!引きこもってないで海岸にでも行こうじゃないか!私は内陸で暮らしていたから海なんて見たのは初めてだったよ!!ほら!こっちに来るんだ!!」


「夕日がきれいだねぇ...私の生まれた所では夕日になるまで日が傾く前に山に隠れて沈んでしまっていたねぇ...」


雑談を繰り返しているうちに、俺はアグネスの事が割と好きになった。

いや...だが俺にはフレイヤとローザリンデが...あれぇ?どうして俺の好きな人は二人?




…二人も三人も大して変わらないか。

刺されないといいなぁ、まぁ三人とも刺すような人じゃないけど。


「ん?どうしたんだいジークくぅん?さては私の事が好きになったんじゃないかい??」


煽られる...自制心!自制心!!


「今ならフレイヤ君もいないし...手を出してもいいんだよ?」


自 制 心!!!


「アグネスさん?楽しそうな話をしてますね。私も混ぜてくれませんか?」

「あ、やべ(素)」


そう言うとアグネスはフレイヤが追って来れない空中へと逃げていった。


「ふぅ、助かったよフレイ「あなたも制裁対象ですよ?」あっ...」


俺は自分の運命を悟った...

神は言っている、ここで死ぬ定めだと。


「イヤーーーーーーーー!!!!!」

「グワーーーーーーーー!!!!!」





















「そういえばアグネスって今でもワイバーン部隊の指揮官だとか言ってたよね、亡命したのになんで部隊を持ってるの?」

「それを認めなければそこら中の土地を焼いて回ると脅したからねぇ、あの王でも認めてくれたんだ。」

「えぇ...」


「...たぶん部隊を持ってても君に行き場はないよね?ワイバーンなんて大量の食料を消費するだろうし。」


「そうだねぇ、そろそろワイバーンが使える仕事を探さないとねぇ...」

「ならさ、うちの部隊に入らない?」

「...分かった、入れてもらおうか。」


俺は心の中でガッツポーズした。これで航空戦力が手に入ったし、何よりアグネスと離れなくて済む。

これで取れる戦術の幅も広がるだろう。


「そういえばワイバーンってどんな事ができるの?」

「...転生者なら知らなくて当然だねぇ、ワイバーンはドラゴンと違って炎を吐いたりはできないから、魔道士や爆弾を乗せることで初めて戦うことができる。」

「どのくらいのものを運べるの?」

「...種によるねぇ、プテロサウリア・ワイバ...学名を言っても分からないか...とにかく、小さくて俊敏なものは最大で1.5tくらいで、大型で遅いものは10tはいけるねぇ、恐らく君が良く見たのは大型のものだろうが、私の部隊のワイバーンは小さいものが36騎と大きいものが8騎だねぇ」

「飛行団規模で亡命するなんて大胆だね...ちなみに魔王軍全体で小さいのとでかいのは何騎くらい持ってるの?」

「...私の部隊の分の数を引いて小さいのが300騎で大きいのが80騎くらいだったと思うねぇ。」

「10倍差ですか...」

「だが、魔王軍は各地で戦っているからゲルマー王国に集中したりはしていないと思うよ、それでも数は向こうの方が勝っているとは思うが、私の部隊は精鋭だからねぇ。作戦に出ても問題なく目的を遂行出来ると思うよ。」

「助かるよ。これからよろしくね」

「こちらこそ、よろしくお願いするよ」




「...」


どこかから恐ろしい視線を感じるが、きっと気のせいだろう。

そんな事より空軍が手に入ったというのは大きい。フレイヤとアグネスのおかげで俺の戦闘ストレス反応も収まったし、そろそろ戦場に復帰するとするか!


「フレイヤ、俺そろそろ戦いに戻ろうかと「ダメです。」」

「え、何d」


フレイヤに人間離れした力で押し倒された。今度は俺の後頭部が地面に激突しないように軽く俺の頭を抱えながら。


「...ちょっと寝ていてください。」


そう言うとフレイヤはあの青い光を纏った手を俺の口に...


















