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十一話 王都防衛軍の歌

「歩兵!あの通りを死守しろ!!ここを通せば橋を取られる!!橋は魔導障壁で守っていて攻撃があればすぐに反撃が飛ぶのでレーン川の向こうに取り残される心配はないから安心して戦ってくるんだ!!!」


「「「了解!!!」」」


「砲兵!橋を守るために反撃を撃つんだ!!そして迫撃砲兵と対空砲兵は歩兵部隊を火力支援するんだ!!この戦いが成功するかは歩兵にかかっており、歩兵の戦いが成功するかは砲兵にかかっている!!今回は撃てば反撃が飛んでくるから撃つたびに陣地転換する必要があるが、必ずや砲兵の戦いを成功させるぞ!!!」


「「「了解!!!」」」


「あの…対空砲を火力支援に使うんですか?話が違う気が…」


フレイヤにそう聞かれた、まぁ対空砲を空だけを撃つものだと思っているのなら、当然の反応だろう。


「そのために水平射撃できるようにしたんじゃないか、水平射撃する対空砲はかなり大きな火力だよ。早速地図の上の…ここと…ここのあたりに配備しておいて。」

「分かりました」




いままで破壊される事はあれど、全てが瓦礫になる事はなかった王都は今や荒廃している。

街の至る所から黒煙が上がっており、人々は逃げ惑い、親とはぐれた子供は道端で泣いている。

これは良くないな。


「それと、魔導騎兵は市街地戦ではあまり戦えないけど目立ちはするから民間人の避難誘導をするように指示するんだ…そもそもあまり数があんまり残ってないかもしれないけどね…」

「分かりました。伝えておきます。」


フレイヤは司令部から去って、指揮官に命令を下知させに行った。

俺はテントの外に出て、王宮を眺めた。

あの中で王は一体何を思っているのだろうか…?


















フレイヤから情報魔法の使い方を教わった俺はある志願兵のヘルメットについているカメラから戦場の様子を観察する事にした。

どうやらマイクもついているようで、瓦礫の上を走る音や銃声が少し遅れて聞こえる。

画質もそれなりに荒くて時々ノイズも入るが、それでも貴重な映像だった。

彼らは建物の窓の中から通りを渡ろうとしている敵を狙って撃っていた。


「クソ!敵が多すぎる!!迫撃砲は何をしてるんだ!!」

「敵からも砲撃が飛んできてるから撃つたびに位置を変えないといけないんだ!そんな事よりもっと狙って撃て!!」


パン、パンと響く銃声、しかしその3倍は敵の魔法や矢が帰ってくる。


「クソ!ゴブリンが一匹建物に入ってきた!アーブラハム!やれ!」

「分かった!」


アーブラハムという名前らしいその志願兵は階段を銃を向けながら慎重に降り、物音のする方向にゆっくりと向かった。

そしてドアに慎重に近づき…そこから一匹のゴブリンが飛び出してきた!


「うおおおぉぉぉ!!!」


彼はそのゴブリンを銃剣で一突き、二突き、そして剣を抜き、刺してトドメを刺した。

動物の鳴き声のような断末魔を上げてこと切れるゴブリンから銃と剣を抜くと、2階から彼を呼ぶ声がした。


「アーブラハム!お前IED持ってたろ!それでここに穴を開けてくれ!!敵がここを囲もうとしてる!!」

「ボカンと開けてやるぜ!」


2階に上がり、裏の家に近い部屋に入るとそこにIEDを仕掛け、壁に固定すると信管に繋がった糸を持って壁の裏にいった。


「爆発するぞ!!」


ボン、パラパラパラと音を立てて破壊された壁はその家の裏にある家の一室に繋がった。


「よし!移動するぞ!!」




「…よし!いない!!走れ走れ走れ!!!」


頭を低くして通りを走り抜ける彼らは、遅滞戦闘を命じられた特殊猟兵のうちの一人だった。

アーブラハムはキーレの元猟師だったようで、仲間達と時々冗談を飛ばして笑っていた。


「…全員入ったな!!バリケード作っとくから先に2階に上がって窓から射撃しろ!!」


2階に上がると窓からは向かいのさっき穴を開けた家の窓や玄関から次々とゴブリンやオークが出ていた。


「クソ!撃て撃て撃て!!」


パン、パン、パンと散発的に鳴る銃声は彼らを止めるには少なすぎた。

グロいのは嫌いなのでそろそろ見るのをやめようかと思ったが、次の瞬間爆発魔法の暴風が通りをめちゃくちゃにした。


「お…あれは…対空砲か?!」


どうやら俺の命令通り対空砲を水平射撃して火力を作っているらしい。これで良い。


「お…おい!飛竜だ!飛竜がいるぞ!アレをやれ!!!」


部屋の中なので見えないが、どうやら飛竜が上を飛んでいるらしい。


「…やった!翼だ!翼に当たった!!…墜落してるぞ!!やった!!!」


どうやら飛竜一体を撃墜したようだ、対空砲の効果は確かにあるようだ。


敵軍は近接航空支援がなければ大した事はないようで、王国軍の増援が来るとともに突撃の効力は減少していき、じきにこちらが前進するようになった。

しかし前進しすぎては前線が維持しづらくなる、ここら辺で前進は止めて、要塞化に入るべきだろう。


「フレイヤ、指揮官にこう伝えて。『家の壁を爆破して通路を作って、地面にトンネルと塹壕を掘って、建物と建物の間の上に布を張って、通りに障害物を作るように』って。」

「分かりました」




ここからが正念場だ、きっと敵は対空砲の存在を知れば集中攻撃し出すだろうから、これ以上敵の制空を邪魔する事はできなくなる。

そのためのトンネル、あとそのための塹壕。

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