ポチャン…ポチャン…と水の音、

牢獄や、夏の虫飛び込む炎の中。俳句になってないな、ハハ。


気づけば牢屋っぽい雰囲気のある、きっと地下にありそうな土レンガ造りの部屋に閉じ込められていた…鉄格子のドアこそ開いているが、フレイヤの膝の上で寝かされているのでどっちみち脱出しようがない。

俺は起きたのに気づかれたら怖いのでまだ気絶しているフリをしていた。


「…起きてますよね?」

「…」

「…起きてないなら、起きてないって返事できますよね?」

「はい起きてないです。」

「いや起きてるじゃないですか、分かってましたけど。」


ペシンと胸を手の甲で叩かれる。返事しろって言われたらしなきゃねぇ…?

フレイヤは呆れたような顔をしていたが、次の瞬間には憂いているような表情になった…美人すぎない?


「本当に、殿下はかわいいですよね…えぇ、やはりあんな場所にいるべきではない」

「何の話をしてるの?」


「…殿下が王都から出た後、何があったかご存知ですか?」

「何があったの?」


「…王都は、ほぼ壊滅しました」


「え?あんなにトンネル掘ってたじゃん。核でも使われたの?」

「核撃魔法です。核撃魔法。」

「…マジ?!この世界核あるの?」


原子力 明るい未来の 核弾頭

とか言ってる場合じゃねぇなこれ。核への対処?そんなもんあったら核抑止力が成立しないのよ。


「魔王領が使ったんだよね?他の国は使わないの?」

「核撃魔法は禁術ですから研究すれば呪われると言われています。それを気にしない魔王領だけが核撃魔法を研究し、配備しました。まぁやはり使った場合の呪いの内容はかなりひどいものなので、簡単には使わなかったみたいですけどね。


ですが、彼らは核撃魔法を使いました。それも王都に」

「ファーwwww」

「いや何笑ってるんですか」


話が現実でありえそうな話なだけに現実離れしているように錯覚する。そもそもこれは現実の話だ。「損害はどのくらいなの?やっぱり壊滅?」

「一応軍隊と避難民、そして政府機能は地下に移転していたのでほとんどが無事でした。ただ核撃魔法の後に残る『呪い』がどれほどの効果をもたらすのか...」

「放射能汚染かぁ...」


王都では川の水を飲んでいた覚えがあるが、放射能汚染された水を飲めばひとたまりもない。彼らは今生きていてもその先は絶望的だろう。


「じゃあその次は港町じゃん。どうすんのこれ?」

「だから私と私とジーク殿下の部隊だけで、王国から脱出しようという話をしようとしていたんです。」

「...どこに?逃げれるあてなんてあるの?」

「ここです。三日月島なら部隊に十分な資源があります...今こそきれいな楽園ですけど元は鉱業地帯でしたからね。鉱業国家リッヒシュタが興るまでは」


リッヒシュタといえば、レーン川の上流に位置する山岳都市国家だ。包囲されてから随分経ってるけどまだ生きてるのかな?


「殿下、あなたは死ぬべきではありません。当然私も私たちの部下もです。ですから、どうかもう戦うのをやめてください...ずっと私と一緒に居ましょうよ...」




「うーんどうかねえ...」


戦うのをやめてフレイヤとここでずっと暮らすのも悪い提案ではない。

だが、軍人として何番目かに重要なのは国民の生命と財産だ。


「その場合港町の人たちはどうなるの?」

「オーハンに連れて行きます。財産は失うでしょうが、死ぬよりは...」

「そっか、やっぱり一緒に戦って生き残るのを選ぶ方がいいよ。」


「...どうやって?!核撃魔法を前にすれば一瞬で死ぬんですよ?!」

「ならこっちも核を持てばいい。フレイヤできる?」

「私だけ呪われるならともかく、ジーク殿下まで呪われるのは嫌です!」

「呪いっていうのは王都みたいに核を使ったら破壊し尽くされることを言ってるんだ。持っても呪われたりはしないよ。」


少なくともお互いに理性がある限りはね。


「...殿下、本当に殿下は生き残れるんですよね?」

「あぁ、約束するよ。違ったら地獄でなじってね」

「殿下なら天国に行けますよ...」




さぁ、明日からは港町に戻って残された時間で来るであろう難民への対処と戦いへの準備だ。王都抵抗軍が残す貴重な時間を有効に使わないと。

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